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読書備忘録#10_スモールビジネスマーケティング

読書備忘録#10_スモールビジネスマーケティング
岩崎邦彦さん

【読もうと思った動機】
中小企業診断士の勉強をなかなか始められない中、情報収集中に目についた本。これは、2次試験の事例Ⅱを解くにあたり、とても有用だというレビューを見て、とりあえず買ってみたというところ。著者は問題作成だか監修だかに関わっているらしく、試験対策としての効果を見込んだ。


【概要】
論文のような構成。スモールビジネスマーケティングについて、とても良く体系化して説明している。当たり前に感じていることを、言語化しており、知識の習得や整理に役立つ。ただし、2004年発売ということで、少し前に書かれている点には考慮が必要と考える。だが、内容については2022年現在読んでも、通じる内容であると感じている。
スモールスケールであるがゆえの優位性を高める方向性に向かっており、21世紀はスモールスケールが武器になりうる時代。ただ、潜在的なスモールスケールの優位性を、顕在化させることが重要としている。それは、小規模小売店を選考する消費者を標的とした、ターゲットマーケティングプログラム。小規模小売業は、大規模小売業とは果たす役割も消費者からの期待も異なる。


■1章 小規模メリットの創造
21世紀の消費の特徴は、「多様性」と「異質性」である。需要の多様化のモデル。これは正規分布で考えられる。マス商品、規格品では満たされないニーズは確実に存在し、「小さいけれども確実な需要」は必ず創造される。500人乗りのジャンボ機と20人乗りのプロペラ機で例える。ある路線に20人弱の利用客が安定的に見込める場合、ジャンボ機にとっては1割にも満たない搭乗率となり、採算に合わない。一方、プロペラ機にとっては、毎回ほぼ満席となり実にうま味のある路線となる。小売業でも同じことが言える。大規模小売業がラージスケールゆえに参入が難しいマーケットや、小さいけれども確実に需要がある市場が増えていく。大型店は、同質化を促進するため、小さいけれども確実な需要があったとしてもマーケットが空白になる。これは、ホテリングのモデルで説明ができる。顧客数の最大化を追求する結果、X社、Y社ともに最も平均的なニーズに対応することになり、結局ナッシュ均衡となる。結果、真空地帯が生まれることになる。この真空地帯にポジショニングすることで、規模の小ささを強みに転化することができる。大企業よりも小規模企業の方が効率的なマーケットは、最適規模理論からいうと、「個性化市場」「高級化市場」「多品種少量市場」「短サイクル市場」などが当てはまる。
現実の小規模小売業は、大規模小売業と同じマーケットで同質競争を繰り広げているケースが実に多い。そうなると行き着く先は価格競争と消耗戦となる。このタイプの戦いでは、スケールメリットが作用するため、小規模企業が大企業に勝つのは困難となる。
小規模小売業が真空地帯に対応することで、小売りの多様性が生み出されるため、マーケット全体の満足度(個人満足度の総和)も向上することになる。小規模と大規模小売業は、かつての競合関係から、補完関係へと変容している。大は小を兼ねない のである。
どちらの店のケーキに魅力を感じるか。
A店:こだわりのケーキを販売する店
B店:こだわりのケーキ、菓子、パン、清涼飲料水、食料品を販売する店
消費者調査の結果は、A店:61.5%、B店22.5%
圧倒的にA店に魅力を感じる消費者が多い。品ぞろえの総合化によって、こだわりが希釈化されるということ。
変化対応力として、大規模小売業は、量のマーケティングを効率的にマネジメントできるよう、仕入販売管理等の職能の部門化を行い、商品調達プロセスなどをシステムとして構築する。戦略の方向転換をするときは、部門間の調整コストやシステム変更が発生するため、変化のコストが高い。一方、小規模小売業は、販売の現場と意思決定のポイントが一致しており、状況に即した迅速な経営判断が可能である。変化をチャンスに転換しやすいといえる。
地域力もある。けっこう、みんな地元で買い物をしたいという思考がある。概ね、60%。地域産品や少量産品の取り扱いに関しては、規模の経済が作用せず、逆に小さなマーケットへの対応力や地域密着力といった小規模メリットが働く。
多くの小規模小売業が不振な理由。そのひとつとして、小規模メリットは、あくまでも潜在的な可能性だということ。単に小規模ということが強みではなく、水面下にある小規模メリットをいかに顕在化できるのか。小規模メリットを現実の力に変えていけるか否かが、勝者と敗者を分けるカギになる。次章から小規模を強みに変えるスモールビジネスのためのマーケティングを検討する。

1章まとめ
大規模小売は、量のマーケティングであり、品揃えを多くすることで、多くの顧客にアプローチする。大規模小売店同士が競争する場合、顧客を奪い合うことになるが、結局は同質化されナッシュ均衡となる。なので、ある一定のニーズ(多様性、異質性)をもつ人もいるため、必ず真空地帯と呼ばれるマーケットが存在する。そのマーケットを埋めるのが小規模小売業。こうすることでマーケット全体の満足度が向上する。多様性、異質性に対応するために、小規模というポテンシャルを顕在化することが必要。それが次章以降、書かれている。


■2章 小規模メリット活用型マーケティングの構築 -小規模を”強み”に転換する
小規模小売業が大規模小売業と同じ土俵で競争を挑んでも勝ち目はない。マーケティングプログラムとして、「小さな店に惹かれる人々(大量生産、大量消費とは距離を置き、小規模小売業を選好する消費者層)」を標的としたターゲットマーケティングプログラムを提案する。
「小さな店に惹かれる人々」は次の3つの特性を有する消費者といえる(観測変数をまとめたもの)
・本格志向:こだわり、個性、専門性を重視する消費者層
・人的コミュニケーション志向:店員のアドバイス、店員のコミュニケーションを重視する消費者層
・関係性志向:気に入った店は長く利用したい、ここと決めた店がある割合が顕著に高い消費者層
小さな店に惹かれる消費者モデルは次のようなもの
--
●小さな店に惹かれる消費者モデル
本格志向
       \
          人的コミュニケーション志向  ―  中小規模店選好
       /
関係性志向                     /
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本格志向は人的コミュニケーションを媒介するところが意外でした。本によると、単に専門性やこだわりを追求するだけでは、「中小規模店選好セグメント」の吸引効果は限定されることを示唆している。専門性やこだわりは、対面販売などの「人的コミュニケーション」と融合することによって効果が発揮される、と記載されている。ストーリーを伝えることは、これにあてはまるかな。。。
小さな店に惹かれる消費者モデルを見ると分かるように、カギとなるマーケティングプログラムは、人的コミュニケーションプログラムとなる。当然、これだけでなく、関係性のある志向ごとに融合して考えることも重要となる。

2章まとめ
中小規模店選好する人は、次のような志向をもつ。
本格志向、人的コミュニケーション志向、関係性志向。特に、人的コミュニケーションプログラムは中核的な役割を担う。


■3章 プログラム1:本格化マーケティングプログラム -こだわり、個性、専門性を武器に顧客を創造する
競争優位のコア基盤が必要で、それにはまず幹を作ること。幹(コア)がなくしてこだわり、個性、専門性は発揮できない。コア基盤の源泉は、内部資源に求められる。幹は太くすること。無理に伸ばしたり増やしたりしない。幹を支えるにはしっかりとした根が必要。根とは、経営資源のこと。第一は目に見える資源。人、モノ、カネ、設備といったもの。ただこれらは、大規模小売業の方が優位のため、スモールビジネスの切り札にはなりにくい。第二は、目に見えない資源。これは、専門知識、独自の経験、ノウハウ、顧客の信用、熟練技術こだわりなど。これらは模倣しにくいこともあり、差別化のキーとなる重要な経営資源となる。第三は、小規模特性。既に述べた、変化対応力、真空地帯への対応力などのことを指す。
品揃え形成において、Step1としてコア商品の形成、Step2としてコア商品を軸にしたアソートメントの拡充を目指すべきである(コア商品の垂直的拡充と商品ラインの水平的拡充)。コア商品は、一芸に秀でる戦略。洋菓子がおいしいお店ではなく、チーズケーキがとびきりおいしいお店、というイメージ。
コア商品形成メリットを挙げていく。第一に、コア商品がシンボルとなり店の個性を発信してくれること。第二に、関連商品の販売。ついでに別の商品も買ってくれる。第三に、コア商品がドライブとなって、他の商品群のレベルアップが期待できる。第四に、ハロー効果。チーズケーキがおいしい店は、ショートケーキもおいしいと思われやすい。第五に、顧客維持。コア商品による差別化ってこと。第六に、価格感応度の低下。コア商品の独自性が高ければ高いほど、価格競争に巻き込まれにくくなる。第七はクチコミの発生。顧客が顧客を運んできてくれる。

アソートメントは、3つの切り口がある。
1.生活起点のアソートメント:コア商品に関わる消費者の生活シーン、利用シーンからの品ぞろえのこと。ワインがコア商品であれば、チーズや生ハムやオリーブオイルなどがそれにあたる。生活シーンと同じ文脈で賞品が提示されるため、消費者の購買意欲が喚起されやすい。メリットとして、限定された店舗面積でも専門性を発揮しやすい、関連販売を誘発しやすい、商品が相互に補完し合ってそれぞれの価値を高めやすい、ライフスタイルの提案など目に見えない価値を付加しやすい、などがある。小売業にとって、最も望ましいアソートメントといえる。
2.川上起点のアソートメント流通の川上において、相互に関連性が高い商品群の構成。ワインとウィスキーといった組み合わせ。生活シーンでは、代替的な組み合わせであることが多い。いわゆる従来型の業種店のイメージ。これからの時代の小規模小売業に適合しているとはいいがたい。
3.総合型のアソートメント:流通の川上、川下ともに関連性の低い商品ラインの組み合わせ。ワインと清涼飲料水といった組み合わせ。消費者は、小規模小売業に何でもあること=総合性を求めてはいない。専門性を希釈し、マイナスのシナジーを発生させる可能性が大きい。大事なのは、どこまでを売りどこからは売らないのかを明確にすること、そして、今いる顧客を徹底的に満足させることが肝要。

ターゲティング:「絞り込みによる拡大効果」というパラドックス (良い意味のパラドックス
スモールビジネスのターゲティングの定石は「絞り込み」。絞り込めば絞り込むほど効果的。全員に語りかけるのではなく「Aさん一人に語りかける」のである。この顧客だけは絶対に満足させることができるといったターゲットの絞り込みが、商品政策に一貫性を持たせるとともに、店の主張を明確にし、鋭く鮮明な個性の発信を可能にする。結果として、明快な個性が店の魅力を高め、結果として幅広い層の顧客の救貧が可能になる。
プライシング:「いかに安く売らずに済むか」を考える
消費者のだれもが望んでいるのは「高い価値」。「低価格」を求めているわけではない。価値は、次のように定義される。価値=品質/価格。小規模小売業が志向すべきは、ハイクオリティ・ライトプライス。
価格競争を避けなければいけない理由は6つ。
1.価格で惹きつけた顧客は、ストアロイヤリティが低い。こういった顧客は、価格で逃げていく。バーゲンハンターという。このタイプの顧客から得られる利幅は小さく、こういった顧客比率の増大は経営を不安定にする。
2.規模の経済や範囲の経済が作用する。価格競争は大規模小売業が有利。
3.模倣されやすく、持続的競争優位性につながらない。価格は差異化や個性化の道具にはなりえない。
4.多数の「敗者」を生み出す。価格競争の勝者はほんの一握り。(質の競争においては尺度が様々なので統一的なものを求めるのは難しい)
5.価格だけを武器にしているとおのずと専門性を否定することになる。
6.ディスカウントプロモーションの継続は、消費者の価格感応度を高める。特売日だけしか来なくなる。
なぜ、この価格なのか、を伝え納得してもらうことが重要(人的コミュニケーション)。価格が忘れられた後も、品質は残り続ける。(今使っているPCの価格、覚えてる?)
スモールビジネスでは「いかに安く売るか」ではなく「いかに安く売らずにすむか」を考えるべきである。

小売段階でも独自の価値を付加する
小売段階の価値の付加方法は3つの方向性がある。
1.形態の変化:財を加工し、その形態を変換していること。ケーキとか惣菜とか。目に見える価値を創造していること、独創性やこだわりを活かす余地が多くあり個性を演出しやすいこと、手作業主体であること、製造者の顔が見えること、製造プロセスを見せれ専門性のアピールができることが支持を集めやすい理由となっている。
2.商品のコーディネート:例えば生活起点のアソートメント。それと、購買代理機能。買物の選択肢が増加しているため、真に自分に合う商品に出合いにくくなっている。自ら直接吟味するのは困難。プロの目線や感性で、商品を厳選するということ。
3.目に見えない価値の付加:
 -サービス:個別宅配、設置サービス、御用聞きなど
 -情報:今日、必要なものはほとんどの消費者が持っている。顧客自身には特定できないが満たされれば非常にうれしいニーズに前対応すること。つまり提案。顧客に合わせた価値提案を行う情報発信業。
 -学びと体験:サービスの時代から経験の時代へ移行したともいわれている。おいしいコメの炊き方教室、田植えツアー、稲刈りツアーなど。地域社会や生産者との関係性を深化させるきっかけにもなりうる。
 
小さな店に惹かれる人々は、こだわり・個性・そして専門性を重視するセグメント。本格化マーケティング・プログラムを実践できれば、このセグメントの方からその店を利用してくれるはずである。小規模小売業が個性・こだわり・専門性を武器にできるのは、まさに小規模小売業がスモールスケールだからである。本格化マーケティング・プログラムを通してスモールスケールを強みに転換することができた小規模小売業は、大規模小売店との競争の波にそう簡単には飲まれない。

3章まとめ
本格化マーケティングのポイントは次の内容。
競争優位のコア基盤の確立、コア商品の形成、品揃えの垂直的拡充、生活起点のアソートメント、想定ターゲットの絞り込み、「いかに安く売るか」ではなく「いかに安く売らずにすむか」、ハイクオリティ・ライトプライスによる価値の向上、品質・こだわりの視覚化、小売段階においても独自の価値を付加する
どれも、スモールスケールを強みに転換させること


■4章 プログラム2:人的コミュニケーション重視型マーケティング(1) -垂直方向の人的コミュニケーション
コミュニケーション媒体としての「ヒト」に注目する。3つのマーケティングプログラムのカギとなるプログラム。ここでは売り手と買い手の垂直方向のコミュニケーションについて検討する。
小さな店に惹かれる人々は人的コミュニケーションを顕著に重視する層。小規模小売業の強みであるはずの人的コミュニケーションは、不満要因にもなっている。横柄な態度とか、不愉快な思いをしたなど。人的コミュニケーションが小規模小売業の業績のカギを握っていることが実証されている。人的コミュニケーションの深さが高い顧客満足度に結びついている。マーケティングミックスの構成要素であるProduct,Price,Promotion,Place+People。このPeopleが切り札になる。人的コミュニケーションの失敗は、小規模小売業にとって「命取り」になることを示している。
人的コミュニケーションには二つのタイプがある。ひとつが「フレンドリーサービス」で、接遇や接客に関する要素。言葉づかいや挨拶、身だしなみといった内容。これは競争優位の切り札にはなりえず、あくまで「競争の前提」である。もうひとつが「ヒトを通じた情報の伝達」。顧客に対するきめ細やかなアドバイスやライフスタイルの提案など、プロフェッショナルな人的コミュニケーション自体が付加価値になり、これこそが競争優位の源泉となる。
現代の消費者は、本質的な欲求はあるものの、買いたいものがはっきり見えていない。そのため、消費者をリードしていく必要がある。「店頭で需要を創出する」ことに関しては対面販売力を有する小規模小売業が優位になる。
クレームについて。苦情を言う消費者の77%程度が「今後ともその店を使う」と回答しているのに対し、苦情を言わない消費者のなんと97%が「もうその店は使わない」と回答している。これの示唆は、苦情をうまく救い上げることができれば、大部分の顧客の流出を防ぐことができるということ。苦情は期待の裏返し。
ヒトのマネジメントとして、周到な採用、販売員の意識改革、販売員満足度の向上、販売委の専門性強化・能力開発への投資、権限移譲、評価が必要。
人的資源がスモールビジネス・マーケティングの基本。

4章まとめ
マーケティングプログラムにおいて、人的コミュニケーションはカギとなるもの。人的コミュニケーションにおいて、フレンドリーサービスは土台となるものであり、人を通じた情報の伝達が付加価値となり競争の源泉となる。クレーム処理次第で顧客の流出は防ぐことができる。人のマネジメントへの投資はとても大事で企業の勝ち負けが決まるといっても過言ではない。


■5章 人的コミュニケーション重視型マーケティング(2) -クチコミとスモールビジネス
ここでは、顧客と顧客の間の水平方向の人的コミュニケーションであるくちこみについて述べている。クチコミはコストがかからず、評判が伝わりやすい。クチコミへの関心は大変高い。買物選択肢の増加で消費者の情報処理能力を超える選択肢が提供されている。自分自身では評価不可能なので、人の意見に頼るようになる。また、顧客サイドの商品知識の増加により、売り手と買い手の情報のギャップが縮小しているため、顧客が発信する情報の信頼性が高まっている。クチコミの影響力は、購入意向だけでなく、味覚までも変えてしまう(学生の、悪いクチコミを事前に聞かされていた群と、良いクチコミを事前に聞かされていた群で味の評価と購入意欲に差がでた結果から)。
クチコミは統制可能なのか。答えはイエスでもノーでもある。クチコミ発生の促進や伝播スピードを速めるための方策はある。クチコミの発生は分解できる。
「クチコミの発生」=「記憶しやすく伝えやすい」×「伝えたくなる」
「記憶しやすく伝えやすい」:店名や商品名が短く、覚えやすいこと。特徴が絞り込まれていて、言語化しやすいこと。語るための材料があること。
4文字以内だと覚えやすい。とか、愛称で呼んでくれるようなものがあるとか、商品の歴史がわかるようになっていることとか。
「伝えたくなる」:既存顧客の満足度を高めること、オリジナリティのある品揃えがあること、顧客の意見を聞くこと。
満足感のシェア、優越感。希少性のある商品、その店との一体感を感じることなど(試食会やモニター制度などが例としてある)
ネガティブなクチコミ。満足した客は約3人に話すが、不満な客は約11人にその体験を話すという。人は、苦情の持っていき場のない時に、ネガティブなクチコミを行う。なので、顧客の不満を苦情というカタチで顕在化させ、それを聞くことで悪いクチコミを最小限に抑えることができる。ただし、単に苦情を聞くだけでは不十分で、苦情の対応が不適切であれば悪いクチコミは促進される。しかし、苦情へ適切にたいおうすることができれば、それをきっかけとして顧客との絆が今まで以上に太くなることが実証的に検証されている。

5章まとめ
顧客と顧客の間の水平コミュニケーションについて。それはクチコミ。クチコミはコストがかからないが、顧客が発信する情報の信頼性は高まっている。そのため、その重要性はより高まっている。伝えたくなるような工夫、記憶しやすく伝えやすいことや満足感のシェアなどが必要。悪いクチコミは、苦情の持っていき場のない時に発生するため、ある程度抑制はできる。そうすることで、顧客との絆がより太くなる可能性があるため、ぜひとも適切な対応をしたい。


■6章 プログラム3:関係性重視型マーケティング -顧客との絆を強化するマーケティングプログラム
21世紀において、パイの縮小を前提とした企業経営が要求される。ポイントとなるのは、顧客数の追求ではなく、顧客の維持や顧客との関係の深化である。
顧客は流出する。わずか3年で顧客の3~4割が違う店に流出してしまう(2001年のデータ)。顧客数の追求(トランザクショナル・マーケティング)ではなく、顧客の維持や顧客との関係の深化(リレーション・マーケティング)が重要となってくる。
以下は、顧客維持活動の検証と結果について述べる。
・ロイヤリティカードプログラム(ポイントカードやスタンプカード)
 効果あり。ただし、店舗規模との関連性はない。実施店舗数は増えているので、今後は顧客データ収集の手段として用い、顧客の購買履歴データや属性データを入手して、優良顧客の発掘だとか、バスケット分析をして品揃えの見直しをする、DMのレスポンス向上など、幅広いマーケティング活動に利用する方向だろう。
・販売員とのコミュニケーション
 効果あり。しかも、大規模店においては顧客と販売員のコミュニケーションはストアロイヤリティにほとんど影響がない。
・顧客との継続的接触
 効果あり。ストアロイヤリティは、大型店と比較し中小規模店の方が優位にある。顧客訪問、電話、DM、E-メールなど。商品のサイクルや購買サイクルなどのタイミングなど。
・売場(売場づくり、品揃え)の変化
 効果あり。ただし、店舗規模との関連性はない。店自体も商品と同様に鮮度が重要。顧客を飽きさせないことが重要。週、月、季節単位など、いろんなタイミングがある。
(下の3つは、経営資源が限られる小規模小売業にとって比較的事項しやすい戦略であると考えられる。特に真ん中の二つが大型店に比べ、中小規模店に優位性がある顧客維持活動であることが分かっている。)

6章まとめ
数よりも、関係性を重視することが重要。中小規模店の戦略としては、販売員とのコミュニケーション、顧客との継続的接触が優位性のあるものとなる。


■7章 小規模メリット活用型マーケティングの実践に向けて
今後の経営方針に関する経営者の姿勢として、積極:中立:消極=2:6:2である。現状維持志向の経営者が圧倒的に多い。(ちなみに、廃業したいという回答が、16%もある)。経営者意識は、マーケティングプログラムを実践するにあたって前提となるものである。業績低下を、外的要因に帰属させ、自分のコントロール外での出来事と捉えてしまう。外的要因を嘆いても、決して状況は好転しない。スモールビジネスに必要なのは、現状に満足せずトライアルを積極的に推進していく経営者の意識であり、それを源泉とする「具体的な行動」である。
できることからスモールステップで。立ち止まっていては、早晩、市場に置いていかれてしまう。大切なのは、フィードバック回路をONにすること。トライアル→成果(失敗、成功)→蓄積→トライアル・・・⇒小売業態の進化 となる。要は、PDCAだったり仮説思考だったりといったところ。
このフィードバック回路をONにする方法はただ、ひとつ。それは、今すぐ始めること。時代の追い風を現実の力に変えることができれば、21世紀はスモールビジネスの世紀になるだろう。

7章まとめ
マーケティングプログラムの実践は、経営者意識が前提。そして、今すぐアクションを。PDCAとか仮説思考を高速で廻していくことが奨励されている。


【この本を読んだ感想やまとめ】
なんとなく直感的に感じていることを、検証や、少し深堀をして階層化することで、論理的にいろいろと説明しているため、納得感が高い一方、わざわざビジネスマンが言語化されたものを理解するのは冗長とも感じる。全体的には、この本に戻ってくれば大体のことが説明つきそうなので、今後もお世話になりそうな本だと感じた。
大規模小売と小規模小売では、求められているものが異なる。ターゲットを絞って、マーケティングプログラムを実施することが小規模小売業では必要。小規模小売業にとっては、とても勇気をもらえる書籍となるのではないか。
やっぱり、人的コミュニケーションがカギとなる。そりゃそうだよなぁ。。。
最終的に一番大切なのは、何事もそうだが、「行動すること」。そしてPDCAなり仮説思考を高速で廻して、より良く改善していくこと。外的要因に嘆いてばかりではなにも好転しない。自分やお店をどのようにしていきたいか、どのように顧客や世の中に価値を出していきたいか、このような意思が大切なんだと思った。


【今後活かせること、具体的なアクション】
・試験対策
・いますぐ、行動すること
PDCAや仮説思考で改善していくこと


【気に入った文章・言葉を3つ】
・苦情を言う消費者の77%程度が「今後ともその店を使う」と回答しているのに対し、苦情を言わない消費者のなんと97%が「もうその店は使わない」と回答
※あとはこれといって・・・


【こんな人に読んでほしい】
・販売領域において、なんとなくわかっているんだけど、人に説明できないといった疑問な点をはっきりさせたい人
・スモールビジネスの初級者
・起業にちょっと興味のある人