しろもうふのひきだし

わたしのひきだしです

読書備忘録#3_実践型クリティカルシンキング

読書備忘録#3_実践型クリティカルシンキング
佐々木裕子さん

【読もうと思った動機】
クリティカルシンキングという言葉に興味を持った。手を動かして身に着けていくスキルとは異なり、考え方やスタンスというのは、早めにいろんな考えをもとに自分なりに確立したほうが良いと思い、中心的な考えになりそうなこの本を手に取った。本のカバーが赤くて、とても目立ちます。数年前に一度読んだが、改めて読んでみる。

【概要】
クリティカルシンキングについて、講義形式でまとめた書籍。事例や演習が多く含まれている。その事例や演習を通し、著者がファシリテーターや解説をしているため、非常に理解がしやすい。

■1章 実践型クリティカルシンキングとは
実践型クリティカルシンキングってなに?
 クリティカルシンキングとは、次の3つの要素からなる。
  1.目指すものを達成するために
  2.自分の頭で考え、行動し、
  3.周りを動かすための実践的な思考技術
 限られたリソース(時間、情報、予算)の中で、効果的に筋よく思考を深めるための技術が必要になってくる。それがクリティカルシンキング。これは、自ら目指すものを設定し、その目標を戦略的に達成していくことが求められる。その思考技術。気を付けたいのは、あくまで「ツール」であり、目的ではないこと。

いまクリティカルシンキングが求められる3つの理由
 素早く結論を出すことができる。
  変化のスピードが速いいまの時代では、短い時間でざっくりと、筋のよいやり方で結論を出すことが求められる。限られた時間や情報で、その時点でベストだと自分が思える結論・成果が出せる確率が上がる。
 経験値のない事柄でも判断できる
  自分の頭で考え、論理的な判断を行う力をつけることができる。
 判断の根拠を説明できる
  自分の下した判断根拠を説明できる。

クリティカルシンキング3つのステップ
 1.目指すものを定義する
  いつまでに、どのくらいのレベルのことを、何のために
  シンプルかつ具体的に。
 2.何が問題なのかをクリアにする
  現状を客観的に分析し
  目指すもの」とのギャップを認識し、
  そのギャップが生じている原因(=課題)を本質的に説明ができること
 3.打ち手を考える
  具体的なアクションを挙げられること
  なぜそのアクションなのかをクリアに説明できること
 ん~QCストーリーそのものだ。

クリティカルシンキングができるってどういうこと。 石川遼さんの事例
 クリティカルシンカーは、3つの問いに答えることができる。
  目指すものは何か?(いつまでにどのくらいのレベルで?)
  今と目指す姿のギャップ(=課題)は何か?
  ギャップを埋めるための具体的なアクションは何か?
 意識しないとできないのが、クリティカルシンキングの特徴。意識をすればできる。小学生でもできること。
 徹底して、意識し、考えるというのが大事。

クリティカルシンカーになるためのふたつの力
 1.目指すものを定義する力
  正解がないから、とても難しいこと。どの目線で定義をするか、どの具体性で定義するかということが非常に大事。
 
 2.ズームイン、ズームアウトする力
  ズームイン :細かく砕いて、核心に迫る力
  ズームアウト:思考や発想の枠を広げる力
  このふたつを行ったり来たりしながら、目指すものを達成していくのがクリティカルシンカー。
  著者がよくやるのは、なぜ?ホント?具体的には?の問い。これにずっと答え続けられるのがクリティカルシンカー。

1章 感想
クリティカルシンキングは、イシューから始めよと同じようなものだという印象。限られたリソースの中で、バリューを出すツール。正直、何が同じで何が違うのかまだよく理解できていない。ただ、大切なのはこの正解がない時代に自分の頭で考えて、目指すものはなにかを定義する力。それは本当に目指す姿なのか(バリューはあるのか)、そのために何を明らかにするのか、ということ。

■2章 目指すものを定義する
「なぜ、具体的に、いつまでに」目指すのかを決める
 目指すべき山を決めずに歩くは、さまように等しい 孫正義
 演習:グローバル人材の育成  ありがちなこと。すぐHowの議論(英語研修、海外勤務の経験・・・)へ。
 いや、最終的に解くべき命題(what)はなんなのだろうか?グローバル人材ってどういう人?育成ってどういうこと?いつまでに何人?何のために育成するの?

目指すものを明確に、イメージしやすく表現する
 目指すものをどう定義するか?どういう言葉で表現し発信するのか?
 ?の例:我々の使命は、チーム中心の最大規模のイノベーションと戦略目標に沿った航空宇宙計画を通じて、宇宙産業の国際的リーダーになることだ
 !の例:60年代末までに人類を月に立たせ、安全に帰還させよう   (J・F・ケネディ大統領)
 具体的に、ワクワクするような高いゴール(目指すもの)を設定すると、そのゴールの解き方がわからなくても、それに共感した人々が、自ら問題解決をし始める(←これを、「適切な課題の大きさ」と理解している。ほぼ日参照)
 著者も、目指すものと、目指すものと今とのギャップが見えないと、研修プログラムが組めないという話をする。
 目指す姿は、時間、レベル軸で具体的に提示できなくては、目指せない。

目指すものをSMARTでチェックする
目指すものは、意味のある形で定義しなくてはいけない。誰が聞いても、あ、そういうことか、そのためにやっているんだ、ということがわかること。
 Specific:できるだけ具体的に。 ex)社長の壁打ち相手になる
 Measurable:達成できたかどうかを事実で判断できる。 ex)月に行って人が安全に帰ってきた
 Action Oriented:アクションに落とせる。 ex)月に行って帰ってこなきゃいけないということは、大気圏突入しても大丈夫な素材が必要になる
 Relvant:意義が明確。なぜやらなきゃいけないのかが明確。 ex)当時、宇宙開発においてアメリカはソ連の後塵を拝していた。アメリカ国民は、もうソ連の背中は見たくなかった。そんな思いを代弁した。
 Time-Limited:期限が明確。 ex)60年代末までに。もし70年代と言ったら、実現は70年代になっただろう。
 これらが全部つながって、ポイントを満たしていること。
 
正解はない。ひたすら考え続ける
 経営なんて、正解がない。どこかで意思を持って決めないといけない。目指すものは、出発点として、ブレない明確なものじゃないとダメ。問題解決しようとすると、何の問題を解決しているのかよくわからなくなっていくのはありがちなパターン。正解がないので、自分が納得するまで考え抜くしかない。考え抜いて決めるしかない。そこが決まれば、あとはどうやって目指すものと今のギャップを埋めるかというところに頭を集中すればよい。

2章 感想
「なぜ、具体的に、いつまでに」目指すのかを決める。正解はない。自分で考え抜くしかない。チェックは、「SMART」を使って。適切な課題の大きさ
この流れで、ケネディ大統領のヴィジョンを聞くと、すごく洗練されていると感じた。

■3章 何が問題なのかクリアにする
ズームインで問題を分解して絞り込む
 ズームイン、ズームアウトを使って、ギャップを埋める。
 問題を見つけることは、それを解くよりももっと本質である。 アインシュタイン
 演習 年金営業マンの話。 スキル問題、ウィル問題、キャパシティ問題。最終的に、リストを作る時間がないというところまで落とした。ここまで落とさないと、助けてあげることができない。
 できる限り選択肢を漏らさないように、さらにわかりやすく分解するのがズームインの肝。構造化のこと。
 構造化(ピラミッド構造)が大事な理由というか、メリットは、選択肢や理由を分解していくとき、どれかひとつを選ぶと捨てた選択肢はもう検討しなくてもよいことが挙げられる。無駄な情報収集をしなくてよくなる。
 分解の過程で、大きな枝を切っていくということ。 

筋のよい分解をするためにふたつの条件
 1.MECE感があること。ここでは、直感的に違和感を感じることなく、ほぼカバーされていると思えるレベルでよいとしている。多少の例外は許容する。大事だけど、こだわりすぎないこと。限られたリソースでそれなりの成果を出すためだからね。
 2.意味のある切り口の分解であること。演習では、顧客地域別という切り口もあったが、プロセスを切り口にすることで、解決したパターン。本質的な課題が見えるまで、掘り下げる途中で、わかった気にならないことがポイント。
 
基本のフレームワーク5つ
 4C・3C、4P、バリューチェーンマーケティングファネル、7S

ペアコンセプトも便利(足して100%になるもの)
 アウトプットーインプット
 ウィルースキル
 ソフトーハード
 長期ー短期

過度なMECEフレームワーク信仰で陥りがちな3つの罠
 1.「で?」となりがちな一般論型。うまく整理されているが、何が言いたいのかわからない。
 2.抽象的すぎる「評論家型」。整理学になってしまい、抽象的でなにを言っているのかわからない。
 3.詰めの甘い砂上の楼閣型。なぜその整理で分解したのか。理由や判断基準や根拠が不十分。ちょっと、なぜ?ほんと?と聞かれたら瓦解してしまうパターン。
 これらの罠に陥らない(問題の本質を理解する)ためには、つぎの3つのポイント。
 ①言葉の定義は明確か?
 ②どんな課題解決にリソースを集中するか、具体的に判断できるか?
 ③解決策がアクションレベルで透けて見えるか?

ズームアウトで問題を構造化し、本質を探る
 演習:女性リーダー育成チャレンジプログラムの課題
 仮説を立てて、構造化する
  筋の良い分解をするには、ある程度、原因を仮定して、それを表現するために構造をつくっていくというアプローチも大切。危険性として、仮説として間違っているのに、自分の言いたいことを言うために無理やり分解してしまうということがあるが、直感的にもやもやして、構造分解していくプロセスで間違いに気づけると言っている。問題ないだろう。この辺りはやってみないとわからない。
  著者も何度もやり直している。今回は、「やりたいこと」に注視し、プロセスで分解をした。

3章 感想
問題を見つけることは、それを解くよりももっと本質であるというアインシュタインの言葉。分解するときは、MECE感を持って、意味のある切り口で実行する。
うまくいかないときは、仮説ベースでもよい。ズームインとズームアウトを繰り返し、何度も構造化をやり直すことで、光が見える。


■4章 打ち手を考える
ズームイン・ズームアウトしながら、打ち手を考える
 目指すものといまとのギャップをどう埋めるか?
 演習:日本の人口を10年後に1.2倍にするには?
 構造化すると、今まで思いもつかなかった選択肢に気づくというメリットがある。例えば、移民の受け入れ、流出を防ぐ、とか。
 打ち手を考えるポイント①
  ほかには?ほかには?と言ったら、結構出る。なので、最初はズームインしすぎずに、ほかにないのか?とズームアウトする。
 打ち手を考えるポイント②
  命題、すなわちいちばん最初の目標設定と照らし合わせながら、行ったり来たりしながら絞り込む。これをやると、情報収集を一切しないで、選択肢が消える。難しく、時間に限りがあり、情報量も大量、こういう場合にスピーディーに判断でき、効率につながる。
  なんとなく印象で、「出生率を上げる」を選択してしまうことが起こる。そのため、目標設定をクリアにすることがすごく大事。  

打ち手を考えるための5つのステップ
 演習:21歳の大学生がエベレストに登るには?2000万円必要。
 1.まず、当たり前の答えを考える:自分で稼ぐ
 2.当たり前の答えの対極を考える:自分で稼がない
 3.アイデアの深堀をする(ズームイン):稼がないだったらスポンサー、タイアップなど。稼ぐだったら投資など。
 4.発想を広げる(ズームアウト):シェルパになる。登らない、登るのをもっと先にする
 5.目標設定と照らし合わせながら絞って、さらに深堀りする:いろんな打ち手が出てくる。山田氏は、スポンサーの線で考えた。ギネスを作って注目度を上げようとした。できたばかりのトレーニング施設のデータ提供を条件に、無料で使用させてもらうよう、交渉した。15年後でもよかったら、違う方法もあったよね、と本人も言っていた。
 解決策は、目標設定とつながる。解決策が見つからない場合は、課題の本質を分かっていないから。ただ、解決策を実行するのは難しい。
 広げたあと、どういう情報があったらこの選択肢を切れるか、何を明確にすれば切れるか?というのを考える。で、十分に考えて絞ったら、掘る。で、また広げていく。

4章 感想
実際に構造化する際のテクニック。最初の目標設定と照らし合わせて、行ったり来たり行ったり来たりしながら、絞り込んでいく。総まとめ。
打ち手を考えるのは難しくない。うまくいかないときは、目標設定があいまいだったり、問題の本質をつかめていない可能性がある。


■5章 実践型クリティカルシンキング修了証書授与
クリティカルシンキングは、こうすればすぐできるよ!というウルトラCがない。
実践型クリティカルシンキングを身に着ける4つのコツ
 1.とにかく、ひたすら考え続ける。あきらめずにひたすら考え続ける。落としどころの予定調和をしない。精神論だが、「途中であきらめない」「最後は自分で決める」「自分で納得するまで考える」が本当に大切。できた瞬間に、あ、こうだったんだってスッキリ抜けて自分の引き出しがひとつ増えていく。そのプロセスがすごく大事。
 2.紙と鉛筆を湯水のように使う。紙と鉛筆で書き続けると、俯瞰できるので、思考のズームアウトがしやすい。
 3.自分だけで考えず、人と壁打ちをする。ひとりでやると、行き詰まる。壁打ち相手は、自分とは違う視点を持っている人ほど効果的。人に説明し、議論することで自己満足に陥ってしまうことを防ぐことができる。
 4.百聞は一見に如かずー事実に当たる。大きな課題を抱えている企業のマネジメント層に徹底的にヒアリングをしたり、変革屋としてする仕事を、その会社の社員としてやってみるというプロセスを経ている。そうして、自分の考えを深めてきた。事実に当たる、数字、データにあたる、実際に見に行く。感じる。そこから自分が感じたことを言語化して掘りこんでいく。
 なぜ、自分はそう思うんだろう?っていうのを掘りこんでいくのが、本質的な実践型クリティカルシンキングだと思っている。
 これからどういう世界にしていきたいのか。みんなが真剣にそれを考えられれば、ほんとうにもっとステキな21世紀になると思います。

5章 感想
最後は、総まとめと、著者の佐々木さんの思いを吐露しているような感じ。ひたすら自分の頭で考え、アウトプットして、ときには人と壁打ちして、事実に当たる。これがクリティカルシンキングを身に着けるコツ。


【この本を読んだ感想】
イシューの問題と、かなり類似性が高いものと捉えることができた。クリティカルシンキングで大切なのは、正解がないものに対して対峙するときに自分の頭で考え抜いて、自分の納得するまで考え抜くしかない。他人と壁打ちをしてもいいし、それを推奨しているけども、最終的に決めるのは自分。納得できるまで、できることをやる。それはデータを取ることだったり、実際に見に行くことだったりといった事実に当たること。
適切な課題の大きさにするには、その上の目標が必要。
イシューからはじめよで、バリューのある目的を定義して、クリティカルシンキングで打ち手まで考えていくことか・・・?考察中。
クリティカルシンキングはあくまでツールであることを忘れない。

【今後活かせること、具体的なアクション】
・「なぜ、具体的に、いつまでに」目指すのかを決める。まずは、なぜを。 アインシュタインの言葉を思い出す。
・構造化。ズームイン、ズームアウト。
・目指すものを明確に、イメージしやすく表現する。 ケネディ大統領の言葉を思い出す。
・目指すもののチェックはSMARTで。
・解決策は目標設定とつながるので、目標設定はクリアにすること。
・やはり、仮説ベースでの考察は大事。

【気に入った文章・言葉を3つ】
・60年代末までに人類を月に立たせ、安全に帰還させよう
・問題を見つけることは、それを解くよりももっと本質である
・これからどういう世界にしていきたいのか。みんなが真剣にそれを考えられれば、ほんとうにもっとステキな21世紀になると思います。

【こんな人に読んでほしい】
クリティカルシンキングを手軽に学びたい人
・生産性を高めたい人
・講義形式の書籍であれば読みやすいという人