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読書備忘録#14_子どもが幸せになることば

読書備忘録#14_子どもが幸せになることば
田中茂樹さん

【読もうと思った動機】
なんだったか・・いつも見ているwebサイトでみつけたのかな。親として願うのは子供の幸せ。幸せって、人によって定義や思いが大きく異なる言葉のひとつだと思う。だがそれでも、子どもには幸せになってほしい。でも、振り返った時に子どもの幸せを願っているだけで、特になにもしていないような・・・?思いは見えないけれど、思いやりは見える。願っているだけでは伝わらないと思い、この本を読もうと思いました。

【概要】
医師であり臨床心理士、さらに4人の子どもをもち地域の子どもの活動にも参加している、理論と行動がとてつもない人の著書。章で、年代別に分かれてはいるものの、特に大きな制約があるわけではなく、どの内容も示唆に富んでいる。内容に入っていきやすいように、親が言いがちな言葉を、信じる言葉に言い換えた内容を扉絵に持ってきている。
言いがちな言葉は子どものためを思っていってしまいがちだけど、実は親が目先の安心を得ようとしていて子どもの元気を奪う言葉。信じる言葉は、子どもの元気を引き出し、親自身の気持ちもぐっとラクになることば。そして、こどもの幸せな自立につながることばでもある。
この本でいいたいことはふたつあり、ひとつは子どもに元気でいてもらうために、親としてどう接するのがいいのか、ということ。これは、子どもはもともと元気な存在で、元気であれば幸せになるためにどうしたらいいかを自分で探し始める生き物の強さがあるから。もうひとつは、育児はそれ自体が目的で手段ではないということ。子どもと過ごすこと自体がとても贅沢で幸せなことだということ。
コラムもおもしろかった。


■1章 0-3歳 子どもが世界と出会う時期
・予防接種の注射を怖がっているとき・・・
言いがちなことば:泣かずにがんばろうね
信じることば   :痛かったね。よくがんばったね。
4歳の子どもの話。耳鼻科で今までは泣いていたけど、ある日から進んで診察を受ける。親は、あの子も診察で泣くのは不本意だと思っていたんです。他の子と同じように泣かないようにやり通したいと思っていたと気づいた。そしてこの日、立派にやり通した。出来事としては普通の成長のワンステップ。泣くのはおかしい、かっこ悪いと子どももわかっている。
子どもをいかによく成長させるかとか、そのために親はどうしなければいけないか?など、そういう姿勢ではなくて、子どもに起こる成長や子どもが自分で達成していくことを楽しみに待つという姿勢が意識できれば、育児の機関のしんどさを減らすだけでなく、喜びを増やせる。そして、将来のいろいろの場面で「この子はなんとかするだろう」という気持ちを持つことできる下地が親に作られてくる。

・歯磨きをしないとき・・・
言いがちなことば:歯を磨かないと虫歯になるよ
信じることば   :困ったもんだ!
3歳の息子と、歯磨きをするかしないかでバトルしていた。それは、ポスターの「子どもの虫歯は親の責任です」と書かれていたから。最初はご褒美などで釣っていたが、そのうち泣き叫ぶ子どもをむりやり押さえつけて磨いている状態。別のケースで、保育園で他の子をたたいたりものをぶつけたりする問題行動の相談で、毎晩押さえつけて歯磨きすることをやめると、その問題行動がやがておさまってきた。問題行動は、押さえつけて歯磨きをされたことのSOSだったのではないか。
嫌がる子どもを押さえつけてまでやらねばならないほど、それほど絶対必要なことなのか。利益衡量つまり、メリットデメリットはどちらがどれくらい多いのかを考えるべき。予防接種はおさえつけてでもすべき。では歯磨きは?それを冷静に考える余裕が子育てを楽しくすると思う。
上手にしっかり育てないと・・・と追いつめられると、たかが歯磨きでも焦って、悩んで親も子も苦しむことになりかねない。歯を磨かない子どもが問題なのではなくて、歯磨きくらいどーってことないよね、と思えない自分の余裕のなさ、の方に意識を向けてみると、景色が変わるよ、という話。

・子どもが急かしてくるとき・・・
言いがちなことば:待っててって言ってるでしょ!
信じることば   :ほんとに楽しみだね!
プールでの話。子どもを連れてのプールは大変。5歳と2歳くらいの男の子を父親が水着に着替えさせていた。2歳の子を先に着替えさせて、次に5歳の子を着替えさせた。しかし、サイズが合わないのか気に入らなくて、せっかく来た水着を脱いでしまった。父親はイライラして叱りながら、もう一度着させるが、今度はねじれたりしてこれまたうまく着せれなくだいぶてこずっていた。5歳の子はもう泣きそうな状況だった。そんな中、2歳の子は更衣室からつながる出口の方に少し近づいて立っていて、プールの方から聞こえてくる音や人の声を聞いているようだった。やがて、下の子が取り込んでいる父と兄のもとにやってきた。そして、「パパ!」と声をかけた。父は、上の子の水着のパンツのひもがどうも中に入ってしまったようで、かなり苦戦している最中。下の子の方をちょっと怖い顔で振り返り、「まっ」と言いかけたその一瞬早く、下の子が大きな声で言ったのです。
「パパ!たのちみだねぇ!プール!たのちみだねぇ!」
これ以上ないというような笑顔、そしてかわいいかわいい声。本当に楽しみで仕方がないというような気持がそのまま表れていて、父親の怒りも叱られて拗ねていた兄の泣き顔もつられて一瞬で笑顔になった。子どもの感情の動きは、素直で、大人よりも振れが大きい。その表現の仕方も無邪気で、無警戒。
私たちは、「たのちみだねぇ!」という体験をしてもらうため、子どもに笑ってもらうために、疲れてもしんどくても出かけていく。

・食べ物をこぼしてしまったとき・・・
言いがちなことば:だからこぼすって言ったでしょ!
信じることば   :大丈夫だよ。拭いておくね
子どもが欲しいと思ったときに手を伸ばすとき、その途中に他のものがあるということが手の動きに組み込まれていない。こぼれやすい位置にものがあるとこぼしやすいという「身体の知識」がまだない。わざとやらないとか、不注意なのではなく、できない。そのような未熟さを叱ることは、役に立たないどころか子どもの自尊心を貶める。叱っても利益はない。子どもは叱られなくても褒められなくても、ちゃんとできるようになりたいと思っている生き物。育ちそこなったじそんしにゃ積極性を回復するのはとても大変。食べることが好きでなくなったら、この先の人生における喜びを大きく奪うことになりかねない。自尊心や積極性を回復するためにかかる費用は、こぼれた味噌汁を片付けるのにかかる費用や労力とはケタ違い。
子どもは押さなくても親が愛情を示してくれたことを必ず覚えている。それば漠然とした記憶で、夜の寝室の後継、肌寒さやオシッコのついた衣服やシーツの感覚やにおい。それに伴った気分や感情、親が世話してくれた時の態度や言葉がけ。その安堵感。
愛情を注いでおくことは、将来子どもが幸せになることへのこれ以上ないぐらいに有効な投資だと思って、シーツを洗おう。

・買い物でダダをこねているとき・・・
言いがちなことば:(こんなわがままを許していいのだろうか・・・)
信じることば   :(思い通りにならなくて泣くのも、いまだけだよな)
スーパーのレジで、2歳くらいの男の子が、レジでテープを貼ってもらい受け取ったけど、泣き出した。「自分で!」どうやら、自分でレジのお姉さんに手渡しをしたかったみたい。なだめてもしばらく男の子の「自分で!」は収まらなかった。私たちは子供のころの気分やあのとき世界がどう見えていたかを、忘れてしまっていることが多い。なので、何でそんなことでそこまで泣くのか怒るのか、と大人になった私たちは思う。親から見れば理不尽な要求であっても、子どもにはまだ、社会のこの世の理屈はわからない。わざと親を困らせようとしてわがままを言っているのではなくて、世界が現実が自分の思い通りにならないつらさを、ひとつひとつ学んでいる途中なのだ。成長における、ひとつの大事なステップなのだ。
泣き叫んでいる子どもと向き合って自分が怒りでいっぱいになっていると、なかなか切り替えられない。そんなとき、大人は頑張れば気持ちを切り替えられる。でも、それは子どもにはできないこと。
成長には個人差があるのが普通。つらかったね、残念だったね、と共感しながら、自分の気持ちを落ち着かせて子供と向き合う。
子育て中のこのような時期は一瞬で過ぎ去る。子どもが「現実の厳しさ」を感じて泣き叫んでいるときは、愛情を注ぐチャンスだと思ってつらい場面を幸せな状況に切り替えよう。

・子育て本を読むべきか?
どう育てることが子供の幸せのために良いかを全般にわたって「科学的に」検討することは不可能。それよりも、どうやって子どもを笑わせようか、どうやって喜ばせようかとそれだけを考えてのんきに育児を楽しんでもいい。その方が、子どもは幸せになるし、親も育児の時間が楽しくなる。

1章まとめ
親として命にかかわるようなことはしっかりとしつつも、それ以外は子どもと一緒に楽しむことが大事だと言っている。私は、接し方で気を付けているのは、私は親で相手は子どもなのだけど、ひとりの人間として接するようにしている。だから共感して心に寄り添うようにしているし、相手の意見も尊重する。無邪気で無警戒な子どもに対して、真摯に向き合っていきたい。

 

■2章 3-5歳 「その子らしさ」が出てくる時期
・野菜を食べられないとき・・・
言いがちなことば:野菜も食べようね。健康にいいんだよ
信じることば   :ふーん、野菜が苦手なんだね
苦手な食べ物を子どもに食べさせるのは、メリットよりもデメリットの方が大きい。子どもが自分で食べてみようと思うまで、待った方がいい。食事は、栄養を取るだけでなく、家族や仲間と心触れ合う機会でもあり、そういうことも含めて生きていく力の源で人生においてとても重要な要素。
野菜嫌いのA君。ベロに3回しか触らないようにしてがんばった。デザートがパイナップルだったから。そんな姿を想像した父親は、A君を愛おしく感じた。デザートの前におかずを残さず食べないとダメ。そういうルールに向き合い、自分なりの覚悟や決意をもってその現実に立ち向かっていることを、とても頼もしく思った。そして、「学校で食べれるなら、家でもたべれるやろ」などと彼を追い込むようなことはするまいと父親は思ったそう。それは違う気がすると。そうではなくて、学校で頑張っているのだから家ではラクに食事をさせてあげたい。家での食事は、心の栄養を蓄える時間にしようと。
いやぁ。。。いい話だ。父親は、子どもに寄り添い、何が大切なのかよく考えていると思う。

・弟や妹ができてわがままが増えたとき・・・
言いがちなことば:赤ちゃん泣いているから、ちょっとまって
信じることば   :あなたが生まれてお母さんもお父さんもすごく幸せだった
赤ちゃん返りは子どもの健全なSOS。甘えは親に対する信頼や期待と同じ。自分はこの世で生きていっていいんだ、この世界は安全なところなんだという確信を得るための大切なプロセス。なんでも思い通りにしたい。そしてそれをお母さんがもたらしてくれるという感覚を確認している。赤ちゃん返りをした子どもは、赤ん坊のように大事にされたり思い通りにならずに泣き叫んだりかんしゃくを起こしても、見捨てられることがないことを体験することで、そのままのあなたでいいという確信を得ていく。

・こぼさずになんとか食べられたとき・・・
言いがちなことば:えらいね!
信じることば   :おいしかった?
褒めるとアドバイスは似ている。褒めるとは、評価すること。それはいいねという風に。それはいいねは、それじゃないのはよくないよというのとある意味同じ。問題点は、本当に自分がしたいことと、親に褒められるからすることが境目が曖昧になること。お約束もそう。お片付けするって約束したでしょ!これ、決めているのは親。お約束は命令。子どもはわざわざ褒められなくても、自分が達成したことに満足かどうかは、自分で味わっている。
三男の3歳ころのカレーの話。最後に皿の隅っこに小さくご飯が残っていた。そのままスプーンですくえば、確実に皿からこぼれるだろうという状況。「まぁ、こぼれるだろうな」と思いながら見ていたら、子どもはなんと犬みたいにガブリと口を近づけて食べて、こぼさなかったのです。それを見て上の兄が思わす「えらいな。こぼさないで食べたね!」と言ったのです。そしたら三男は「褒めなくていいの!」と怒って言い返した。きっと、三男は不本意だった。父や兄はこんな食べ方をしていないじゃないか、自分は仕方なくやったのだ、と。「上から目線になっていないか」を意識しておくことは大事。対等だからね。親に対して、「いい意味で」対等に話せれば仲間や先生にも話しやすい子になるでしょう。

・指しゃぶりしたり爪をかんだりしているとき・・・
言いがちなことば:もう小学生になるのだからやめなさい!
信じることば   :小学校、楽しいといいね
4月に小学校入学を控えたBくんがここ1か月ほど指しゃぶりをするようになった。注意するとかえってよくないと見守っていたが、なかなか治らない。手をつなぐとか工夫をしたりしていた。Bくんは、小学生になることへの不安を指をしゃぶるという方法で乗り切ろうとしているのだろうと考えた。親から注意されなくても、幼稚園の先生や友達の話から、Bくんは十分すぎるほど、新しい生活への覚悟を決めなければと感じている。その後、Bくんの「問題」は解決しました。Bくんが指しゃぶりをやめられたからではなく、両親がBくんを受け入れられるようになったことによるようだった。
駒米先生はいつも、「症状はその人にとって大切なものです。簡単にとってしまってよいはずがありません」と言っていた。目に見える「子どもの問題」を、すぐに取り去らないといけないやっかいなものと思わないこと。代わりに、この「問題」はこの子が一所懸命あみだした大切な対処法なのかもしれないと思って向き合うこと。「この行動は、この子にとって何か意味があるのかもしれない」といつも心のどこかで思っておいた方がいいと言いたい。それは、子どもの大切なSOSかもしれないから。

・小さなころから英語を学ばせるべきか?(コラム)
言語研究者は、反対していた。言語の基礎は根幹は日本語でも英語でも共通の部分が多いから。まずは母国語をしっかりと身に着けることで「言語の力」を育てる。それがあればその後にほかの言語でもしっかりと学んでいけるということを、脳の仕組みや認知心理学の知見から確信していたため。

2章まとめ
子どもと対等に接する。この世に生まれてきてよかったんだ、生きていていいんだと思えるように、真摯に向き合うこと。子どもは何からの形で表現をしている。それが爪を噛むことだったりする。そういうSOSなり、うれしさだったりの表現を、きちんと受け止めていきたい。「だっこ」って言われたら、え~っていうの、やめよう。一年後には言ってこないぞ。


■3章 6~8歳 学校生活が始まる時期
・好きな番組が始まる前からテレビの前で待っているとき・・・
言いがちなことば:テレビをそんなに真剣に見なくていいの!
信じることば   :たいした集中力だな!お茶、置いとくよ
集中力というのは、まず自分の興味があることや、好きなものに対して向き合うことで成長していくもの。まずは好きになり、他の事に気を取られず、だんだんと長い時間しっかり取り組めるようになっていく。粘り強さや集中力や自信などは流用されていく汎用性のあるもの。子どもが大好きになって、真剣にそれに向き合っている。そのときに、子どもは楽しむ力を育てている。自分を幸せにする力を育てている。何かを好きになる力が育っている。集中力や持久力が鍛えられている。

・もう学校には行かない!と言ったとき・・・
言いがちなことば:そんなことを言わないの!
信じることば   :それぐらい嫌だったんだね
学校に行き渋りののある小1の男の子。何とかなだめたりしかったりしながらなんとか登校させている状況だった。このとき、親子ともにいったん落ち着くことを提案する。指示や命令の言葉をできるだけ使わない。「もう無理に行かせようとしない」とハッキリと子どもに伝えることをすすめる。そうすると、その子は母親が起こさなくても起きてくるようになった。ただ、「学校にはいかなくていいんだよね?」とその子が何度も尋ねるので、そのたびに母親は「行かなくていいよ」と答えていた。そのうち、「先生に言っといて。僕は2年生になっても学校行かないって。もう一生学校に行かないって言っといて。僕は絶対に学校に行かないから、来るかどうかも聞かないでくださいって言っといて!」久しぶりに聞くような大きな声でしっかりと、そういったそう。大人の言う一生と子どもの言う一生は異なるが、「一生行きたくないくらい嫌な気持ちだったし、今もそんな気持ちだ」ということ。うじうじしているよりも、「学校なんか一生行くか!」といえる方が、元気は出てきている。元気になれば、どうしたらいいのかを考えて、自分から動き始める。
原因が何であれ、親にできることは家で安心して過ごさせること。正直な気持ちを親に話せることや、安心できる場所でリラックスして過ごすことで、子どもは元気を回復します。何とかして再登校させようとするのではなく、ただやさしく接する。子どもが動き始めるのを「楽しみに待つ」向き合い方もある。

・いっしょにスポーツをやろうと誘ってくれたとき・・・
言いがちなことば:やるからにはきちんとできるようになろう
信じることば   :これ、なかなかたのしいなぁ
子どもとキャッチボールをしたときに、悪い意味で「教育的」であろうとして失敗したケース。何よりもまずは、好きになること。そこに目標を置く。子どもがいま目の前の新しい体験にどう向き合っているか、どう感じているか。それを親も一緒に感じてみる。下手なままでいさせてあげるという選択肢がある。子どもが自分で試みて失敗し、そして自分で立ち直っていく体験を、奪わないようにする。自分で上手になっていくことの邪魔をしない。できることがだんだんと増えていく子を見守る体験を、親はしていくべき。子どもの持つ成長する力、自分でできるようになる力を見せてもらうことで、親もまた、子どもを信じる意味を学んでいくことになる。

・子どもに自信をつけさせたいとき・・・
言いがちなことば:そんなすごいことができて、すばらしい
信じることば   :いまのままで、すばらしい
子どもは、それぞれがしっかりと自信を持っている。そこに、大人から見て確かな根拠(証拠、事実)の有無は関係ない。根拠のある自信と根拠のない自信、明らかに根拠のない自信の方が強力。なんかうまくいく、という感覚。根拠のない楽観性は、子どもが大人になった時にうつや自殺からも守ってくれる、とても大切なこと。そのままの子どもを受け入れるというある意味で簡単だけど実は勇気と根気のいる向き合い方が決め手になると感じている。

・親から見て間違ったことを主張してきたとき・・・
言いがちなことば:いやそれは間違っている。理由は・・・
信じることば   :自分の意見を言えるのはいいことだ
言いたいことが言える子に共通する特徴は、親に向かってズケズケものをいうこと。(うちの子は私には言ってきている気がする・・・)。子どもが自分の思いを話したときに、まずは「話した」「意見が言えた」ということをしっかりと認めること。これは、子どもの言ったことをそのまま受け入れるとか賛同するのとは異なり、「関心を示す」ということ。思春期に親にとってとても役立つ心構えとなる。子どもだって親と同じように賢くなる。いろいろと子どもがムキになって言ってくることは、子どもにすれば幼いころから大いなる存在であった親に立ち向かうのはかなり悲壮な覚悟を伴うもの。だからこそ親は、主張の内容ではなく意見を表明した勇気を認めること。そうすることで、子どもには自己主張の力が育つ。大切なのは、正しいことを言う力ではなく、正しかろうと間違っていようと自分の思いを表明する力。親は格好の練習台。親としては、子どものためには負けるが勝ち。親への意見は勇敢さを喜ばしいこととして認めて歓迎すること。乏しい根拠などは関係がない。

・おもちゃを自分のやり方で遊ぼうとしているとき・・・
言いがちなことば:君がやったら壊しちゃうからね
信じることば   :壊れちゃったかぁ。残念だね
凧あげの話。同じ公園の子が、凧揚げを買ってもらったけど、結局やらせてもらえなかったという一連の話。凧上げは、凧を高く上げて遊ぶのが凧揚げではなく、スーパーで粘って買ってもらって、枕元に置いて明日をワクワクして待って、ビリビリ破って凧を出して、ひたすらに遊んでボロボロにする、こういった一連のすべてが「凧揚げ」ということ。そういう経験を奪ってしまうのは非常にもったいない。

3章まとめ
ちょうど下の子と同じくらいの年代。「子どもを信じる」。これに尽きる気がする。


■4章 9~12歳 思春期が始まる時期
・いつまでも宿題をやらないとき・・・
言いがちなことば:宿題終わったの?
信じることば   :いつ声を掛けたらいいのかなあ
小言を言わない接し方は子どもの自発性を育てる。夜21時になっても宿題を始めようとしない。小言を言ってしまったら、子どもが「いま、お風呂から上がってリラックスしてるときやんか。なんでこんなときに言うかなぁ!」 このようなやりとりは、それまでコミュニケーションがなかった親子の間に、コミュニケーションが生まれてきているということ。自分の言いたいことを言い返す練習ができている。母親が負の感情をできるかぎりこめないで、冷静に子どもに伝える努力をすると、いいことがある。それは、「交渉の場面でどうふるまうべきなのか」というモデルを見せられるということ。そういう親のふるまい方を知っていることで、子どもはクラスでのいじめから逃れられるかもしれない。算数ドリルを忘れた時に、「もっと早く気づけば仮に行く手配もできたのに」と思いつつも、口を出さずにいた。そしたら子どもは、自分で友達にTELして対応するなど、たくましい姿を見ることができた。こういう成長があるのがこの時期。(子供の成長に合わせて声がけのいる、いらない、があるのだと理解しました。)

・夜遅くまでテレビを見ているとき・・・
言いがちなことば:いつまでテレビ観てるの!
信じることば   :先に寝るよ、おやすみ!。
動作を指示したり確認したりする声掛けは「操作的な会話」、思いや考えを伝えあう声掛けは「交流的な会話」。子どもの問題が表面に現れる親には興津する特徴がある。それは、家庭でのコミュニケーションが操作的な会話がほとんどということ。交流的な会話を心がける(操作的な会話を控える)目的は、子どもが家でリラックスできるようにするため。大人と比べて子どもは、元気になる力、元に戻る力が強い。注意しないと決めてしまうと、親も楽。いままではどうやって注意しようか、いつ注意しようか、後何分、我慢しようかという感じで迷っていて、緊張していた。親は一切迷わなくていい。深夜0時までだろうが1時だろうがもういくらでもいいやと覚悟しているわけなので。子どもと過ごしている時間は本当に短い。それなのに、ずっと小言を言ってい過ごしているとしたらもったいないと思う。こどもに逆に注意してもらうという方法もある。面倒を見なければいけない、導かなければいけない「弱い存在」から「気の置けない頼もしい年下の仲間」へと、子どものイメージが変わっていく。このことは、信じる言葉をかけることでもたらされる、大切な果実のひとつだと感じている。

・よその子の手助けをしてお礼を言われなかったとき・・・
言いがちなことば:(この子の親、どんな教育をしてるんだろう・・・)
信じることば   :(困っている子を助けられるのは、幸せなことだ)
もやもやする気持ちがよくわかる。それは親との関係かもしれない。自分だったら子どもが世話になったらお礼をいうだろうに。そういうときは、親と子供をセットで見るのをやめてしまうこと。親のことは頭からのけてしまって、困っている子どもと自分との関係だと考える。その子と自分の二人の関係として、できる範囲でサポートしてあげたらいいのだと思う。あのとき、やさしくしてくれたなと思いだして、将来は自分の子ではない子に愛情を与えるかもしれない。

・とんでもないイタズラをしたとき・・・
言いがちなことば:「そんなことする子は、うちから出ていきなさい!」
信じることば   :「お前は私の宝物だ!」
「出ていけ」と言いわれたことは、本人も気が付かない心の底に残って子供を苦しめるかもしれない。たとえ、親の本意でないと子どもが理解していても。まず、腹が立ったら、「自分は子どものことが思い通りにならなくて腹を立てているのだ」と意識する。そして、君のことが大好きだ、君は宝物だ、ということを起こりながら言うのだ。生じた被害は、もう取り返しがつかない。であれば、その被害を少しでも取り返すためにも、自分を大事と思ってくれたというメッセージを子どもに伝えられたら家族全体の被害を少しでは取り戻せる可能性があるという意味でお得。  小言を言わないことは、目の前の子どもを受け入れる姿勢の表明でもある。会うと癒されるような人は、そのままの自分を受け入れてくれる相手。自分の親がそういう安心できる人であること、家庭が安心できる場所であることは、他のどんなことより子供を元気にすると思う。

・親が言わないと何もしないとき・・・
言いがちなことば:「どうして言われる前にできないの!」
信じることば   :「あなたがやる前に言っちゃって、ごめんね」
小言を言われないと全く何もしない小6男子。母親は、いろいろあったが1か月一切小言をいわないと決心したときに、力が抜けたというか、ぐっと表情が柔らかくなった。きっと、きちんとした親の役割を果たさないといけないとずっとがんばってきたのかなと感じた。それからは・・・「子どもが前より穏やかになった」「自分から宿題をやるようになったし、自分で起きてくるようにもなった。学校での出来事を話してくれるようにもなった。自分と同じで話が好きなんやなと気が付いた。いままでは自分が助けないんとできない子なんだと思って見ていたんです、私は息子のことをなんでも自分でできる子だと思うようになった。最初に来た時とはべつじんのような顔つきで、リラックスしていた。 親の気持ちが変わったこと、親の見ている世界が変わったことが一番大きな変化だ。また、子どもがしっかりとしていると認めるのは、母親のかかわりがいらなくなってきていることを認めてしまうことになる。それが寂しかったという想いもあるのでは。世話をできる時期なんて、振り返ればあっという間に過ぎ去りさる。「あなたといることは私の幸せだ」というメッセージを、「これでもか、これでもか」と伝え続けよう。幸せになるために、子どもにも親にも、それより大事なことなんてないと思う。

・遊園地などで大声ではしゃいでいるとき・・・
言いがちなことば:そんなに騒ぐなら二度と連れてこない!
信じることば   :今日は、いっさい小言は言わない!
遊園地に遊びに行った時の話。列に並んでいる子どもたちは、はしゃいだりして大変賑やか。これからの時間が待ち遠しくて、じっとしていられない。移動時間も待っている時間も、「遊園地に行く」という楽しみの一部なのだとよくわかる。こういう場面で必ず起こりまくっている親がいる。遊びに来ているから子どもははしゃぐ。はしゃぎに来ているわけだから。せっかく子どもを楽しませようときているのに、もったいない話。迷惑をかけたら早めに謝ってしまえばいい。いつもお出かけでイライラしていたら、小言を一切言わないと宣言する。騒ぐ子どもを叱らないといけないという強迫観念から解放されて新しい世界が開ける。もしかしたら問題は、騒ぐ子どもにあるのではなく、すぐにイライラしてしまう親の方にあるかもしれません。

・コラム 感謝を言葉にする3つのメリット
あまり一概に言えることはないが、一概に言えることがある。それは、「感謝の言葉をはっきりと伝えること」。メリットがいくつかある。
①言葉がけが上手になる。言葉のバリエーション、抑揚や間など。さらに重要なのは、それらの言葉を生み出すもとになる「自分の心の動きに敏感になること。相手がしてくれたことに気が付いた、そこで心が動く、その動きを逃さないで、深いところからぐっと水面まで引き上げて言葉にして出す。心の動きも、筋トレと同じようにトレーニングすると強くなる。
②見る目が鍛えられる。あらさがしの真逆の視点。相手が何かしてくれた時に限らず、何かいい変化があったときやときには本人が気が付いていないような行動の結果にもいいコメントをしてもらえるといわれた方はうれしい驚きを味わえる。
③そのようなコミュニケーションすべてを子どもにモデルとして示せる。子どもは親が見せてくれると学習をする。感謝の言葉を伝えるということのネイティブになる。

・学校の先生から電話がかかってきたとき・・・
言いがちなことば:もっとまじめにやりなさい!
信じることば   :先生、XXのこと大好きらしいよ
中学から、19時ころになると先生から電話がかかってくる。そういう場合、「うちの子のことで余計な手間を取らせてすみません」。と言い、伝えてくれたことに感謝する。電話のおしまいには必ず「手のかかる子ですが、先生のおかげで機嫌よく学校に通っております。いつも感謝していますと感謝の思いと伝えて、電話を切る。 ただ、このことは子どもには伝えない。それは、外の面倒を家庭に持ち込んで、子どもの、そして親の心の安らぎを破ることに、いいことは何もないから。基準もつくらない。悩むことになるので。こうすることで、家でくつろいでいる子どもや親を、無用のストレスから守ることができる。学校のことは学校で片付けてもらう。その代わり、家のことは家で片付けて外に持ち出さない。

・反抗的なことばかり言うとき・・・
言いがちなことば:それが親に向かって言う言葉か!
信じることば   :なかなか、言うじゃない
子どもからの挑発に対しての対話。やさしい安全な相手である親との子のような練習ができることは、この先の人生で、やさしくない相手と対決しなければならない場面で彼を支えることになるでしょう。そういう贈り物をするチャンス。怒鳴ったり暴力でいうことを聞かされると、子どもは今度はほかの人との関係でも暴言や暴力に屈するようになるかもしれない。もっと悪い場合は、相手、例えば結婚すればパートナーを子どもができれば子供を、暴力で抑え込もうとするかもしれない。また、助けを呼ぶことは恥ずかしいこととや卑怯なことではなく、正当で当然のことだと自然に思える子は、そうでない子よりも、危険な状況になりにくいと考えられます。子どもがSOSをしっかり出せるために、暴力的な交渉を拒絶できるようになるためにも、親として怒らずに対話することが大事。

・コラム なぜ起こるより叱る方がいいのか
怒るというのは、目の前の出来事を受け入れられない、現実を受け入れたくないという混乱。取り乱している状態。叱るは、良い意味で感情が入っていない。伝えたいことがしっかり伝わるほか、暴力を否定する姿勢を子どもに伝えることができるという点がある。 家庭の外での厳しい経験は乗り越えていかねばならないでしょうが、親まで一緒になって子供を傷つける必要はないはず。怯えて怒鳴って混乱する姿ではなく、冷静にかっこよく問題に向き合う姿を子どもに示すことができる。これは、とてもぜいたくな育児だと思っている。

4章まとめ
とにかく、愛する子どもを信じる。自分以上に信じる。尊敬する。親は鑑になる。


■5章 13歳以上 親子の別れが始まる時期   もうか。。。
親から離れたいけど、親を頼りにしている。心の拠り所でありたい。この時期に、親はどんな時も自分のことを思ってくれているという確信が欲しい。だからこそ、「あなたは私の大事な子どもだ」と愛情を伝えることができれば、心の中にずっと残って生涯、子どもを支え続けることになる。

・元気づけようと思って・・・
言いがちなことば:型にはまらず、自由に自分らしく生きてほしい
信じることば   :そのままがいい。そのままで大好きだ
良かれと思ってかけてしまっている言葉が、知らず知らずに子供に色々なことを要求してしまっているかもしれないことを、親は意識しておくことが大切。 精一杯とか、どこまでやれば精一杯なのかわからない。「お母さんのお願い事はなーに?」「あなたにこうなってほしい」というのはある意味では指示や要求ともとれるような形になっていることが少し気になる。本当に好きにするのを認めるのなら、何も言わなければいい。型にはまらず、自分に合った生き方をすることや、楽しく自分らしく自由に生きること。どれひとつとっても、決して簡単なことではない。

・服を脱ぎっぱなしにしているとき・・・
言いがちなことば:脱いだ服は洗濯機に入れてって言ってるでしょ
信じることば   :(片付けはいい運動になるなぁ!)
脱ぎ散らかし、置き散らかしをしていたら、どうするか。著者は、小言を言う方も言われる方もしんどかろうということで、この点に関s亭はあきらめて著者が片付けるようにした。片付けができる子になることよりも、とにかく家ではリラックスできることを育児の目標にしていたので苦にならなかった。著者はいつかできるようになるだろうと思って片付けていたのではない。もし、いつかできるようになるだろうと信じてやっていたら、片付けながらいつになったらできるようになるのやらと不満に思っていたことだろう。そうではなくて、たとえこの先ずっと脱ぎ散らかしていたっていくらでも片付けてやるぜという明るい楽しい気分で片付けていた。家でゆっくりリラックスして、エネルギーを蓄えて、外の厳しい社会で生き延びてもらいたい。これが著者の育児の最重要な目標。生きることを好きになる。自分を大事にできる子になる。そういう可能性だって家でのんびりできれば高くなる。片付けはできないよりできた方がいい。ただ、優先度をリラックスできるようにするということが高く設定しているということ。

・失敗してしまったとき・・・
言いがちなことば:だから言ったでしょ。言う通りにしないからだよ
信じることば   :たいへんだったね
模擬試験の会場と地図と道順の説明をしたり、アメリカへの旅行計画だったり。子どもが自分で選んで自分で楽しんだり苦労したりして、親以外の人や出来事から学んでいくことの大切さ、そのような子どもの経験へのリスペクトをしっかり持ちましょう。親からの助言は、ありがたかったですか?うっとうしかったですか?子どもが親から見れば正しくない、未熟な選択をするのを、勇気をもって見守る。親は、自分の正しさに注意が必要。正しさを押し付けることがいつも子どものためになるわけではないということに。「母親は、子どもに去られるためにそこにいなければならない」。親が手を廻したり導いたりしなくても、いやそうしない方が子どもはしっかりと自立していく。子どもはいつまでも親に頼りたいと思ってはいない。彼らなりのタイミングで、彼らなりのスタイルで、親から独立していく。だからこそ親がすべきことは、「去られるためにそこにいること」だということ。「そこにいる」というのは、子どもの選択を見守り、必要な時はいつでも安全な場所に戻れることを保障する態度。「そこにいる」ということは「何かをする」ことよりもずっと難しい。

・コラム 自傷行為を親はどう、受け止めるか。
助けてと言えない場合、子どもは別の形でSOSをだす。忘れ物をする、友達に意地悪をする、宿題をしない、朝起きない、爪噛み、チック、登校を渋る・・・そういうことを子どもは「わざと」やっているわけではない。ストレートにいまとてもつらい、苦しいということができない。それで親に時には先生や周囲の信頼できる大人に伝わるような行動が「選ばれて」発信されているのだと思っている。いわゆる自傷行為も辛抱強いこどもがなかなか出せないSOSを必死で発しているという要素があるだろう。例えば自分で髪を抜く抜毛症はよく受ける相談で、親にはショック。でもそのような子の多くは辛抱強い子であり、親に迷惑や心配をかけまいと自分でなんとかしようと頑張る子。学校で仲間外れやいじめにあっても登校を続けているケースがほとんどだった。髪を抜くという行為は、やめさせなければならない困った行動ではない。子どもが自分を守るために必死で生み出した行為であって、子どもにとって大切な行動。そこを親が理解すること、受け入れることが大切な第一歩になると考えている。もしもSOSが家出、援助交際リストカット、過剰薬物接摂取、拒食症などの形で出されたとしたら、子どもの人生や身体へのダメージも親のストレスもずっと大きくなる。抜毛を「選んでくれた」子どものやさしさ、賢さ、強さを親が受け止めるのは大事なこと。その意味では、子どもも親を信じている。自分の親ならこのメッセージを受け止めてくれるはずだ、と。

・進路に悩んで立ち止まりそうなとき・・・
言いがちなことば:あの高校に入れさえすれば・・・
信じることば   :おつかれさま。悩んでいるみたいだね
高校にさえ入れたら。留年さえしなければ。大学にさえ合格出来たら。医師にさえなれたら。とにかく今の目の前の壁を乗り越えたら、なんとかなるからと、先に進めようとする。そう思い込んでいる、いや、思い込もうとしている。自分がしたいことであればしんどくてもがんばれる。しかし、自分が何をしたいのかよくわからない状態のままではいわゆる「修羅場」と言えるような試練に出合った時、乗り越えられない可能性が高い。そのような場合には、一旦立ち止まって、自分の気持ちやその先の人生についてじっくり考えてみるという姿勢は、むしろ正しい対処法だといえるのではないか。子どもが自分から動き始めるのを待つこと、またたとえ親から見たらつまらないことであっても、そして子供もすぐに興味をなくしてしまうとしても、子ども自身の興味があることややりたいことを大切にすること。そのような接し方が、親には求められる。結局、そのような接し方によってこそ、子どもがじぶんは何をやりたいのかに気が付く可能性が高まる。そして、立ち止まったり、やり直ししたりするのに遅すぎることはないと思う。そのような多くの例は、周りにもたくさんあるはず。

・コラム 私の子育てを支えてくれた言葉
タクシー運転手のEさん。証券会社に勤めていたけど、自由が欲しくてやめた。犬を飼っていたけど、それよりも比較にならないほどかわいいと。赤ちゃんと犬を比べるのは不謹慎かもしれません。でも、そういう考えで楽しんで大事に子育てをしていたEさんの言葉は、その後自分が父親になって育児をしだしたときいろいろな場面でよみがえってきた。こうしなければ、こう育てなければ、などと不安になるたび、「田中君、何険しい顔をしてるんや。しゃべる犬やぞ。楽しまな!」というEさんの声が聞こえてきてラクになれた。Eさんのメッセージの本質は、子供と暮らすのは楽しいということ。やらなきゃいけない仕事ではなくて、それ自体が最高の体験であり、贅沢なんだ、ということを忘れたらあかんよという本質。

・ずっとスマホをみているとき・・・
言いがちなことば:スマホはしばらく没収!
信じることば   :大事なことだから、意見を聞かせてほしい
夜遅くまでスマホを触っている末っ子。学校から帰ってきてずっとスマホをのぞき込んでいる姿にイライラしていた。21時になってもスマホを触っていたらスマホを没収すると言った翌日、22時過ぎに宿題を始めた末っ子。起こってスマホを取り上げた。妻に起こって取り上げるのはよくないよと言われ、これって面接に来る親に私が指摘するのと同じ、良くない接し方だと気づいた。現実の問題に出会って失敗したり、立ち直ったりするのが人間なんだと奮い立たせて翌日、末っ子に謝った。「昨日はごめんな。『22時になってもスマホを触っていたら没収』と言ったのに、『22時を過ぎて宿題をしてたから』って没収したのは間違いだったと思う。」 妻が、「これは大事なことだから、キミの意見がききたいのよ」というと顔を上げたものの、言葉は出てこなかった。なので家事を始めてしばらくすると、近づいてきてしっかりと言った。「あのさ、没収はあかんと思う。いきなり没収するんじゃなくて口で言ってよ」なかなか堂々としていて、我が子ながらかっこよく見えた。「キミの言葉がききたかったんや、ありがとう。没収は間違えてた。ごめんな。これからは口で言うよ」というと子どもはうなずき、食卓へ戻っていった。目には涙が浮かんでいて、彼も勇気をもって話してくれたのだとわかった。自分の子どもはもう、そういう年じゃないんだということに、親はなかなか気づけない。成長という機会ということで考えても、無理に取り上げて言うことを聞かせるのではなく、次は交渉の能力を育てていく段階にきているのだと気づいた。

・サンタさんからのプレゼントをたのしみにしているとき・・・
言いがちなことば:プレゼントをあげているのはお母さんだよ
信じることば   :サンタはいる。大人になったらわかる
サンタさんの正体を「親だ」とばらしてしまうおばあちゃん。大げんかをした。言い分は、中学生にもなってまだ信じているのがおかしいんだから。私は認識を正しただけだ。ということ。フィンランド公認のサンタだけでも何十人といるのにそういうニュースについては、おばあちゃんはどう思っているのでしょうかね?という話をした。著者であれば、「サンタを信じられなくなっている不幸なおばあちゃんをどうやって救うか、子どもと計画を練るだそう。プレゼントを渡している人間そのものがサンタだというのなら、サンタは親だということになるでしょう。しかし、それだと大阪城を立てたのは豊臣秀吉ではなく大工さんだ、と言っているのと同じことだと思う。子どもを起こさないように必死であの手この手でプレゼントを置く苦労、品薄なプレゼントを涙が出るような努力で準備する苦労など、不合理な行動を世の多くの親に取らせているサンタの存在を否定することは著者にはできない。神様や政令など、見たり触れたりできない大いなる存在を感じ取ることは、子どもが生きていくうえでこのよはいいところだ、とか生きていくのは素晴らしいことだと根拠はないけど確信できるための力になるでしょう。


・コラム 深刻な相談と無責任なアドバイス
いい話だった。

5章まとめ
とにかくそのままで。そのままのキミが大事で大切であることを伝えていくことだ。子どもの方から大好きと伝えてくれるのだ。対等ならば親からだって伝える。そもそも大切なのだから、言葉にして、態度にして伝えていく。親離れの時期は子離れの時期でもあるのかな。嬉しいし悲しい。こういう感情になるんだ。初めて知った。

 

【この本を読んだ感想やまとめ】
・読み終えた時に、パラダイムシフトが起きた感覚があり、いままで子どもの行動にイライラしていたことが、全然イライラしなくなった。不思議。心構えで人間は大きく変わり、これから子どもと贅沢な時間を過ごしていけそうになった。
・今の良くない状況をどうやって目標の状態に変えていけばいいのかとか、子育てを成功させなければならないというような姿勢で子どもに向き合うのはしんどいし楽しくないと思う。育児がずっと辛抱の時間や課題をこなすような時間になってしまいかねない。それに対し、この子の今の状態が次の段階に成長するのはいつかなと、楽しみを待つような向き合い方はラク。親がイライラしているのは、子どもにはつらいこと。逆に親がいつも楽しそうにしていることは子供を安心させる。子どもをどれだけ安心させられたか。いかに楽しい気分で子どもとの時間を過ごせたか。「そのままの自分を、親は大切に思ってくれているんだ」「親は自分が生きているだけで幸せだと思ってくれているんだ」このような感覚を持てることは、子どもがこの先の幸せな人生に向けて貯金するようなもの。その貯金は「しんどいことがあっても、まあなんとかなるよな」という根拠のない楽観性となって、何度となく訪れる人生のピンチで子どもを支える宝物になる。それは、成績や学歴よりもずっと強い力。

【今後活かせること、具体的なアクション】
・成長という機会ということで考えても、無理に取り上げて言うことを聞かせるのではなく、次は交渉の能力を育てていく段階にきているのだと気づくこと。
・「いまの」「ありのままの」子どもを愛すること。こういうことがつらいことも乗り越えていける土台となる。


【気に入った文章・言葉を3つ】
・今の良くない状況をどうやって目標の状態に変えていけばいいのかとか、子育てを成功させなければならないというような姿勢で子どもに向き合うのはしんどいし楽しくないと思う。育児がずっと辛抱の時間や課題をこなすような時間になってしまいかねない。それに対し、この子の今の状態が次の段階に成長するのはいつかなと、楽しみを待つような向き合い方はラク。親がイライラしているのは、子どもにはつらいこと。逆に親がいつも楽しそうにしていることは子供を安心させる。子どもをどれだけ安心させられたか。いかに楽しい気分で子どもとの時間を過ごせたか。「そのままの自分を、親は大切に思ってくれているんだ」「親は自分が生きているだけで幸せだと思ってくれているんだ」このような感覚を持てることは、子どもがこの先の幸せな人生に向けて貯金するようなもの。その貯金は「しんどいことがあっても、まあなんとかなるよな」という根拠のない楽観性となって、何度となく訪れる人生のピンチで子どもを支える宝物になる。それは、成績や学歴よりもずっと強い力。
・表現の仕方も無邪気で、無警戒。


【こんな人に読んでほしい】
・育児は大変って思っている人
・子どもについ怒ってしまい後悔することがある人

 

 

読書備忘録#13_仕事と勉強を両立させる時間術

読書備忘録#13_仕事と勉強を両立させる時間術
佐藤孝幸さん

【読もうと思った動機】
働きながら弁護士、米国公認会計士資格を一発合格したという著者。本の要約を見た時に、時間に対する考え方が私とは異なったので、有益になるものがあると考え購入した。


【概要】
帯にもあるが、ノート術とか整理術とか。そういうのは全部時間の無駄で、本当に頭がいい人だけが知っている時間の使い方という内容でかかれている。
徹底的に効率を上げるための最大のポイントは、「身の回りの無駄をできる限り減らし、シンプルにしていく」というもの。
重要なのは、自ら考え判断し、どう結果に結びつけるかだと考えている。
費やした時間、労力、お金、それらすべてを結果につなげよう。


■1章 やる気と集中力を高める時間の捉え方
外資系の銀行に勤めていた時。バブルがはじけて、レイオフが始まった。そんな中でも上司は通常運転。専門分野があったから。
キーワードは、「欲」と「危機感」。
結果を出すには効率が必要で、その効率はやる気と集中力から成る。そのやる気と集中力は、「欲」と「危機感」からなる。
世界に時間で計れないものはない。時間はお金以上に価値のあるもの。時間の使い方が分からないと、自己投資で結果を出すことはできない。
短期目標、長くて2年と考える。人間のやる気はそんなに続かない。だからこそ、時間を効率的に使おう、という考え方になる。目標は、X年間、Xか月、X週間で決める。本業も勉強を手を抜かない。どこかで手を抜くよりも、どちらも全力でやる方がかえって効率が良くなり、いい循環が生まれる。
時間がなくてもできることはできる。究極的には、仕事をしながらでも合格する人はするし、合格できない人はできない。
何のためにしているのか?明確にする。同時に、いつまでに、という期限を設ける。そうでないと、引っ込みがつかなくなる。やるだけやった、というレベルまでたどり着けるようにしておく。

1章まとめ
欲と危機感(不安感ともいえるな?)。
時間はお金よりも価値のあるもの。
本業、勉強のどこかで手を抜くと結果的に効率が落ちる。やるならどちらも全力で。
時間があればできるなんて思うな。時間の使い方を根本的に見直す。
何のために?いつまでに?これが土台となる問いのような気がする。問いではなく、コンパスだ。コンパスなくして、遠いゴールにはたどり着けない。


■2章 残業が減り、定時に帰る仕事のやり方
決断にするには、優先順位が定まっていないとできない。優先事項を決めておけば、悩むことがなくなる。悩むこと自体が時間のムダ。
どうせやらなければいけないことは、さっさとやってしまうに越したことはない。割り切ってしまった方が何倍も楽に、そして早く終わる。たしかに!面倒をため込むと、精神的にも肉体的にもムダなパワーを使うことになる。
著者は、しばらくやってみてもいまいち頭に入ってこない参考書は二度と読まないそう。より効率よく勉強するために、新たな数千円の参考書に投資するとのこと。続けているうちにもしかしたら・・なんていう発想はすぐに捨ててしまおう(これは、株の損切りにも同じことが言える)。損をしたくないなら。着実な利をコツコツ取っていく。
何事も自分の頭で考え、調べ物をするときにも問題意識を持ってからにする(これは、仮説検証と同じ考え方だ!)。
自分のルールを作ること。「これは絶対にする」「これは絶対にしない」という自分の軸のこと。著者は、「欲張りな人、著者を信頼しない人とは仕事をしない」。変なことに頭を突っ込んで、費用を回収しようとしたりすると、損が余計に大きくなってしまう(損切りの考え方)。行動の指針を決めておけば、物事に迷ったり余計なことに時間をかけたりということがなくなる。

2章まとめ
個人的には、早く仕事を片付けても定時よりも早く帰れるわけではないし、たらたらやって残業した方がお金を稼げるというスキームになっているから、なんかやる気でないんだよな。構造自体が破綻していると、こういう話をきくといつも思う。
優先順位のつけ方、効率、決断力は三位一体。
悩むことがムダ→悩むことをやめて、考えるということ。安宅さん。
損切りをして、新たな投資をする、という考え方にシフトさせる。
行動の指針を決めておけば、物事に迷ったり余計なことに時間をかけたりということがなくなる。ただし、こだわりすぎることなく柔軟性を持つ。ルールは完璧でないので、都度。精度の高いものに作り変える。


■3章 時間をムダにしない勉強の始め方
やる気や集中力はおまじないで高めることはできない。自分自身でコントロールしなければならないもの。楽して結果を出そうなんて言う考えは捨てなければならない。自分に合ったやり方というのはいくらでもあるが、努力をしないで結果を出す方法などない。結果を出している人で、努力を怠っている人、ずるをしている人などいない。
ためらっている時間も惜しい。興味を持ったことをどんどん勉強していけばいい。ひとつ、得意分野を自分の中に身に着けると、とは数珠つながりに得意分野が広がる。
初めて勉強をするときは、簡単な入門書を3冊程度読むこと(わわわの人も言ってたな・・・)。共通していること、異なっていることが見えてくる。多角的に読むことが可能。
細かいスケジュールは立てないこと。勉強で効率を上げるには、自分でコントロール可能な範囲で完璧にこなすこと。
やるべきこと、やり方を絞ること。「過去問に始まり、過去問に終わる」。何のための過去問?問題のパターンになれること。試験に合格するというのは、その道への入門を認められたという程度のもの。勉強は最初の段階である程度やるべきことを洗い出し、早い段階で自分に適したやり方を見つける、そして一度決めたらこれを徹底する。大切なのはこの流れ。
嫌なことほど習慣化する。最終的には必要なことでどうせやるなら、ね。3週間程度続けてみて、ダメならやめればいい。
環境のせいにしない。時間のせいにしないことと同じで、勉強ができない、結果が出ないことを環境のせいにするのもナンセンス。決して環境のせいにせず、どこでも集中できるくらいの執着を持つ。
隙間時間も勉強できる。

3章まとめ
どう努力すれば結果が出るかを常に考えているか。(どうすれば効率がよくなるか、などフェーズに合った適切な問いができているか)
やるべきこと、やり方を絞ること。「過去問に始まり、過去問に終わる」。何のための過去問?問題のパターンになれること。勉強で大事なのは、「やるべきこと」と「やり方」の設定。
決して環境のせいにせず、どこでも集中できるくらいの執着を持つ。


■4章 「流行り」や「常識」を疑え
基本的なこととして、学習するときは次の順で時間がかかる。書く、音読、黙読。
情報中毒になるくらいなら、情報を遮断する。自分に必要なことは自分で判断する。
どんなことにも理屈や道理がある。常にそれらを考える様にすれば、ある種のパターンが見えてくる。このパターンをいかにしてつかみ解答に当てはめていくかが大切。

4章まとめ
音読かぁ。問題分音読するとか、分からないところは音読するとか、メリハリつけてみてもいいかな。
がむしゃらな暗記より、論理性や背景、パターンをつかもう。


■5章 伸び悩みを解消する時間の使い方
役割と位置づけ、現認と結果を考える。単語や用語の理解は不可欠で、その役割や位置づけを考えること。例えば、GDPは日本が商売で儲けたお金を全部足した数値で、これを算出すると日本経済の規模や同行が把握できる、など。
本質を見抜くこと。過去問を最初に見るのは、テストのレベルを読み解くため。どういう聞かれ方をするのか、どういった答え方が求められるのか、傾向を知ること。それでようやく、まったく出口の見えない状況から目標がぼんやりとでも認識できる状態になり、何をしていくべきか「やり方」と「やること」をしぼることができる。これが必要不可欠なベースとなる。これが物事の本質である。言い換えれば、ゴールとそのための手段を考えるということ。
一喜一憂するな。よいときもわるいときも、たまたまだったかもしれない。
目標達成したいのなら、割り切る。これまで結果を出せていない人が意識や習慣も変えずに結果を出そうというのは無理。
これでだめなら仕方ない、というレベルまで準備する。
失敗帳を作る。犯したミスを繰り返さないために。一喜一憂にもつながる話。失敗をなくすというのは、それほど真剣に自分の失敗と向き合う必要があるということ。
孔子「過ちて改めざる是を過ちと言う」。
無知になれ、センスがないと思いこめ。自分はこのままではいけないな、という気持ちを刺激してくれる。

5章まとめ
本質とはゴールとそれを達成するための手段を考えるということ。
失敗をなくすというのは、それほど真剣に自分の失敗と向き合う必要があるということ。
無知だ、という思い込みが努力を促す。無知の知のサイクルで勉強を楽しむ。


【この本を読んだ感想やまとめ、受け取った著者のメッセージ】
本当にいま取ろうとしている資格が欲しいのか、改めて考えるきっかけになった。なぜならば、勉強がはかどらないから。仕事が忙しい、家事が忙しいことを言い訳にしている。
表現は違うが、仮説検証はここでも出てきたのでやっぱりみんな大事と考えているんだな。勇気が出てきた。
みんな、やりたくないことや面倒事はあるんだな。どうせやるなら割り切ってさっさとやって効率よく仕事を片付ける。
本質とはゴールとそれを達成するための手段を考えるということか。勉強は、なんのために、いつまでにのコンパスをきっちり決めることかな。
費やした時間、労力、お金、それらすべてを結果につなげたいよね?それには、自ら考え判断し、どう結果に結びつけるか。そして著者としては、徹底的に効率を上げるための最大のポイントは、「身の回りの無駄をできる限り減らし、シンプルにしていく」というものということ。これが概要にしてメッセージと思う。

【今後活かせること、具体的なアクション】
・コンパス(何のために、いつまでに)を作る。♪動かないコンパス、片手に乗せて、かすんだ目こらしてる
・自分のルール(絶対する、絶対しない)を決める。
・「身の回りの無駄をできる限り減らし、シンプルにしていく」
損切りをして、新たな投資をする、という考え方にシフト
・どこでも集中できるような執着を持つ

【気に入った文章・言葉】
・優先順位のつけ方、効率、決断力は三位一体。
・時間はお金よりも価値のあるもの。
・「欲」と「危機感」→「やる気」「集中力」→高効率→結果
・「身の回りの無駄をできる限り減らし、シンプルにしていく」
・やる気は自分自身でコントロールするもの。おまじないなどはない。
・やるべきこと、やり方を絞ること。「過去問に始まり、過去問に終わる」。何のための過去問?問題のパターンになれること。勉強で大事なのは、「やるべきこと」と「やり方」の設定。
・本質とはゴールとそれを達成するための手段を考えるということ。

【こんな人に読んでほしい】
・資格勉強を頑張っている人

 

 

読書備忘録#12_世界のエリートはなぜこの基本を大事にするのか

読書備忘録#12_世界のエリートはなぜこの基本を大事にするのか
戸塚隆将さん

【読もうと思った動機】
2013年発行の本。その辺にいる一般人の私でも、エリートと呼ばれる人のなにかを学べればいいなと思い、購入した記憶があります。当時、割と売れていた本だったような。


【概要】
著者がこの本を書こうと思ったのは、トップグローバルファームの社員や世界で活躍するトップビジネススクールの卒業生には何らかの「常識」「価値観」「ルール」のようなものがあるのだろうかと疑問に思ったから。共通項があるか、ということだと思う。整理しそのエッセンスを一言でいえば「基本に徹する」ということ。次の4つ。
①人とのつながりを大切にする
②自分磨きを一生継続する
③日々の成果出しに強くこだわる
④世界的な視野を常に意識する
本書は、この4つのポイントを具体的に6章48項の基本として紹介している。


■1章 人とのつながりに投資する
利害関係を超えたつながりを信じること。それは直感、運命、人生、カルマ、なんであれ。先を見越して点をつなぐことはできない。振り返ってみて初めて点をつなぐことができる。
だから将来何らかの形で点がつながると信じること。
HBSの学生は、毎日の自習10時間+授業という中でもほかの学生との交流に時間を使う。なぜならば、人との時間に投資することを重要視しているから。
利害を超えて多くの時間を共有してきたから、学生時代の友人とは親しくなるし距離が近いと感じる。効果があるのは、できるだけ前回と異なる環境下で時間を共有すること。
相手に興味を持つ。where are you from?
先輩や上司を慕うことでFBがもらえる。それは飲み会の場とか会社以外の場所が多いらしい。
週1回、仕事と関係のない人に会う。

1章まとめ
人と会うのが面倒な私には難しいことが多かったように思える。週1回仕事と関係の名人に会うのはまず無理だ。なんらかのコミュニティに参加すべきか。
先を見越して点をつなぐことはできないには共感。未来へのプレゼント、だよな、すべての経験が。
人脈がビジネスや信用を広げていく、ということだと思う。


■2章 自分の内面と外見を磨く
心に余裕があると行動にも余裕が生まれる。行動に余裕があれば心にも余裕が生み出される。日頃からアフターユーを大事にしている。
すみません、ありがとうの件。ありがとうか、申し訳ありませんのどちらか。
正解のない問題を考えるクセをつける。自ら課題を設定し、論理的に考え、結論を導き出す姿勢が大事。
インプットそのものでは差をつけにくく、そのインプットからいかに自分なりの意見を持ちさらには意味合いを導き出せるかこそ、価値の源泉になりつつある。読んだ時間の3倍考えなさい、と大前さんは言っている。章ごとに手を止めて、要旨を書き出すこと。用紙を部類分けして、論理構成を整理してみること。などが挙げられる。
新聞などは、読んだらその情報に人々がどう反応するか考える。例えば、iPhoneの発売日が延期というニュースがあったら、競合他社はどうするか、部品供給メーカーの影響はどうなるか、景気はどのような影響を受けるか、など。あとは紙でみるとか、2紙+英字+海外サイトとか。新聞によって優先度(1面とか2面とか)は異なるので、その差異を考えることで自分の考えがよりユニークで骨太になっていく。
結論を述べて、理由を3つ述べた時に、自分の結論が弱いな、と感じたことはありませんか?それは、論理力とコンテンツ力(結論メッセージ)は比例関係にあるから。マッキンゼーでは、ロジックが通ったチャートと呼ばれるものを通して、ロジックを整理し骨太の結論やメッセージを導き出すプロセスを徹底している。世の中にありふれた意見であっても、その結論をバックアップする根拠がしっかりしているものであれば、貴重な意見になる。逆に斬新な意見であっても根拠が弱ければ、ただの思い付きやでたらめと捉えられる。
「空→雨→傘」 So what? Why so? だから何?それはなぜ?脳に汗をかく。考えるプロセスは、頭の回転が速い人であっても調べるよりもずっと多くの時間と労力がかかることもある。
論理的に考えをまとめ、意見を言う際に頭の中だけで完結できる人は多くない。紙に書き出すことにより結果的に物事が整理でき、生産性も高まる。落書きをするイメージ、書き出して整理、何度も書き直して図や表などを書いて整理していく。クリティカルシンキングの本でもあったなたしか。
ポイントは3つあります。その利点を3つにまとめると次の内容。
①論点を分解またはまとめる→論理力 表象的な課題を分解し、本質的な課題に掘り下げる効果がる。分解することでより具体的な課題解決につながる。
②優先度をつける→時間管理力 注力すべき課題や論点を絞り込むことで限られた時間を有効に活用することができる。優先度の高いポイントを絞り込む。
③説得力を増す→コミュニケーション力 根拠や理由は少なすぎても多すぎても効果は半減する。
健康管理は大事。健全なる精神は健全なる身体に宿る。身体を動かそう。コツは無理をしないことかな。その日の体調や気分に合わせて軽く汗を流す程度。
服装は個性よりも清潔感。ゴールドマンやマッキンゼーの人たちは制服か、というくらい没個性。

2章まとめ
・正解のない問題を考えるクセをつける。自ら課題を設定し、論理的に考え、結論を導き出す姿勢が大事。
・「空→雨→傘」 So what? Why so? だから何?それはなぜ?脳に汗をかく。考えるプロセスは、頭の回転が速い人であっても調べるよりもずっと多くの時間と労力がかかることもある。何度も書き直して整理する。
・健全なる精神は健全なる身体に宿る。


■3章 時間に支配されずに働く
目の前の忙しさにかまけ、ついつい5分の遅刻を仕方ないと思ってしまうこと。陥りやすい錯覚だ。自分を客観視し、自己規律を保つこと。
HBS卒業生で活躍しているそうそうたる講師陣が口をそろえて語ることは、ワークライフバランスの大事さ。
朝一にメールチェックなどの作業的な仕事に取り組まず、最も頭のさえている時間帯は行き詰まった作業の打開策を見出すことや新しいアイデアを考える時間に使う。
忙しく尊敬できる先輩は、翌朝出社時から全力で仕事に取り掛かれるように、TODOを書き上げ、優先順位付けをしてから帰宅していた。
どんなに願っても、週末が永遠に続くことはない。オフからオンへ切り替えをするために、いくつかポイントがある。
①週末楽しかったことを振り返る。 XXXをまたしたいね、とか、料理がおいしかったね、とかその程度でいい。コレ、結構いいかも。
②1週間、月曜日の1日のtodoリストを確認する。
③いつもより15分目覚ましを早くセットする。 というより、日曜日早く寝ましょう、ということだ。
仕事が廻らなくなった時の優先順。書き出してみるとそれだけで整理される。限られた時間の中でどう優先度をつけていくか、そして生産性が下がらないように冷静にひとつひとつ対処していくこと。

3章まとめ
どんなに忙しくても時間を守ること。
ワークライフバランスを大事にする。たかが仕事との割り切り。
朝の重要な時間を作業的な仕事に使わない。
仕事が廻らなくなったら紙などに書き出して優先度と所要時間を勘案して手当てをする。


■4章 決定的なコミュニケーションで成果を出す
ノートの取り方。常にノートを手の届くところに置いておくこと。会議や打ち合わせは、とにかくメモを取りながらのぞむこと。
仕事を頼まれたら、その場で完成イメージを共有すること。そのために、5W1Hが有効。
イメージを共有することで、指示を出す側の上司も十分にイメージしていないかもしれないアウトプットを意識してもらえる利点がある。
そして、引き受けた仕事は5分間限定で「すぐ」やる。段取りができる。アポイント調整が必要かもしれないし、発注処理が必要かもしれない。さらに、直後であれば簡単な質問してもおかしくない。
上司へのホウレンソウは先手必勝。基本は上司に聞かれる前にすること。ホウレンソウは仮説思考型で。XXと考えていますがよろしいでしょうか?結論の導き方に対して信頼してくれるようになる。
仕事をうけたら7割でいいので翌朝報告を目指す。

4章まとめ
このコミュニケーションはとても重要だと感じた。どれも当たり前にわかることだけど、実践している人はごく少数。
事前の段取り、仮説思考、タイムリーなホウレンソウ。仕事ができるってこういうことなのかしらん?


■5章 利益を生む資料と会議で貢献する
作った資料は自分の商品だと心得る。今後はこのようなマインドを強く持たないといけないな。。
プレゼン資料は、まずは手書きで。この方が結果的に良いものができあがり、時間も短縮できる。たしかにその実感がある。考えるプロセスに集中できる、つくり直しが早い、メッセージとチャートの本質にフォーカスできる。
マッキンノートがあるくらい。
attention to detailが不足している資料を見ると、中身ではなく作成者の詰めの甘さと仕事の不十分さが伝わる。
統一感に注力する。中身をレビューせずに、細部の誤りチェックに集中する。
会議では発言の義務が課されていると考えるべき。会議の準備をしっかりすることが重要で、自分なりの結論と根拠を用意しておく。仮説思考。
プロジェクトルームで先輩のノートを見た時、図表をかきながらメモをすらすらとっていた。議論の本質を捉え、論理的に整理しながら視覚的にメモをしていた。
会議をまとめるために必要なスキルは3つに集約される。①自分の意見を押し付けずに聞き手に回る ②意見を引き出す適切な質問を投げかける ③意見の本質を捉え視覚的にまとめ上げる

5章まとめ
結局、プレゼン資料等は何のために作るのかの問いかけに尽きるような気がする。社内資料であればそこまで気を使わない方が効率的だが、対役員やほかの会社であれば注意する必要がある。
今後は、ノートをまとめるときに視覚的にまとめることを意識しよう。本質をとらえていることになる。
外国人と議論をする場合。戦略的に役取りをする。議論が白熱すればするほど、前提条件があいまいになり、前提条件の共有が不足しがち。議論を大局的に俯瞰し、それぞれの発言内容の前提条件、因果関係を大まかに捉えていけばよい。


■6章 世界に打って出るキャリアを高める
世界中の世論は英語で論じられた主張が形成する。日本語でいくら声高に意見を発しても誰も聞いてはくれない。英語は、論理コミュニケーション力。英語上達には3つのコツがある。①目標を明確にする。TOEIC900がわかりやすい。②短時間で成果を上げる。ビジネス英語の使い手としてのビジネスパーソン像を中長期の目標とし、短期的にはTOEIC。毎日必ず英語に接し、一気に短期成果を上げる。③英語の構造を意識して基礎から学ぶ。
リーダーシップとは役職ではなく実際の指導力と統率力のこと。リーダーシップがあるからチームや組織を率いるポジションにつく。
自分の中で「逃げた」経験を作らない。会社を辞める際は必ず「卒業」する。
自分のノートをカバンに入れて持ち歩くようにしている。自分の目標管理にとても効果がある。特に効果的だと思うのが、中長期の目標管理。ノートを読み返すことを目的とせず、書き出すプロセスを重視している。その時、その時の気持ちを反映して、再度目標を書き出してみる。書き出すプロセスが身体の中に目標を染み込ませ。「やるぞ」という気持ちを奮い立たせてくれる。見返すだけでは心に響かず、結果、目標実現にドライブがかからない。
状況に応じて細部は変更しても構わない。

6章まとめ
英語上達は短期的に成果を上げる。実用英語は論理性と堂々とした態度が大事。キャリアは自分の届くギリギリのところまで背伸びをする。中長期の目標管理には「自分ノート」を作って愚直に書き込む。


【この本を読んだ感想やまとめ】
改めて読むと、当たり前のことを書いているように見えるが、この内容をoutputするのは今の私では無理。実行も結構難しいものが多い。まずは意識改革から始めて、少しずつできることを増やしていくしかない。
常に自分を成長させつつも、人脈や信用といったことを重要視し、短期的にも長期的にも科学的な視点を重視していると思った。仮説思考はここでも出てきたな。脳に汗をかく。頭の中だけで論理的に考えをまとめることが簡単にできる人は多くない。世界のエリートであっても。じゃぁ、やろうぜ。書こうぜ。
会議中も、メモをしてまとめていこうぜ、論理的に構造的に。あとで資料にするときもすぐにできるように。
時間にコントロールされるのではなく、時間をコントロールする。これってダラダラと時間を無為に過ごさないということかしらね。


【今後活かせること、具体的なアクション】
・帰宅前に翌日のTODO確認、優先順位をつけてから帰る。
・週末楽しかったことを振り返る。 XXXをまたしたいね、とか、料理がおいしかったね、とかその程度でいい。
・仕事をうけたら7割でいいので翌朝報告を目指す。事前に成果物のイメージを共有すること。
・今後は、ノートをまとめるときに視覚的にまとめることを意識しよう。本質をとらえていることになる。


【気に入った文章・言葉を3つ】
・論理的に考えをまとめ、意見を言う際に頭の中だけで完結できる人は多くない。紙に書き出すことにより結果的に物事が整理でき、生産性も高まる。脳に汗をかく。
・利害関係を超えたつながりを信じること。それは直感、運命、人生、カルマ、なんであれ。先を見越して点をつなぐことはできない。振り返ってみて初めて点をつなぐことができる。だから将来何らかの形で点がつながると信じること。
・正解のない問題を考えるクセをつける。自ら課題を設定し、論理的に考え、結論を導き出す姿勢が大事。

【こんな人に読んでほしい】
・ビジネスの基本的なことを知りたい人
・ビジネスのおさらいをしたい人
コンサルティング業界の人
・生産性が上がらないと最近感じている人

 

 

 

読書備忘録#11_佐久間宣行のずるい仕事術

読書備忘録#11_佐久間宣行のずるい仕事術
佐久間宣行さん

【読もうと思った動機】
ゴッドタンです。テレ東のこの番組がとても面白くて、気になってました。そのプロデューサーが佐久間さんということで、さらに独立したと聞いて、とても普通の人ではないなということで気になり購入しました。


【概要】
佐久間さんが伝えたことを6グループに分け、それぞれ説明をしている。彼が悩み考え、実行したきた数々のエッセンスが積み込まれている。真正面で消耗するをのを止めて作戦を立てる。全部で、14+9+9+8+13+9=62の項目があるが、ここでは印象に残ったものをまとめていく。


■1章 仕事術編
・楽しそうを最強のアピールにする。組織にいるうえで、不機嫌でいるメリットなどひとつもない。
・雑務がチャンス。サッカー部マネージャーのただの弁当作りを、おにぎりをサッカーボールに見立てることで、台本が変わった。そこで、ただの雑務が、「佐久間さんの仕事」に変わった。このとき仕事の楽しさを初めて味わったとのこと。
・ミスをしたときは、素直に、誠意を尽くして、ただ謝る。これに勝る謝罪法はない。うちの会社は頭が固くて・・・などは誠意のある対応とは言えない。こういうこときこそ、その状況を食い止められなかった責任を全部背負って会社を代表して謝る姿勢を相手に見せたい。人は、会社とうまくやる人、応援されている人と組みたいと思うもの。いっときの感情に流されず、どうすれば仕事がやりやすくなるか、チャンスをつかめるかをトータルで考えることが大事。
・ホウレンソウ。共有すべきは、進捗状況と優先順位。マイクロマネジメントはイヤだよね?ホウレンソウをさぼると上司は監督不行届となり、上司も自分も自由が奪われる。
・相談の仕方にもコツがある。なぜ、あなたに相談するのかを伝え、あなたに相談することに意味があると分かってもらう。相談のゴールは愚痴への共感ではなく問題解決。
・仕事は全部、縁から始まる。たとえその時はご一緒できなくても、この先何があるかはわからない。だから、自ら縁を切らないコミュニケーションを心がけるべき。相手の立場を想像したら、とにかくすぐに決断して動いたほうがいいに決まっている。できる限りの想像力を持って誠意をもって対応するのだ。また声をかけたいと思ってもらえるように。
・こいつに任せたらスムーズに進みそうだ、と思わせれば勝ち。
・会議は直後に要点を整理して、その場で解決できる問題や出せるアイデアはアウトプットしておこう。直後の復習に力を入れた方がずっと効率的。佐久間さんは、その日の要点、次の会議に達成すべきこと、AIを書き留めるようにしている。会議直後の5分間のひと手間が、1週間後の自分の評価を変える。
・正しい努力が必要。それには、ひとつひとつの仕事に対して、「こうじゃないか」と仮説を立てて、頭の中でそれを組み立てるクセをつけるのをオススメとしている。仮説を立てて実行し、実行したら検証する、ズレていたら修正。これを繰り返す。ピラメキーノの例示。
・社内初は、ローリスクハイリターン。
・キャリア選択に一般論を取り入れたら、みんなと同じキャリアしか築けない。
・ブランド人とは、「信用と期待を持たれている人」のこと。佐久間さんは30代に入ったくらいから会社から離れても生きていけるように自分をブランド化しようと考えてきた。

1章まとめ
改めて言語化すればアタリマエのことのように思える。しかし、自分の考えをアウトプットするのはとても大変なこと。
ここでは仕事に対する姿勢もあるし、具体的な行動もあり、構造化するのは難しい。しかし、どれも大切なエッセンスのように思える。


■2章 人間関係編
・メンツ地雷を踏んではいけない。そういう時、人は他人を攻撃する。新規プロジェクトが歓迎されづらいのは、旧プロジェクトに関わっていた先人を下げるような発言をしてしまうことがあるから。相手のメンツを立てることが次の策。メンツを立てることは、社会人としての戦略。魂を売ることとは異なる。幼稚な感情に振り回されると回りまわって自分が損をすることになる。大切なのは、障壁なく仕事ができる環境を手に入れること。
・コミュニケーションは「最短距離」より「平らな道」を行くこと。最短距離は、デコボコだらけの悪路を走るようなもの。会社のためと自分の未熟さを伝えるとよい。例:誰でも作れる番組より、自分にしかできない番組を作った方が会社の利益になりませんか? → ゴールデン番組を作るのが苦手なので、それは得意な方にやっていただいて、自分は精一杯、会社に貢献できる仕事をしたい。 自分を捨てきれない状態で「俺」を出して戦うとロクなことがない。
・横柄な態度はコストが高い。仕事は縁でできている。人は偉そうにするチャンスがあると、偉そうにする生き物だ。でも、それではダサいし、一瞬の虚栄心を満たすには失うものが多すぎる。
・相手とのやり取りを不毛なバトルに発展させないためのテクニック。それが、「コント:嫌いな人」。自分の置かれている状況を俯瞰してみるクセをつけると、カッとしたり傷ついたりと、感情が乱れる回数は減っていく。コントをするということだな。OK。
・合わない上司は分析する。論理的アプローチをとる。言っていることに一理あると思ったら〇、聞き入れられないと思ったら×というように。〇ばかりだったら、言い方などが気になるということで、改善策を要求する。×ばかりだったら、上司の上司に相談する。○×の表を持って。上司と部下は対等な関係。理不尽な上司がいるとき、部下である自分が我慢すべきだなんて思ってはいけない。
・ほめることは最高の娯楽であり、コストのかからない最強のビジネススキルでもある。ほめるということは、相手の武器が分かるということ。
・陰口はコスパが悪い。心穏やかに過ごしたいと思うなら、悪口を言わないことからスタートしよう。悪口は具体的なリスクもはらむのだから。

2章まとめ
人間関係編ということで、示唆に富んだ内容だと思う。感銘を特に受けたのは、最短距離より平坦な道。まさにそう。正論や一時の感情でコスパの悪いコミュニケーションをしてしまうことはあるからね。二度と、そういうことはしません。


■3章 チーム編
・チームで活躍するには、自分のキャラクターやスキルをできるだけ客観的に正しくメンバーに理解してもらう必要がある。自分が勇者なのか僧侶なのか。そうでないと、適当な仕事にアサインされて結果の出ないドツボの沼にはまってしまう。自分の得意をどう、見つけるか。それは、努力の割に評価されることのなかにある(岩田さんも似たようなこと言ってた)。そんなに努力していないのに、やたら褒められる。そんなところに才能が隠れている。少ない努力で結果を出せる武器は、自分がそこにいてもいいという心の安心材料にもなっていく。
・やってみる?と振られた仕事は、ひとまず引き受けてみればいい。自分の得意不得意をしることができるし、社内に顔を売ることができるから。鍛えるべきところ、諦めるべきところ。それがわからないと、単なる交換要員になる。使い勝手はいいが、突き抜けた長所のない人になってしまう。チャレンジは自分の解像度をを上げることにつながる。
・組織で働く以上、自分のキャラクターをわかってもらえない限り、望むチャンスは巡ってこない。何度でも、XXXをやりたいと伝える勇気が必要になる。企画書を何度も何度もだして、佐久間さんはやりたいを行動で示していた。
・夢につぶされないために大切なこと、それは分解。分解して、具体的な目標に置き換えることが大切。地に足がついた具体的な目標を掲げる人は、長距離走を完走できる。
・チーム編成のコツ。自分ができないことをできる人と組む。プロジェクトのコンセプトや企画の核を作るときは感覚が近い人と組み、実行するときは自分と真逆のタイプの人を入れるということ。
・面白さのキモやファンの気持ち、番組に流れる文脈。隅から隅まで理解した人間がつくるからこそ、核心を突いたコンテンツを世に出せると思っている。こだわりとかプロ意識が「餅は餅屋に丸投げ」させず自分がやってアウトプットにコミットさせるんだな。
リスク管理として、責任の所在をハッキリさせておくも大事。誰のどういう判断で実行するのかを明らかにし、それをまわりにも周知する。自分が発起人でないなら、そのことを明らかにすることで自分の身を守るのだ。

3章まとめ
やりたいことがあるなら、行動で示そう。やってみる?は積極的に受けよう。チーム編成は、フェーズによって入れるメンバーを変える。自分と感覚が近い人、真逆の人。自分が発起人でないなら、そのことを明らかにしておくこと。


■4章 マネジメント編
・リーダーがだれより、本気で、楽しそうに働くこと。
・リーダーは、メンバーのいいところを見つけるのがとても大事。人は「自分がいなきゃ」という存在価値を感じてこそパワーを出す。
・会議でのアイデア発出は、次のアイデアの呼び水として活用する。けして、一蹴しない。以降、自分の意見をだしてもらえなくなる
・お酒の場で、絶対説教をしてはいけない。注意はあくまで仕事として伝える。個別に。
・どれだけ思い入れがある仕事でも、自分一人でできることなんてひとつもない。だからこそリーダーは、みんなで同じ方向に進めるよう、言葉と態度で示していこう。
・問題児には先手を打つ。不正解な行動は「ダサい」という空気をつくってしまう。「嫌なやつ」の捏造する方法もある。あの局には理不尽をまきちらすディレクターがいて、誰にも慕われていないらしいとか。過去のトラブル事例の捏造にも応用可能。言われたとおりのトラブルは誰も起こしなくないからね。このような捏造はウソなので誰も傷つかず、チームがいい雰囲気になるからいい。
・トラブルに至った、仕組みを特定し、それを解決すること。そうでないと、A君が成長しても忘れたころに別のB君が同じ問題を発生させてしまう。
・部下の仕事は引き取らない。部下はラクだが、成長しない。かなり面倒だし手間のかかる作業だが、いつか部下からもあのやり方で育てられてよかったと思ってもらえるはず。

4章まとめ
チーム運営において、みんなと同じ方向に向かった進むことが大事。いいところを見つけて、伝えて、ときには嫌なやつを捏造して反面教師を示したりすることで、いい雰囲気を作りながらやっていく。ただし、相手を注意するときはあくまで仕事として個別に伝える。


■5章 企画術編
・企画書は、出すものではなく通すもの。企画書は誰が読むのか?その相手は何を求めているのか?会社としてのメリットは?つまり、企画を通したいと思うなら、組織の「中の人」を説得するだけの材料を集め、ロジックを組み立てて、自分の「おもしろい」に説得力を持たせること。
・発想術:反転法 例)ソクラテスのため息~滝沢カレンのわかるまで教えてください~。 掛け合わせ法 例)不倫×逃避行、不倫×純愛など・・・まだ世にないであろう「設定」から、新しい企画に育てていくやり方。
・自分の感覚を信じずマーケットばかり見ていると、絶対途中で冷めてしまう。最後の最後に、手を抜いてしまったり、世に出すとき恥ずかしくなって下を向いたりしてしまう。一滴でもいいから原液を混ぜておこう。これは俺の仕事だぜって思えるように。
・面白さの核を見つけることが大事。それは「おもしろい」を因数分解できること。核を自分が理解していないと、きちんとプレゼンできなかったり、見当違いなことを言われたり、勝手に企画を変えられたりする。
・企画を仕組み化する。モチベーションに左右されにくくなる。企画にするとは、自分のアイデアをここがおもしろい、と人に伝えられるカタチにすること。佐久間さんは、「メモを見返す日(3日に1回)」、「ノートを整理する日(2週に1回)」「企画書に練り上げる日(月1回)」をルーティンにしている。未来の自分に強制的にその仕事をさせる。時間が足りない?ルーティンとして企画に投じる時間を盛り込もう。
・失敗には、悪い失敗といい失敗がある。悪い失敗は、仮説がない挑戦の結果もたらされるもの。いい失敗は仮説を踏まえた挑戦の先にあるもの。(いわゆる、本気の失敗には意味があるの本質)。ここまで考えつくしたのなら、失敗しても仕方ないと思えるまで考えたか?が大事。バットを振り切ることができるし、たとえ失敗しても仮説のどこが間違っていたのか、検証ができる。
・ダラダラと負け続けない。そういう人は、損切りができない人。そうならないために、初期設定として期間と目標値を決めておく。
・10年後の自分をクリエイターたらしめるのは、今日のインプット。

5章まとめ
おもしろいの核、本質を説明できるか。因数分解が必要。プレゼンは、誰が何を求めているのか?を意識。
時間がないならルーティン化。いい失敗、悪い失敗がある。これは仮説思考。


■6章 メンタル編
・たかが仕事。「真剣」にはなっても、「深刻」になってはいけない。いい仕事はすべて、心の健康の上に成り立っている。佐久間氏がいつも楽しそうに見えるのは、仕事を絶対視せず、「仕事と自分」や「仕事関係者と自分」にほどよい距離感を持ちづづけているからかもしれない。一度メンタルを崩すと、調子を戻すのに時間がかかる。戻らないことだってある。仕事は大事。だからこそ、「たかが仕事」の割り切りが必要になる。いい仕事はすべて、心の健康の上に成り立っている。
・期限を決めてゴールを設定し、そこまでは全力で努力してみる。期限を区切れば腹もくくれる。逃げるヒマも、言い訳するヒマも、腐るヒマもない。やり切ってから進退を判断しないと、逃げた気持ちや後ろめたさが自分に残る。
・ときはエゴをつらぬく。自分が不満を感じるルールや慣習は、他の誰かも同じように不満を感じている可能性が高い。
・運を味方につける。究極的には仕事はすべて、運で決まる。運とは、信用の積み重ねだと考えている。運と縁はとても近い。ただし、基本的には自分でコントロールはできないが、不意に訪れる運を、落とさないようにすることならできる(この考え方はつまり任天堂、「やるべきことを全力でやり遂げた上で運を天に任せる」)。愛想とは、いついかなるときも機嫌よくフラットでいようとする態度とそれを貫く意志のこと。自分の機嫌は自分でとる。みやぞんも言ってました。運は、いつどのようにやってくるかわからない。信用の橋をコツコツかけておけば、忘れたころに驚くような運の来訪があるだろう。つまり、未来の自分にプレゼント、種をまいておくということだね。希望。諦めるな。
・再生産。3~5年後に向けた中期目標を立てる。目の前の仕事に、目標達成のために必要な要素を足していくイメージ。佐久間氏は、5年後には映画を撮ってみたいと考えた時に、映画を作っている制作チームをバラエティに巻き込んで仕事をした。ただ、自分のために仕事を広げると代替まわりに嫌な顔をされるが、それは仕方ない。コツコツ種をまいておかないと、3年後5年後のじぶんは変わらない。恐ろしい。。。
・省エネモードがあってもいい。ただ、サラリーマン。会社やチームのマイナスの存在にならないよう義務はきちんと果たしつつも、できる限り省エネで働くということ。給料分はきちんと働き会社に返す。裏では淡々と詰めを研いでチャンスを待つ。今の仕事に、「ない仕事を作る」のもおすすめ。佐久間氏のやりたくなかった演歌番組での、歌手のエピソードを再現VTRにする、といったように。どれだけ興味の持てない仕事でも「どうせここではつまらない仕事しかできない」と腐らずに、ない仕事をつくり出す。自分でキャリアを作る方法だってあるのだ。
・奇跡を信じる。ピラメキーノの例。仕事のもやもやは沼のようなもの。まずは沼から脱出する。変化とは「起きる」ものではなく「起こす」もの。

6章まとめ
最終章だけど、一番重要な章だと感じた。メンタル、考え方だから。
仕事は真剣にはなっても深刻になってはいけない。やり切ってから、考え抜いてからでないと後悔する。私はそれに、やり切らないと反省ができない、ということを付け加えたい。
自分の機嫌は自分でとる。運はどこでやってくるかわからない。その運を落とさないようにすることならできる。やるべきことを全力でやり遂げたうえで運を天に任せる。いつでも機嫌よくフラットでいること。その姿勢。


【この本を読んだ感想やまとめ】
自分が擦り減らない方法を佐久間さんがまとめてくれている。読めばどれも納得。自分からこのレベルをoutputできるのはいつになるのだろうか。。。経験がとても生きている。ここでも仮説思考の重要性が説かれていた。大体どの本でも書かれている。あとは、自分が好きな仕事や成果を出すために、仕事をしやすい環境をどうすれば手に入れられて、どう考えているのかわかった。相手のメンツを立てて、障壁のない環境を手に入れる。感情に流されない。岩田さんもどれだけ私情をなくせるか、って言ってたな。


【今後活かせること、具体的なアクション】
・陰口は言わない。コスパが悪い!
・横柄な態度はとらない。ダサいし、コスパが悪い!
・コミュニケーションは「最短距離」より「平らな道」を行く。
・目の前の仕事に、目標達成のための要素を付け加えていくイメージ。実際に、何か足してやってみる。今の環境を使い倒す。目標達成のために。
 誰かにプラスの影響を与えること、それが自分に返ってくること、社会に反映されて、よりよい社会になっていくことが私のミッションだ。砕けた言い方すれば三方ヨシの改善版ともいえる。
 例えば、考え方をや成果が誰かに伝わり、その人が成果を出して世の中がよくなって、その人の人生と私の人生が交差して、私がそれを実感できれば、こんな喜ばしいことはないと思う。
 社会課題を解決したいっていうだけでは足りなくて、自分も、特定の誰かもハッピーになることも大事なんだ、私にとっては。その特定のだれかは、おそらく自分と似ている人。それは環境でも考え方でも何でもいいと思う。 この本とバンプを聞きながら、まとめました。


【気に入った文章・言葉を3つ】
・人間関係は、最短距離よりも平坦な道を。
・たかが仕事。「真剣」にはなっても、「深刻」になってはいけない。
・いっときの感情に流されず、どうすれば仕事がやりやすくなるか、チャンスをつかめるかをトータルで考えることが大事。大切なのは、障壁なく仕事ができる環境を手に入れること。
・失敗には、悪い失敗といい失敗がある。悪い失敗は、仮説がない挑戦の結果もたらされるもの。いい失敗は仮説を踏まえた挑戦の先にあるもの。

【こんな人に読んでほしい】
・人間関係に悩んでいる人
・仕事でココロが擦り減っている人
・今の仕事に不満はないけど、将来何をしたらいいのかわからない人
コスパよく仕事をしたい人
・ゴッドタンが好きな人

 

 

読書備忘録#10_スモールビジネスマーケティング

読書備忘録#10_スモールビジネスマーケティング
岩崎邦彦さん

【読もうと思った動機】
中小企業診断士の勉強をなかなか始められない中、情報収集中に目についた本。これは、2次試験の事例Ⅱを解くにあたり、とても有用だというレビューを見て、とりあえず買ってみたというところ。著者は問題作成だか監修だかに関わっているらしく、試験対策としての効果を見込んだ。


【概要】
論文のような構成。スモールビジネスマーケティングについて、とても良く体系化して説明している。当たり前に感じていることを、言語化しており、知識の習得や整理に役立つ。ただし、2004年発売ということで、少し前に書かれている点には考慮が必要と考える。だが、内容については2022年現在読んでも、通じる内容であると感じている。
スモールスケールであるがゆえの優位性を高める方向性に向かっており、21世紀はスモールスケールが武器になりうる時代。ただ、潜在的なスモールスケールの優位性を、顕在化させることが重要としている。それは、小規模小売店を選考する消費者を標的とした、ターゲットマーケティングプログラム。小規模小売業は、大規模小売業とは果たす役割も消費者からの期待も異なる。


■1章 小規模メリットの創造
21世紀の消費の特徴は、「多様性」と「異質性」である。需要の多様化のモデル。これは正規分布で考えられる。マス商品、規格品では満たされないニーズは確実に存在し、「小さいけれども確実な需要」は必ず創造される。500人乗りのジャンボ機と20人乗りのプロペラ機で例える。ある路線に20人弱の利用客が安定的に見込める場合、ジャンボ機にとっては1割にも満たない搭乗率となり、採算に合わない。一方、プロペラ機にとっては、毎回ほぼ満席となり実にうま味のある路線となる。小売業でも同じことが言える。大規模小売業がラージスケールゆえに参入が難しいマーケットや、小さいけれども確実に需要がある市場が増えていく。大型店は、同質化を促進するため、小さいけれども確実な需要があったとしてもマーケットが空白になる。これは、ホテリングのモデルで説明ができる。顧客数の最大化を追求する結果、X社、Y社ともに最も平均的なニーズに対応することになり、結局ナッシュ均衡となる。結果、真空地帯が生まれることになる。この真空地帯にポジショニングすることで、規模の小ささを強みに転化することができる。大企業よりも小規模企業の方が効率的なマーケットは、最適規模理論からいうと、「個性化市場」「高級化市場」「多品種少量市場」「短サイクル市場」などが当てはまる。
現実の小規模小売業は、大規模小売業と同じマーケットで同質競争を繰り広げているケースが実に多い。そうなると行き着く先は価格競争と消耗戦となる。このタイプの戦いでは、スケールメリットが作用するため、小規模企業が大企業に勝つのは困難となる。
小規模小売業が真空地帯に対応することで、小売りの多様性が生み出されるため、マーケット全体の満足度(個人満足度の総和)も向上することになる。小規模と大規模小売業は、かつての競合関係から、補完関係へと変容している。大は小を兼ねない のである。
どちらの店のケーキに魅力を感じるか。
A店:こだわりのケーキを販売する店
B店:こだわりのケーキ、菓子、パン、清涼飲料水、食料品を販売する店
消費者調査の結果は、A店:61.5%、B店22.5%
圧倒的にA店に魅力を感じる消費者が多い。品ぞろえの総合化によって、こだわりが希釈化されるということ。
変化対応力として、大規模小売業は、量のマーケティングを効率的にマネジメントできるよう、仕入販売管理等の職能の部門化を行い、商品調達プロセスなどをシステムとして構築する。戦略の方向転換をするときは、部門間の調整コストやシステム変更が発生するため、変化のコストが高い。一方、小規模小売業は、販売の現場と意思決定のポイントが一致しており、状況に即した迅速な経営判断が可能である。変化をチャンスに転換しやすいといえる。
地域力もある。けっこう、みんな地元で買い物をしたいという思考がある。概ね、60%。地域産品や少量産品の取り扱いに関しては、規模の経済が作用せず、逆に小さなマーケットへの対応力や地域密着力といった小規模メリットが働く。
多くの小規模小売業が不振な理由。そのひとつとして、小規模メリットは、あくまでも潜在的な可能性だということ。単に小規模ということが強みではなく、水面下にある小規模メリットをいかに顕在化できるのか。小規模メリットを現実の力に変えていけるか否かが、勝者と敗者を分けるカギになる。次章から小規模を強みに変えるスモールビジネスのためのマーケティングを検討する。

1章まとめ
大規模小売は、量のマーケティングであり、品揃えを多くすることで、多くの顧客にアプローチする。大規模小売店同士が競争する場合、顧客を奪い合うことになるが、結局は同質化されナッシュ均衡となる。なので、ある一定のニーズ(多様性、異質性)をもつ人もいるため、必ず真空地帯と呼ばれるマーケットが存在する。そのマーケットを埋めるのが小規模小売業。こうすることでマーケット全体の満足度が向上する。多様性、異質性に対応するために、小規模というポテンシャルを顕在化することが必要。それが次章以降、書かれている。


■2章 小規模メリット活用型マーケティングの構築 -小規模を”強み”に転換する
小規模小売業が大規模小売業と同じ土俵で競争を挑んでも勝ち目はない。マーケティングプログラムとして、「小さな店に惹かれる人々(大量生産、大量消費とは距離を置き、小規模小売業を選好する消費者層)」を標的としたターゲットマーケティングプログラムを提案する。
「小さな店に惹かれる人々」は次の3つの特性を有する消費者といえる(観測変数をまとめたもの)
・本格志向:こだわり、個性、専門性を重視する消費者層
・人的コミュニケーション志向:店員のアドバイス、店員のコミュニケーションを重視する消費者層
・関係性志向:気に入った店は長く利用したい、ここと決めた店がある割合が顕著に高い消費者層
小さな店に惹かれる消費者モデルは次のようなもの
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●小さな店に惹かれる消費者モデル
本格志向
       \
          人的コミュニケーション志向  ―  中小規模店選好
       /
関係性志向                     /
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本格志向は人的コミュニケーションを媒介するところが意外でした。本によると、単に専門性やこだわりを追求するだけでは、「中小規模店選好セグメント」の吸引効果は限定されることを示唆している。専門性やこだわりは、対面販売などの「人的コミュニケーション」と融合することによって効果が発揮される、と記載されている。ストーリーを伝えることは、これにあてはまるかな。。。
小さな店に惹かれる消費者モデルを見ると分かるように、カギとなるマーケティングプログラムは、人的コミュニケーションプログラムとなる。当然、これだけでなく、関係性のある志向ごとに融合して考えることも重要となる。

2章まとめ
中小規模店選好する人は、次のような志向をもつ。
本格志向、人的コミュニケーション志向、関係性志向。特に、人的コミュニケーションプログラムは中核的な役割を担う。


■3章 プログラム1:本格化マーケティングプログラム -こだわり、個性、専門性を武器に顧客を創造する
競争優位のコア基盤が必要で、それにはまず幹を作ること。幹(コア)がなくしてこだわり、個性、専門性は発揮できない。コア基盤の源泉は、内部資源に求められる。幹は太くすること。無理に伸ばしたり増やしたりしない。幹を支えるにはしっかりとした根が必要。根とは、経営資源のこと。第一は目に見える資源。人、モノ、カネ、設備といったもの。ただこれらは、大規模小売業の方が優位のため、スモールビジネスの切り札にはなりにくい。第二は、目に見えない資源。これは、専門知識、独自の経験、ノウハウ、顧客の信用、熟練技術こだわりなど。これらは模倣しにくいこともあり、差別化のキーとなる重要な経営資源となる。第三は、小規模特性。既に述べた、変化対応力、真空地帯への対応力などのことを指す。
品揃え形成において、Step1としてコア商品の形成、Step2としてコア商品を軸にしたアソートメントの拡充を目指すべきである(コア商品の垂直的拡充と商品ラインの水平的拡充)。コア商品は、一芸に秀でる戦略。洋菓子がおいしいお店ではなく、チーズケーキがとびきりおいしいお店、というイメージ。
コア商品形成メリットを挙げていく。第一に、コア商品がシンボルとなり店の個性を発信してくれること。第二に、関連商品の販売。ついでに別の商品も買ってくれる。第三に、コア商品がドライブとなって、他の商品群のレベルアップが期待できる。第四に、ハロー効果。チーズケーキがおいしい店は、ショートケーキもおいしいと思われやすい。第五に、顧客維持。コア商品による差別化ってこと。第六に、価格感応度の低下。コア商品の独自性が高ければ高いほど、価格競争に巻き込まれにくくなる。第七はクチコミの発生。顧客が顧客を運んできてくれる。

アソートメントは、3つの切り口がある。
1.生活起点のアソートメント:コア商品に関わる消費者の生活シーン、利用シーンからの品ぞろえのこと。ワインがコア商品であれば、チーズや生ハムやオリーブオイルなどがそれにあたる。生活シーンと同じ文脈で賞品が提示されるため、消費者の購買意欲が喚起されやすい。メリットとして、限定された店舗面積でも専門性を発揮しやすい、関連販売を誘発しやすい、商品が相互に補完し合ってそれぞれの価値を高めやすい、ライフスタイルの提案など目に見えない価値を付加しやすい、などがある。小売業にとって、最も望ましいアソートメントといえる。
2.川上起点のアソートメント流通の川上において、相互に関連性が高い商品群の構成。ワインとウィスキーといった組み合わせ。生活シーンでは、代替的な組み合わせであることが多い。いわゆる従来型の業種店のイメージ。これからの時代の小規模小売業に適合しているとはいいがたい。
3.総合型のアソートメント:流通の川上、川下ともに関連性の低い商品ラインの組み合わせ。ワインと清涼飲料水といった組み合わせ。消費者は、小規模小売業に何でもあること=総合性を求めてはいない。専門性を希釈し、マイナスのシナジーを発生させる可能性が大きい。大事なのは、どこまでを売りどこからは売らないのかを明確にすること、そして、今いる顧客を徹底的に満足させることが肝要。

ターゲティング:「絞り込みによる拡大効果」というパラドックス (良い意味のパラドックス
スモールビジネスのターゲティングの定石は「絞り込み」。絞り込めば絞り込むほど効果的。全員に語りかけるのではなく「Aさん一人に語りかける」のである。この顧客だけは絶対に満足させることができるといったターゲットの絞り込みが、商品政策に一貫性を持たせるとともに、店の主張を明確にし、鋭く鮮明な個性の発信を可能にする。結果として、明快な個性が店の魅力を高め、結果として幅広い層の顧客の救貧が可能になる。
プライシング:「いかに安く売らずに済むか」を考える
消費者のだれもが望んでいるのは「高い価値」。「低価格」を求めているわけではない。価値は、次のように定義される。価値=品質/価格。小規模小売業が志向すべきは、ハイクオリティ・ライトプライス。
価格競争を避けなければいけない理由は6つ。
1.価格で惹きつけた顧客は、ストアロイヤリティが低い。こういった顧客は、価格で逃げていく。バーゲンハンターという。このタイプの顧客から得られる利幅は小さく、こういった顧客比率の増大は経営を不安定にする。
2.規模の経済や範囲の経済が作用する。価格競争は大規模小売業が有利。
3.模倣されやすく、持続的競争優位性につながらない。価格は差異化や個性化の道具にはなりえない。
4.多数の「敗者」を生み出す。価格競争の勝者はほんの一握り。(質の競争においては尺度が様々なので統一的なものを求めるのは難しい)
5.価格だけを武器にしているとおのずと専門性を否定することになる。
6.ディスカウントプロモーションの継続は、消費者の価格感応度を高める。特売日だけしか来なくなる。
なぜ、この価格なのか、を伝え納得してもらうことが重要(人的コミュニケーション)。価格が忘れられた後も、品質は残り続ける。(今使っているPCの価格、覚えてる?)
スモールビジネスでは「いかに安く売るか」ではなく「いかに安く売らずにすむか」を考えるべきである。

小売段階でも独自の価値を付加する
小売段階の価値の付加方法は3つの方向性がある。
1.形態の変化:財を加工し、その形態を変換していること。ケーキとか惣菜とか。目に見える価値を創造していること、独創性やこだわりを活かす余地が多くあり個性を演出しやすいこと、手作業主体であること、製造者の顔が見えること、製造プロセスを見せれ専門性のアピールができることが支持を集めやすい理由となっている。
2.商品のコーディネート:例えば生活起点のアソートメント。それと、購買代理機能。買物の選択肢が増加しているため、真に自分に合う商品に出合いにくくなっている。自ら直接吟味するのは困難。プロの目線や感性で、商品を厳選するということ。
3.目に見えない価値の付加:
 -サービス:個別宅配、設置サービス、御用聞きなど
 -情報:今日、必要なものはほとんどの消費者が持っている。顧客自身には特定できないが満たされれば非常にうれしいニーズに前対応すること。つまり提案。顧客に合わせた価値提案を行う情報発信業。
 -学びと体験:サービスの時代から経験の時代へ移行したともいわれている。おいしいコメの炊き方教室、田植えツアー、稲刈りツアーなど。地域社会や生産者との関係性を深化させるきっかけにもなりうる。
 
小さな店に惹かれる人々は、こだわり・個性・そして専門性を重視するセグメント。本格化マーケティング・プログラムを実践できれば、このセグメントの方からその店を利用してくれるはずである。小規模小売業が個性・こだわり・専門性を武器にできるのは、まさに小規模小売業がスモールスケールだからである。本格化マーケティング・プログラムを通してスモールスケールを強みに転換することができた小規模小売業は、大規模小売店との競争の波にそう簡単には飲まれない。

3章まとめ
本格化マーケティングのポイントは次の内容。
競争優位のコア基盤の確立、コア商品の形成、品揃えの垂直的拡充、生活起点のアソートメント、想定ターゲットの絞り込み、「いかに安く売るか」ではなく「いかに安く売らずにすむか」、ハイクオリティ・ライトプライスによる価値の向上、品質・こだわりの視覚化、小売段階においても独自の価値を付加する
どれも、スモールスケールを強みに転換させること


■4章 プログラム2:人的コミュニケーション重視型マーケティング(1) -垂直方向の人的コミュニケーション
コミュニケーション媒体としての「ヒト」に注目する。3つのマーケティングプログラムのカギとなるプログラム。ここでは売り手と買い手の垂直方向のコミュニケーションについて検討する。
小さな店に惹かれる人々は人的コミュニケーションを顕著に重視する層。小規模小売業の強みであるはずの人的コミュニケーションは、不満要因にもなっている。横柄な態度とか、不愉快な思いをしたなど。人的コミュニケーションが小規模小売業の業績のカギを握っていることが実証されている。人的コミュニケーションの深さが高い顧客満足度に結びついている。マーケティングミックスの構成要素であるProduct,Price,Promotion,Place+People。このPeopleが切り札になる。人的コミュニケーションの失敗は、小規模小売業にとって「命取り」になることを示している。
人的コミュニケーションには二つのタイプがある。ひとつが「フレンドリーサービス」で、接遇や接客に関する要素。言葉づかいや挨拶、身だしなみといった内容。これは競争優位の切り札にはなりえず、あくまで「競争の前提」である。もうひとつが「ヒトを通じた情報の伝達」。顧客に対するきめ細やかなアドバイスやライフスタイルの提案など、プロフェッショナルな人的コミュニケーション自体が付加価値になり、これこそが競争優位の源泉となる。
現代の消費者は、本質的な欲求はあるものの、買いたいものがはっきり見えていない。そのため、消費者をリードしていく必要がある。「店頭で需要を創出する」ことに関しては対面販売力を有する小規模小売業が優位になる。
クレームについて。苦情を言う消費者の77%程度が「今後ともその店を使う」と回答しているのに対し、苦情を言わない消費者のなんと97%が「もうその店は使わない」と回答している。これの示唆は、苦情をうまく救い上げることができれば、大部分の顧客の流出を防ぐことができるということ。苦情は期待の裏返し。
ヒトのマネジメントとして、周到な採用、販売員の意識改革、販売員満足度の向上、販売委の専門性強化・能力開発への投資、権限移譲、評価が必要。
人的資源がスモールビジネス・マーケティングの基本。

4章まとめ
マーケティングプログラムにおいて、人的コミュニケーションはカギとなるもの。人的コミュニケーションにおいて、フレンドリーサービスは土台となるものであり、人を通じた情報の伝達が付加価値となり競争の源泉となる。クレーム処理次第で顧客の流出は防ぐことができる。人のマネジメントへの投資はとても大事で企業の勝ち負けが決まるといっても過言ではない。


■5章 人的コミュニケーション重視型マーケティング(2) -クチコミとスモールビジネス
ここでは、顧客と顧客の間の水平方向の人的コミュニケーションであるくちこみについて述べている。クチコミはコストがかからず、評判が伝わりやすい。クチコミへの関心は大変高い。買物選択肢の増加で消費者の情報処理能力を超える選択肢が提供されている。自分自身では評価不可能なので、人の意見に頼るようになる。また、顧客サイドの商品知識の増加により、売り手と買い手の情報のギャップが縮小しているため、顧客が発信する情報の信頼性が高まっている。クチコミの影響力は、購入意向だけでなく、味覚までも変えてしまう(学生の、悪いクチコミを事前に聞かされていた群と、良いクチコミを事前に聞かされていた群で味の評価と購入意欲に差がでた結果から)。
クチコミは統制可能なのか。答えはイエスでもノーでもある。クチコミ発生の促進や伝播スピードを速めるための方策はある。クチコミの発生は分解できる。
「クチコミの発生」=「記憶しやすく伝えやすい」×「伝えたくなる」
「記憶しやすく伝えやすい」:店名や商品名が短く、覚えやすいこと。特徴が絞り込まれていて、言語化しやすいこと。語るための材料があること。
4文字以内だと覚えやすい。とか、愛称で呼んでくれるようなものがあるとか、商品の歴史がわかるようになっていることとか。
「伝えたくなる」:既存顧客の満足度を高めること、オリジナリティのある品揃えがあること、顧客の意見を聞くこと。
満足感のシェア、優越感。希少性のある商品、その店との一体感を感じることなど(試食会やモニター制度などが例としてある)
ネガティブなクチコミ。満足した客は約3人に話すが、不満な客は約11人にその体験を話すという。人は、苦情の持っていき場のない時に、ネガティブなクチコミを行う。なので、顧客の不満を苦情というカタチで顕在化させ、それを聞くことで悪いクチコミを最小限に抑えることができる。ただし、単に苦情を聞くだけでは不十分で、苦情の対応が不適切であれば悪いクチコミは促進される。しかし、苦情へ適切にたいおうすることができれば、それをきっかけとして顧客との絆が今まで以上に太くなることが実証的に検証されている。

5章まとめ
顧客と顧客の間の水平コミュニケーションについて。それはクチコミ。クチコミはコストがかからないが、顧客が発信する情報の信頼性は高まっている。そのため、その重要性はより高まっている。伝えたくなるような工夫、記憶しやすく伝えやすいことや満足感のシェアなどが必要。悪いクチコミは、苦情の持っていき場のない時に発生するため、ある程度抑制はできる。そうすることで、顧客との絆がより太くなる可能性があるため、ぜひとも適切な対応をしたい。


■6章 プログラム3:関係性重視型マーケティング -顧客との絆を強化するマーケティングプログラム
21世紀において、パイの縮小を前提とした企業経営が要求される。ポイントとなるのは、顧客数の追求ではなく、顧客の維持や顧客との関係の深化である。
顧客は流出する。わずか3年で顧客の3~4割が違う店に流出してしまう(2001年のデータ)。顧客数の追求(トランザクショナル・マーケティング)ではなく、顧客の維持や顧客との関係の深化(リレーション・マーケティング)が重要となってくる。
以下は、顧客維持活動の検証と結果について述べる。
・ロイヤリティカードプログラム(ポイントカードやスタンプカード)
 効果あり。ただし、店舗規模との関連性はない。実施店舗数は増えているので、今後は顧客データ収集の手段として用い、顧客の購買履歴データや属性データを入手して、優良顧客の発掘だとか、バスケット分析をして品揃えの見直しをする、DMのレスポンス向上など、幅広いマーケティング活動に利用する方向だろう。
・販売員とのコミュニケーション
 効果あり。しかも、大規模店においては顧客と販売員のコミュニケーションはストアロイヤリティにほとんど影響がない。
・顧客との継続的接触
 効果あり。ストアロイヤリティは、大型店と比較し中小規模店の方が優位にある。顧客訪問、電話、DM、E-メールなど。商品のサイクルや購買サイクルなどのタイミングなど。
・売場(売場づくり、品揃え)の変化
 効果あり。ただし、店舗規模との関連性はない。店自体も商品と同様に鮮度が重要。顧客を飽きさせないことが重要。週、月、季節単位など、いろんなタイミングがある。
(下の3つは、経営資源が限られる小規模小売業にとって比較的事項しやすい戦略であると考えられる。特に真ん中の二つが大型店に比べ、中小規模店に優位性がある顧客維持活動であることが分かっている。)

6章まとめ
数よりも、関係性を重視することが重要。中小規模店の戦略としては、販売員とのコミュニケーション、顧客との継続的接触が優位性のあるものとなる。


■7章 小規模メリット活用型マーケティングの実践に向けて
今後の経営方針に関する経営者の姿勢として、積極:中立:消極=2:6:2である。現状維持志向の経営者が圧倒的に多い。(ちなみに、廃業したいという回答が、16%もある)。経営者意識は、マーケティングプログラムを実践するにあたって前提となるものである。業績低下を、外的要因に帰属させ、自分のコントロール外での出来事と捉えてしまう。外的要因を嘆いても、決して状況は好転しない。スモールビジネスに必要なのは、現状に満足せずトライアルを積極的に推進していく経営者の意識であり、それを源泉とする「具体的な行動」である。
できることからスモールステップで。立ち止まっていては、早晩、市場に置いていかれてしまう。大切なのは、フィードバック回路をONにすること。トライアル→成果(失敗、成功)→蓄積→トライアル・・・⇒小売業態の進化 となる。要は、PDCAだったり仮説思考だったりといったところ。
このフィードバック回路をONにする方法はただ、ひとつ。それは、今すぐ始めること。時代の追い風を現実の力に変えることができれば、21世紀はスモールビジネスの世紀になるだろう。

7章まとめ
マーケティングプログラムの実践は、経営者意識が前提。そして、今すぐアクションを。PDCAとか仮説思考を高速で廻していくことが奨励されている。


【この本を読んだ感想やまとめ】
なんとなく直感的に感じていることを、検証や、少し深堀をして階層化することで、論理的にいろいろと説明しているため、納得感が高い一方、わざわざビジネスマンが言語化されたものを理解するのは冗長とも感じる。全体的には、この本に戻ってくれば大体のことが説明つきそうなので、今後もお世話になりそうな本だと感じた。
大規模小売と小規模小売では、求められているものが異なる。ターゲットを絞って、マーケティングプログラムを実施することが小規模小売業では必要。小規模小売業にとっては、とても勇気をもらえる書籍となるのではないか。
やっぱり、人的コミュニケーションがカギとなる。そりゃそうだよなぁ。。。
最終的に一番大切なのは、何事もそうだが、「行動すること」。そしてPDCAなり仮説思考を高速で廻して、より良く改善していくこと。外的要因に嘆いてばかりではなにも好転しない。自分やお店をどのようにしていきたいか、どのように顧客や世の中に価値を出していきたいか、このような意思が大切なんだと思った。


【今後活かせること、具体的なアクション】
・試験対策
・いますぐ、行動すること
PDCAや仮説思考で改善していくこと


【気に入った文章・言葉を3つ】
・苦情を言う消費者の77%程度が「今後ともその店を使う」と回答しているのに対し、苦情を言わない消費者のなんと97%が「もうその店は使わない」と回答
※あとはこれといって・・・


【こんな人に読んでほしい】
・販売領域において、なんとなくわかっているんだけど、人に説明できないといった疑問な点をはっきりさせたい人
・スモールビジネスの初級者
・起業にちょっと興味のある人

 

 

読書備忘録#9_会計の世界史

読書備忘録#9_会計の世界史
田中靖浩二さん

【読もうと思った動機】
簿記をはじめとした会計の勉強を始めても、すぐに忘れてしまうし、そもそも覚えられない。業務で使うことがないってのもある。しかし、診断士で財務会計は必須だし、この科目を攻略しないと診断士合格は難しいと言っていた。なので、まずは会計の歴史を見て、興味をもって、今後の勉強に生かせればいいなと思い、この本を見つけたので、買いました。


【概要】
会計によく出てくる細かい処理ではなく、「そのルールや仕組みが存在することの意味」を知る方が重要だと言っている。確かにその通り。処理は重要だが、意味の方がもっと重要だ。この本は、会計の全体像を、歴史とともに楽しく学べると謳っていて、会計に対する視野を広げることができる。題名にある会計の世界史、というよりは、エンターテイメントでありますね。


●第一部 簿記と会社の誕生 ~3枚の絵画「トビアスと天使」「最後の晩餐」「夜警」~  イタリアからオランダ
■1章 15世紀イタリア 銀行革命
1.絵描きに「トビアスと天使」の注文が殺到した理由
ビアスと天使。この絵は、商売人の孝行息子、無事帰るというストーリー。旅から旅を歩く商人にとって、道中の安全はどれだけ祈っても足りない心配事だった。
15世紀後半くらいの話。公証人というのは、相続など家族の取り決めや商売上の約束などを「記録」として残し、それにお墨付きを与える職業。当時は、記録を残すことはそれほど簡単ではなかった。「紙」が簡単に手に入らなかったから。レオナルドダヴィンチはメモ魔。
当時香辛料に人気があったのは、肉など傷みが早い食品を保存させ、あるいはにおいを消して香りづけするためだった。これらを求めるには、貿易をするしかなく、とてもリスクが大きいものだった。こういう挑戦する人たちをリズカーレと呼び、そういう人たちを助けるべく、イタリアのバンコ(銀行)が、キャッシュレスサービスを提供した。このサービスを利用すれば、キャッシュを持ち歩く必要がなくなる。為替手形のこと。手数料ビジネスで儲けを生んだ。

2.地中海で大活躍したリズカーレとそれを助けるバンコ
バンコは、手数料で相当儲けを得て、各地で支店を持つ大組織へと成長した。このバンコの登場で、イタリア商人はヨーロッパ中を相手に商売ができるようになった。各地で支店を持つということは、為替手形等の記録をほかの支店にも伝える必要がある。支店を超えた、ネットワーク全体として記録をつける必要が出てきた。

3.イタリア黄金期を支えたバンコと簿記
バランスシートは、右の調達から左の運用(投資という活動)へ、左右バランスで読む。この時代、資本は自分(個人)。
15世紀ころ、当時隆盛だった毛織物産業から木綿産業へ移行していった。その際、「紙」の生産も増加した。紙は、ぼろ布を細かく刃物で先、それを腐敗桶に入れて作ったパルプを薄く延ばして作られたため。綿は輸入していたので、自分たちでも作りたいとイタリアの人たちは思い、内陸型製造業が反映していった。それが、新たな商売上の「組織」を誕生させた。単発ではなく、継続的に活動を行う組織だ。個人のスケールではないので、出資者が集まって始めるパートナーシップであり、お金が不足する場合は、バンコから借り入れを行った。

1章まとめ
ハイリスクハイリターンを求めるリズカーレ。彼らを支えるために、バンコがキャッシュレスサービスを提供し、これらがうまく融合して産業が発達した。どんどん、組織の在り方も変わっていった。個人のスケールからパートナーシップへと。それを、紙という産業が支えた。


■2章 15世紀イタリア 簿記革命
1.レオナルドと簿記の父の運命的な出会い
スンマ、神聖比例論を書いた、ルカ先生登場。レオナルドダヴィンチも大きな影響を受ける。彼らが生きた中世は、キリスト教が支配していた「神の時代」。教会の教えは絶対。人間らしさを取り戻す、ルネサンス(再生)があった時代でもある。
商売の繁栄と大規模化。ルネサンスに加え、中世から次の時代へ橋渡しをした要因。個人商店から大組織へ。のちに大規模に儲ける商人たちは教会に並ぶ勢力として少しずつ力をつけていった。その商人たちを助けたのが簿記。

2.処刑を逃れたコジモが支えたルネサンス
コジモディメディチ。「公衆の目を避けて商売せよ」。メディチ家の大先輩の銀行が、国王や貴族の借金踏み倒しにより、破綻した過去がある。楽な融資で儲けようとはせず、地道に儲けるほうが良い。ということで与信管理には相当に力を入れていた。メディチ銀行では、各支店に権限移譲しており、今でいう持ち株会社のような組織体系だった。

3.公証人を頼らず自ら記録をつけ始めた商人たち
いままで、船乗りは基本的にプロジェクトベースで、1回ごとに調達、運用、現金化して解散という無駄の多いやりかた。なので、だんだんと長く商売を続けるようになってくる。家族親族中心の組織から、仲間中心の組織に変わってきた。バランスシートでいえば、右下の出資者が、「家族・親族」から「仲間」へと変化してきたということ。こうなると、裏切り者が現れるようになる。そのため、記録を残すことに関してとても熱心になった。その「自ら記録を残していく」こと、それが「簿記」へとつながってくる。正しい帳簿のつけ方は、ルカ先生のスンマに27ページ、書かれていた。この内容は、商人たちにとってとても頼もしい武器となった。
帳簿を正しくつけるメリットはふたつ。ひとつは、対外的な証拠の役目を果たすこと。取引を記録し保存することで相手に対抗できる。もうひとつは、儲けを明らかにできること。儲けの分配について、トラブルを減らす役割を果たす。

4.簿記革命とメディチ銀行の終わり
簿記は記録の正確性を保証するが、経営の適正性や経営者の詳細までを保証するものではない。メディチ銀行は、結局孫の代で、イギリス王へ融資をし、踏み倒されたことで破綻した。
メディチ:嫉妬は雑草のようなものだ、決して水を与えてはいけない
ダヴィンチ:徳は、生まれると同時に反対側の嫉妬を生む
どこの国や会社でも、落ち目になればなるほど地位にしがみつく輩が増え、嫉妬や足の引っ張り合いが増える。
以降、主戦場はイタリアからスペイン、ポルトガル、オランダへと交代していく。中世から近世へ。

2章まとめ
出資者が親族から仲間へと変化していく中で、裏切りが発生するようになった。儲けの分配が主。なので、記録することがとても重要になり、裏切り者が出た時の対抗になったり、そもそも裏切りが出ないように、儲けを明らかにすることが必要になったきた。ルカ先生のスンマの27ページがとても頼りになる武器となった。
「嫉妬」により、イタリアは他国の後塵を拝すようになった。次の時代へ。


■3章 17世紀オランダ 会社革命
1.神が中心から人間が中心の時代へ
もともと、ローマ数字が使われていたが、非常に面倒。例えば、「777」はローマ数字で「DCCLXXVII」と表記する。四則演算をする際、チョー面倒。なので、使いやすさの面から、アラビア数字が使用されるようになった。これがローマとの訣別のひとつとなった。神の支配していた世界を、自分たちの手へと取り戻す・・・数量革命。簿記もこのうちの一つといえる。五線譜がメロディーというカタチのないものを可視化する技術とすれば、簿記は儲けというつかみどころのないものを可視化する技術。
16世紀のオランダは、カトリック色の強いスペインの支配下にあったが、宗教改革によりプロテスタントが増えていた。この新教徒たちをスペインが弾圧したことで、反発、それが独立戦争へとつながった。勝利した北部7州はネーデルランド連邦共和国として独立宣言をし、このオランダに商人たちがヨーロッパ各地から押し寄せるようになった。

2.レンブラントとオランダの栄光
オランダは、プロテスタントを中心とした商人の国。特にカルヴァン派では、神が与えたもうた職業に励むことが救済への道だとされており、商売に励み儲けることは奨励される行為だった。宗教に対する寛容さは、金儲けを追求する合理的精神の裏返しでもあった。オランダのアムステルダムでは、商人たちと情報が集まることで、多くの取引が行われ、市場ができるようになり、市場ができれば商人と情報が集まる・・・という好循環が生まれた。チューリップバブルもこのころ。珍しい色の球根が人々を熱狂させ、価格調整メカニズムによってバブルが発生。バブルは、珍しい色のチューリップのごとく、新しいテクノロジーが登場した直後に発生することが多いようだ。
世界で初めての株式会社と呼ばれる東インド会社は、オランダで1602年に設立された。

3.オランダで誕生した株式会社とストレンジャー株主
オランダは考えた。いまのように小さな会社が船を出しては沈み、を繰り返していては無駄が多すぎる。もっとカネをかけて安全かつ大砲を備えた強力な船を作り、スペインとポルトガルをやっつけよう。船を往復させるだけではなく、インドに現地拠点を作り、そこから商売を大々的に展開しよう。こうなると、大金が必要で、資金を長期的に調達する必要がある。そのために用意された組織がオランダの東インド会社(VOC)。
船の商売から陸の商売になるにつれ、組織は当座企業から継続企業へと変化していった。VOCは、軍隊を置き貨幣の鋳造までやっていた。もはや国家と呼んでもいいくらい。さておき、長期的に大金を調達する必要がでてきたので、資金調達を「見ず知らずの他人」からも行うようにした。これがストレンジャー株主。バランスシートの右下に、株主が登場するということ。そうなると、経営の仕組みが大きく変わる。「所有と経営が分離」された環境であり、ストレンジャー株主は儲けを望んで投資をする。そんな彼らを満足させるには、事業の儲けをきちんと計算すること、儲けの相当分を出資比率に応じて分配すること、のふたつが必要。
正しい計算と分配はストレンジャー株主から資金を預かる以上、果たさねばならない最低限の責任。儲けの報告(=account for)が会計acountingの語源。
遠洋航海はハイリスクハイリターン。無限責任では事業への出資を募ることが難しいと考えたVOCは、有限責任制度を用意した。出資金以上の負担を求めないということ。有限責任によって出資を集め、所有と経営の分離の体制を作った。それでVOCは人気になったが、さらにそれを転売できる市場があったことも人気に拍車をかけた。いわゆる証券取引所のようなもの。インカムゲインキャピタルゲインのどちらも選ぶことができる。

4.短命に終わったオランダ時代
VOCの成功は、簿記、株式会社、証券取引所によって支えられていた。英蘭戦争によって転落したと考えられているが、次の3つも破綻の要因とされている。ずさんな会計計算や報告:未成熟だった会計制度、高すぎた株主への配当:内部留保の不足と借入体質、不正や盗難に対するチェック機能の甘さ:ガバナンス機能の不足。資金調達には成功したが、運用については成功しなかったということ。現在の会計制度や理論はこの3つを克服するように発展してきたことが分かる。次の3つ。
ずさんな会計計算や報告:財務会計制度の改善と管理会計機能の充実
高すぎた株主への配当:コーポレートファイナンス理論の構築
不正や盗難に対するチェック機能の甘さ:コーポレートガバナンスの整備

3章まとめ
イタリアの次の主役はオランダ。プロテスタントが多く、商売が奨励されていたことが大きな要因のひとつ。人が集まり、情報が集まり、市場が形成されていくという、好循環ができる。今までの航海は非効率で、もっと効率的に航海できないかということで、VOCが設立。国家といえるレベルで活動をしていた。純資産を仲間から、見ず知らずの人から調達する必要が出てきたので、事業の儲けをきちんと計算すること、儲けの相当分を出資比率できちんと分配することが求められた。また、ハイリスクハイリターンなので、有限責任制度も取り入れた。VOCはとても人気だったが、運用については成功せず、これでオランダの時代は終わった。


●第二部 財務会計の歴史 ~3つの発明「蒸気機関車」「蒸気船」「自動車」~  イギリスからアメリ
■4章 19世紀イギリス 利益革命
1.石ころの活用から世界トップへ躍り出たイギリス
16世紀は慢性的な木材不足。政府から制限令が出るほど。そこから、黒いダイヤと呼ばれる、石炭が発見される。しかし、地下水が邪魔で、効率的に石炭を採掘できない。機会が必要ということで、ワットが蒸気機関を開発する。そこから、イギリスの産業革命が始まる。

2.蒸気機関車のはじまりと固定資産
蒸気機関車の登場で、鉄道会社が発足した。もともと、運河会社もあったが、運河に代わる交通機関として、鉄道会社は力を伸ばしていった。この鉄道会社が、財務会計管理会計の歴史を変えた。今までのビジネスとは大きく異なる点・・・それは、開業までの初期投資があまりにもデカいこと。開業は、土地、レール、枕木、車両、駅舎、各種設備といった、固定資産(Fixed Assets)がそろわないと、始めることができない。

3.画家も株主も興奮した鉄道狂時代
鉄道会社の最大の特徴は、固定資産が多いこと。棚卸資産として在庫がほとんど存在せず、固定資産を長期的に利用することで稼ぐビジネスモデル。このような巨大な固定資産を持つ会社は、資金調達の方法を工夫しなくてはならない。日々の運賃収入しかなく、登場したばかりで期待した収入が得られるかどうか、わからない。このような状況で、借入金に頼るのは危険。ということで、借入に頼りすぎることなく、株主によって、資金を調達しなさいというお達しがあった。
鉄道会社にとっても毎年儲けを出すのは簡単ではない。特に開業して間もなくの時期は、投資がかさむためなかなか儲けが出にくい。ルール違反は糾弾される。だったら、新しいルールを作ってしまえばいいんじゃね?ということで、ここで、「減価償却」という新ルールを採用した

4.19世紀の鉄道会社からはじまった「利益」
鉄道会社から一般化した減価償却
鉄道会社の場合、あまりにも固定資産への投資が大きいため、この支出を家計簿的に処理をしてしまうと、投資した期は赤字になる。反対に、投資がない期は黒字になる。これだと、いつの時期に株主だったかによって、不公平が生じる。これでは具合が悪い。もっと、儲けを「平準化」して、安定的に配当できる方法がないか?を模索した。その結果が、減価償却。支出を全額「支出した期」に負担させるのではなく、そこから数年をかけて「費用」として負担させるという考え方。これによって支出が平準化され、巨額の固定資産投資をしても「儲け=利益」が出やすくなる。この減価償却によって、「設備投資をしても株主に配当ができる」ようになった。鉄道会社はこのように理論づけし、「機関車は長期的に使用するものだから、長期的に費用計上するのが合理的である」という理屈をこしらえた。
この減価償却の誕生は、会計の歴史の中で重要なターニングポイントだったと考えられる。なぜなら、会計上の儲けは収支から離れ、「利益」というカタチで計算されるようになったため。もともと、「現金主義会計」である「収入ー支出=収支」だったものが、儲けの計算が「発生主義会計」である「収益ー費用=利益」という進化を遂げた、ということ。
大きな流れは次の通り
産業革命による固定資産の増加→減価償却の登場→利益計算の登場
収入・支出から離れ、いかに業績を適切に表現する「収益・費用」の計算を行うか、これが企業会計の進化の歴史。これが引当金工事進行基準などの考えに展開されていく。
こうして、決算書が「自分のため」から「株主のため」というようにどんどん進化していった。

4章まとめ
産業革命から、固定資産を長期的に使用することで利益を生むビジネスをする鉄道会社が生まれた。そのビジネスは、投資額がとても大きいため、投資の有無による期によって、儲けに大きなばらつきがあった。それを平準化するにはどうしたらいいか。投資を、投資した期に全額計上するのではなく、数年にわたって計上すれば、平準化される。そうすれば、儲けも平準化でき、安定的に株主に配当ができる。これが、減価償却。この減価償却は収支の考え方を変えるものだった。儲けが「収支」ではなく、「利益」になったこと。平準化するということは、投資でいえば実際に支払った金額と、帳簿上のなくなった金額が異なるということになる。なので、会計上の儲けは紙の上にのみ、表現されることになった。収入・支出がfactであるなら、収益・費用で計算される利益は一種のfictionといえる。


■5章 20世紀アメリカ 投資家革命
1.西の新大陸へ、海を渡った移民と投資マネー
ヨーロッパからアメリカへ、移民が大量に海を渡った。そのきっかけは、ジャガイモ飢饉。移民が大量にアメリカへ移り、ビジネスや投資マネーもアメリカへ移ることになった。ヨーロッパからアメリカの財務情報が手に入りずらかったので、会計士のチャンスがとても広がっていた。破産処理もしていたが、財務の健康状態をチェックする「監査」も、会計士が担うようになってきた。auditはaudioが語源。経営者が株主に説明をするが、そこで「聞く」(チェックする)という図式からきている。

2.崩壊前夜、ニューヨーク・ラプソディ
アメリカ鉄道会社へ流れ込む投資資金。車両の大型化、快適な車両空間、食事を提供する食堂車など、新しいビジネスがどんどん立ち上がった。
鉄道マネーのカネの流れと、バランスシートをめぐるカネのながれはそっくり。「イギリスのカネがアメリカの鉄道へ」を、右の調達から左の運用へ」と重ねればほぼ流れは同じ。
アメリカの鉄道会社はイギリスと異なり、借入金や社債による調達を好んだ。なので、自己資本比率は低く、常に倒産の危険がつきまとった。そのため、経営分析ブームが起こった。とくに、安全性分析に関心が集まったようだ。
経営指標に人が信用できない名残がある。流動比率は、200%以上が望ましいという格言があるが、これは、ウソが混じっていたとしても、200%あれば大丈夫だろう、という人を信用しない時代の名残があるようだ。

3.大悪党ジョー、まさかのSEC初代長官に就任
人々の欲望を飲み込みながら、上がり続ける株式市場。しかし、1929年10月24日の木曜日、暗黒の木曜日を迎え、世界は大恐慌に陥る。(ちなみに、株価が戻ったのは1951年と、22年の歳月を要している。)株価は暴落したが、倉庫の中の食べ物や衣類は、消滅したわけではなく余っている状態・・・。この矛盾をどう解釈し、解決すべきなのか、ケインズは、有効需要をもとにしたマクロ経済学を立ち上げる。この大恐慌を機に、経済、会計、そのほかあらゆる分野の専門家が不況から脱出するための方法を探った。大統領選もその中で行われた。ルーズベルトは、ジョーをSecurities and Exchange Commission:アメリカ証券取引委員会初代長官へと任命した。「泥棒を捕まえるには、泥棒が一番なんだ。」グラス=スティーガル法(預金と投資の間にファイアーフォールを設けること)や、会計制度の改革(株式公開している会社は、厳しい財務報告の体制の義務付けなど)を行った。他にもインサイダー取引の禁止など、公正で透明な証券取引ルールを定めた。これらの結果、「公開企業の会計制度」の根幹は次の3つにまとめることができる。
・経営者はルールに基づいて正しく決算書を作成すること
・正しく作成されたかどうかについては監査を受けること
・決算書を投資家に対してディスクローズすること
証券市場を活発化していくには、初心者がどんどん参入し、安心して株を購入できる仕組みを作ることが必要。そうでないと、新たな株主は増えず、株価が上がらない。なので、投資家の中に、「潜在的な株主」を含めるようにした。パブリック革命である。

4.パブリックとプライベートの大きな分かれ目
株式を公開すれば、所有者は巨額の株式公開益が手に入る。しかし、公開することでパブリックな責任=社会的な責任を負うことになる。キチンとした経営と会計報告が求められる。厳格なルールを適用した決算を四半期ごとに行い、会計士の監査を受け、しっかりとした内部統制の体制まで作らないといけない。公開企業として果たさねばならない義務が厳しくなるにつれ、株式を公開すべきか否かと経営者は考えるようになる。
各社のアニュアルレポート(有価証券報告書)は、EDINET(日本)や、EDGAR(アメリカ)で、無料で見ることができる。
ジョーの活躍によって、アメリカは世界で最も優れた会計基準と監査制度を持つ国として称賛されるようになった。

5章まとめ
ジャガイモ飢饉を発端に、ヨーロッパからアメリカへ人もマネーも移っていった。アメリカの会社をどうやって監査するのか?で、監査がされるようになる。1929年の大恐慌を起点に、マクロ経済学が発表されるなど、回復へ向けて様々方法が検討された。ルーズベルト大統領は、ジョーをSEC初代長官に任命して、公正で透明な証券取引ルールを定めた。パブリック革命ともいえる。これによって、安心な証券市場ができ、アメリカは最も優れた会計基準と監査制度を持つ国として称賛されるようになり、現在に至るといったところ。


■6章 21世紀グローバル 国際革命
1.自動車にのめり込んだ機関車運転士の息子
鉄道→自動車→飛行機と人々の移動手段には劇的な進化があった。それに伴い、ビジネスは飛躍的に発展していった。そのうち、戦争へとつながっていく。圧倒的な軍事力を持つドイツが、イギリスへ攻め込んだ時。ドイツは敗れた。なぜか。レーダーの存在だ。イギリスはレーダを開発、配置し、ドイツ機の来襲をいち早く察知、早めの対応を行ったから。この両国の態度は、「情報の活用」というテーマで捉えることができる。情報を有効な武器とするには、通信技術が必要であり、それが最初に採用されたのはイギリスの鉄道会社であった。それからイギリスは19世紀世界の覇権を手にし始めることになる。

2.海運とITで覇権を握ったイギリスのグローバル戦略
鉄道会社は、脱線や追突といった鉄道事故を避けるために、電信はのどから手が出るほど欲しい技術だった。(ちなみにそれ以前は、「ボール型の信号機」を採用しており、上に上がっていれば進めという合図で、high ballといった。出発進行=さぁ、飲もう!という掛け声のもの)
イギリスは、三角貿易でとても反映した。アフリカから奴隷を、綿花の栽培地として選んだアメリカ南部へ送り込み生産コストを下げ、最終的にイギリスの機械化された工場で綿衣料を完成させる。そして綿衣料や銃をアフリカへ運ぶ。三角貿易体制は、大型蒸気船とそれを活用した海運ネットワークで支えられていた。さらに、通信ネットワークの拡大にも大金を投じ、通信網の整備をおこなった。先のモノに加え、情報の両方を運ぶネットワークを構築した。世界に先駆けて、通信ネットワークを構築したことで、イギリスの懐には莫大な手数料が入るようになった。便利なネットワークを最初に構築したものは儲かる。

3.金融資本市場のグローバル化国際会計基準
ダイムラーベンツ。調達のグローバル化を目指し、ニューヨーク証券取引所への上場を計画した。しかし、会計基準の違いから、「ドイツでは黒字、アメリカでは赤字」という結果になった。グローバル投資が行われる時代には、会計ルールもグローバル化すべきという声が上がる。こうして、会計基準の国際化への取り組みが始まった。国際会計基準は、IFRSが多勢。日本は、日本基準、USギャップ、IFRSの中から選択して決算を行うことになっている。
会計は、その主人公の変化の変遷が重要。イタリアからオランダの東インド会社まで、会計といえばその主人公は自分つまり経営者であった。自らの儲けを明らかにするために存在していた。しかし、イギリスで産業革命が起きた頃から少しずつ変化してきた。ストレンジャー株主の登場。株主のために監査を導入しつつ、しっかりとした財務報告が求められた。続いて、アメリカの大恐慌を発端に投資家保護が掲げられ、ディスクロージャー制度がつくられた。そしてグローバルインベスター(ファンド)が登場すると、投資家に役立つ情報を提供することが会計の目的になっていった。ここにおいて、主人公は自分ではなく、情報を受け取る投資家になっていった。500年の歴史の中で、会計は自分のためから、他人のために行われるよう変化した。
資産評価の、原価か時価にも影響が出てきた。会計の目的を自分たちの利害調整(原価)に置くか、投資家への情報提供(時価)に置くかで、望ましいルールが違ってくる。そして、今後は時価主義の方向。IFRSを決めたイギリスとアメリカはその傾向だから。建物や機械を多く用いる製造業では、それらを原価評価しつつ減価償却を行う。一方の金融業では固定資産が少なく、資産のほとんどは金融資産のため、時価評価の方がなじむ。

4.増えるM&Aキャッシュフロー計算書
出資者は、イタリアの家族や仲間で出資者=経営者だったが、オランダではストレンジャー株主が増え、所有と経営が一致しなくなった。さらに、20世紀になるとグローバルな投資家としてファンドが登場してきた。そしてEBITDAが登場。1年間の儲けのことで、Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, & Amortizationで、利息、税金、減価償却費、償却費を控除する前で計算した利益であること。これらの項目は国によって金額の違いが大きいから。EBITDAであれば、その「その会社の本来の儲け」を表現できると考えられ、M&A取引で注目されるようになった。これは、キャッシュに近い利益であるため。M&Aで重視されるのは、各国発生主義会計の複雑怪奇なルールで計算される利益ではなく、「どれだけカネを稼いだか」というキャッシュ。つまりEBITDAの登場は、M&Aの増加に伴うキャッシュへの回帰現象でもあった。

6章まとめ
イギリスは、モノ(海路)と情報(通信網)のネットワークを牛耳ることで、発展していった。グローバルで資金調達するには、会計ルールもグローバル化が必要で、現在IFRSが優勢となっている。過去、家計簿的なキャッシュフローは、発生主義にともない存在が薄れていたが、M&A増加に伴い、キャッシュへの回帰現象も始まった(EBITDA)。


●第二部まとめ
乗り物の変化(船→鉄道→自動車→飛行機)とともに、ビジネスは大きくなり資金調達も巨額になっていった。会計制度にも変革をもたらし、自分のための会計から他人のための会計になっていった。


●第三部 管理会計ファイナンス ~3つの名曲「ディキシー」「聖者の行進」「イエスタデイ」~  アメリ
■7章 19世紀アメリカ 標準革命
1.南北戦争から大陸横断鉄道へ
連結決算は、アメリカの鉄道会社から始まった。大陸横断鉄道が完成して以降、東西南北、アメリカ全土に続々と鉄道が建設されていく。それらの線路はやがて「連結」されていった。標準サイズのレールによって。そのうち、会社そのものを合併する例も出てきた。経営を傾かせた鉄道会社が他社に買収され始めた。鉄道会社そのものがつながるようになると、決算書もつなぐことが考えられるようになり、19世紀末には連結決算が登場した。
鉄道会社は、ダイヤの作成、安全確保、儲けること・・・これらの複雑な管理を行うため、管区を設定した。広いエリアを管区に分けることで、管区ごとの収益性(原価、売上)を明らかにでき、また管区長の仕事と責任を明確にすることができる。分けることで、分かるようになる。ということ。
アメリカ中に鉄道が一斉に広がることで、同時期に同質的な都市が出来上がり、製造業は同質の製品を大量生産する方向へ向かった。製造現場から始まった革新は向上の原価計算の改革を経て、管理会計という新ジャンルを誕生させることになる。他人のために行われていたアカウンティングは、いまいちど自分のために、に引き戻そうというのが管理会計である。

2.大量生産する工場の分業と原価計算
木製の橋が落ちる事故が多発していることに目を付けたアンドリューカーネギー。高品質の鉄橋を作ることで、注文が殺到した。次の課題は、大量生産。アメリカには職人気質の熟練工はほとんどいない。だとすれば、ド素人の職人でも働けるような工場にするしかない。素人でも大量生産ができる工場・・・「分業」を導入。制作作業をいくつかの工程に分け、それに沿って作業者と機械を順番に配置。これはまさに管区の考え方。そして、作業を「標準化」し、属人的な仕事ぶりを可能な限り排除した。(これって、フォードも同じ考えだったはず)
フレデリックテイラーの科学的管理手法。テイラーが注目した労務費は、材料費と並んで大きな製造コストだった。作業の詳細な分析から時間内に終えるべき課題(タスク)を設定し、高い生産性を達成したものには高い賃率を与える「差別的賃金制度」を主張した。あとは、機械などの減価償却費も大きなコストだった。固定費なので、配賦計算が難しい問題である。製造業で重要なのは、「製品1個を作るのにコストがどのくらいかかっているのか?」である。そうでないと、いくらで売っていいのかわからない。外部との取引から一歩進んで、原価計算という内部の製品原価計算するようになった会計の仕組み。外部の記録から内部計算へ。。。この原価計算は会計の歴史にとって大きなターニングポイントとなった。ここから企業会計は、外部報告の財務会計、内部利用の管理会計という2本立てなった。
さて、固定費の配布は、たくさんつくればつくるほどひとつひとつの金額が薄くなるので、たくさん作れば作るほど製品原価が安くなる、、、ということに気づいた経営者はこぞって、大量生産を行った。

3.ライバルをつぶしながら巨大化する企業
ゴールドラッシュで儲けたのは、金を掘り当てた人でなく、金を掘る人々を相手に商売することで成功した人。そのほか、儲けているのは、一呼吸おいて儲ける方法を考えた者。金を掘る人々を相手に商売することや、開拓者が実らせた果実を資本の論理で合法的に強奪したりすること。ここでいう資本の論理とは、バランスシートの右下を握ったヤツが強い、ということ。株を握ればその会社を支配することができるから。
ジョンロックフェラー。石油精製事業から始め、成功後はすぐさま100か所を超える精製所を買収していく。ライバルをつぶす「水平的統合」をまずは行い、上流から下流までを支配しコストを下げる「垂直的統合」を行った。独占的だが、良い面もあった。石油製品の価格を安定させたこと、石油製品の品質を向上させたこと。企業も連結していった
連結はもともと、経営者が内部管理をするためのものだったが、やがては株主/投資家への情報としても大きな意味があると認識され、外部報告にも取り入れられていった。
決算書の世界標準は、「連結バランスシート、連結損益計算書、連結キャッシュフロー計算書」となった。

4.南部から北部へ旅立つコカ・コーラとジャズ
コカ・コーラアメリカのどこでも同じ味のコーラを飲めることを実現するために、各工場のボトリングについて、品質管理が徹底された。正しい原料、正しい手順、正しく保存するなどすべてに標準を定め、工場に徹底させた。鉄鋼のカーネギー、石油のロックフェラーの工場で編み出された「標準品の大量生産」はコカ・コーラによって一層の進化をし、標準作業は業務マニュアルにまとめられた。

7章まとめ
鉄道がアメリカ全土に広がり、線路は連結され、各社の隆盛とともに会社も連結されていった。同質的な都市が同時に発生することになり、大量生産が始まり、原価計算が始まって、自分のための管理会計が始まった。減価償却費を考えると、大量生産した方がコストが安くなる。大量生産には標準化が求められて、業務マニュアルとしてまとめられることになった。
いつでも儲けるのは、資本の論理を知っている人。


■8章 20世紀アメリカ 管理革命
1.シカゴからはじまったジャズと管理会計の100年史
経営において、効率を高める第一歩はコスト削減。テイラーの科学的管理法を会計に応用した標準原価計算を使い始めた。標準の概念が原価計算に持ち込まれたことになる。工場のレベルを超えて、会社全体を効率よく経営しようとする試みが次に始まった。どうすれば、製造/販売の部門間の協力関係を保ちつつ儲けを出すことができるのか?それが、ロックフェラーの寄付によって再開されたシカゴ大学で、ジェームズマッキンゼー教授の、経営に役立つ会計講座の内容であった。管理会計の講座。そこでは、予算管理(Budgetary Control)が教えられていた。「何台売れるかの予測から、何台生産するべきかを計画することで、在庫を適正化し売り損じを防ぐ。この予算によって、販売/生産の部門間の調整が可能になり、トップが現場を統制することができる。予算管理は、会社レベルで利益を扱う。「コストだけでなく利益を見よ、過去ではなく未来を見よ。」
守りの会計・・・義務(株主と債権者に対し決算書を作成報告することで説明責任を果たす)の会計は、財務会計。ルールを守る実直さが求められる。
攻めの会計・・・自由に設計(経営問題を解決するために経営者が自由に組み立てる)ができる会計。自由な発想が求められる。内部向けなので分かりやすさが何より重要。
過去の実績を計算するだけだった財務会計は、将来利益をシミュレーションするまでに進化した。
マッキンゼーは、管理会計において、重要な型を提供した。それは、計画重視の姿勢。従来の会計が扱わなかった未来の数字が取り込まれている。

2.分けることで分かる「管区」由来のセグメント情報
鉄道会社で用いられた管区は、製造業にも採用された。製品別の採算性を明らかにすることができれば、選択と集中がやりやすくなる。製品別に利益を計算する場合に重要なのは、「製品別に売上を分けるのは簡単でも、コストを分けるのは難しい」ということ。コストは直接費(材料費など)のほか、間接費(本社費、減価償却費など)があり、製品別に割り振らねばならない。割り振り計算の重要性は高まる一方。セグメント情報の有用性は、組織における分権化を推進する効果がある。結果を評価する仕組みがあって初めて任せることができるようになる。それぞれの売上、利益を明確にして業績評価することは、組織の分権化を進める条件。
製品、事業別の利益はどれだけ必要なのか? 悩ましい経営問題だった。

3.フランス系デュポンの起こした管理会計革命
数字に強いデュポン。ROIの高め方を示したのはデュポンだった。デュポンの数値管理の基本は、それぞれの事業の収益性を厳しくチェックすることだった。それまで仕切りが曖昧だった社内組織を、「黒色火薬無煙火薬、ダイナマイト、販売」の4つのセグメントに区分し、セグメント情報を構築することでそれぞれの収益性を計算して業績評価を行った。それまでは業績評価は利益率や原価率で行われるのが一般的だったが、デュポンでは「利益を出すために投資をしているのだから、その投資に見合った利益という視点が重要ではないかと考えた。これがROIである。ROIは、利益/資本だが、これは次のように分解できる。利益/売上(利益率)×売上/資本(資本回転率)。つまり、ROIは、利益率か資本回転率のどちらかを上げることで向上できるということ。デュポンは事業別ROIを経営判断の基本に据えた。目先の利益が見込めてもROIが低ければ投資はしない。黒字であってもROIの低い事業からは撤退することもあった。
短期的に儲けるだけなら利益をもとに判断できるが、設備投資が大きくしかも長期的な成長を考えるならROIの方がふさわしいと考えた。
このデュポンが採用したROIの根本には、「小さな投資で大きな利益を」という基本思想があった。
事業ごとの利益や事業ごとの資産を計算するのは簡単ではない。固定費や共通費をどうやって各部門コストに割り振るかは管理会計上の難問である。
1920年には、デュポンは事業部制組織を採用した。

4.クロスオーバーが始まった音楽と会計
デュポンの経営者は、外部の株主から調達した資金を使い、効率よく利益を出す責任を負う。この効率は、ROEで測る。次に経営者はこの資金を各事業へ投資する。各事業部長はこの資金に対して利益を出す責任を負う。この効率は事業別ROIで測られる。ここでは、「株主-経営者」「経営者-事業部長」の権利会計的な委任関係という「二重の委託関係」が生じている。事業部長は、「投資の大きさに見合った利益」を求められる。売上、利益重視の経営は景気が悪くなると低価格競争に陥ることとなる。
現在は、製造業から情報産業へシフトしてきている。その中で、「型」を見直す時期が来ているのかもしれない。

8章まとめ
予算管理。過去だけでなく未来を管理する。革命的だった。
ROI=利益/売上(利益率)×売上/資本(資本回転率)。目先の利益でなく、長期的な成長を考えるならROIを重視することをデュポンは考えた。共通費などを割り振るのは難題だが、デュポンはそれをクリアし、事業部制組織を世界で初めて採用した。
守りの会計・・・義務(株主と債権者に対し決算書を作成報告することで説明責任を果たす)の会計は、財務会計。ルールを守る実直さが求められる。
攻めの会計・・・自由に設計(経営問題を解決するために経営者が自由に組み立てる)ができる会計。自由な発想が求められる。内部向けなので分かりやすさが何より重要。


■9章 21世紀アメリカ 価値革命
1.マイケルジャクソンに学ぶ価値(バリュー)思考
ビートルズ著作権を会社に譲渡したのが不幸の始まり。その会社は上場したので、誰でも株式を購入できるようになり、資本の論理にさらされることになった。会社の資産であれば、会社のバランスシート右下を握ることで、手に入れることができる。
投資を行う場合に、そこへ支払われるコストに注目するか、そこから得られるリターンに注目するか、この違いは会計上、あまりに重要な論点だ。リターンの計算は、将来のことでもあるので、非常に計算が難しい。できたとしても、客観性を示すのは極めて困難。そこで、リターンを重視する新たな分野が登場してきた。それが企業価値を旗印に掲げるファイナンス

2.企業価値とは何か?
資産評価は、原価、時価の二つの考え方がある。会計の歴史は、取得原価にこだわってきた。会計はもともと、お金の動きを記録するものなので、買ったときにいくら支払ったのか、の「事実」に注目する。これに対し時価は、「仮定」のリターンに基づく評価である。そのため、少し敬遠されてきた。
ただ、企業が長期的に活動するようになり、資産が長期的に保有されるようになると、原価評価はときに、現実離れした金額になってしまう。例えば、はるか昔にタダ同然で取得した土地が急騰し、XX億円になっていたとしたら、果たして原価と時価、どちらが正しい評価額なのか?こうなると、時価の方が正しいのでは?という声が強くなる。近年の国際会計では、時価主義が優勢。
産業シフトによって、隠れた資産が増加した。そもそも資産とは何か?という根本的な問題が出てきた。リースの機材は?優秀な人材は?独自ノウハウやネットワークの強みは?これらは原則としてバランスシートには計上されない。情報、サービス、金融業にはあまり向いていない。
会社の買収に関して簡単に歴史を振り返ると、19世紀アメリカではライバルをつぶし、コストを下げるために行われた(石油のロックフェラー)。20世紀前半は、権利を手に入れるためだった(GEのエジソンの発明など)。そして20世紀後半は、隠れ資産を手に入れる買収が増えていった(MJのビートルズの楽曲など)。買う側は、「高額の現金で、少ない資産を買う」ことになるため、バランスシートには差額分の空白が出る。それが「のれん」。資産の部に計上されたのれんは、買収に当たって上乗せされたプレミアムを意味する。では、この買取価格はどのように決まるのか?それは、「期待リターン」。それこそが資産の価値と考える。期待リターンは、将来のキャッシュフローの予想から計算される。すなわち、会社を買うということは、その会社から生まれるキャッシュを買うということ。将来のキャッシュを重視するというこの新しい発想は、伝統的な会計の枠組みを超えるもの。会計上にいう時価主義すら飛び越えて、将来キャッシュフローを複数年にわたり計算するということなのだ。これは、コーポレートファイナンスと呼ばれる(単にファイナンスと呼ぶことが多い)。
ファイナンスの重要な狙いは、「会社の価値」を明らかにすること。会社の価値は、次の2ステップで、理論的に企業価値を計算する。
①会社買収後の将来キャッシュフローを見積もる
②将来キャッシュフローを現在価値に割引計算する
ファイナンスは、これまでの会計の視点にはなかった、「企業価値を上げるためには、将来キャッシュフローを増やすことが必要」という視点を提供してくれた。将来キャッシュフローを増やすために、投資の選択管理、在庫売掛買掛の効率的な管理も必要となり、また現在価値に割引計算を行うための「資本コスト」を下げるためには、資金調達の方法を工夫したり、IR活動の充実などを行う必要がある。時間軸を過去から未来へ移し、数字にあるべき論を持ち込んだファイナンスは会計を一歩前に進める役目を果たした。

3.投資銀行とファンドの活躍を支えたファイナンス
ゴールドマンサックスなどは、バランスシート右側の「お手伝い」から、「所有者」へと立場を変え、企業価値を正しく評価する能力と、それを高めるノウハウによって、株式公開、売却、合併などで収益を上げていった。企業価値が「将来キャッシュフローの合計」と定義されたことで、企業価値の増やし方が明らかになった。例えば、「収益性評価に基づく事業の選別(NPV法、IRR法)」、「割引に用いる資本コストの計算(CAPM、WACC)」「配当・自社株買い政策」など。
IFRSでは「のれん」について償却不要としているが、それは減価償却的な規則的償却を不要としているだけであって、「将来キャッシュフロー」が著しく下落した場合には、減損処理をすることを求めている。つまり、「価値」が下落した場合には、その下落分を一気に減損処理しなさいということで、背景にファイナンス理論があることは明白である。
減損会計は、将来キャッシュフローの見積もりが著しく下落した場合、その額、つまり価値相当額まで評価額を引き下げ、評価損を計上しなければならない。
これまでの簿記や決算書にはなかった「未来」を対象とする管理会計ファイナンスの登場によって、数字の強さはひとつ上のレベルに上がった。それは、帳簿を作る、そして決算書を読む、そんな過去の流れから、ファイナンスの登場によって、未来を描くことができるようになった。

4.うつろいやすい価値を求め、さまよう私たち
「効率」重視が行き過ぎると、縮小均衡(価格競争など)に陥る危険がある。コストを削り、資産を圧縮すれば目先のROIはすぐに上昇する。しかし、それでは長期的な成長は望めない。そのことに気づいた経営者は、ファイナンス理論の助けを借りつつ、「価値」を重視し始めた。ここで注目される企業価値は「将来キャッシュフローの合計」。
思えば、鉄道が完成し大量生産が始まった19世紀後半、カーネギーやロックフェラーらは「規模」を目指した。続いて、企業規模が拡大すると、多角化が始まり、デュポンは「効率」を目指すようになった。そしてビートルズが登場した情報化時代、今度は「価値」が経営のキーワードになった。企業価値志向には、「規模から効率」の段階でいったん縮みがちになった経営を「効率から価値」への転換によって拡大・成長路線に戻そうという意気込みが感じられる。

9章まとめ
企業価値とは、「将来キャッシュフローの合計」のことである。その会社が将来、どれだけのキャッシュを生み出すのか、ということ。ファイナンスの登場で未来を描けるようになり、長期的な成長の計画を立てれるようになった。目指す方向性が明確になったと考えらえる。要は、企業価値を向上させることが経営者としての役目の一つということだろう。
のれんは、買収時に上乗せされたプレミアム。これを上回るキャッシュを創出できると考えたから、プレミアム価格を乗せて買収をしているというわけ。M&Aで重要。


【この本を読んだ感想やまとめ】
会計の歴史と、絵画やミュージックの歴史をうまく合わせ、読み物としてとても面白いものだった。会計の本質的な部分にも触れているので、核と周辺を知ることで理解が深まったような気がする。EBITDAとか、WACCとかも出てきて、今後勉強する際にかなり役立ちそうだと感じた。
ただ、管理会計ファイナンスの明確な違いがよくわからなかった。どちらも将来の数値を扱うものだけど、それ以外になにかあるのかな。ファイナンスは、将来のキャッシュフローとか企業価値のことを扱う分野ってことかな。

【今後活かせること、具体的なアクション】
・解像度が上がったことによる、理解度促進
・簿記や会計の勉強で、自分の言葉で説明ができるようにしやすくなった
・診断士の勉強が頑張れそう

【気に入った文章・言葉を3つ】
・五線譜がメロディーというカタチのないものを可視化する技術とすれば、簿記は儲けというつかみどころのないものを可視化する技術。
・ROI=利益/売上(利益率)×売上/資本(資本回転率)。目先の利益でなく、長期的な成長を考えるならROIを重視
企業価値とは、「将来キャッシュフローの合計」のこと

【こんな人に読んでほしい】
・会計を易しく学びたい人
・会計と歴史ってどういうこと?って思った人
・簿記とか勉強したけど、その背景はよくわからん!という人
減価償却費の生まれた背景とその意味を知りたい人

 

 

 

 

読書備忘録#8_確率面白すぎる知恵本

読書備忘録#8_確率 面白すぎる知恵本
博学こだわり倶楽部

【読もうと思った動機】
確率って、よくわからない。例えば、当たる確率10%だったら、10回試行すれば、当たるってこと?実際はそうではない。手術の成功確率90%って、なんだ?あと、数年前に友人から「モンティホール問題」なる問題を出されて、とても面白いと思ったので、一度易しい確率の本を読んでみたいと思ったので手に取った。NEWTONのような科学雑誌だと固すぎるので、文庫本のこの本にした。

【概要】
身近にある「確率」についての説明や、直感から相当かけ離れた実態の確率など、多岐にわたる確率について数学的な裏付けを持って説明している。大数の法則って、恐れ多い。確率に支配されているといっても過言ではないと感じさせられた。なお、面白すぎるかどうかは、個人によります。私は、とても面白かった。


■1章 確率がわかれば迷いはなくなる
・確率の研究はギャンブルから始まった
話の発端は、ギャンブル好きな貴族のメレと数学者のパスカルから始まった。メレが、パスカルにこう相談した。「友人と同じ金額ずつを出し合って、先に3勝した方がすべての掛け金をもらえるという賭けをした。ところが、時間の関係で途中でやめることになった。その時点でメレが2勝、友人が1勝している状態だった。賭け金をどう分配するか迷った結果、メレが2/3、友人が1/3としたのだが、果たしてこれでよかったのだろうか。」
さて、あなたならどうするだろうか。
ひとつの考え方として、勝負がついていないため、賭け金それぞれに返すという方法もあるが、これは王手をかけているメレは納得しないだろう。メレのように、2:1で分けるというものあるが、仮に友人が0勝だった場合に、勝負がついていないのに、メレが総取りするということになり、適切な配分とは言えない。パスカルは次のように解決した。
現在、メレが2勝1敗なので、次の勝負でメレが勝てば3勝となりすべての賭け金をもらえる。次の勝負でメレが負けた場合、二人とも2勝ずつになり、そのあとメレが勝てば3勝となりメレの勝ち、負ければ友人が3勝となり友人の勝ちとなる。二人のギャンブルの腕を同じだと仮定すると、お互いの勝率は1/2。このように考えていくと、メレが続きの4回戦で勝つ確率は1/2、4回戦で負けて5回戦で勝つ確率は1/4、4回戦で負けて5回戦で負ける確率も1/4となる。
したがって、2勝1敗だったメレが最終的に勝つ確率は1/2+1/4=3/4。Aが勝つ確率は1/4となる。そのため、この場合メレと友人の分配は3:1とするのが合理的であるというものだった。
確率論は、フェルマーなどの数学者が精力的に研究した学問だった。
大数の法則とは:試行の回数を増やせば増やすほど、統計的確率は理論値である数学的確率に近づいてくこと。
・「ここにちょっと変わったオセロの石が3つあります。ひとつは、片面が白、片面が黒という石。2つ目は両面とも白。3つ目は両面とも黒。これらの石の表と裏は、テーブルに置かれているときには区別はつきません。さて、この3つの石を袋の中に入れてよく振って、反対側の面が見えないようにひとつ取り出し、テーブルに置いたところ、白でした。それでは、この石の裏面は、黒、それとも白、どちらと答えた方が当たる確率が高いでしょうか?
答えは白。

石の色に番号を振る
白白、黒黒、白黒
12 34 56

袋から出した石が・・

↓パターン
白1 白2、白5
    ↓裏
白2 白1 黒6

・コイン投げで10回連続、表が出た。さて、次に表と裏のどちらが出る確率が高いか?
同じ。コイン投げは、直前の結果に影響されない「独立事象」のため。ギャンブラーの誤謬。確率は、不確定な事象について、0~100%の間で「起こりやすさ」の予測を立てることはできる。しかし、次に「起こる」ことを当てることはできない。
・当たりの出やすい宝くじ売り場は本当にあるか?
結論、ある。ただし、そこで買うと当たりやすい、ということではない。単に販売枚数に比例しているだけ。
・不思議な巡り合わせが立て続けに身に起こるワケ
例えば、不幸が立て続けに続いたり。それは確率論的にはただの偶然。ポアソンクランピング。ポアソンクランピングとは、たくさんの事象の一部が全くの偶然によって寄り集まっている状態のこと。そこには何の因果関係も結びつきもない。いわゆる、ランダム性のこと。例えば同量の白と黒の球を箱に入れて適当に混ぜた時に、まだらに白黒が点在するような状態。白が濃いところもあれば、均等になっている個所もある。ちなみに、この滅多に起こりえない希少な事象の発生数の確率分布は「ポアソン分布」と呼ばれている。

1章まとめ
ある事象が起こった時に、これは確率的にどの程度が見積もることで、精神衛生上、安らかになることができますね。確率的な思考ってのは、結構大切なんだと認識した。


■2章 知ってると得する 身近なおもしろ確率
・40人のクラスに、誕生日が同じ人がいる確率は約90%。23人の集団で約50%になる。57人のところで、99%を超える。一般的な直感とは異なる結果になるため、「誕生日のパラドックス」と呼ばれるほど。
・降水確率0%でも、雨が降ることはあるか?
ある。降水確率とは、過去の気象データと比較して、今後の一定の時間内に1mm以上の雨または雪がどのくらいの割合で降るかを統計的確率で表したもの。統計的な処理をされている。過去実績が0~4%であれば降水確率は0%、5~14%であれば、降水確率は10%ということになる。なので、降水確率0%というのは、100回の内4回くらいは1mm以上の雨が降ってもおかしくない、ということ。
・「二度あることは三度ある」は確率的に正しい?
割と正しいといえる。同じようなことが二度、三度と連続で起こる例を、コイン投げで考えてみる。表裏が出る確率はそれぞれ1/2。コイン投げを5回連続して投げたとき、表裏の出方のパターンは32通り。そのうち、表、裏が交互にでるのは、「表裏表裏表」「裏表裏表裏」の2通りしかない。6.25%。一方、表か裏が3回以上連続して出る組み合わせは、16通りもある。50%。二度あることは三度あるというのは、よく言ったもの。ポアソンクランピング。
・サッカーの試合で”番狂わせ”が起こる確率は?
低い確率で起こる事象で、その事象がひょっとしたら起こるかもしれない状況が頻繁にあり、それぞれの事象は互いに独立しているような場合、その事象がある一定区間(時間、場所、距離など)の中で偶然に起こる回数は、「ポアソン分布」と呼ばれる分布になるといわれている。例えば、ある交差点で1時間に起こる事故の件数や、1日に受け取る電子メール件数とか、1分間のウェサーバーへのアクセス数とか。サッカーの特典もこのひとつ。サッカーで1試合の得点の確率分布がポアソン分布になっているという前提に立って、サッカーで発生する番狂わせの確率を計算してみると・・・
前提として、AチームvsBチームとしたとき、Aチームの平均点は1点、Bチームはその2倍の2点とする。この場合、Aが勝つ確率は、なんと18.3%もあった。得点力みに2倍のさがあったとしても、5回に1回くらいは番狂わせが起きるということがこの計算からも言える。引き分けは、21.2%となる。なので、Bチームが順当に勝つ確率は、100-(18.3+21.2)=60.5%程度ということになる。
ただしこれは1点、2点という差が小さい場合で、Aが5点、Bが10点といった場合には、Bの勝率は88.0%。Aが10点、Bが20点といった場合は、Bチームの勝率は96.1%にもなる(ラグビーがこれに近い)。だから、ラグビーは番狂わせが起きにくいスポーツといわれているんだな。 要するに、サッカーは点が入りにくいからこそ、番狂わせが起こりやすいということが確率論からも言える。弱小国が強豪国に買ってしまうような番狂わせが起こりやすいから、サポーターは狂喜乱舞する。世界で愛されている理由はここにあるのかもしれない。

2章まとめ
誕生日のパラドックスや、降水確率など、身近な例がたくさんあって興味深い。直感と反する確率や、番狂わせを確率で表現できるなど、とても奥深い学問だと再認識した。ここには書かなかったけれど、相撲の巴戦は控えが不利などこれも確率で表現できる。あくまで全員が同じ実力って前提だけど。こういうのに興味がある人と話ができたら楽しいだろうな。


■3章 確率で解き明かすツキの正体とは
・福引は先に引くべき?後から引くべき?これは、学校で習った気がする。いつでも一緒。同時に引いても一緒。たしか、条件付き確率だったような・・・。
・ポーカーの役はどのくらいの確率でできるか?ここでは、単純化するために、配った際に役ができている確率を計算する。ロイヤルストレートフラッシュは、4通りしかない。52枚のトランプから5枚を取り出す組み合わせの総数は、260万。つまり、4/260万=0.00015%らしい。ストレートフラッシュは0.0014%、フォーカードは0.02%、フルハウスで0.14%、フラッシュは0.2%でストレートは0.4%。スリーカードが2.1%でツーペアが4.8%とのこと。ワンペアは、42%。ノーペアはおよそ50%。ワンペアとノーペアで92%にのぼる。乱暴に言えば、ポーカーの大部分はワンぺアができるかできないか、できたペアの数字はどうか?という、「確率的には」実に単純な勝負であるといえる。
ジャンボ宝くじ1枚300円の期待値は、47.6%(143円)。自分が特別だと思う人は買えばいいという数値だと思う。必ず誰かは当たるシステムではあるし。
・ルーレットでカジノ側が絶対に損をしない理由。1~36までの赤黒に割り振られた数字と、0と00というどちらでもない色の合計38個の数字の中から、球がどの数字に入るか当てるゲーム。期待値は、94.7%。どの賭け方でも、94.7%になるように設定されている。言い方を変えれば、平均して5.3円、客は損するし、胴元は得をする仕組みになっている。だから、カジノの企業努力はひとつ。できるだけ長く、たくさんのお客にたくさんの回数の賭けごとをしてもらうこと。だって、大数の法則にしたがうから。
ちなみに、日本の公営ギャンブル(競馬、競輪など)の期待値は、おおむね75%に設定されているらしい。スロットマシンやルーレットが約95%、バカラは約98%。
・ギャンブルで元手を増やす最高の作戦とは? 例えば、ここに100万円の軍資金があるとする。これを、「当たる確率が1/2で勝ったら掛け金が2倍」というルールの勝負をして、「増やす」方法を考える。5万とか10万とか等分してもよいし、60万円とか一気にかけてもよい。  結論、これは上記のことからもわかるように、100万円全額一発勝負。この場合は、期待値は常に100万円となるが、実際には客側が不利。大数の法則は絶対。どんな場合でも、続けないこと、回数を重ねないことが賭けの心得として非常に重要なのだ。
・ツキの正体とは。 ツキとは、事象の偏りのこと。作為なくランダムに起こる現象こそ、実は偏りが多い。大数の法則は絶対だが、それは十分に回数が多い場合に言えること。回数が少ない場合には、理論上の期待値と現実の間にかなりの隔たりが生じる。この幅を分散と呼ぶ。大数の法則が十分に成り立たないような段階では、分散という名の偏りが目立ってしまう。ツキは偏り。予測したり、引き寄せたり、コントロールできたりするものではない。ポアソンクランピングのことよね。

3章まとめ
ギャンブルには期待値があって、必ず胴元が儲かるようにできている。しかし、公営ギャンブルで期待値が75%とは・・・宝くじに至っては50%に行かない。大数の法則を知っていれば、やらないよな。夢という期待を買って、ワクワクするという時間を買っていると考える・・・のかな?ツキはポアソンクランピングのこと。大数の法則は、十分に試行回数が多くないと成り立たない。勉強になりました。


■4章 ビジネスで、実生活で・・・大活躍の確率論
ベイズ推定・・・人間の推論を織り込んで主観的に確率をとらえる考え方。人間社会は常に環境が変化していて、厳密な統計的確率にとらわれすぎると適用範囲が狭くて使い勝手がよくない。そもそも、不確実性は人が感じるもの。そうであれば、もっと人がその不確実性を予測する思考形式になじむやり方で確率を捉えた方がいいんじゃないか、というところから生まれた。特徴というかスタンスとして、データが少なくても、たとえ主観的な推測が入っても、多少いい加減な確率と言えども予測できた方がよい。精度はあとから上げていけばいいじゃないか、というものがある。事前確率を設定し、事後確率を取得する。その確からしさは繰り返すことで精度が上がっていく。
このベイズ推定は、スパム対策にも使用されている。スパム群と分かっているメールの集まりと、まともなメール群の集まりを調べて、比較する。その結果から、スパムの兆候を示す言葉と特徴のデータベースを構築し、スパムかそうでないかの「もっともらしさ」の比率をベイズ推定によって割り出す。そしてフィルターされる。(これって、ディープラーニングじゃね?)。また、主要検索エンジンのグーグルにも、ベイズ推定が使われ、高い確率で適切なデータを探し当てる検索サービスを提供している。
モンティホール問題・・・アメリカのテレビ番組から生まれた。モンティホールはその司会者の名前。その番組では、3つのドアが用意されている。このうち、1つのドアの向こうには豪華賞品が置かれていて、回答者はそれを当てたら商品がもらえる。どれが賞品のドアなのかモンティホールしかしらない。参加者はまず、「どのドアに賞品があると思いますか?」と聞かれて、3つのドアからこれだと思うものをひとつ選択する。すると、モンティホールは別のドアを開けて見せて、「あなたが選ばなかったこちらのドアには賞品はありません。」と示してこう続けます。「あなたが最初に決めたドアのままでもいいし、もう一方のドアに変えても構わない。最終的に選んだドアの向こうに賞品があれば、それはあなたのもの。さて、あなたはどちらを選びますか?」
この問題のポイントは、モンティホールが別のドアを開けて見せて、そこに賞品がないと判明した段階で確率がどう、変化したか、ということ。
答えは、最初に選んだドアから変更した方が、2倍の確率で賞品が手に入る。
説明。
仮に、Aのドアが当たりだった場合・・
A 当たり
B 外れ
C 外れ
これを、「変更した」場合、次のようになる。(「→」変更)
A 当たり → 外れ
B 外れ  → 当たり
C 外れ  → 当たり

このとき、Aを最初に選んだ場合は外れてしまう。しかし、Bを選んだ場合は、モンティホールはCを必ずオープンにするので、変更したら賞品をgetできる。Cを最初に選んでもBを選んだ時と同様。
したがって、変更した方が当たる確率は2/3となる。
直感と異なる。おもしれぇ~
ちなみに、パロンドのパラドックスというものある。期待値が1以下のA、Bというゲームがあるとする。それで、Cというゲームは、AとBの組み合わせで、なんと期待値が1以上になる場合があるらしい!マジか!

・2割の働きアリと、8割のさぼっているアリ。ゲーム理論で説明ができる。点数にもよるが、さぼった方が労せずして成果を得ることができる。このバランスがとられるまで、まじめとさぼりの比率が収束される。
・二つの封筒のパラドックス・・・あなたの目の前には小切手の入った2つの封筒があります。金額は明かされていませんが、片方の封筒には、もう一方の2倍の金額の小切手が入っています。今、あなたが一方の封筒を開けてみたところ、中には100万円の小切手がはいっていました。ここであなたは、そのままその封筒をもらってもいいし、もう一方に替えることもできます。さて、あなたは最初に選択した封筒をもらいますか?それとも新しい封筒をもらいますか?」
期待値を計算する。変更すれば、50%の確率でそれぞれ50万円、もしくは200万円になる。よって、50×1/2+200×1/2=125万円。したがって、変えるべきだ!
・・・これって、何かおかしい。だって、変更したら、期待値があがるということは、どちらかを選択する前から、封筒を交換した方がよいという結論が出ているということになる。奇妙だな?
・人はリスクを伴う決定において、なぜかバイアスがかかった意思決定をしてしまう。次の二つの質問に答えてみよう。
【質問1】
あなたはゲーム大会で優勝しました。賞金の受け取り方には、A,Bの二つの方法が用意されています。あなたはどちらを選びますか?
A:100万円が確実にもらえる
B:コインを投げて表なら200万円がもらえるが、裏が出たらなにも得られない。
【質問2】
あなたは200万円の負債をかかえています。A,Bのどちらの選択肢を選びますか?
A:無条件で負債が半分減額され、負債総額が100万円となる。
B:コインを投げたて表が出たら支払いが全額免除されるが、裏が出たら負債額は変わらない。
大半の人は質問1ではAを選び、質問2ではBを選ぶといわれている。どうやら人間には、目の前の利益があるときは、その利益が手に入らなくなるリスクを避けることを第一に考えて安全確実な道を選択し、逆に損失に対したときは、絶対に損をしたくないという感情に押されて、損失そのものを回避しようとする傾向がある。つまり、同じ金額であっても、利益と損失では損失の方がより、強く印象に残るというわけ。このような心理的傾向を考慮した意思決定論を、プロスペクト理論と呼ぶ。
・不確実性を味方にすることができる。アンケート調査で正直な回答を聞き出す方法。答えにくい質問(中学生を対象にした性体験の有無など)をする際に、コインを渡し、「コインの表が出た人と、性体験のある人は手を挙げてください」とすれば、表が出た人も手を挙げるので、素知らぬ顔で挙手すれば真実は誰にもわからない。
・どちらにするか迷ったときは、効用関数で判断する。コイン投げという確率50%ではなく、100%や90%・・・としていった場合、どこが分岐点になるか。これは人それぞれ。効用とは、ミクロ経済学の消費理論で用いられる用語で、人が財を受けることによって得る心理的満足感の度合いのこと。本来、確率は数学的事実であり、そこに主観が入り込む余地はない。しかし、ハズレが10%でも不満足な人はいるし、ハズレが25%までなら満足できる領域の人もいる。ある確率が満足か不満足かは、その人の価値判断によって変わる。つまり、確率的思考を上手に使いこなすには、それぞれの結末に至る確率を知ったうえで、その結末があなたにとって望ましいか否か、効用を考慮して最終判断することが大切といえる。

4章まとめ
ベイズ推定は、現代のIT社会にはなくてはならない理論。プロスペクト理論は投資の世界にも通ずる。モンティホールはいろんな意見が出そうでおもしろい。実世界では、効用で判断するのが望ましいってことか。


■5章 ダマされちゃいけない!統計数字のトリック
・朝食を食べる子供は成績がいいって本当?朝食を毎日食べているという子供は、食べない子供よりもテストの正答率が高い傾向があるという記事があった。たしかに、相関はあるが、因果関係があるかどうかは別。朝食を食べれば、脳が活性化し、しっかり勉強ができるという推論は成り立つが、別の調査できちんと裏付ける必要がある。相関関係=因果関係ではない。この例で行くと、他にも家族と学校での出来事について話をする、平日にテレビやビデオを見る時間は1時間未満 、という子供の正答率が高くなっている。よって、きちんとした生活習慣が身についていることが因果かもしれない。
・疑似相関にだまされるな。少年による凶悪犯罪が起こると、インターネットやゲームが健全な育成を妨げるとする糾弾キャンペーンが始まる。メディアでは、家庭で格闘ゲームをする時間が長い子供ほど、暴力行動に走りやすい傾向にあると問題視された。しかし、別の統計ではテレビゲームが存在しなかった時代よりもそれ以後の方が明らかに犯罪件数や割合は減少しており、ゲームやインターネットの進歩と少年犯罪の件数には相関がないと指摘する専門家はたくさんいる。これはまさに疑似相関といえる。
・損失を利益に見せかける数字のマジック。あなたが製品管理の責任者として、部下から以下の2通りの説明を受けた場合、どのように受け止めるでしょうか。
A「不良品発生率が10%から5%になりました」
B「不良品発生率が50%減になりました。」
リスクやネガティブワードは小さく、利益やポジティブワードは大きく表現すれば、相手の判断を自分の考えている方向に誘導することが可能となる。
業績説明でこう説明すれば、増加している印象となる。「1月実績に比べると、5月までは残念ながら売上が50%減少しました。円高による輸出部門のダメージのためです。しかし、対策を講じたことで、5月にはプラスに転じ、9月までには売上を60%増加させました。」
・標本の選び方で調査結果は大きく変わる。トルーマンの奇跡。標本に、自動車や電話持っている人、という条件付きであれば、結果が正しくないのは当たり前。標本をできるだけ増やして全数調査に近づければいいというのは、この考え方はスープの味見に大鍋半分を飲むようなもので、非合理的。均一であれば、スプーン一杯で十分味が分かる。
世論調査の誤差。標本誤差の誤差こそ、大事なキーワード。例えば、内閣支持率は±2%の誤差がある。
・ココロが統計にワナをしかける。医師ががん患者に5年生存率は60%です、というと、そのせいで本人の生存率が60%に届かなくなるケースがある。5年という短さに悲観してうつになったり、免疫力が弱くなったりすることがある。逆に、こなくそ~と頑張る患者もいる。心理的ファクターが現実の生存率をも大きく左右する。財務分析でもそう。倒産確率10%としたら、それを重く見た取引先が取引をやめるかもしれない。そうすると倒産確率はどんどんあがって、「倒産しない確率は90%」もあったのに、経営状態が悪化することもありうる。人の心理が絡むときは、統計や確率の数値は画一的にはとらえられないものに変化してしまう。
・検診にひそむ数字の落とし穴。リスクの数字がはっきりと示されていても、その数字を正しく認識できるとは限らない。問題がある。
 XX病という病気の診断方法が確立されました。
 この診断方法はとても優れていますが、完全ではありません。
 ある人がこの病気にかかっていれば、90%の確率で陽性になります
 病気にかかっていなくても、1%の確率で陽性と出ます。
 人口のほぼ1%がこの病気にかかっています。
 この検査をスミスさんが受け、陽性だった場合、スミスさんが本当に病気である確率はいくらでしょうか?
答えは50%。

5章まとめ
いちばん実生活で役立ちそうな章だった。疑似相関なんてダマされそう。すでに騙されてそう。損失の件、割合で話すってのがポイント。標本の件は、スープの味見が刺さった。人の心理が絡む統計的確率は、画一的にはとらえることはできない。


【この本を読んだ感想やまとめ】
大数の法則からは誰も逃れることができない。最後のスミスさん問題なんて、きちんと考えても答えが出なかった。確率、統計、難しい。けど、モンティホール問題に代表されるように、直感と異なる結果になる問題はとても面白い。誕生日のパラドックスとかね。実際はパラドックスではないんだけども。番狂わせの確率まで数学的に導けるなんて、面白すぎる。


【今後活かせること、具体的なアクション】
ツキはポアソンクランピングと理解
大数の法則からは逃れられない。ってことは、一番最初に一発勝負。これだ。
プロスペクト理論を知ったうえでの損切り


【気に入った文章・言葉を3つ】
・コイン投げは、直前の結果に影響されない「独立事象」のため。ギャンブラーの誤謬。確率は、不確定な事象について、0~100%の間で「起こりやすさ」の予測を立てることはできる。しかし、次に「起こる」ことを当てることはできない。
・標本をできるだけ増やして全数調査に近づければいいというのは、この考え方はスープの味見に大鍋半分を飲むようなもので、非合理的。均一であれば、スプーン一杯で十分味が分かる。


【こんな人に読んでほしい】
自分の直感と事実の差を楽しめる人
宝くじを買っている人
モンティホール問題を知らない人