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読書備忘録#9_会計の世界史

読書備忘録#9_会計の世界史
田中靖浩二さん

【読もうと思った動機】
簿記をはじめとした会計の勉強を始めても、すぐに忘れてしまうし、そもそも覚えられない。業務で使うことがないってのもある。しかし、診断士で財務会計は必須だし、この科目を攻略しないと診断士合格は難しいと言っていた。なので、まずは会計の歴史を見て、興味をもって、今後の勉強に生かせればいいなと思い、この本を見つけたので、買いました。


【概要】
会計によく出てくる細かい処理ではなく、「そのルールや仕組みが存在することの意味」を知る方が重要だと言っている。確かにその通り。処理は重要だが、意味の方がもっと重要だ。この本は、会計の全体像を、歴史とともに楽しく学べると謳っていて、会計に対する視野を広げることができる。題名にある会計の世界史、というよりは、エンターテイメントでありますね。


●第一部 簿記と会社の誕生 ~3枚の絵画「トビアスと天使」「最後の晩餐」「夜警」~  イタリアからオランダ
■1章 15世紀イタリア 銀行革命
1.絵描きに「トビアスと天使」の注文が殺到した理由
ビアスと天使。この絵は、商売人の孝行息子、無事帰るというストーリー。旅から旅を歩く商人にとって、道中の安全はどれだけ祈っても足りない心配事だった。
15世紀後半くらいの話。公証人というのは、相続など家族の取り決めや商売上の約束などを「記録」として残し、それにお墨付きを与える職業。当時は、記録を残すことはそれほど簡単ではなかった。「紙」が簡単に手に入らなかったから。レオナルドダヴィンチはメモ魔。
当時香辛料に人気があったのは、肉など傷みが早い食品を保存させ、あるいはにおいを消して香りづけするためだった。これらを求めるには、貿易をするしかなく、とてもリスクが大きいものだった。こういう挑戦する人たちをリズカーレと呼び、そういう人たちを助けるべく、イタリアのバンコ(銀行)が、キャッシュレスサービスを提供した。このサービスを利用すれば、キャッシュを持ち歩く必要がなくなる。為替手形のこと。手数料ビジネスで儲けを生んだ。

2.地中海で大活躍したリズカーレとそれを助けるバンコ
バンコは、手数料で相当儲けを得て、各地で支店を持つ大組織へと成長した。このバンコの登場で、イタリア商人はヨーロッパ中を相手に商売ができるようになった。各地で支店を持つということは、為替手形等の記録をほかの支店にも伝える必要がある。支店を超えた、ネットワーク全体として記録をつける必要が出てきた。

3.イタリア黄金期を支えたバンコと簿記
バランスシートは、右の調達から左の運用(投資という活動)へ、左右バランスで読む。この時代、資本は自分(個人)。
15世紀ころ、当時隆盛だった毛織物産業から木綿産業へ移行していった。その際、「紙」の生産も増加した。紙は、ぼろ布を細かく刃物で先、それを腐敗桶に入れて作ったパルプを薄く延ばして作られたため。綿は輸入していたので、自分たちでも作りたいとイタリアの人たちは思い、内陸型製造業が反映していった。それが、新たな商売上の「組織」を誕生させた。単発ではなく、継続的に活動を行う組織だ。個人のスケールではないので、出資者が集まって始めるパートナーシップであり、お金が不足する場合は、バンコから借り入れを行った。

1章まとめ
ハイリスクハイリターンを求めるリズカーレ。彼らを支えるために、バンコがキャッシュレスサービスを提供し、これらがうまく融合して産業が発達した。どんどん、組織の在り方も変わっていった。個人のスケールからパートナーシップへと。それを、紙という産業が支えた。


■2章 15世紀イタリア 簿記革命
1.レオナルドと簿記の父の運命的な出会い
スンマ、神聖比例論を書いた、ルカ先生登場。レオナルドダヴィンチも大きな影響を受ける。彼らが生きた中世は、キリスト教が支配していた「神の時代」。教会の教えは絶対。人間らしさを取り戻す、ルネサンス(再生)があった時代でもある。
商売の繁栄と大規模化。ルネサンスに加え、中世から次の時代へ橋渡しをした要因。個人商店から大組織へ。のちに大規模に儲ける商人たちは教会に並ぶ勢力として少しずつ力をつけていった。その商人たちを助けたのが簿記。

2.処刑を逃れたコジモが支えたルネサンス
コジモディメディチ。「公衆の目を避けて商売せよ」。メディチ家の大先輩の銀行が、国王や貴族の借金踏み倒しにより、破綻した過去がある。楽な融資で儲けようとはせず、地道に儲けるほうが良い。ということで与信管理には相当に力を入れていた。メディチ銀行では、各支店に権限移譲しており、今でいう持ち株会社のような組織体系だった。

3.公証人を頼らず自ら記録をつけ始めた商人たち
いままで、船乗りは基本的にプロジェクトベースで、1回ごとに調達、運用、現金化して解散という無駄の多いやりかた。なので、だんだんと長く商売を続けるようになってくる。家族親族中心の組織から、仲間中心の組織に変わってきた。バランスシートでいえば、右下の出資者が、「家族・親族」から「仲間」へと変化してきたということ。こうなると、裏切り者が現れるようになる。そのため、記録を残すことに関してとても熱心になった。その「自ら記録を残していく」こと、それが「簿記」へとつながってくる。正しい帳簿のつけ方は、ルカ先生のスンマに27ページ、書かれていた。この内容は、商人たちにとってとても頼もしい武器となった。
帳簿を正しくつけるメリットはふたつ。ひとつは、対外的な証拠の役目を果たすこと。取引を記録し保存することで相手に対抗できる。もうひとつは、儲けを明らかにできること。儲けの分配について、トラブルを減らす役割を果たす。

4.簿記革命とメディチ銀行の終わり
簿記は記録の正確性を保証するが、経営の適正性や経営者の詳細までを保証するものではない。メディチ銀行は、結局孫の代で、イギリス王へ融資をし、踏み倒されたことで破綻した。
メディチ:嫉妬は雑草のようなものだ、決して水を与えてはいけない
ダヴィンチ:徳は、生まれると同時に反対側の嫉妬を生む
どこの国や会社でも、落ち目になればなるほど地位にしがみつく輩が増え、嫉妬や足の引っ張り合いが増える。
以降、主戦場はイタリアからスペイン、ポルトガル、オランダへと交代していく。中世から近世へ。

2章まとめ
出資者が親族から仲間へと変化していく中で、裏切りが発生するようになった。儲けの分配が主。なので、記録することがとても重要になり、裏切り者が出た時の対抗になったり、そもそも裏切りが出ないように、儲けを明らかにすることが必要になったきた。ルカ先生のスンマの27ページがとても頼りになる武器となった。
「嫉妬」により、イタリアは他国の後塵を拝すようになった。次の時代へ。


■3章 17世紀オランダ 会社革命
1.神が中心から人間が中心の時代へ
もともと、ローマ数字が使われていたが、非常に面倒。例えば、「777」はローマ数字で「DCCLXXVII」と表記する。四則演算をする際、チョー面倒。なので、使いやすさの面から、アラビア数字が使用されるようになった。これがローマとの訣別のひとつとなった。神の支配していた世界を、自分たちの手へと取り戻す・・・数量革命。簿記もこのうちの一つといえる。五線譜がメロディーというカタチのないものを可視化する技術とすれば、簿記は儲けというつかみどころのないものを可視化する技術。
16世紀のオランダは、カトリック色の強いスペインの支配下にあったが、宗教改革によりプロテスタントが増えていた。この新教徒たちをスペインが弾圧したことで、反発、それが独立戦争へとつながった。勝利した北部7州はネーデルランド連邦共和国として独立宣言をし、このオランダに商人たちがヨーロッパ各地から押し寄せるようになった。

2.レンブラントとオランダの栄光
オランダは、プロテスタントを中心とした商人の国。特にカルヴァン派では、神が与えたもうた職業に励むことが救済への道だとされており、商売に励み儲けることは奨励される行為だった。宗教に対する寛容さは、金儲けを追求する合理的精神の裏返しでもあった。オランダのアムステルダムでは、商人たちと情報が集まることで、多くの取引が行われ、市場ができるようになり、市場ができれば商人と情報が集まる・・・という好循環が生まれた。チューリップバブルもこのころ。珍しい色の球根が人々を熱狂させ、価格調整メカニズムによってバブルが発生。バブルは、珍しい色のチューリップのごとく、新しいテクノロジーが登場した直後に発生することが多いようだ。
世界で初めての株式会社と呼ばれる東インド会社は、オランダで1602年に設立された。

3.オランダで誕生した株式会社とストレンジャー株主
オランダは考えた。いまのように小さな会社が船を出しては沈み、を繰り返していては無駄が多すぎる。もっとカネをかけて安全かつ大砲を備えた強力な船を作り、スペインとポルトガルをやっつけよう。船を往復させるだけではなく、インドに現地拠点を作り、そこから商売を大々的に展開しよう。こうなると、大金が必要で、資金を長期的に調達する必要がある。そのために用意された組織がオランダの東インド会社(VOC)。
船の商売から陸の商売になるにつれ、組織は当座企業から継続企業へと変化していった。VOCは、軍隊を置き貨幣の鋳造までやっていた。もはや国家と呼んでもいいくらい。さておき、長期的に大金を調達する必要がでてきたので、資金調達を「見ず知らずの他人」からも行うようにした。これがストレンジャー株主。バランスシートの右下に、株主が登場するということ。そうなると、経営の仕組みが大きく変わる。「所有と経営が分離」された環境であり、ストレンジャー株主は儲けを望んで投資をする。そんな彼らを満足させるには、事業の儲けをきちんと計算すること、儲けの相当分を出資比率に応じて分配すること、のふたつが必要。
正しい計算と分配はストレンジャー株主から資金を預かる以上、果たさねばならない最低限の責任。儲けの報告(=account for)が会計acountingの語源。
遠洋航海はハイリスクハイリターン。無限責任では事業への出資を募ることが難しいと考えたVOCは、有限責任制度を用意した。出資金以上の負担を求めないということ。有限責任によって出資を集め、所有と経営の分離の体制を作った。それでVOCは人気になったが、さらにそれを転売できる市場があったことも人気に拍車をかけた。いわゆる証券取引所のようなもの。インカムゲインキャピタルゲインのどちらも選ぶことができる。

4.短命に終わったオランダ時代
VOCの成功は、簿記、株式会社、証券取引所によって支えられていた。英蘭戦争によって転落したと考えられているが、次の3つも破綻の要因とされている。ずさんな会計計算や報告:未成熟だった会計制度、高すぎた株主への配当:内部留保の不足と借入体質、不正や盗難に対するチェック機能の甘さ:ガバナンス機能の不足。資金調達には成功したが、運用については成功しなかったということ。現在の会計制度や理論はこの3つを克服するように発展してきたことが分かる。次の3つ。
ずさんな会計計算や報告:財務会計制度の改善と管理会計機能の充実
高すぎた株主への配当:コーポレートファイナンス理論の構築
不正や盗難に対するチェック機能の甘さ:コーポレートガバナンスの整備

3章まとめ
イタリアの次の主役はオランダ。プロテスタントが多く、商売が奨励されていたことが大きな要因のひとつ。人が集まり、情報が集まり、市場が形成されていくという、好循環ができる。今までの航海は非効率で、もっと効率的に航海できないかということで、VOCが設立。国家といえるレベルで活動をしていた。純資産を仲間から、見ず知らずの人から調達する必要が出てきたので、事業の儲けをきちんと計算すること、儲けの相当分を出資比率できちんと分配することが求められた。また、ハイリスクハイリターンなので、有限責任制度も取り入れた。VOCはとても人気だったが、運用については成功せず、これでオランダの時代は終わった。


●第二部 財務会計の歴史 ~3つの発明「蒸気機関車」「蒸気船」「自動車」~  イギリスからアメリ
■4章 19世紀イギリス 利益革命
1.石ころの活用から世界トップへ躍り出たイギリス
16世紀は慢性的な木材不足。政府から制限令が出るほど。そこから、黒いダイヤと呼ばれる、石炭が発見される。しかし、地下水が邪魔で、効率的に石炭を採掘できない。機会が必要ということで、ワットが蒸気機関を開発する。そこから、イギリスの産業革命が始まる。

2.蒸気機関車のはじまりと固定資産
蒸気機関車の登場で、鉄道会社が発足した。もともと、運河会社もあったが、運河に代わる交通機関として、鉄道会社は力を伸ばしていった。この鉄道会社が、財務会計管理会計の歴史を変えた。今までのビジネスとは大きく異なる点・・・それは、開業までの初期投資があまりにもデカいこと。開業は、土地、レール、枕木、車両、駅舎、各種設備といった、固定資産(Fixed Assets)がそろわないと、始めることができない。

3.画家も株主も興奮した鉄道狂時代
鉄道会社の最大の特徴は、固定資産が多いこと。棚卸資産として在庫がほとんど存在せず、固定資産を長期的に利用することで稼ぐビジネスモデル。このような巨大な固定資産を持つ会社は、資金調達の方法を工夫しなくてはならない。日々の運賃収入しかなく、登場したばかりで期待した収入が得られるかどうか、わからない。このような状況で、借入金に頼るのは危険。ということで、借入に頼りすぎることなく、株主によって、資金を調達しなさいというお達しがあった。
鉄道会社にとっても毎年儲けを出すのは簡単ではない。特に開業して間もなくの時期は、投資がかさむためなかなか儲けが出にくい。ルール違反は糾弾される。だったら、新しいルールを作ってしまえばいいんじゃね?ということで、ここで、「減価償却」という新ルールを採用した

4.19世紀の鉄道会社からはじまった「利益」
鉄道会社から一般化した減価償却
鉄道会社の場合、あまりにも固定資産への投資が大きいため、この支出を家計簿的に処理をしてしまうと、投資した期は赤字になる。反対に、投資がない期は黒字になる。これだと、いつの時期に株主だったかによって、不公平が生じる。これでは具合が悪い。もっと、儲けを「平準化」して、安定的に配当できる方法がないか?を模索した。その結果が、減価償却。支出を全額「支出した期」に負担させるのではなく、そこから数年をかけて「費用」として負担させるという考え方。これによって支出が平準化され、巨額の固定資産投資をしても「儲け=利益」が出やすくなる。この減価償却によって、「設備投資をしても株主に配当ができる」ようになった。鉄道会社はこのように理論づけし、「機関車は長期的に使用するものだから、長期的に費用計上するのが合理的である」という理屈をこしらえた。
この減価償却の誕生は、会計の歴史の中で重要なターニングポイントだったと考えられる。なぜなら、会計上の儲けは収支から離れ、「利益」というカタチで計算されるようになったため。もともと、「現金主義会計」である「収入ー支出=収支」だったものが、儲けの計算が「発生主義会計」である「収益ー費用=利益」という進化を遂げた、ということ。
大きな流れは次の通り
産業革命による固定資産の増加→減価償却の登場→利益計算の登場
収入・支出から離れ、いかに業績を適切に表現する「収益・費用」の計算を行うか、これが企業会計の進化の歴史。これが引当金工事進行基準などの考えに展開されていく。
こうして、決算書が「自分のため」から「株主のため」というようにどんどん進化していった。

4章まとめ
産業革命から、固定資産を長期的に使用することで利益を生むビジネスをする鉄道会社が生まれた。そのビジネスは、投資額がとても大きいため、投資の有無による期によって、儲けに大きなばらつきがあった。それを平準化するにはどうしたらいいか。投資を、投資した期に全額計上するのではなく、数年にわたって計上すれば、平準化される。そうすれば、儲けも平準化でき、安定的に株主に配当ができる。これが、減価償却。この減価償却は収支の考え方を変えるものだった。儲けが「収支」ではなく、「利益」になったこと。平準化するということは、投資でいえば実際に支払った金額と、帳簿上のなくなった金額が異なるということになる。なので、会計上の儲けは紙の上にのみ、表現されることになった。収入・支出がfactであるなら、収益・費用で計算される利益は一種のfictionといえる。


■5章 20世紀アメリカ 投資家革命
1.西の新大陸へ、海を渡った移民と投資マネー
ヨーロッパからアメリカへ、移民が大量に海を渡った。そのきっかけは、ジャガイモ飢饉。移民が大量にアメリカへ移り、ビジネスや投資マネーもアメリカへ移ることになった。ヨーロッパからアメリカの財務情報が手に入りずらかったので、会計士のチャンスがとても広がっていた。破産処理もしていたが、財務の健康状態をチェックする「監査」も、会計士が担うようになってきた。auditはaudioが語源。経営者が株主に説明をするが、そこで「聞く」(チェックする)という図式からきている。

2.崩壊前夜、ニューヨーク・ラプソディ
アメリカ鉄道会社へ流れ込む投資資金。車両の大型化、快適な車両空間、食事を提供する食堂車など、新しいビジネスがどんどん立ち上がった。
鉄道マネーのカネの流れと、バランスシートをめぐるカネのながれはそっくり。「イギリスのカネがアメリカの鉄道へ」を、右の調達から左の運用へ」と重ねればほぼ流れは同じ。
アメリカの鉄道会社はイギリスと異なり、借入金や社債による調達を好んだ。なので、自己資本比率は低く、常に倒産の危険がつきまとった。そのため、経営分析ブームが起こった。とくに、安全性分析に関心が集まったようだ。
経営指標に人が信用できない名残がある。流動比率は、200%以上が望ましいという格言があるが、これは、ウソが混じっていたとしても、200%あれば大丈夫だろう、という人を信用しない時代の名残があるようだ。

3.大悪党ジョー、まさかのSEC初代長官に就任
人々の欲望を飲み込みながら、上がり続ける株式市場。しかし、1929年10月24日の木曜日、暗黒の木曜日を迎え、世界は大恐慌に陥る。(ちなみに、株価が戻ったのは1951年と、22年の歳月を要している。)株価は暴落したが、倉庫の中の食べ物や衣類は、消滅したわけではなく余っている状態・・・。この矛盾をどう解釈し、解決すべきなのか、ケインズは、有効需要をもとにしたマクロ経済学を立ち上げる。この大恐慌を機に、経済、会計、そのほかあらゆる分野の専門家が不況から脱出するための方法を探った。大統領選もその中で行われた。ルーズベルトは、ジョーをSecurities and Exchange Commission:アメリカ証券取引委員会初代長官へと任命した。「泥棒を捕まえるには、泥棒が一番なんだ。」グラス=スティーガル法(預金と投資の間にファイアーフォールを設けること)や、会計制度の改革(株式公開している会社は、厳しい財務報告の体制の義務付けなど)を行った。他にもインサイダー取引の禁止など、公正で透明な証券取引ルールを定めた。これらの結果、「公開企業の会計制度」の根幹は次の3つにまとめることができる。
・経営者はルールに基づいて正しく決算書を作成すること
・正しく作成されたかどうかについては監査を受けること
・決算書を投資家に対してディスクローズすること
証券市場を活発化していくには、初心者がどんどん参入し、安心して株を購入できる仕組みを作ることが必要。そうでないと、新たな株主は増えず、株価が上がらない。なので、投資家の中に、「潜在的な株主」を含めるようにした。パブリック革命である。

4.パブリックとプライベートの大きな分かれ目
株式を公開すれば、所有者は巨額の株式公開益が手に入る。しかし、公開することでパブリックな責任=社会的な責任を負うことになる。キチンとした経営と会計報告が求められる。厳格なルールを適用した決算を四半期ごとに行い、会計士の監査を受け、しっかりとした内部統制の体制まで作らないといけない。公開企業として果たさねばならない義務が厳しくなるにつれ、株式を公開すべきか否かと経営者は考えるようになる。
各社のアニュアルレポート(有価証券報告書)は、EDINET(日本)や、EDGAR(アメリカ)で、無料で見ることができる。
ジョーの活躍によって、アメリカは世界で最も優れた会計基準と監査制度を持つ国として称賛されるようになった。

5章まとめ
ジャガイモ飢饉を発端に、ヨーロッパからアメリカへ人もマネーも移っていった。アメリカの会社をどうやって監査するのか?で、監査がされるようになる。1929年の大恐慌を起点に、マクロ経済学が発表されるなど、回復へ向けて様々方法が検討された。ルーズベルト大統領は、ジョーをSEC初代長官に任命して、公正で透明な証券取引ルールを定めた。パブリック革命ともいえる。これによって、安心な証券市場ができ、アメリカは最も優れた会計基準と監査制度を持つ国として称賛されるようになり、現在に至るといったところ。


■6章 21世紀グローバル 国際革命
1.自動車にのめり込んだ機関車運転士の息子
鉄道→自動車→飛行機と人々の移動手段には劇的な進化があった。それに伴い、ビジネスは飛躍的に発展していった。そのうち、戦争へとつながっていく。圧倒的な軍事力を持つドイツが、イギリスへ攻め込んだ時。ドイツは敗れた。なぜか。レーダーの存在だ。イギリスはレーダを開発、配置し、ドイツ機の来襲をいち早く察知、早めの対応を行ったから。この両国の態度は、「情報の活用」というテーマで捉えることができる。情報を有効な武器とするには、通信技術が必要であり、それが最初に採用されたのはイギリスの鉄道会社であった。それからイギリスは19世紀世界の覇権を手にし始めることになる。

2.海運とITで覇権を握ったイギリスのグローバル戦略
鉄道会社は、脱線や追突といった鉄道事故を避けるために、電信はのどから手が出るほど欲しい技術だった。(ちなみにそれ以前は、「ボール型の信号機」を採用しており、上に上がっていれば進めという合図で、high ballといった。出発進行=さぁ、飲もう!という掛け声のもの)
イギリスは、三角貿易でとても反映した。アフリカから奴隷を、綿花の栽培地として選んだアメリカ南部へ送り込み生産コストを下げ、最終的にイギリスの機械化された工場で綿衣料を完成させる。そして綿衣料や銃をアフリカへ運ぶ。三角貿易体制は、大型蒸気船とそれを活用した海運ネットワークで支えられていた。さらに、通信ネットワークの拡大にも大金を投じ、通信網の整備をおこなった。先のモノに加え、情報の両方を運ぶネットワークを構築した。世界に先駆けて、通信ネットワークを構築したことで、イギリスの懐には莫大な手数料が入るようになった。便利なネットワークを最初に構築したものは儲かる。

3.金融資本市場のグローバル化国際会計基準
ダイムラーベンツ。調達のグローバル化を目指し、ニューヨーク証券取引所への上場を計画した。しかし、会計基準の違いから、「ドイツでは黒字、アメリカでは赤字」という結果になった。グローバル投資が行われる時代には、会計ルールもグローバル化すべきという声が上がる。こうして、会計基準の国際化への取り組みが始まった。国際会計基準は、IFRSが多勢。日本は、日本基準、USギャップ、IFRSの中から選択して決算を行うことになっている。
会計は、その主人公の変化の変遷が重要。イタリアからオランダの東インド会社まで、会計といえばその主人公は自分つまり経営者であった。自らの儲けを明らかにするために存在していた。しかし、イギリスで産業革命が起きた頃から少しずつ変化してきた。ストレンジャー株主の登場。株主のために監査を導入しつつ、しっかりとした財務報告が求められた。続いて、アメリカの大恐慌を発端に投資家保護が掲げられ、ディスクロージャー制度がつくられた。そしてグローバルインベスター(ファンド)が登場すると、投資家に役立つ情報を提供することが会計の目的になっていった。ここにおいて、主人公は自分ではなく、情報を受け取る投資家になっていった。500年の歴史の中で、会計は自分のためから、他人のために行われるよう変化した。
資産評価の、原価か時価にも影響が出てきた。会計の目的を自分たちの利害調整(原価)に置くか、投資家への情報提供(時価)に置くかで、望ましいルールが違ってくる。そして、今後は時価主義の方向。IFRSを決めたイギリスとアメリカはその傾向だから。建物や機械を多く用いる製造業では、それらを原価評価しつつ減価償却を行う。一方の金融業では固定資産が少なく、資産のほとんどは金融資産のため、時価評価の方がなじむ。

4.増えるM&Aキャッシュフロー計算書
出資者は、イタリアの家族や仲間で出資者=経営者だったが、オランダではストレンジャー株主が増え、所有と経営が一致しなくなった。さらに、20世紀になるとグローバルな投資家としてファンドが登場してきた。そしてEBITDAが登場。1年間の儲けのことで、Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, & Amortizationで、利息、税金、減価償却費、償却費を控除する前で計算した利益であること。これらの項目は国によって金額の違いが大きいから。EBITDAであれば、その「その会社の本来の儲け」を表現できると考えられ、M&A取引で注目されるようになった。これは、キャッシュに近い利益であるため。M&Aで重視されるのは、各国発生主義会計の複雑怪奇なルールで計算される利益ではなく、「どれだけカネを稼いだか」というキャッシュ。つまりEBITDAの登場は、M&Aの増加に伴うキャッシュへの回帰現象でもあった。

6章まとめ
イギリスは、モノ(海路)と情報(通信網)のネットワークを牛耳ることで、発展していった。グローバルで資金調達するには、会計ルールもグローバル化が必要で、現在IFRSが優勢となっている。過去、家計簿的なキャッシュフローは、発生主義にともない存在が薄れていたが、M&A増加に伴い、キャッシュへの回帰現象も始まった(EBITDA)。


●第二部まとめ
乗り物の変化(船→鉄道→自動車→飛行機)とともに、ビジネスは大きくなり資金調達も巨額になっていった。会計制度にも変革をもたらし、自分のための会計から他人のための会計になっていった。


●第三部 管理会計ファイナンス ~3つの名曲「ディキシー」「聖者の行進」「イエスタデイ」~  アメリ
■7章 19世紀アメリカ 標準革命
1.南北戦争から大陸横断鉄道へ
連結決算は、アメリカの鉄道会社から始まった。大陸横断鉄道が完成して以降、東西南北、アメリカ全土に続々と鉄道が建設されていく。それらの線路はやがて「連結」されていった。標準サイズのレールによって。そのうち、会社そのものを合併する例も出てきた。経営を傾かせた鉄道会社が他社に買収され始めた。鉄道会社そのものがつながるようになると、決算書もつなぐことが考えられるようになり、19世紀末には連結決算が登場した。
鉄道会社は、ダイヤの作成、安全確保、儲けること・・・これらの複雑な管理を行うため、管区を設定した。広いエリアを管区に分けることで、管区ごとの収益性(原価、売上)を明らかにでき、また管区長の仕事と責任を明確にすることができる。分けることで、分かるようになる。ということ。
アメリカ中に鉄道が一斉に広がることで、同時期に同質的な都市が出来上がり、製造業は同質の製品を大量生産する方向へ向かった。製造現場から始まった革新は向上の原価計算の改革を経て、管理会計という新ジャンルを誕生させることになる。他人のために行われていたアカウンティングは、いまいちど自分のために、に引き戻そうというのが管理会計である。

2.大量生産する工場の分業と原価計算
木製の橋が落ちる事故が多発していることに目を付けたアンドリューカーネギー。高品質の鉄橋を作ることで、注文が殺到した。次の課題は、大量生産。アメリカには職人気質の熟練工はほとんどいない。だとすれば、ド素人の職人でも働けるような工場にするしかない。素人でも大量生産ができる工場・・・「分業」を導入。制作作業をいくつかの工程に分け、それに沿って作業者と機械を順番に配置。これはまさに管区の考え方。そして、作業を「標準化」し、属人的な仕事ぶりを可能な限り排除した。(これって、フォードも同じ考えだったはず)
フレデリックテイラーの科学的管理手法。テイラーが注目した労務費は、材料費と並んで大きな製造コストだった。作業の詳細な分析から時間内に終えるべき課題(タスク)を設定し、高い生産性を達成したものには高い賃率を与える「差別的賃金制度」を主張した。あとは、機械などの減価償却費も大きなコストだった。固定費なので、配賦計算が難しい問題である。製造業で重要なのは、「製品1個を作るのにコストがどのくらいかかっているのか?」である。そうでないと、いくらで売っていいのかわからない。外部との取引から一歩進んで、原価計算という内部の製品原価計算するようになった会計の仕組み。外部の記録から内部計算へ。。。この原価計算は会計の歴史にとって大きなターニングポイントとなった。ここから企業会計は、外部報告の財務会計、内部利用の管理会計という2本立てなった。
さて、固定費の配布は、たくさんつくればつくるほどひとつひとつの金額が薄くなるので、たくさん作れば作るほど製品原価が安くなる、、、ということに気づいた経営者はこぞって、大量生産を行った。

3.ライバルをつぶしながら巨大化する企業
ゴールドラッシュで儲けたのは、金を掘り当てた人でなく、金を掘る人々を相手に商売することで成功した人。そのほか、儲けているのは、一呼吸おいて儲ける方法を考えた者。金を掘る人々を相手に商売することや、開拓者が実らせた果実を資本の論理で合法的に強奪したりすること。ここでいう資本の論理とは、バランスシートの右下を握ったヤツが強い、ということ。株を握ればその会社を支配することができるから。
ジョンロックフェラー。石油精製事業から始め、成功後はすぐさま100か所を超える精製所を買収していく。ライバルをつぶす「水平的統合」をまずは行い、上流から下流までを支配しコストを下げる「垂直的統合」を行った。独占的だが、良い面もあった。石油製品の価格を安定させたこと、石油製品の品質を向上させたこと。企業も連結していった
連結はもともと、経営者が内部管理をするためのものだったが、やがては株主/投資家への情報としても大きな意味があると認識され、外部報告にも取り入れられていった。
決算書の世界標準は、「連結バランスシート、連結損益計算書、連結キャッシュフロー計算書」となった。

4.南部から北部へ旅立つコカ・コーラとジャズ
コカ・コーラアメリカのどこでも同じ味のコーラを飲めることを実現するために、各工場のボトリングについて、品質管理が徹底された。正しい原料、正しい手順、正しく保存するなどすべてに標準を定め、工場に徹底させた。鉄鋼のカーネギー、石油のロックフェラーの工場で編み出された「標準品の大量生産」はコカ・コーラによって一層の進化をし、標準作業は業務マニュアルにまとめられた。

7章まとめ
鉄道がアメリカ全土に広がり、線路は連結され、各社の隆盛とともに会社も連結されていった。同質的な都市が同時に発生することになり、大量生産が始まり、原価計算が始まって、自分のための管理会計が始まった。減価償却費を考えると、大量生産した方がコストが安くなる。大量生産には標準化が求められて、業務マニュアルとしてまとめられることになった。
いつでも儲けるのは、資本の論理を知っている人。


■8章 20世紀アメリカ 管理革命
1.シカゴからはじまったジャズと管理会計の100年史
経営において、効率を高める第一歩はコスト削減。テイラーの科学的管理法を会計に応用した標準原価計算を使い始めた。標準の概念が原価計算に持ち込まれたことになる。工場のレベルを超えて、会社全体を効率よく経営しようとする試みが次に始まった。どうすれば、製造/販売の部門間の協力関係を保ちつつ儲けを出すことができるのか?それが、ロックフェラーの寄付によって再開されたシカゴ大学で、ジェームズマッキンゼー教授の、経営に役立つ会計講座の内容であった。管理会計の講座。そこでは、予算管理(Budgetary Control)が教えられていた。「何台売れるかの予測から、何台生産するべきかを計画することで、在庫を適正化し売り損じを防ぐ。この予算によって、販売/生産の部門間の調整が可能になり、トップが現場を統制することができる。予算管理は、会社レベルで利益を扱う。「コストだけでなく利益を見よ、過去ではなく未来を見よ。」
守りの会計・・・義務(株主と債権者に対し決算書を作成報告することで説明責任を果たす)の会計は、財務会計。ルールを守る実直さが求められる。
攻めの会計・・・自由に設計(経営問題を解決するために経営者が自由に組み立てる)ができる会計。自由な発想が求められる。内部向けなので分かりやすさが何より重要。
過去の実績を計算するだけだった財務会計は、将来利益をシミュレーションするまでに進化した。
マッキンゼーは、管理会計において、重要な型を提供した。それは、計画重視の姿勢。従来の会計が扱わなかった未来の数字が取り込まれている。

2.分けることで分かる「管区」由来のセグメント情報
鉄道会社で用いられた管区は、製造業にも採用された。製品別の採算性を明らかにすることができれば、選択と集中がやりやすくなる。製品別に利益を計算する場合に重要なのは、「製品別に売上を分けるのは簡単でも、コストを分けるのは難しい」ということ。コストは直接費(材料費など)のほか、間接費(本社費、減価償却費など)があり、製品別に割り振らねばならない。割り振り計算の重要性は高まる一方。セグメント情報の有用性は、組織における分権化を推進する効果がある。結果を評価する仕組みがあって初めて任せることができるようになる。それぞれの売上、利益を明確にして業績評価することは、組織の分権化を進める条件。
製品、事業別の利益はどれだけ必要なのか? 悩ましい経営問題だった。

3.フランス系デュポンの起こした管理会計革命
数字に強いデュポン。ROIの高め方を示したのはデュポンだった。デュポンの数値管理の基本は、それぞれの事業の収益性を厳しくチェックすることだった。それまで仕切りが曖昧だった社内組織を、「黒色火薬無煙火薬、ダイナマイト、販売」の4つのセグメントに区分し、セグメント情報を構築することでそれぞれの収益性を計算して業績評価を行った。それまでは業績評価は利益率や原価率で行われるのが一般的だったが、デュポンでは「利益を出すために投資をしているのだから、その投資に見合った利益という視点が重要ではないかと考えた。これがROIである。ROIは、利益/資本だが、これは次のように分解できる。利益/売上(利益率)×売上/資本(資本回転率)。つまり、ROIは、利益率か資本回転率のどちらかを上げることで向上できるということ。デュポンは事業別ROIを経営判断の基本に据えた。目先の利益が見込めてもROIが低ければ投資はしない。黒字であってもROIの低い事業からは撤退することもあった。
短期的に儲けるだけなら利益をもとに判断できるが、設備投資が大きくしかも長期的な成長を考えるならROIの方がふさわしいと考えた。
このデュポンが採用したROIの根本には、「小さな投資で大きな利益を」という基本思想があった。
事業ごとの利益や事業ごとの資産を計算するのは簡単ではない。固定費や共通費をどうやって各部門コストに割り振るかは管理会計上の難問である。
1920年には、デュポンは事業部制組織を採用した。

4.クロスオーバーが始まった音楽と会計
デュポンの経営者は、外部の株主から調達した資金を使い、効率よく利益を出す責任を負う。この効率は、ROEで測る。次に経営者はこの資金を各事業へ投資する。各事業部長はこの資金に対して利益を出す責任を負う。この効率は事業別ROIで測られる。ここでは、「株主-経営者」「経営者-事業部長」の権利会計的な委任関係という「二重の委託関係」が生じている。事業部長は、「投資の大きさに見合った利益」を求められる。売上、利益重視の経営は景気が悪くなると低価格競争に陥ることとなる。
現在は、製造業から情報産業へシフトしてきている。その中で、「型」を見直す時期が来ているのかもしれない。

8章まとめ
予算管理。過去だけでなく未来を管理する。革命的だった。
ROI=利益/売上(利益率)×売上/資本(資本回転率)。目先の利益でなく、長期的な成長を考えるならROIを重視することをデュポンは考えた。共通費などを割り振るのは難題だが、デュポンはそれをクリアし、事業部制組織を世界で初めて採用した。
守りの会計・・・義務(株主と債権者に対し決算書を作成報告することで説明責任を果たす)の会計は、財務会計。ルールを守る実直さが求められる。
攻めの会計・・・自由に設計(経営問題を解決するために経営者が自由に組み立てる)ができる会計。自由な発想が求められる。内部向けなので分かりやすさが何より重要。


■9章 21世紀アメリカ 価値革命
1.マイケルジャクソンに学ぶ価値(バリュー)思考
ビートルズ著作権を会社に譲渡したのが不幸の始まり。その会社は上場したので、誰でも株式を購入できるようになり、資本の論理にさらされることになった。会社の資産であれば、会社のバランスシート右下を握ることで、手に入れることができる。
投資を行う場合に、そこへ支払われるコストに注目するか、そこから得られるリターンに注目するか、この違いは会計上、あまりに重要な論点だ。リターンの計算は、将来のことでもあるので、非常に計算が難しい。できたとしても、客観性を示すのは極めて困難。そこで、リターンを重視する新たな分野が登場してきた。それが企業価値を旗印に掲げるファイナンス

2.企業価値とは何か?
資産評価は、原価、時価の二つの考え方がある。会計の歴史は、取得原価にこだわってきた。会計はもともと、お金の動きを記録するものなので、買ったときにいくら支払ったのか、の「事実」に注目する。これに対し時価は、「仮定」のリターンに基づく評価である。そのため、少し敬遠されてきた。
ただ、企業が長期的に活動するようになり、資産が長期的に保有されるようになると、原価評価はときに、現実離れした金額になってしまう。例えば、はるか昔にタダ同然で取得した土地が急騰し、XX億円になっていたとしたら、果たして原価と時価、どちらが正しい評価額なのか?こうなると、時価の方が正しいのでは?という声が強くなる。近年の国際会計では、時価主義が優勢。
産業シフトによって、隠れた資産が増加した。そもそも資産とは何か?という根本的な問題が出てきた。リースの機材は?優秀な人材は?独自ノウハウやネットワークの強みは?これらは原則としてバランスシートには計上されない。情報、サービス、金融業にはあまり向いていない。
会社の買収に関して簡単に歴史を振り返ると、19世紀アメリカではライバルをつぶし、コストを下げるために行われた(石油のロックフェラー)。20世紀前半は、権利を手に入れるためだった(GEのエジソンの発明など)。そして20世紀後半は、隠れ資産を手に入れる買収が増えていった(MJのビートルズの楽曲など)。買う側は、「高額の現金で、少ない資産を買う」ことになるため、バランスシートには差額分の空白が出る。それが「のれん」。資産の部に計上されたのれんは、買収に当たって上乗せされたプレミアムを意味する。では、この買取価格はどのように決まるのか?それは、「期待リターン」。それこそが資産の価値と考える。期待リターンは、将来のキャッシュフローの予想から計算される。すなわち、会社を買うということは、その会社から生まれるキャッシュを買うということ。将来のキャッシュを重視するというこの新しい発想は、伝統的な会計の枠組みを超えるもの。会計上にいう時価主義すら飛び越えて、将来キャッシュフローを複数年にわたり計算するということなのだ。これは、コーポレートファイナンスと呼ばれる(単にファイナンスと呼ぶことが多い)。
ファイナンスの重要な狙いは、「会社の価値」を明らかにすること。会社の価値は、次の2ステップで、理論的に企業価値を計算する。
①会社買収後の将来キャッシュフローを見積もる
②将来キャッシュフローを現在価値に割引計算する
ファイナンスは、これまでの会計の視点にはなかった、「企業価値を上げるためには、将来キャッシュフローを増やすことが必要」という視点を提供してくれた。将来キャッシュフローを増やすために、投資の選択管理、在庫売掛買掛の効率的な管理も必要となり、また現在価値に割引計算を行うための「資本コスト」を下げるためには、資金調達の方法を工夫したり、IR活動の充実などを行う必要がある。時間軸を過去から未来へ移し、数字にあるべき論を持ち込んだファイナンスは会計を一歩前に進める役目を果たした。

3.投資銀行とファンドの活躍を支えたファイナンス
ゴールドマンサックスなどは、バランスシート右側の「お手伝い」から、「所有者」へと立場を変え、企業価値を正しく評価する能力と、それを高めるノウハウによって、株式公開、売却、合併などで収益を上げていった。企業価値が「将来キャッシュフローの合計」と定義されたことで、企業価値の増やし方が明らかになった。例えば、「収益性評価に基づく事業の選別(NPV法、IRR法)」、「割引に用いる資本コストの計算(CAPM、WACC)」「配当・自社株買い政策」など。
IFRSでは「のれん」について償却不要としているが、それは減価償却的な規則的償却を不要としているだけであって、「将来キャッシュフロー」が著しく下落した場合には、減損処理をすることを求めている。つまり、「価値」が下落した場合には、その下落分を一気に減損処理しなさいということで、背景にファイナンス理論があることは明白である。
減損会計は、将来キャッシュフローの見積もりが著しく下落した場合、その額、つまり価値相当額まで評価額を引き下げ、評価損を計上しなければならない。
これまでの簿記や決算書にはなかった「未来」を対象とする管理会計ファイナンスの登場によって、数字の強さはひとつ上のレベルに上がった。それは、帳簿を作る、そして決算書を読む、そんな過去の流れから、ファイナンスの登場によって、未来を描くことができるようになった。

4.うつろいやすい価値を求め、さまよう私たち
「効率」重視が行き過ぎると、縮小均衡(価格競争など)に陥る危険がある。コストを削り、資産を圧縮すれば目先のROIはすぐに上昇する。しかし、それでは長期的な成長は望めない。そのことに気づいた経営者は、ファイナンス理論の助けを借りつつ、「価値」を重視し始めた。ここで注目される企業価値は「将来キャッシュフローの合計」。
思えば、鉄道が完成し大量生産が始まった19世紀後半、カーネギーやロックフェラーらは「規模」を目指した。続いて、企業規模が拡大すると、多角化が始まり、デュポンは「効率」を目指すようになった。そしてビートルズが登場した情報化時代、今度は「価値」が経営のキーワードになった。企業価値志向には、「規模から効率」の段階でいったん縮みがちになった経営を「効率から価値」への転換によって拡大・成長路線に戻そうという意気込みが感じられる。

9章まとめ
企業価値とは、「将来キャッシュフローの合計」のことである。その会社が将来、どれだけのキャッシュを生み出すのか、ということ。ファイナンスの登場で未来を描けるようになり、長期的な成長の計画を立てれるようになった。目指す方向性が明確になったと考えらえる。要は、企業価値を向上させることが経営者としての役目の一つということだろう。
のれんは、買収時に上乗せされたプレミアム。これを上回るキャッシュを創出できると考えたから、プレミアム価格を乗せて買収をしているというわけ。M&Aで重要。


【この本を読んだ感想やまとめ】
会計の歴史と、絵画やミュージックの歴史をうまく合わせ、読み物としてとても面白いものだった。会計の本質的な部分にも触れているので、核と周辺を知ることで理解が深まったような気がする。EBITDAとか、WACCとかも出てきて、今後勉強する際にかなり役立ちそうだと感じた。
ただ、管理会計ファイナンスの明確な違いがよくわからなかった。どちらも将来の数値を扱うものだけど、それ以外になにかあるのかな。ファイナンスは、将来のキャッシュフローとか企業価値のことを扱う分野ってことかな。

【今後活かせること、具体的なアクション】
・解像度が上がったことによる、理解度促進
・簿記や会計の勉強で、自分の言葉で説明ができるようにしやすくなった
・診断士の勉強が頑張れそう

【気に入った文章・言葉を3つ】
・五線譜がメロディーというカタチのないものを可視化する技術とすれば、簿記は儲けというつかみどころのないものを可視化する技術。
・ROI=利益/売上(利益率)×売上/資本(資本回転率)。目先の利益でなく、長期的な成長を考えるならROIを重視
企業価値とは、「将来キャッシュフローの合計」のこと

【こんな人に読んでほしい】
・会計を易しく学びたい人
・会計と歴史ってどういうこと?って思った人
・簿記とか勉強したけど、その背景はよくわからん!という人
減価償却費の生まれた背景とその意味を知りたい人

 

 

 

 

読書備忘録#8_確率面白すぎる知恵本

読書備忘録#8_確率 面白すぎる知恵本
博学こだわり倶楽部

【読もうと思った動機】
確率って、よくわからない。例えば、当たる確率10%だったら、10回試行すれば、当たるってこと?実際はそうではない。手術の成功確率90%って、なんだ?あと、数年前に友人から「モンティホール問題」なる問題を出されて、とても面白いと思ったので、一度易しい確率の本を読んでみたいと思ったので手に取った。NEWTONのような科学雑誌だと固すぎるので、文庫本のこの本にした。

【概要】
身近にある「確率」についての説明や、直感から相当かけ離れた実態の確率など、多岐にわたる確率について数学的な裏付けを持って説明している。大数の法則って、恐れ多い。確率に支配されているといっても過言ではないと感じさせられた。なお、面白すぎるかどうかは、個人によります。私は、とても面白かった。


■1章 確率がわかれば迷いはなくなる
・確率の研究はギャンブルから始まった
話の発端は、ギャンブル好きな貴族のメレと数学者のパスカルから始まった。メレが、パスカルにこう相談した。「友人と同じ金額ずつを出し合って、先に3勝した方がすべての掛け金をもらえるという賭けをした。ところが、時間の関係で途中でやめることになった。その時点でメレが2勝、友人が1勝している状態だった。賭け金をどう分配するか迷った結果、メレが2/3、友人が1/3としたのだが、果たしてこれでよかったのだろうか。」
さて、あなたならどうするだろうか。
ひとつの考え方として、勝負がついていないため、賭け金それぞれに返すという方法もあるが、これは王手をかけているメレは納得しないだろう。メレのように、2:1で分けるというものあるが、仮に友人が0勝だった場合に、勝負がついていないのに、メレが総取りするということになり、適切な配分とは言えない。パスカルは次のように解決した。
現在、メレが2勝1敗なので、次の勝負でメレが勝てば3勝となりすべての賭け金をもらえる。次の勝負でメレが負けた場合、二人とも2勝ずつになり、そのあとメレが勝てば3勝となりメレの勝ち、負ければ友人が3勝となり友人の勝ちとなる。二人のギャンブルの腕を同じだと仮定すると、お互いの勝率は1/2。このように考えていくと、メレが続きの4回戦で勝つ確率は1/2、4回戦で負けて5回戦で勝つ確率は1/4、4回戦で負けて5回戦で負ける確率も1/4となる。
したがって、2勝1敗だったメレが最終的に勝つ確率は1/2+1/4=3/4。Aが勝つ確率は1/4となる。そのため、この場合メレと友人の分配は3:1とするのが合理的であるというものだった。
確率論は、フェルマーなどの数学者が精力的に研究した学問だった。
大数の法則とは:試行の回数を増やせば増やすほど、統計的確率は理論値である数学的確率に近づいてくこと。
・「ここにちょっと変わったオセロの石が3つあります。ひとつは、片面が白、片面が黒という石。2つ目は両面とも白。3つ目は両面とも黒。これらの石の表と裏は、テーブルに置かれているときには区別はつきません。さて、この3つの石を袋の中に入れてよく振って、反対側の面が見えないようにひとつ取り出し、テーブルに置いたところ、白でした。それでは、この石の裏面は、黒、それとも白、どちらと答えた方が当たる確率が高いでしょうか?
答えは白。

石の色に番号を振る
白白、黒黒、白黒
12 34 56

袋から出した石が・・

↓パターン
白1 白2、白5
    ↓裏
白2 白1 黒6

・コイン投げで10回連続、表が出た。さて、次に表と裏のどちらが出る確率が高いか?
同じ。コイン投げは、直前の結果に影響されない「独立事象」のため。ギャンブラーの誤謬。確率は、不確定な事象について、0~100%の間で「起こりやすさ」の予測を立てることはできる。しかし、次に「起こる」ことを当てることはできない。
・当たりの出やすい宝くじ売り場は本当にあるか?
結論、ある。ただし、そこで買うと当たりやすい、ということではない。単に販売枚数に比例しているだけ。
・不思議な巡り合わせが立て続けに身に起こるワケ
例えば、不幸が立て続けに続いたり。それは確率論的にはただの偶然。ポアソンクランピング。ポアソンクランピングとは、たくさんの事象の一部が全くの偶然によって寄り集まっている状態のこと。そこには何の因果関係も結びつきもない。いわゆる、ランダム性のこと。例えば同量の白と黒の球を箱に入れて適当に混ぜた時に、まだらに白黒が点在するような状態。白が濃いところもあれば、均等になっている個所もある。ちなみに、この滅多に起こりえない希少な事象の発生数の確率分布は「ポアソン分布」と呼ばれている。

1章まとめ
ある事象が起こった時に、これは確率的にどの程度が見積もることで、精神衛生上、安らかになることができますね。確率的な思考ってのは、結構大切なんだと認識した。


■2章 知ってると得する 身近なおもしろ確率
・40人のクラスに、誕生日が同じ人がいる確率は約90%。23人の集団で約50%になる。57人のところで、99%を超える。一般的な直感とは異なる結果になるため、「誕生日のパラドックス」と呼ばれるほど。
・降水確率0%でも、雨が降ることはあるか?
ある。降水確率とは、過去の気象データと比較して、今後の一定の時間内に1mm以上の雨または雪がどのくらいの割合で降るかを統計的確率で表したもの。統計的な処理をされている。過去実績が0~4%であれば降水確率は0%、5~14%であれば、降水確率は10%ということになる。なので、降水確率0%というのは、100回の内4回くらいは1mm以上の雨が降ってもおかしくない、ということ。
・「二度あることは三度ある」は確率的に正しい?
割と正しいといえる。同じようなことが二度、三度と連続で起こる例を、コイン投げで考えてみる。表裏が出る確率はそれぞれ1/2。コイン投げを5回連続して投げたとき、表裏の出方のパターンは32通り。そのうち、表、裏が交互にでるのは、「表裏表裏表」「裏表裏表裏」の2通りしかない。6.25%。一方、表か裏が3回以上連続して出る組み合わせは、16通りもある。50%。二度あることは三度あるというのは、よく言ったもの。ポアソンクランピング。
・サッカーの試合で”番狂わせ”が起こる確率は?
低い確率で起こる事象で、その事象がひょっとしたら起こるかもしれない状況が頻繁にあり、それぞれの事象は互いに独立しているような場合、その事象がある一定区間(時間、場所、距離など)の中で偶然に起こる回数は、「ポアソン分布」と呼ばれる分布になるといわれている。例えば、ある交差点で1時間に起こる事故の件数や、1日に受け取る電子メール件数とか、1分間のウェサーバーへのアクセス数とか。サッカーの特典もこのひとつ。サッカーで1試合の得点の確率分布がポアソン分布になっているという前提に立って、サッカーで発生する番狂わせの確率を計算してみると・・・
前提として、AチームvsBチームとしたとき、Aチームの平均点は1点、Bチームはその2倍の2点とする。この場合、Aが勝つ確率は、なんと18.3%もあった。得点力みに2倍のさがあったとしても、5回に1回くらいは番狂わせが起きるということがこの計算からも言える。引き分けは、21.2%となる。なので、Bチームが順当に勝つ確率は、100-(18.3+21.2)=60.5%程度ということになる。
ただしこれは1点、2点という差が小さい場合で、Aが5点、Bが10点といった場合には、Bの勝率は88.0%。Aが10点、Bが20点といった場合は、Bチームの勝率は96.1%にもなる(ラグビーがこれに近い)。だから、ラグビーは番狂わせが起きにくいスポーツといわれているんだな。 要するに、サッカーは点が入りにくいからこそ、番狂わせが起こりやすいということが確率論からも言える。弱小国が強豪国に買ってしまうような番狂わせが起こりやすいから、サポーターは狂喜乱舞する。世界で愛されている理由はここにあるのかもしれない。

2章まとめ
誕生日のパラドックスや、降水確率など、身近な例がたくさんあって興味深い。直感と反する確率や、番狂わせを確率で表現できるなど、とても奥深い学問だと再認識した。ここには書かなかったけれど、相撲の巴戦は控えが不利などこれも確率で表現できる。あくまで全員が同じ実力って前提だけど。こういうのに興味がある人と話ができたら楽しいだろうな。


■3章 確率で解き明かすツキの正体とは
・福引は先に引くべき?後から引くべき?これは、学校で習った気がする。いつでも一緒。同時に引いても一緒。たしか、条件付き確率だったような・・・。
・ポーカーの役はどのくらいの確率でできるか?ここでは、単純化するために、配った際に役ができている確率を計算する。ロイヤルストレートフラッシュは、4通りしかない。52枚のトランプから5枚を取り出す組み合わせの総数は、260万。つまり、4/260万=0.00015%らしい。ストレートフラッシュは0.0014%、フォーカードは0.02%、フルハウスで0.14%、フラッシュは0.2%でストレートは0.4%。スリーカードが2.1%でツーペアが4.8%とのこと。ワンペアは、42%。ノーペアはおよそ50%。ワンペアとノーペアで92%にのぼる。乱暴に言えば、ポーカーの大部分はワンぺアができるかできないか、できたペアの数字はどうか?という、「確率的には」実に単純な勝負であるといえる。
ジャンボ宝くじ1枚300円の期待値は、47.6%(143円)。自分が特別だと思う人は買えばいいという数値だと思う。必ず誰かは当たるシステムではあるし。
・ルーレットでカジノ側が絶対に損をしない理由。1~36までの赤黒に割り振られた数字と、0と00というどちらでもない色の合計38個の数字の中から、球がどの数字に入るか当てるゲーム。期待値は、94.7%。どの賭け方でも、94.7%になるように設定されている。言い方を変えれば、平均して5.3円、客は損するし、胴元は得をする仕組みになっている。だから、カジノの企業努力はひとつ。できるだけ長く、たくさんのお客にたくさんの回数の賭けごとをしてもらうこと。だって、大数の法則にしたがうから。
ちなみに、日本の公営ギャンブル(競馬、競輪など)の期待値は、おおむね75%に設定されているらしい。スロットマシンやルーレットが約95%、バカラは約98%。
・ギャンブルで元手を増やす最高の作戦とは? 例えば、ここに100万円の軍資金があるとする。これを、「当たる確率が1/2で勝ったら掛け金が2倍」というルールの勝負をして、「増やす」方法を考える。5万とか10万とか等分してもよいし、60万円とか一気にかけてもよい。  結論、これは上記のことからもわかるように、100万円全額一発勝負。この場合は、期待値は常に100万円となるが、実際には客側が不利。大数の法則は絶対。どんな場合でも、続けないこと、回数を重ねないことが賭けの心得として非常に重要なのだ。
・ツキの正体とは。 ツキとは、事象の偏りのこと。作為なくランダムに起こる現象こそ、実は偏りが多い。大数の法則は絶対だが、それは十分に回数が多い場合に言えること。回数が少ない場合には、理論上の期待値と現実の間にかなりの隔たりが生じる。この幅を分散と呼ぶ。大数の法則が十分に成り立たないような段階では、分散という名の偏りが目立ってしまう。ツキは偏り。予測したり、引き寄せたり、コントロールできたりするものではない。ポアソンクランピングのことよね。

3章まとめ
ギャンブルには期待値があって、必ず胴元が儲かるようにできている。しかし、公営ギャンブルで期待値が75%とは・・・宝くじに至っては50%に行かない。大数の法則を知っていれば、やらないよな。夢という期待を買って、ワクワクするという時間を買っていると考える・・・のかな?ツキはポアソンクランピングのこと。大数の法則は、十分に試行回数が多くないと成り立たない。勉強になりました。


■4章 ビジネスで、実生活で・・・大活躍の確率論
ベイズ推定・・・人間の推論を織り込んで主観的に確率をとらえる考え方。人間社会は常に環境が変化していて、厳密な統計的確率にとらわれすぎると適用範囲が狭くて使い勝手がよくない。そもそも、不確実性は人が感じるもの。そうであれば、もっと人がその不確実性を予測する思考形式になじむやり方で確率を捉えた方がいいんじゃないか、というところから生まれた。特徴というかスタンスとして、データが少なくても、たとえ主観的な推測が入っても、多少いい加減な確率と言えども予測できた方がよい。精度はあとから上げていけばいいじゃないか、というものがある。事前確率を設定し、事後確率を取得する。その確からしさは繰り返すことで精度が上がっていく。
このベイズ推定は、スパム対策にも使用されている。スパム群と分かっているメールの集まりと、まともなメール群の集まりを調べて、比較する。その結果から、スパムの兆候を示す言葉と特徴のデータベースを構築し、スパムかそうでないかの「もっともらしさ」の比率をベイズ推定によって割り出す。そしてフィルターされる。(これって、ディープラーニングじゃね?)。また、主要検索エンジンのグーグルにも、ベイズ推定が使われ、高い確率で適切なデータを探し当てる検索サービスを提供している。
モンティホール問題・・・アメリカのテレビ番組から生まれた。モンティホールはその司会者の名前。その番組では、3つのドアが用意されている。このうち、1つのドアの向こうには豪華賞品が置かれていて、回答者はそれを当てたら商品がもらえる。どれが賞品のドアなのかモンティホールしかしらない。参加者はまず、「どのドアに賞品があると思いますか?」と聞かれて、3つのドアからこれだと思うものをひとつ選択する。すると、モンティホールは別のドアを開けて見せて、「あなたが選ばなかったこちらのドアには賞品はありません。」と示してこう続けます。「あなたが最初に決めたドアのままでもいいし、もう一方のドアに変えても構わない。最終的に選んだドアの向こうに賞品があれば、それはあなたのもの。さて、あなたはどちらを選びますか?」
この問題のポイントは、モンティホールが別のドアを開けて見せて、そこに賞品がないと判明した段階で確率がどう、変化したか、ということ。
答えは、最初に選んだドアから変更した方が、2倍の確率で賞品が手に入る。
説明。
仮に、Aのドアが当たりだった場合・・
A 当たり
B 外れ
C 外れ
これを、「変更した」場合、次のようになる。(「→」変更)
A 当たり → 外れ
B 外れ  → 当たり
C 外れ  → 当たり

このとき、Aを最初に選んだ場合は外れてしまう。しかし、Bを選んだ場合は、モンティホールはCを必ずオープンにするので、変更したら賞品をgetできる。Cを最初に選んでもBを選んだ時と同様。
したがって、変更した方が当たる確率は2/3となる。
直感と異なる。おもしれぇ~
ちなみに、パロンドのパラドックスというものある。期待値が1以下のA、Bというゲームがあるとする。それで、Cというゲームは、AとBの組み合わせで、なんと期待値が1以上になる場合があるらしい!マジか!

・2割の働きアリと、8割のさぼっているアリ。ゲーム理論で説明ができる。点数にもよるが、さぼった方が労せずして成果を得ることができる。このバランスがとられるまで、まじめとさぼりの比率が収束される。
・二つの封筒のパラドックス・・・あなたの目の前には小切手の入った2つの封筒があります。金額は明かされていませんが、片方の封筒には、もう一方の2倍の金額の小切手が入っています。今、あなたが一方の封筒を開けてみたところ、中には100万円の小切手がはいっていました。ここであなたは、そのままその封筒をもらってもいいし、もう一方に替えることもできます。さて、あなたは最初に選択した封筒をもらいますか?それとも新しい封筒をもらいますか?」
期待値を計算する。変更すれば、50%の確率でそれぞれ50万円、もしくは200万円になる。よって、50×1/2+200×1/2=125万円。したがって、変えるべきだ!
・・・これって、何かおかしい。だって、変更したら、期待値があがるということは、どちらかを選択する前から、封筒を交換した方がよいという結論が出ているということになる。奇妙だな?
・人はリスクを伴う決定において、なぜかバイアスがかかった意思決定をしてしまう。次の二つの質問に答えてみよう。
【質問1】
あなたはゲーム大会で優勝しました。賞金の受け取り方には、A,Bの二つの方法が用意されています。あなたはどちらを選びますか?
A:100万円が確実にもらえる
B:コインを投げて表なら200万円がもらえるが、裏が出たらなにも得られない。
【質問2】
あなたは200万円の負債をかかえています。A,Bのどちらの選択肢を選びますか?
A:無条件で負債が半分減額され、負債総額が100万円となる。
B:コインを投げたて表が出たら支払いが全額免除されるが、裏が出たら負債額は変わらない。
大半の人は質問1ではAを選び、質問2ではBを選ぶといわれている。どうやら人間には、目の前の利益があるときは、その利益が手に入らなくなるリスクを避けることを第一に考えて安全確実な道を選択し、逆に損失に対したときは、絶対に損をしたくないという感情に押されて、損失そのものを回避しようとする傾向がある。つまり、同じ金額であっても、利益と損失では損失の方がより、強く印象に残るというわけ。このような心理的傾向を考慮した意思決定論を、プロスペクト理論と呼ぶ。
・不確実性を味方にすることができる。アンケート調査で正直な回答を聞き出す方法。答えにくい質問(中学生を対象にした性体験の有無など)をする際に、コインを渡し、「コインの表が出た人と、性体験のある人は手を挙げてください」とすれば、表が出た人も手を挙げるので、素知らぬ顔で挙手すれば真実は誰にもわからない。
・どちらにするか迷ったときは、効用関数で判断する。コイン投げという確率50%ではなく、100%や90%・・・としていった場合、どこが分岐点になるか。これは人それぞれ。効用とは、ミクロ経済学の消費理論で用いられる用語で、人が財を受けることによって得る心理的満足感の度合いのこと。本来、確率は数学的事実であり、そこに主観が入り込む余地はない。しかし、ハズレが10%でも不満足な人はいるし、ハズレが25%までなら満足できる領域の人もいる。ある確率が満足か不満足かは、その人の価値判断によって変わる。つまり、確率的思考を上手に使いこなすには、それぞれの結末に至る確率を知ったうえで、その結末があなたにとって望ましいか否か、効用を考慮して最終判断することが大切といえる。

4章まとめ
ベイズ推定は、現代のIT社会にはなくてはならない理論。プロスペクト理論は投資の世界にも通ずる。モンティホールはいろんな意見が出そうでおもしろい。実世界では、効用で判断するのが望ましいってことか。


■5章 ダマされちゃいけない!統計数字のトリック
・朝食を食べる子供は成績がいいって本当?朝食を毎日食べているという子供は、食べない子供よりもテストの正答率が高い傾向があるという記事があった。たしかに、相関はあるが、因果関係があるかどうかは別。朝食を食べれば、脳が活性化し、しっかり勉強ができるという推論は成り立つが、別の調査できちんと裏付ける必要がある。相関関係=因果関係ではない。この例で行くと、他にも家族と学校での出来事について話をする、平日にテレビやビデオを見る時間は1時間未満 、という子供の正答率が高くなっている。よって、きちんとした生活習慣が身についていることが因果かもしれない。
・疑似相関にだまされるな。少年による凶悪犯罪が起こると、インターネットやゲームが健全な育成を妨げるとする糾弾キャンペーンが始まる。メディアでは、家庭で格闘ゲームをする時間が長い子供ほど、暴力行動に走りやすい傾向にあると問題視された。しかし、別の統計ではテレビゲームが存在しなかった時代よりもそれ以後の方が明らかに犯罪件数や割合は減少しており、ゲームやインターネットの進歩と少年犯罪の件数には相関がないと指摘する専門家はたくさんいる。これはまさに疑似相関といえる。
・損失を利益に見せかける数字のマジック。あなたが製品管理の責任者として、部下から以下の2通りの説明を受けた場合、どのように受け止めるでしょうか。
A「不良品発生率が10%から5%になりました」
B「不良品発生率が50%減になりました。」
リスクやネガティブワードは小さく、利益やポジティブワードは大きく表現すれば、相手の判断を自分の考えている方向に誘導することが可能となる。
業績説明でこう説明すれば、増加している印象となる。「1月実績に比べると、5月までは残念ながら売上が50%減少しました。円高による輸出部門のダメージのためです。しかし、対策を講じたことで、5月にはプラスに転じ、9月までには売上を60%増加させました。」
・標本の選び方で調査結果は大きく変わる。トルーマンの奇跡。標本に、自動車や電話持っている人、という条件付きであれば、結果が正しくないのは当たり前。標本をできるだけ増やして全数調査に近づければいいというのは、この考え方はスープの味見に大鍋半分を飲むようなもので、非合理的。均一であれば、スプーン一杯で十分味が分かる。
世論調査の誤差。標本誤差の誤差こそ、大事なキーワード。例えば、内閣支持率は±2%の誤差がある。
・ココロが統計にワナをしかける。医師ががん患者に5年生存率は60%です、というと、そのせいで本人の生存率が60%に届かなくなるケースがある。5年という短さに悲観してうつになったり、免疫力が弱くなったりすることがある。逆に、こなくそ~と頑張る患者もいる。心理的ファクターが現実の生存率をも大きく左右する。財務分析でもそう。倒産確率10%としたら、それを重く見た取引先が取引をやめるかもしれない。そうすると倒産確率はどんどんあがって、「倒産しない確率は90%」もあったのに、経営状態が悪化することもありうる。人の心理が絡むときは、統計や確率の数値は画一的にはとらえられないものに変化してしまう。
・検診にひそむ数字の落とし穴。リスクの数字がはっきりと示されていても、その数字を正しく認識できるとは限らない。問題がある。
 XX病という病気の診断方法が確立されました。
 この診断方法はとても優れていますが、完全ではありません。
 ある人がこの病気にかかっていれば、90%の確率で陽性になります
 病気にかかっていなくても、1%の確率で陽性と出ます。
 人口のほぼ1%がこの病気にかかっています。
 この検査をスミスさんが受け、陽性だった場合、スミスさんが本当に病気である確率はいくらでしょうか?
答えは50%。

5章まとめ
いちばん実生活で役立ちそうな章だった。疑似相関なんてダマされそう。すでに騙されてそう。損失の件、割合で話すってのがポイント。標本の件は、スープの味見が刺さった。人の心理が絡む統計的確率は、画一的にはとらえることはできない。


【この本を読んだ感想やまとめ】
大数の法則からは誰も逃れることができない。最後のスミスさん問題なんて、きちんと考えても答えが出なかった。確率、統計、難しい。けど、モンティホール問題に代表されるように、直感と異なる結果になる問題はとても面白い。誕生日のパラドックスとかね。実際はパラドックスではないんだけども。番狂わせの確率まで数学的に導けるなんて、面白すぎる。


【今後活かせること、具体的なアクション】
ツキはポアソンクランピングと理解
大数の法則からは逃れられない。ってことは、一番最初に一発勝負。これだ。
プロスペクト理論を知ったうえでの損切り


【気に入った文章・言葉を3つ】
・コイン投げは、直前の結果に影響されない「独立事象」のため。ギャンブラーの誤謬。確率は、不確定な事象について、0~100%の間で「起こりやすさ」の予測を立てることはできる。しかし、次に「起こる」ことを当てることはできない。
・標本をできるだけ増やして全数調査に近づければいいというのは、この考え方はスープの味見に大鍋半分を飲むようなもので、非合理的。均一であれば、スプーン一杯で十分味が分かる。


【こんな人に読んでほしい】
自分の直感と事実の差を楽しめる人
宝くじを買っている人
モンティホール問題を知らない人

 

 

 

読書備忘録#7_世界失敗製品図鑑

読書備忘録#7_世界失敗製品図鑑
荒木博行さん

【読もうと思った動機】
勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。これは、過去の書籍から得た教訓である。確かに、ゲームとかやってても何で勝ったのかわからないけど、負けた時は何かしら自分の落ち度があることが経験としてある。自責という言葉がある。今後成長していくうえで、人のせいにばかりしていたら、成長はない。まず一歩目は自責で考えて、失敗から学習することで、今後の成長が見込めると考えたため、この本を手に取った。


【概要】
実際に発生した、20の事例を取り上げ、それぞれに対して製品紹介と失敗に至った経緯、そしてその原因とそこから得られるメッセージを述べている。20の事例は、3C分析のCustomer,Comptetitor,Company、そしてPESTという大きく4つに分類している。よく知っている製品や自分が買ったことのある製品、全く知らない製品などあり、とても興味深い。あと、重要な点として、この本は失敗という少しネガティブな印象を受ける本であったが、内容はとてもポジティブで、挑戦する勇気、失敗から学んで次に生かすことの重要性を説いており、成功に向かって走り続ける人のよい伴走者になりうる本だと感じた。


■はじめに
試行錯誤のしやすさ。ポジティブリストよりも、ネガティブリスト=これだけは避けておくべしの方がやりやすい。可能性が広がる。
この本における失敗の定義は以下。
「高い期待値を持ってスタートしながらも、想定通りの結果を出せずに途中で挫折せざるを得なかった製品・サービス・事業」
これだと、皆さんの身の回りでもよく起きうることで、それこそが狙い。身近さから来る学びのダイレクトさが狙い。リアリティを感じてほしい。
リサーチは、すべて公開情報のみ。重要なのは、我々がどうしていくかの解釈。
失敗は必ずしも避けるべきことではない、というのが何より伝えたいメッセージ。過去の先人と同じ失敗を繰り返すことは回避すべき。しかし、新しいことにチャレンジする以上、失敗はついてくる。「チャレンジ」と「失敗」はセットメニューであり、単品注文はできない。この本の事例の企業は、手痛い失敗を経験しながらもその失敗を教訓に変えて今日の成功へとつなげていっている。過去の失敗から学びつつ、過度に失敗を恐れずにチャレンジしてほしい。 その通りだと思う。リスクとリターンをきちんと判断する。

 

<事業の構造編>
■ユーザ視点を学ぶ Customer 私たちはユーザを本当に理解しているだろうか?
01 AMAZON ファイアフォン 自社が描いた将来像を重視しすぎて失敗 2014年ころ
・製品 世界を丸ごとショールーム化する画期的スマートフォン
狙いは、買い物体験の向上。スマホのカメラでDVDや書籍の表紙を撮影することですぐにAMAZONのwebページに飛んでレビューを読んだり購入したりできるようにある。カメラだけでなく、音楽などをスマホに聞かせることでコンテンツを特定しすぐに購入することが可能となる。言い換えると、実空間にあるものすべてをスキャンの対象にするツールともいえる。当時ジェフベゾスは、1億を超えるアイテムを、いつでもどこでも1秒で認識できると言っていた。当時、アメリカの小売売上高に占めるネット通販の比率は、6%程度だった。つまり、ネット通販のポテンシャルは巨大であった。

・失敗に至った経緯 ほとんど話題にならず、わずか1年強で撤退
当時、iPhoneやギャラクシーといった強力な先行者がいた。スマホ市場は激しい市場のひとつ。フェイスブックやグーグルも参入しては撤退したというほど。端末の値段を199ドルから、99セントに引き下げて、かつAMAZONプライム1年分(99ドル)をつけても反応はいまひとつだった。電池の過熱や持続時間に対するハード面の不満も少なくなかった。同じころ、iPhone6が発売になり、市場におけるファイアフォンは急速に下火になっていった。ファイアフォン関連の損失1億7000万ドル、在庫8300万ドル。これは発売後3か月後の話。販売期間1年で、ひっそりとした終幕を迎えた。

・原因 自社視点で描いた将来像を重視しすぎてバランスを欠く
端的に言うと、ユーザーがスマートフォンに求めるものとのズレがあったということ。スマホにおける買い物の位置づけは、そのほか多くの機能の内の一部分でしかない。スマホで買い物が少し便利になったからと言って、簡単に買い替えるか?
AMAZON側の立場からすると、AMAZONのサービスとユーザをつなぐスマホという大きなミッシングピースを埋めたいという課題認識も理解できるし、「世の中ショールーム計画」はいまでも斬新に感じる。しかし、当時のユーザにとって、例えば電池の持ち時間や通信料などもっと身近に解決されていない課題があった。 ⇒課題を階層構造で捉えるべき。TQCのように、ある課題をクリアしたら別の課題が浮き彫りになるように、きちんとステップを踏んで課題解決をする必要があるということか。
別の言い方をすれば、ユーザー視点で見た現在を疎かにしたまま、自社視点で描いた未来に重心をかけすぎていたといえる。ユーザを導くためには、「ユーザーの目の前に立ちふさがる課題からの解放」がセットで準備されるべき。

・メッセージ
AMAZONはこの後、アマゾンエコーという製品を出した。その姿勢には、言語化しにくいバランスのとり方を怪我をしながらも学んでいると見えなくもない。後日談はいくらでも語れる。しかし、日々大きな変化が矢継ぎ早に起こる今、この微妙なバランスのとり方は、傷を負いながらも前進しようとする企業の中にこそ、そのヒントが見出せるのかもしれない。
次の二つの対立するバランスの取り方は、果敢にチャレンジしたものだけが体得できる特典だ。
ユーザ視点と自社視点という立場のバランス
現在視点と未来視点という時点のバランス

 

02 フォード エドセル 社内的な正しさを追求して失敗
・製品 発売までに史上最多の資本投入をされた消費財 1957年ころ
画期的な押しボタン式の計器、新奇なデザイン。それは、大衆車を作っていたフォードにとって核となる中級車がなかったことで、GMなど他社に顧客が乗り換えていったという背景がある。いかにして他社をしのぐ圧倒的で革新的なモデルを生み出すかがフォード社の全社的な使命だった。
5000万ドルという多額の費用を投下し、ティーザー広告という情報を小出しにしながら消費者の興味をあおる方法で、消費者の関心を発売まで引っ張り続けた。

・失敗に至った経緯 2年あまりで3億5000まんドルもの資金を溶かした大参事
1日600台が黒字ラインだったが、300台ほどしか売れなかった。初期段階では、納車時にオイルが漏れていたり、ボンネットやトランクが開かなかったり、押しボタンが機能しなかったりする製品そのものに欠陥や不具合が多かった。手を打ったものの、消費者に大きな影響を持つ雑誌が、エドセルを酷評したことで、さらに低迷した。その後何度かモデルチェンジをしたが、採算ラインを大幅に割り込んだ状況は変わらず、1959年に、生産中止となった。

・原因 社内的に正しいプロセスを踏んだからこそ失敗した
着目すべきは、製品そのものの品質に関わる問題。自動車には、「安心して快適に移動できること」という具体的な中核的価値がある。だが、エドセルはその中核的価値に不安を感じさせた。製品というのは、その大前提を満たすからこそ初めて次フェーズであるデザインや機能で戦うことができる。中核的価値を満たしていない製品は、そもそも土俵に立てない。中核的価値とは、いわゆるアタリマエ価値のこと。
押しボタンなど新しいことを取りそろえた結果、確率的に欠陥が出やすいプロダクトになったしまった。デザインや広告手法など、先のフェーズばかりに目を奪われてしまっていたことで、結果的にものづくりの優先順が下がってしまったことが課題といえる。
エドセルの開発は、最新の顧客情報をベースにしながら、社内的に正しいプロセスに則って決められた、ということ。正しいことをやった、それなのに失敗に至った。ここから得られる教訓は何か?真のマーケティングは真の顧客情報や正しい意思決定プロセスを踏むことではないという真実。結局、消費者のことなどわからない。その前提に立つ。いくらデータが正しいとしても、ひょっとしたら違うかもしれない、世の中変わってきているかもしれないという健全な問いを挟むことが求められる。 市場起点でPDCAが廻っていないことの例なのかもしれない。

・メッセージ
マーケティングというのは、移ろいやすく把握しにくい顧客心理に対して、絶えず興味関心を持ち続ける姿勢にある。プロセスや情報ではない。
この後、フォードはマーケティングの形を大きく変更させ、マスタングを開発する。開発責任者は、エドセルの失敗を受けて、我々は方針を180度転換したと言っている。フォードの躍進は、エドセルの失敗から大事なレッスンを積んだことにあった。
製品における中核的価値を満たすことが何よりも重要。これがないと土俵にさえ立てない。
マーケティングの本質は、絶えず変わり続ける顧客に関心を持ち続けること。
失敗からの学習をどのくらい早く行うかが企業のその後の成長を形作る。

 

03 コカ・コーラ ニューコーク 適切なコミュニケーションができず失敗
・製品 ペプシ打倒のための歴史的チャレンジ 1985年ころ
業界のガリバーとして圧倒的なポジションのコカ・コーラだったが、ペプシコカ・コーラになじみの薄い新世代への訴求と、味で勝負するという戦略で、コカ・コーラはトップシェアを譲ることになった。そこで、1世紀以上もそのままだった、コカ・コーラの味を変えるという手段を選んだ。ここには、輸入していた原料である砂糖の高止まりがあり、それを安定した価格で手に入る異性化糖を選択。これは年間1億ドルのコスト減にもつながる。市場調査でも、高い評価を得ることに成功。総合的に判断して、既存製品より1段甘みの強いこれを、新しいコカ・コーラとして認定。カニバリを考慮して、既存製品は打ち切り。これをニュー・コークとして発売した。

・失敗に至った経緯 消費者からクレーム3か月で旧製品復活へ
批判が殺到。毎日1000件を超えるクレーム。昔の味に戻すことを「絶対にありえない」「考えもしない」という頑なな姿勢もさらに批判活動に火をつけることになった。旧製品がなくなる1か月後、クレームは1日8000件を超える。かつてのファンも離れていくし、若い世代を振り向かせることもできなかった。ボトラーからも旧製品を復活させるべしという、止む無き批判を受け止め、発売から3か月後にコカ・コーラクラシックとして復活させた。92年にはコークⅡという名称変更がされ、2002年にひっそりと姿を消した。

・原因 味ではなく、コカ・コーラの姿勢に対して反発した消費者
20世紀のマーケティング史における最大の失敗事例といわれている。コカ・コーラにはいち消費財以上の価値を顧客が感じており、その味を簡単に変えたからだと。しかし、実際には軽んじていたわけではなく、リサーチにリサーチを重ね、合理的なプロセスを踏みながら慎重に事を進めていた。なので、この失敗した結果を踏まえ、一つ言えるとすれば、伝える際の経営陣の「態度」や「見え方」にある。実は、ニューコークを発表する際、味を変える理由について、ダイエットコークを調合する過程で科学者によって発見された「偶然の産物」というストーリーを自信満々に話した。ペプシチャレンジの結果を受けて味の変更を検討してきたとは言えなかった。この発見には自信がある。間違えるはずがないと何度も強調。顧客には、コカ・コーラ者の開発の経緯は知るはずもないので、唐突に、思い付きのように「新しい味を発見したから変える」という宣告をされたように感じ、反発心が芽生えてしまった。実際に、クレームを受けた窓口の報告によれば、驚くほど多くの人たちがニューコークを飲んでいないにもかかわらず味に対する抗議の声を寄せていたそう。消費者は、映画会社も買収し、顧客不在でアメリカを知らないキューバ出身の外国人経営者が思いつきのままにアメリカの文化を変えてしまうと考え、コカ・コーラ社の姿勢に反発した。だからこそ、3か月という期間でのクラシックコークの復活と経営陣による真摯な謝罪は、コカ・コーラを大きく飛躍させるきっかけになった。営業利益率が10%そこそこから、20%を超えるまでになった。

・メッセージ
社内で入念に検討を重ねた結果であっても、顧客はそれを知らないため、「唐突に」「軽々しく」決めたと受け取る可能性がある。どのようなストーリーで顧客に伝えるのかは超重要。消費者の意思決定は、機能勝負からデザイン勝負へ、そして最後はストーリーで勝負が決まるというのがある。忘れてはいけないのが、ニューコークに対する素早いリカバリ。わずか3か月後に社運をかけたプロジェクトを謝罪とともに変更したことは一度ストーリーで負けたコカ・コーラに、真摯に顧客に向き合う会社であるという新たなストーリーを付与した。一度失敗してもそこから謙虚に学ぶ姿勢は、新しいポジティブなストーリーを生み出す可能性につながる。
機能や品質さえよければ売れるわけではない。どのような「ストーリー」を添えるかが重要。一度失敗しても、そこから謙虚に学ぶことができれば、新しいストーリーを生み出すことができる

 

04 Facebook フェイスブックホーム 無理なチャレンジを仕掛けて失敗
・製品 アンドロイド端末をフェイスブック仕様に変えるための乗っ取り戦略 2013年
フェイスブックがホームアプリとして搭載されているスマホ。常にフェイスブックにアクセスしている状態。知り合いが写真投稿すれば、ホーム画面に表示され、ダブルタップすればイイネができるようなもの。いわば、フェイスブックフォン。googleに対する焦りと妥協の産物でもあった。OSやアプリのプラットフォームなどの土台をgoogleが握っていることで、さじ加減ひとつでフェイスブックの命運が変わってしまう。2011年には、googlegoogle+というSNSを立ち上げた。プロジェクトOxygenという、対google戦略組織を組成して、ハードやOSを含めた新しい統合型のスマホを作ろうとしたが、OS開発の難易度などがあり、結局HTCと協働することで、アンドロイド端末に、ホームアプリという概念を構築してフェイスブックホームを作った。

・失敗に至った経緯 酷評の中、わずか数か月で世の中から消え去る
2年縛りで約100ドル。しかし、アプリ評価は5段階中2。満足するのはフェイスブック中毒者だけ、バッテリーの消費が大きいなど。1か月後には99セントまで値下げ。それでも販売台数は1万5000台程度。3か月足らずのうちに販売中止となる。(2013年にもっとも売れたスマホは、4700万台とのこと)。2013年のテクノロジー業界における10の失敗のひとつに選出されるほど。

・原因 失敗は織り込み済みの意図のある失敗だった?
土台となるプラットフォームを握られてしまった段階におけるアプリ戦略の難しさがある。本来はOSを自分たちの手で作りたかったフェイスブックだが、技術的な理由であきらめざるを得なかった。「OSを握られた中で主導権を取り戻せるのか」というある種の無理を承知の上での実験だった。フェイスブックは翌年2014年に、VR企業であるオキュラスを買収。モバイルのプラットフォーム業界において、出足の差がすべてを決めてしまったという認識がザッカーバーグにはあったと考えられる。

・メッセージ
意図のある失敗とは、失敗するリスクを踏まえながらも、長期的な視点で戦略を実現するために必要な投資のようなもの。意図のある失敗において重要なことは、もし失敗したらその次のアクションをどうするか、という見通し。フェイスブックは、それがVR企業の買収だった。このフェイスブックの一連の事例は、目先のことにとらわれすぎず、長期的な視点に立ち、今どんな失敗覚悟のチャレンジをしておくことが重要なのかを考えるきっかけを与えてくれる。
プラットフォーマーにゲームのルールを握られると傘下のプレーヤーの打ち手は限定的になる。なので、厳しい戦いの状況下でも、いまだからこそできるチャレンジを仕掛けていくことは重要。失敗したときに、その次の打ち手をどうするかを織り込んでチャレンジをすべし。

この事例から示唆を得るのはとても難しい。。。

 

05 グーグル グーグルプラス 企業側の戦略を優先して失敗
・製品 グーグルのビジネスモデル上、必要不可欠だったSNS  2011年
オーカット、グーグルウェブ、グーグルバズなどSNSに挑戦しては撤退してきたが、「リアルな人間」のデータ取得は諦めることができなかった。グーグルは、ユーザと広告との的確なマッチングをすればするほど収益を得ることができる。過去、フェイスブックに買収を仕掛けるなど、属性が明確でリアルタイムに情報を取得できるSNSはビジネスモデルにおける大きなミッシングピースだった。グーグルプラスは、実名登録が前提で、匿名ユーザはアカウントの停止削除するなど強硬手段を取っていた。多くの批判があったが、実名登録はマッチング精度を高めるために譲れない一線だった。
当時、フェイスブックは7億人のユーザがいて、勝ち筋のひとつとして差別化要因があった。サークルという概念で、家族、友人、会社などのサークルを作成し、そのサークル内での自分を定義し、それぞれに情報を出し分けられるようにした。(フェイスブックはそのような概念はなく、すべて等しく投稿情報が共有される)。あとの差別化要因として、グーグルの既存サービスがあった。メールやカレンダーなど。通常、グーグルではプロダクトと呼ばれるが、グーグルプラスは複数のプロダクトと関りを持つ大きな意味を持つものとしてプロジェクト扱いとされる。既存のグーグルのサービスを横断でつなげるという使命を持った、グーグルにとって極めて野心的なサービスだった。

・失敗に至った経緯 サービスの統合が反発を招き、個人情報管理問題がとどめに
内部からも不満が出る。自由な開発体制こそが売りだったグーグルがトップダウンでソーシャル化への機能連携に舵を切ったという経営方針に対する不満と、それにもかかわらずフェイスブックには程遠いユーザー数にとどまっていることに対して、内部で不満が高まっていた。2013年に引き続き、連携を強め、youtubeとの統合も図る。しかし、各種連携強化の施策増加に反比例するように、グーグルプラスのユーザの投稿量は減り始める。これらを踏まえ、2014年には実名ポリシーを放棄し、正式に謝罪をした。2015年には、youtubegoogle+とのアカウント統合も解除した。この時点で、グーグルはグーグルプラスの不振の影響を限定的にとどめておくという判断をし、グーグルプラスをグーグル既存サービスと切り離す決定をしたということ。
2018年には追い打ちをかけるように、個人情報の管理体制の問題が発覚した。3年以上もの間、外部の開発会社がサービス内の個人情報にアクセスできる状態になっていた。公にその事実を認め、グーグルプラスの閉鎖の方針を決めた。2019年4月に、グーグルプラスは閉鎖された。

・原因 意図と野望があるグーグルだからこそ失敗した
成功しているSNSである、フェイスブックツイッター、インスタグラム。これらは、開始時点ではスタートアップによるサービスであり、最初は限定的なユーザーが楽しみながら活用し、ユーザーが使い方を見出しながら徐々に大きくなってきたという歴史がある。SNSはユーザがコンテンツを投稿することによって、事後的に方向性が定まることを考えれば、企業の意図ではなくユーザが楽しめる場を手探りで作っていく過程が重要だということができる。生活に定着するまでの期間は、企業側の都合を感じさせてはいけない、ということ。そう考えると、実名登録やアカウントの統一など、グーグルという企業の存在やその都合が見えすぎてしまったということが挙げらえれる。すでにフェイスブックがあるのに、わざわざ乗り換えてまでグーグルに貢献する必要もない・・・と考えていたユーザが多数だったとしても不思議ではない。別の言い方をすると、大企業だったグーグルだから失敗したと言えなくもない。SNSが必要だったという必然性があり、明確な意図があった。その意図が強かったからこそ、失敗したという皮肉なストーリー。

・メッセージ
提供側の意図が強いからこそ、「こうでなくてはならない」「ユーザーはこうであるべきだ」という思いが先行し、その強い思いがサービス内容を規定してしまう。結果的に、その無言の圧力が息苦しさを生み、ユーザの離反を招いてしまう・・・という事態を招いてしまう。私たちは、そういう意図の強いビジネスであればあるほど、企業側の戦略を一旦仮置きするという知恵が必要なのだろう。
打とうとしている施策は、本当にユーザのニーズに即したものなのかを考える。
ユーザのニーズを探る際は、企業側の都合をいったん脇において素直に見ることを心がけよう。
SNSは、ユーザにとっての使い勝手こそがすべて。時間をかけてユーザーを育むだけの忍耐力が必要だ。

 

06 ファーストリテイリング スキップ プロダクトのレンズを外せず失敗
・製品 ユニクロの強みを横展開し、食品業界の革新を狙う 2002年
野菜事業。野菜を中心とした農産物は、生産から流通、販売までの工程に無駄が多いために価格が高止まりしている。その業界に、SCMを導入すればアパレル業界のように高い品質のものを安く提供できるはずだと考えた。2002年、ファーストリテイリングは業績が停滞しており、成長ためには様々な可能性を探っていかなければならないという危機感を持っていた。その中で、アパレルと野菜事業の間に相関を見出した。永田農法とよばれる、植物が生きようとする力を最大限に活かすやり方で、コストは割高になるものの、高い糖度や栄養価など野菜の品質は格段に高まることがわかっていた。品質を担保しつつコストを削減するために、農家に対する引き取り保証や中間マージンの削減、販路拡大を通じて、規模の経済を実現するといった戦略を立案する。規模の拡大と無駄の削減を通じて、良いものを安くを実現しようとした。

・失敗に至った経緯 安定供給のハードル高く、日用的なニーズを満たせず
当初は1万3500人と好調だったが、独身世帯などに偏りがあった。その後も伸び悩み、主婦層の拡大等を目的に実店舗の出店攻勢を試みたり、当初の首都圏だけから本州四国まで拡大したりした。しかし、その顧客拡大施策の裏で、本質的な問題(中核的価値)に直面していた。欠品問題である。農家の拡大が難航、出品のコントロールができない状態で、相当な頻度で欠品していたため、普段使いにはとても耐えられるものではなかった。クオリティが高い野菜さえ手に入れば顧客はついてくると考えていたが、おいしい野菜の提供に力をいれていたんだけど。結局、4,5万を目指した会員数は1万前後を均衡。2004年に撤退。26億円の特別損失を計上した。柳井会長は、「衣料品と異なり、工業製品のような計画生産ができなかった。」

・原因 プロダクトのレンズをはずすことができなかった
自社都合の曇った世界で世の中を見てしまったこと。具体的には、ユニクロの成功が野菜でも横展開できるはず!という見立てや、反対した人たちに対してこのビジネスモデルの正しさを証明してやる!といった反発心。柚木社長は、スキップの失敗の要因を「顧客起点の考え方に欠けていた」と話した。ユニクロの成功やスキップの構想は置いといて、利用者の立場に立って、生活をイメージしてみること。利用者にとっては、野菜を買うということは数多くあるルーティーンのうちのひとつでしかない。顧客起点は言葉としては理解できていたとしても、その視点に立って注意深く考えてみるということとは大きな差がある。プレッシャーを強く感じれば感じるほど、プロダクトのレンズから世界を見がちになる。その呪縛から逃れるのは難しい。

・メッセージ
GUの社長をやっているのが柚木さん。2006年にスタートしたGUは、破綻寸前だったが、柳井さんが柚木さんを選び、大成功に至った。柚木さんは、「絶えずご近所さんや若いスタッフの声に耳を傾けることから始めている」といっている。短期的には失敗に見えることも、その学びを活かせば長期的には、次の機会につながっていく。柚木さんのこの事例は、そんな前向きな勇気を与えてくれる。

 

まとめ ユーザ視点を学ぶ
課題を階層構造で捉えるべき。TQCのように、ある課題をクリアしたら別の課題が浮き彫りになるように、きちんとステップを踏んで課題解決をする必要があるということか。ある課題は、時が解決する場合もある。
現在と未来、ユーザーと自社という対立におけるバランス感覚。
中核的価値がなければ、土俵に立つことさえできない。マーケティングというのは、絶えず興味関心を持ち続ける姿勢。
消費者の意思決定は、機能勝負からデザイン勝負へ、そして最後はストーリーで勝負が決まるというのがある。一度失敗をしても、それがストーリーになりうる。
プラットフォーマーにゲームのルールを握られると傘下のプレーヤーの打ち手は限定的になる。なので、厳しい戦いの状況下でも、いまだからこそできるチャレンジを仕掛けていくことは重要。失敗したときに、その次の打ち手をどうするかを織り込んでチャレンジをすべし。
供側の意図が強いからこそ、「こうでなくてはならない」「ユーザーはこうであるべきだ」という思いが先行し、その強い思いがサービス内容を規定してしまう。ユーザのニーズを探る際は、企業側の都合をいったん脇において素直に見ることを心がけよう。
顧客を見るときは、自分自身がプロダクトのレンズをかけて見ていることを認識すべき。顧客起点で考えるということは、いったん自分のビジネスを忘れて素直に行動を見つめてみる。失敗から学ぶことが重要。

 

■競争ルールを学ぶ Competiter 私たちは競争に勝つために必要な条件を理解しているだろうか?
07 マイクロソフト Windowsフォン 初期段階の出遅れを挽回できず失敗 
・製品 MSのスマホ 2010年
iPhoneやアンドロイドが出てくる2007年ころまで、MSはスマホの先駆者だったが、どんどんシェアを失い続けた。2010年に、いままでのスマホとの互換性を捨てて、ゼロベースでウィンドウズフォンという新たなOSを開発した。端末はノキアノキアシンビアンというOSを自社開発していたが、イノベーションに乗り遅れ時代遅れになっていた。なので、ノキアにとってもウィンドウズフォンのOSを採用するというのは社運を賭けた大きな一手だった。IDCは、ウィンドウズフォンは2015年にはシェア21%になると予想していた。さらに、直感的に分かりやすいUI、エクセルなどのオフィスがスマホ上で使用できるなど、ユーザの関心は高まった。

・失敗に至った経緯 PCでの優位性をモバイルに活かせなかった
2013年にノキアを72億ドルで買収するとしたが、この大型の買収をしたところで、iOSやアンドロイドと開いたその差は、埋めがたいものがあった。2014年には、買収を失敗として認め、1万8000人をリストラした。2015年には、コンティニュアムという機能を取りいれたスマホで仕事ができるということを売りにした。しかし、アプリ開発者はついていかなかった。開発したアプリがスマホでもPCでも活用できれば双方に提供できるのでメリットが大きいはずと考えたが、開発者たちはそう考えなかった。スマホにとっての最適なUIが、PCでもそうあるとは限らない。ユニバーサルアプリの構想は、どっちつかずの中途半端な代物とみなされた。2019年にはサポート終了宣言。

・原因 初期段階でのちょっとの遅れがすべてを決めた
MSは、PCとモバイルは別物で、それぞれで勝負しなくてはいけないとうすうすわかっていたものの、敢えて難易度の高いPCとモバイルの一体化で戦うことを選択した。ちぐはぐ感。これは、MSが置かれてしまったOS競争における立ち位置がある。OSの領域はネットワークの経済性(外部性)(=勝者総取り)が働く業界。後からひっくり返すのは至難の業。初期段階のちょっとの遅れから圧倒的な劣勢に追い込まれてしまった結果、勝ち目の薄い打つ手を選ばざるを得なかった。ユーザはウィンドウズのOSを使いたいのではなく、オフィスのアプリを使うことで問題解決をしたいのだ、というユーザ視点に立ち返り、オフィスのサブスクで大躍進を遂げたMS。

・メッセージ
OSの世界のように、最初に循環構造を作られてしまうと、後手に回ったプレイヤーはかなり条件の厳しい戦いを強いられる。その土俵に残って苦しい戦いを続けるより、いったん土俵から降りて、改めて顧客視点に立ち戻り、新たな戦い方を再定義することの重要さが示唆として得られる。

 

08 任天堂 Wii U 理想を追求しすぎて仲間を作れず失敗
・製品 Wiiの後継機 2012年
特徴は、Wii Uゲームパッド。2006年発売のWiiは、最先端の技術を追わずユーザに着目した製品開発をしていた。2011年ころは、Wiiを投入した時代から大きく変わっており、スマホ上で展開されるソーシャルゲームが台頭してきており、ゲームをするためにわざわざハードウェアを買う必要があるのか?という新たな問いに向き合う必要があった。Wii Uは、Better Togetherというコンセプトで、ファミリー層を維持し続けることを狙った。リビングにおいてもらい、家族で、そして毎日触れてもらう機会をいかに増やすか。稼働率が高い状態を保てれば、そこから先のソフトビジネスの可能性が大きくなると考えた。

・失敗に至った経緯 サードパーティーを巻き込めず、ソフトの少ないゲーム機に
ソフト数の少なさが販売不振の背景。任天堂のハード戦略には一つの方程式があり、それがハードの魅力を十分体験でき、そのハードでしか遊べないキラーコンテンツと呼ばれるソフトを初期段階で出すこと。そうするとハードが売れ、サードパーティも参入してきてまたハードが売れる・・・という循環構造が生まれる。この循環構造をいかに初期段階で作ることができるのかがが任天堂の勝負だった。ニンテンドーランドマリオブラザーズUでは、魅力が十分に拡散するまでには至らなかった。外部のソフトメーカーは、その売れ行きや変則的な追加機能を盛り込む等を考慮すると、コスパが悪すぎた。結果、Wiiの2割程度のラインナップとなった。マリオカート8やスプラトゥーンマリオメーカーといった自社開発ソフトはヒットしたが、結局長期的な販売実績にはつながらなかった。

・原因 ゲームソフト開発のハードルが高くオープンな生態系構築に失敗
サードパーティを巻き込めなかった。サードパーティにとって収益性を高めるには、一度開発したソフトを可能な限り多くのプラットフォームにアレンジして展開することが定石。しかし、Wii Uはハード自体が複雑で多くの追加工数が必要だったこと、そして開発ツールが審査のうえで有償だったこと。つまりは、Wii Uはコストがかかり面倒なプラットフォームだった。任天堂の思想は、ハードとソフトを高い次元ですり合わせて統合するからこそ味わえる究極のゲーム体験の追及だった。初期段階で循環構造を作れなかったため、孤立してしまった。PS4XBOXは対照的にオープンな生体系を作っていた。その後のswitchでは、サードパーティが開発したくなるような環境づくりに尽力したといっている。Wii Uの失敗は、プラットフォーマーとしてのバランスの取り方を考える機会として決して無駄ではなかった。

・メッセージ
先行きに不透明感があるのであれば、より多様な関係者が参加したくなる、もしくは応援したくなる枠組みを作ることは成功確率を高めるひとつのカギになる。ダイバーシティは競争力の源泉になる。不確実性と多様性のバランス。高い次元でユーザ価値を追求していくと、第三者が協力しにくい閉じたモデルになりやすい。どこまでオープンにするかは外部環境の変化を踏まえて柔軟に判断すべき。先行きは不透明なこの時代、オープン化を進め多様性を確保することが一つのカギとなる。

 

09 NTTドコモ NOTTV 成功体験にとらわれて失敗
・製品 アナログ放送の帯域を利用した新たな放送局 2012年
当初は、少ない対応機種であまり伸びなかったが、のちに対応機種も増え、NOTTVの契約を伸ばしていきたいと考えていた。

・失敗に至った経緯 iPhoneショックと動画サービス時代が直撃
屋内まで放送波が届かず、家の中でまともに視聴ができないという技術的な課題があり、急遽室内用アンテナを無料で配布する緊急措置を取ったりしていた。対応機種も増えてきて、さらにソニーサムスンのツートップ戦略で契約者も伸びていった。しかし、同年、ドコモはiPhoneの販売を開始することになった。ソフトバンクauに対抗するために仕方のないことだった。しかし、iPhoneはグローバル機種のため、日本独自サービスのNOTTVには非対応。みんなiPhoneに流れたため、NOTTVの契約も一気に落ちることになる。さらに、同じころyoutubeなどの動画コンテンツが質、量ともに一気に充実してきた。ネットフリックスが動画サブスクリプションを提供したり。NOTTV開始当時は安定して大容量のコンテンツを見るのは難しいと考えられていたが、このころ無線LANLTEで高速化が進み、ネット環境で十分楽しめるようになってきた。みんな、NOTTVに意味を見出せなくなってきた。

・原因 ビジネスモデルの過渡期なのに旧来型の成功方程式を盲信した
ドコモの戦略は、ひとつの前提に依存していた。それは、「NOTTVの対応端末さえ売れればなんとかなる」というもの。しかし、これは二つの意味で間違いだった。ひとつはそもそも対応端末が売れない事態を想定していなかったこと。もうひとつは対応端末が売れてもサービスを選ばれない可能性を考慮していなかったこと。過去、ドコモはiモード垂直統合型ビジネスモデルで成功した。しかし、2010年前後を境に、時代はスマホとなり、ビジネスモデルは大きく変容した。端末メーカーはキャリアからのコントロールを外れ、グローバルレベルで主導権を握り始める。アプリはアプリでキャリアとは関係ない独自の進化の道を進む。なので、NOTTVは本来、ドコモというキャリアに関係なく純粋なコンテンツアプリとして同じレイヤーに存在するほかのアプリとの時間の奪い合い競争に勝たなくてはいけなかった。キャリアによる垂直統合の力ではどうにもならなかった。失敗の大元は、通信サービスが発展していく時代環境下に、甘い見通しで放送事業に参入した意思決定そのものに誤りがあったといえる。過去の垂直統合型の成功方程式を盲信してしまった象徴的なケースといえる
なお、開局以来、毎年215億、168億、500億、という損失を計上し、累積赤字は1000億円に達した。

・メッセージ
全ての病気に対して万能な薬がないように、一度大きな成功をした企業、組織、個人は勝つための方程式は、通用するビジネスの範囲がある。ビジネスが異なれば、その方程式はもう一度ゼロベースで考え直さないといけない。無意識のうちにほかの領域にも当てはまると甘い見積もりをしてしまう。
ビジネスには、垂直統合型のビジネスとレイヤー構造のビジネスが存在する。それぞれのビジネスには全く異なる戦略と仕組みが必要になる。ビジネスの構造が変化すれば、その方程式は通用しない。

 

10 ナイキ ゴルフ用具事業 強みを活かせない隣接市場に参入して失敗
・製品 ゴルフ用具事業への参入 ゴルフボールを皮切りに、ゴルフクラブ、キャディバッグなど 1999年
1984年に、ゴルフのアパレルに参入し、1996年にタイガーウッズと契約をしてから、ウッズの活躍に伴う露出効果で、ゴルフ界でアパレルやシューズの確固たるプレゼンスを確立した。ブランドイメージをベースに、ゴルフボール事業参入と事業の拡張をした。ナイキにとっては、市場を寡占的にしていたビッグプレイヤーと、さらに新規参入組とも同時に戦わなくてはいけないシビアな市場であった。ナイキはゴルフボールの開発・製造能力はなかったので、OEMという形で参入。ウッズの存在が、勝利のカギだった。実際、OEM先のブリヂストンの力を借りて、今までとタイプの異なる低スピンと高いボールスピードを実現した。ウッズはナイキ製にゴルフボールを変更して、素晴らしい結果を残した。2001年にはゴルフクラブやキャディバッグの販売を開始。ウッズの注目が集まるほど、ナイキのブランド価値を高めていった。

・失敗に至った経緯 市場の伸び悩みとメインプレイヤーの不振によって成長が止まる
2008年のリーマンショックによる景気後退。ウッズの膝の手術のための1年間の欠場、そして不倫騒動。売上は昨年比11%の減少。ゴルフ全体の市場停滞も加わり、数年にわたり前年比で減少が続いた。各スポーツメーカーも撤退し、ゴルフ用具市場の厳しさを伝えることになった。ウッズとともに成長したナイキの終わりを導いたのは、ほかならぬウッズだった。

・原因 隣接しているものの、全く異なる事業に参入したことが敗因 (シナジーを活かせない多角化
ナイキはゴルフ用具事業に対して強みを活かすことができなかった。用具とアパレルに相関があまりない。用具にを製造する際に求められる金属素材の知見や加工・生産技術を保有していなかった。なので、OEMという生産委託だったので、利益率は低くなり、技術的な強みも積み上がっていかない。それでも参入した背景は、ウッズというアイコンとゴルフ市場の将来的な成長の期待があったから。しかし、ウッズは怪我やスキャンダルで悩まされ、ゴルフ市場は緩やかに衰退していった。参入前提が崩れてしまった業界に、撤退以外の選択肢は残されていなかった。
後日談。2019年43歳のウッズはマスターズで優勝した。ナイキはウッズが苦しい時もスポンサーを降りず支援しながらともに歩み続けてきた。ウッズの優勝は改めてナイキのブランドを強く印象付ける形になった。

・メッセージ
隣接領域への多角化の難しさ。短期的にはインパクトを与え成功したとしても、考えるべき問いはそれが持続的か?ということ。企業としての強みがない、DNAに根付かない施策はどうしても属人的な力と甘い市場見積もりに依存しがちになる。隣の芝の青さに魅力を感じたとしても、それを前提にするのではなく、厳しい市場という前提で、自分たちの強みをそこでどうやって一から築いていくのか、という冷静な見立てが問うべきこと。今後、テクノロジーが業界の垣根をなくしていくことが予想される中、多くの企業にとって隣接領域への参入は現実的な問いになるので、このナイキの示唆は重要になる。
隣接領域への参入を考える際は、持続的に勝つシナリオを考えるべき。属人的な依存は短期的なインパクトを出せても、長期的にはリスク要因。

 

11 東芝 HD DVD 最初のシナリオを修正できず失敗
・製品 デファクトスタンダードを狙った、ブルーレイと戦った次世代DVD規格 2006年
ブルーレイの話が欠かせない。ブルーレイは、ソニーPanasonic、フィリップスなどの国内外の家電メーカー9社はDVDの後継となる構想として誕生した。しかし、東芝は前日夜中までというぎりぎりまで参加の説得を検討をしていたが、辞退した。東芝は、DVDの提案企業で、DVDフォーラムでも一貫して議長会社を務めていた。他規格の団体には加われないという姿勢を示した。東芝は、次世代規格で基本特許を押さえ、機器販売で特許料収入を得る構想でいたのが、断った背景。ソニーは2003年に、本来2層のものを急いでいたので、1層で45万という高価格で発売。重要なコンテンツであった、映画会社の配給は、ブルーレイ77%、HD DVD45%というように、もともと均衡状態だったものが大きくブルーレイ優位になっていった。そんな中、東芝は、2006年にHD DVD規格のプレイヤーを発売。多少ソフトウェアで不利だろうと、ハードの価格競争で勝つことができればやがて、ソフトウェアもひっくり返る可能性があると考えていた。

・失敗に至った経緯 ソフト・ハードの両面で後れを取り均衡が崩れ、雪崩を打つように失速
ブルーレイ陣営は、PS3にブルーレイ再生機能を付けて5万円台で発売、Panasonicやシャープも次々と新商品を投入して、賑わってきた。東芝も、5万円台のプレイヤーを発売したり、アメリカでは100ドルキャッシュバックなど価格競争を仕掛ける。のち、ソフトウェアにおいて、ディズニーなどの人気作品がブルーレイに供給されることになって、一気に話題を集める。さらにレンタルチェーンや小売の支持を得て、流通上の優位性も築く。ブルーレイのソフトウェアのタイトルは、HDDVDの2倍ほどもある状態だった。技術的に難しいと言われていたブルーレイの2層化も比較的安いコストで対応可能となり、高性能ハードウェアが売り場を盛り上げる。東芝は、99ドルという低価格でプレイヤーを販売するが、ソフトウェア価格が相対的に高く見え、さらに中国メーカーの市場参入を踏みとどませるものとなった。利益が出ないからね。年末商戦では、ブルーレイ96.2%、HDDVD3.8%という燦燦たる結果。そして、ワーナーショックという、ふたつの陣営で供給していたワーナーがブルーレイ単独支持に鞍替えすることを発表。翌2月に、撤退を発表。

・原因 脆弱なシナリオに依存し、代替シナリオもなかった
東芝が描いた戦略は、「価格勝負」という極めてシンプルな戦い方。スピーディーに低価格商品を出すことで、ハードウェア市場を席巻し、ソフトウェアも取り込むことができるというもの。しかし、実際には低価格商品だけでは市場を席巻できなかった(想像以上にブルーレイの技術革新のスピードが速く、機能的に劣後)し、ハードウェアが売れてもソフトウェアの販売にはつながらなかった(ハードウェアが安すぎてソフトウェアが相対的に割高に見えてしまう)というふたつの前提のズレが発生した。それに対して、代替戦略がなかったことが致命的な欠陥。ギャンブルでひとつの勝負にすべての持ち金をかけて敗れたということ。なぜ、このようなリスクを引き受けたのか。それは、東芝にとって、「勝たなくてはならないもの」だったから。ブルーレイとの規格争いは社内外から大きなプレッシャーがかかるもので、DVDの規格を主導してきた東芝にとって、全く異なる技術体系であるブルーレイに負けるわけにはいかなかった。そういう経緯もあり、徐々に東芝の中で、本来は脆弱だったシナリオが、「負けるはずがないシナリオ」に変わっていってしまった可能性がある。競争相手の動きを予想できるわけではないし、市場の動きも読めないので、完璧なシナリオなどありえない。だからこそ、2の矢3の矢まで戦略に含められるか、ということが重要になってくる。

・メッセージ
「怪しい因果の存在」に気づくこと、そしてその前提がズレた場合の準備の重要性を学ぶことができる。例えば、「競合よりも圧倒的な低価格商品を出す」→「ソフトウェアの販売が増える」という因果には、当事者としての願望が多く含まれている。当然、この因果もかのうせいのひとつだが、「それは本当なのか?そうならなかったどうするのか?」という問いの答えを考えておく必要がある。このような事態を避けるために、「悪魔の代理人」という役割の必要性が問われる(たしかネットフリックスの話でも合ったような・・・)。敢えて当事者にとって聞かれたくない問いを投げかける役割のこと。この問いで、別シナリオを考えるきっかけになったりする。ビジネスの当事者になると、気づかないうちに脆弱なシナリオに依存してしまうことがある。怪しい因果や、客観的な立場の人からの指摘をしてもらうなど工夫が必要。

 

12 セガ ドリームキャスト 構想に対する実行力が伴わず失敗
・製品 ネット通信を有した次世代ゲーム機 1998年
セガは、1998年に433億円という特別損失を計上してセガサターンを撤退した。前社長が退任するという危機的な状況で発売されるドリームキャストは、新社長にとってもセガにとっても失敗することのできないチャレンジだった。当時の競合だったプレステや64とのスペックを桁違いに上回るハードウェアを実現することや、ネットワークゲームを可能にするなど差別化した。ソフトメーカーも320社と多くの会社がドリームキャストで開発することに賛同した。

・失敗に至った経緯 半導体供給に失敗し、最大の販売機会を逃して失速
湯川専務のCMとかで、発売直前には徹夜組の行列ができるほどの人気だった。しかし、販売台数100万台を目指した年末商戦では、半分の50万台しか売れなかった。なぜか。それは商品の在庫切れ。ゲーム機の心臓部ともいえる半導体チップの開発が大幅に遅れ、製造が間に合わなかった。試作品が開発現場でうまく機能せず、発売には改良が間に合ったものの、量産が思うようにいかず、年末商戦までに間に合わなかった。この半導体の遅れは、ハードだけでなくソフト開発にも影響する。半導体の細部の仕様によって、ソフト開発の方法が決まっていくため。ドリームキャストで発売予定だった大物ソフトが続々と発売延期となっていく。ゲーム機がない、ソフトもないという状況で、年末商戦は失敗。さらに、半導体の改良により、構図が複雑になりコストが下がりにくくなり、高コスト体質なドリームキャストとなった。1999年の最終損益は328億円の赤字。2年連続で巨額損失を計上することとなり、1000人のリストラや小規模ゲームセンターの閉鎖など大掛かりなリストラ策を発表した。
この追い詰められた状況で、3つの打ち手を打つ。ひとつは1万円の値下げ。ひとつは北米での販売。ひとつは高速ネットワーク環境の整備。しかし、国内の販売は不振のまま。アメリカではそれなりの反応を得るが、販促費用が収益を圧迫しシェアを奪う前に資金面で行き詰まってしまった。2000年の最終損益は449億円の赤字。3期連続の大赤字。2001年にも最終赤字が確実となった段階でドリームキャストの生産を中止、ゲーム事業からの徹底を明らかにした。単独では生き残りはできないと判断し、2004年にはセガサミーホールディングスとして新たな道を歩むこととなった。

・原因 構想力はあったが実行力に欠けていた
半導体がうまく機能せずに、スケジュールがずれ込み本体もソフトも最大の勝負のタイミングで売り逃がしをしてしまった。それが計算を全て狂わせてしまったと、当時の社長は後日談として語っている。問題は、プロジェクトの柱となるハードウェアの心臓部分の管理が不十分だったことになる。年末商戦がすべてを決めるゲーム業界、そしてPS2の発売前に市場を制するためには1998年11月27日という発売時期は動かせない。となると、そのスケジュールを実現するための最大のポイントの一つは半導体。この半導体に対するマネジメントの甘さは、プロジェクト全体の致命傷につながる(クリティカルパス)。どれだけハイスペックの製品を構想しても、それが実現できなければ価値を生まない。組織の実行力は、ボトルネックをどれだけ直接コントロールできるかにある。社長は、最初に歯車が狂うと、その修正がいかに難しいかを身をもって知ったのがドリームキャスト事業でしたと語っている。これはすべてのビジネスに当てはまる。最初の歯車をスムーズに回せるかどうか。それにはボトルネックを丁寧に見極めて、それを確実に前進させていく企業の実行力が問われている。

・メッセージ
プロジェクト管理でやってはいけないが、すべてのタスクを等しく重要に扱ってしまうこと。どれだけリソースがあっても足りない。重要なタスクもあれば、どうでもいいタスクもある。大事なのは、工程の中で一番重要で他に影響を与える「ボトルネック」を見極め、そのタスクをさらに分解し解像度を高め、最重要部分に対して優先的にリソースを割り当てながら、リーダーがタイムリーに指示をしていくこと。プロジェクトは大小に関係なく、「タスクの分解」「ボトルネックの見極め」「リーダーの関与」ができてない仕事は何らかの破綻を迎える。実行力ということの本質を考えさせられるケーススタディ

 

まとめ 競争ルールを学ぶ
土俵に残って苦しい戦いを続けるより、いったん土俵から降りて、改めて顧客視点に立ち戻り、新たな戦い方を再定義することの重要さが示唆として得られる。
先行きは不透明なこの時代、オープン化を進め多様性を確保することが一つのカギとなる。
ジネスには、垂直統合型のビジネスとレイヤー構造のビジネスが存在する。それぞれのビジネスには全く異なる戦略と仕組みが必要になる。ビジネスの構造が変化すれば、その方程式は通用しない。
隣の芝の青さに魅力を感じたとしても、それを前提にするのではなく、厳しい市場という前提で、自分たちの強みをそこでどうやって一から築いていくのか、という冷静な見立てが問うべきこと。属人的な依存は短期的なインパクトを出せても、長期的にはリスク要因。
ジネスの当事者になると、気づかないうちに脆弱なシナリオに依存してしまうことがある。怪しい因果や、客観的な立場の人からの指摘をしてもらうなど工夫が必要。
組織の実行力は、ボトルネックをどれだけ直接コントロールできるかにある。プロジェクトは大小に関係なく、「タスクの分解」「ボトルネックの見極め」「リーダーの関与」が必要。

 

■社内不全を学ぶ Company 私たちの会社は組織として機能しているだろうか?
13 セブン-イレブン・ジャパン セブンペイ 自社だけが特別思考に陥って失敗
・製品 ペイ戦争に遅れてやってきた決済サービス 2019年7月
コンセプトは、簡単、便利、お得。ナナコポイントやバッジ、マイルがお得にたまるというpayサービス。2019年、全国2万1000店舗で開始された。決済サービスは、2018年12月にペイペイが仕掛けた100億円キャンペーンがきっかけで、色んなペイサービスが乱立。特に、ペイペイとラインペイ(300億円キャンペーン)の戦いは熾烈を極め、半年ほど遅れる形でセブンイレブンがこのペイ戦争に参入した。セブンイレブンジャパンの問題意識はグループで見れば1日あたり2400万人の来店者がいるにもかかわらず、その顧客実態が把握できておらず、グループ間でシナジーが活かせていないという点にあった。過去2015年に、AMAZON等のネット通販の急成長を受け、セブンも「オムニ7」というグループ8社の商品を取り扱い、自宅でもどの店舗でも受け取れるというネット通販を立ち上げたが、利便性の観点で先行者に及ばず、1年足らずのうちにサービスの方向転換を強いられた。なので、2018年にグループ間のID管理を一元化ができる7iDというアプリで、消費者の動向をつかみクーポンなどでタイムリーな情報提供を狙っていく。この一方で、アプリ開発とは別に2018年に決済サービスの構想が始まり、2018年6月にはセブンペイ株式会社を設立した。そんな中、ペイペイの100億円キャンペーンが始まり、導入したファミマは、客数1.0%増という高い伸びだったが、導入していないセブンは1.3%減という落ち込みだった。セブンはナナコがあり、それを通じて購買情報を取得していたため、他社の決済手段に乗るという選択肢はなかった。この爆発的な集客力を目の当たりにしたセブンは、アプリ開発の方針転換を決めた。それは、ゼロベースで決済アプリを開発するのではなく、既存の7iDに決済機能を導入するということだった。

・失敗に至った経緯 2段階認証の導入をせず犯罪集団のターゲットに
サービス開始翌日の夕方から、「身に覚えのない取引があった」という問い合わせ。セキュリティの甘さを突き、国際的な犯罪組織がセブンペイユーザのアカウントの乗っ取りをしていた。被害は808人、総額3861万円。2段階認証がセブンペイになかったから。通常、スマホで決済する場合、事業者が利用者のスマホに認証コードを送り入力することで本人確認をするという2段階認証が一般的。しかし、セブンペイはクーポン利用が主な用途であるアプリに追加された決済サービスであり、セキュリティが十分でなく、2段階認証は導入されていなかった。3日後、緊急の記者会見を開くが、すでに150万人の登録者がおり、サービス停止の決断はしなかった。この会見で、セブンのトップ層の認識と、セキュリティに対する一般常識との大きな違いを露呈することとなった。セキュリティ対策強化のための新組織発足、2段階認証の導入など様々な見直しを発表する。しかし、8月1日に、セブンペイは9月末終了という発表をする。サービス回収には相応の時間がかかることなどを挙げていた。集客とデータ分析における戦略と要となるはずだったサービスは、数日で稼働中止となり、わずか3か月で消滅するという極めて衝撃的な結果に終わった。

・原因 トップの極端なまでの視野の狭さが原因
セキュリティレベルの低いアプリに、決済サービスというハイリスクなサービスを乗せるという決断。これは何かが起きたら、一気に会員全体に広がり取り返しのつかない事態に陥ってしまうというリスキーな選択。だからこそ、開発設計は慎重に進めるべきだった。しかし、セキュリティ対策の検討すらせず、本社が定めたスケジュール優先の対応をしてしまった。チグハグな対応といえる。なぜか。セブンペイの社長は記者会見で、「私共のセブンペイの基本設計は、7iDがあり、そしてセブンイレブンアプリがあり、その一機能としてセブンペイが入っている。基本的に7iD、セブンイレブンアプリが連携した形で登録する形となっているため、「2段階うんぬん」と同じ土俵で比べられるのかというと、私自身はそのへんは認識しておりません」と言っていた。この発言は、トップとしては致命的な視野狭窄状態を表している。セキュリティに対する基礎的認識が欠けているし、関心も感じられない。「わが社は他社とは違う」「わが社のロジックでOKだから問題ない」という、極めて狭い視野でしかこの事業を考えられていなかった。意思決定に関与する立場の人がその意味を理解できておらず、近視眼的な考えに捉われて物事を進めてしまう。トップが持つべき視野のあり方を再考させてくれる。

・メッセージ
トップの視野が狭いと、自社だけが特別だという思考に陥る。視野を狭くすればどの会社も異なるが、一方で視野を広くしてみれば、どの会社も似たり寄ったり。その視野を往復を重ねて、「厳密にいえばこの点が他社とは異なる」ということであればいい。自社だけが特別という思考の問題点は、組織全体が内向きになり、学習意欲がなくなっていくこと。これは、市場起点でPDCAが廻らず同じ失敗を繰り返す可能性が高い。 セブンはこのとき、自社だけが特別思考という姿勢が組織全体にまで広がり切っていたとも考えることができる。

 

14 ソニー AIBO 経営陣の事業尺度に合わず失敗
・製品 革新的なエンターテイメント型ロボット 1999年
次世代のコンピュータに人は、「癒し」を求めるという可能性を見出し、その仮説として、エンターテイメント型ロボットというコンセプトをまとめ、1994年にペット型ロボットの開発プロジェクトを立ち上げた。ただ、何の役にも立たないロボットは、世界的にはも先例がないので、社内からの懐疑的な声は大きかった。この製品の難点は、アプリケーション設計やハードウェアのデザイン。同意に高いデザイン性も実現する必要があり、あと1ミリ内側に入ると内部の機構に干渉するというギリギリな外形になるほど難易度が高かった。販売は、25万円で5000台という計画。ただし、条件として1000体しか売れなかったらプロジェクトは解散、3000体であれば売れなかった理由を分析、5000体売れたらこのビジネスプランでやらせてくれ、という依頼をして、販売計画は了承された。

・失敗に至った経緯 ソニーショックの余波を受けロボット事業がコア事業から外される
販売開始直後、17分で5000体が完売。2000年から月産10000台に踏み切る。しかし、思った以上に市場は伸びず、2003年時点で販売台数は十数万台と初期の期待値に反して苦戦を続ける。2003年4月にはソニーショックソニーの経営危機が囁かれ、リストラ策として事業の取捨選択に舵を切る。ソニーは、エレクトロニクス事業の再建を最優先課題とし、8事業をリストラの対象として発表。ロボット事業も対象となっていた。社長はもともとハードウェアに反対だったということもあり、余裕を失ったソニーの再建ストーリーとロボット事業は整合性がとれなくなってきた。2004年には2足歩行ロボットのQRIOの発売中止が決定され、2006年にはAIBOの生産中止が決まった。世界で15万体売れ、まだ熱狂的なファンがいる状態で表舞台から消えることとなった。

・原因 短期的収益が期待できない商品が、短期的収益を求められる環境に置かれてしまった
べき論でいうと、AIBOのような「役に立たないロボット」という新たなカテゴリーの商品・サービスは規模や収益という判断軸だけで短期的に答えを出すべきではない。自社以外のサードパーティも含めた「エコシステム」が育ち、ビジネスとして採算がとれるようになるにはそれなりの時間がかかる。消費者にとっても必需品でないので、最初は理解がされにくい。だからこそ企業側もそれを理解して長い目で見て待ち、育てなくてはいけない。収益だけのモノサシだけで測れば、AIBOのような商品は役に立たない事業になってしまう。このころのソニーには、判断尺度に「遊び」がなく短期的な収益というモノサシしかなかった。AIBOの撤退は、そのモノサシで測られてしまった結果の悲劇といえる。
後日談として、2018年、aiboとしてバージョンアップしたロボットが再登場する。復活するソニーというストーリーに整合する、また最高益を出したソニーブランドへの期待値を高めるために、「遊び心」や「ユニークさの追求」というシンボルが必要だった。新生aiboは、経営のストーリーと整合したからこそ、復活したといえる。
aiboの開発には、製品そのもののコンセプトや開発の約束事項など抽象的なAIBOのDNAを意図的に踏襲していると開発責任者は言っている。aiboと共通するロボティクスの要素技術は多いということで、ドローンの「エアピーク」やEVの試作車「VISION-s」の開発にも手を伸ばしていて、aibo開発を通じて得たハードウェアとソフトウェアの融合にさらなる展開の可能性を見出している。今後、これらの新事業は、ソニー経営陣の真の力量が問われるサービスになる。

・メッセージ
企業内の新規事業は、対マーケットにおける事業価値と、対経営陣の事業価値の両方が重要。どれだけマーケットでポテンシャルがあったとして、対経営陣で文脈に乗らなければ新規事業として存続できない。
AIBOからaibo。失敗から十分学んで、アセットを活用できているので、この点はとても重要だと思う。

 

15 ネットフリックス クイックスター 反対意見が言いにくい空気に気づけず失敗
・製品 DVDレンタルを切り離した事業 2011年
ネットフリックスはDVDレンタル事業で急成長を遂げ、2011年にクイックスターという子会社を立ち上げ、DVDレンタル事業を移し、ネットフリックス自身は動画ストリーミングサービスに注力することにした。これまで、DVDレンタル+ストリーミングサービスで10ドルだったものを分離して、DVDレンタルとストリーミングサービスをそれぞれ約8ドルにするという強気な価格設定を断行した。店舗型レンタル事業の巨人であったブロックバスター社が、オンライン化への変化の波についていけず、2010年に倒産してしまったように、やがてくるストリーミング市場の主戦場化にそなえてのことだった。DVDレンタルビジネスと、ストリーミングビジネスは、コスト構造が全く異なる。なので、このコスト構造が異なる事業を切り離し、それぞれに柔軟な対応ができるようにした方がよいと考えた。クイックスターには、DVD郵送に加え、WiiPS3といったゲームソフトのレンタルも始め、郵送レンタル全般を事業ドメインと定めた。双方だと、約16ドルという契約だが、片方であれば8ドルと現行の2割程度の値下げとなる。ネットフリックスの問いはシンプルで、「いつ、いかにしてネットフリックスをストリーミング企業へと進化させるか」ということだった。その答えは「なるべく早く」ということだった。

・失敗に至った経緯 ローンチ前に株価が暴落 白紙撤回という大惨事に
クイックスターの施策は、リークによって値上げ部分だけが注目され、SNSで拡散され炎上状態のままスタートを切ることとなった。鎮火のために、分離の背景と値下げとなるユーザも存在することを説明した動画をyoutubeにアップした。しかし、手軽なビデオカメラで撮影されたような映像と、しわくちゃのビーチシャツ姿は、さらなる炎上を呼び、パロディ化されるほどだった。批判の矛先は消費者軽視のスタンス。当時、ネットフリックスのコアユーザーは最新作はタイムリーにDVDでレンタル視聴し、旧作はストリーミングで手軽に見るというスタイルが中心だった。これまで消費者に寄り添い、「気軽に、映画を、楽しく(Movie Enjoyment Mada Easy)」というブランドプロミスを守ることで成長してきたネットフリックスだからこそ、消費者不在の決定に対する反発は大きいものがあった。この発表で、数日の間に100万人の顧客を失ったといわれ、株価は305ドルから65ドルまで下落した。この結果を受けて、分離計画を諦めざるを得なかった。

・原因 方向性は正しかったが、タイミングも組み合わせも伝え方も最悪だった
結果として散々ではあったものの、いち早くビジネスモデルをDXさせたいと考え、サービスを分離することは合理的ではある。クリステンセンは、新規事業が失敗する理由を、既存事業のために最適化された「資源・プロセス・価値基準」をそのまま使いまわしてしまうからだ、と述べた。なので、サービスの分離は定石に沿うもの。では何が失敗だったのか。それは、意識決定のタイミング、施策の組み合わせ、伝え方の3つ。
2011年の時点で、コアユーザの大半は両方のサービスを行き来していた、つまり、分離による不利益を与える影響が著しく大きいタイミングだった。さらに、値上げという更なる不利益との組み合わせ。そしてあまりにラフでくだけたスタイルで伝えてしまった。消費者からすると、自分たちが軽んじられたと受け取るのは当然のこと。重要なターニングポイントであまりに無防備すぎた。おそらく、合理性を優先して、消費者感情への配慮を軽視してしまったのでしょう。
後日、ヘイスティングスは、社内であまりに自分が尊大になりすぎていたことに気づく。クイックスターは絶対に失敗すると思っていたにもかかわらず、言っても無駄だと思い口をつぐんでいた役員や社員が多数いた事実を知ったため。
ヘイスティングスは真摯な反省をもとに、ネットフリックス・イノベーション・サイクルという規律の1番目に、「反対意見を募る」という項目を入れる。誰かの狭い視野だけで意思決定が歪められないように、新たなアイデアが出た場合には必ず反対意見を受け入れるプロセスを組み込んだ。素晴らしい。この騒動を経て、今のネットフリックスの成長がある。

・メッセージ
トップが尊大になりすぎると、健全なコミュニケーションが取れなくなり、重要な意思決定さえもが拙速に行われうると危険性を伝えてくれる。たとえ方向性が合理的であっても重要な経営意思決定は、多様な視点から議論され、慎重になされるべきもの。だからこそ、ヘイスティングスはプロセスに反対意見を募るという項目を取り入れ、視野を広げることを担保した。方向性に合理性があっても、落とし穴(ここでは消費者感情やタイミング)を甘く見てはいけない。意思決定の質を高めるには、反対意見を言える仕組みを担保することが必要。うーん、この反対意見を募るってのは、賛否あるな。確かにそうだけど、本当はうまくいくものも反対意見によって実行されない恐れがある。バランスといえばそれまでだけど・・・。

 

まとめ 社内不全を学ぶ
自社だけが特別思考という思考は、視野狭窄であり、組織全体が内向きになり、学習意欲がなくなっていく。これは、市場起点でPDCAが廻らず同じ失敗を繰り返す可能性が高い。
AIBOからaiboへの活かされ方は、感動する。同じように、ユニクロのスキップからGUの話も感動。
企業内の新規事業は、市場はもちろん経営陣のストーリーとも整合性を合わせる必要がある。そうでないとすぐにNGをくらうくらい脆弱な立場。
方向性にどれだけ合理性があろうと、重要な意思決定は多様な視点から議論され慎重になされるべきもの。この場合は、タイミングや伝え方がまずかった。念入りに、念入りに。

 

<事業を取り巻く力学編>
■大きな力学を学ぶ PEST 私たちは事業が成立している大前提を理解しているだろうか? 基本的に企業のコントロール
16 サムスングループ サムスン自動車 経済危機に見舞われて失敗
・製品 日産との提携によって念願の自動車産業への参入 1995年
1994年には、低価格を武器にして、アジアや中南米などの新興市場への輸出を進め、230万台の生産台数に達する。これは、世界第6位の自動車生産国を意味する。韓国の輸出競争力が高まれば、欧米諸国から韓国市場の開放圧力は高くなる。ちょうどOECDへ加盟申請中という状況だった韓国政府は、外圧を受けて自動車輸入の自由化を進めることを決意。一層のグローバル化を推進していけば、やがて日本を追い越すことができるかもしれないという、サムスンからの申し出は国策に符合するものだった。電子、化学、金融、機械といった主要事業はあったが、自動車産業の技術などのノウハウはない。その提携先として、日産が本命だった。日産は赤字続きだったため、将来の競合を育てるかもしれないリスクを抱えても、ロイヤルティーなどが魅力的だったため、提携を決意。2010年には世界10位以内の自動車メーカーに成長することを目指していた。

・失敗に至った経緯 IMF危機により単独の生き残りを果たせず、ルノーに吸収される
アジア通貨危機を発端にして韓国にも広がった経済危機。韓国国内で倒産が相次ぎ、第一銀行までも破綻。韓国の国家信用格付けは下方修正され、株価暴落と外資企業の引き上げに至る。1997年には韓国政府がIMFへ救済を申請する事態となった。これにより、国内市場は急速に縮み、生産能力400万台に対し、需要は100万台あるかどうか。このような中、韓国政府は自サムスン、LG、現代の三大財閥の事業縮小や財務健全化を目的とした改革に着手。ビッグディールを通じて、財閥がそれぞれ特定の産業に集中して大規模化を進めていけば、国際競争力を高められるのではないか・・・。そう考えて、政府主導で抜本的なテコ入れをしようとした。しかし諦められないサムスンは、スタートダッシュで実績を積み上げていく方策を取る。しかし、それなりに注目はされたものの、コストを無視していたため、1台売るたびに13万円の損失が出る構造であり、どんどんサムスンの資金力を削っていった。逆転カードとして、既に破綻した起亜自動車の買収があった。しかしこれも、現代が買収権を得て、万策尽きたため、ビッグディールに応じて、自動車事業を渡すはずだった。しかし、労働者や下請けが反発し、交渉が暗礁に乗り上げて、結局ビッグディールは白紙化された。2004年にルノーに買収され、ルノーの参加として活動をすることになった。

・原因 韓国の産業構造の脆弱さを軽視し、結果的に最悪なタイミングで参入
抗えない大きな時代の流れに巻き込まれてしまった、数年後に来るアジア通貨危機を予想するのは難しい。その意味からすれば、やむを得なかったことだったかもしれない。ただ、韓国経済の構造的な問題はすでに顕在化していた。財閥企業は借り入れ依存体質、そしてタコ足経営とまで揶揄される節操のない事業拡大といった、脆弱な体質の上に成り立っていた状況。財務体力以上の投資がされ続けていた。このような脆弱さは考慮できたはずなので、意思決定は慎重になるべきだったかも。後講釈だけども。その後「サムスンでは車輪がついた製品は作らない」という不文律が公然と知られるほど。ただし、2016年には、米自動車部品メーカーを買収して、カーエレクトロニクス分野に進出している。

・メッセージ
我々のビジネスは、独立して動いているものはない。必ず何か大きな力学の影響を受けている。自分の関わっている事業がどれだけ単品でよい事業であっても、その周囲の風向きが変われば、一気に事業として成立しなくなってしまう可能性がある。自分たちは大きな連鎖の中で生かされている存在でもある。その連鎖の広がりを理解することの重要性をこの事例は気づかせてくれるのかもしれない。特に、グローバリゼーションの影響を受けるビジネスは、国際動向の変化を理解する力が求められる。
あまりに大きい意味になってしまうが、「タイミング」はとても重要。

 

17 ゼネラル・エレクトリック プレディックス 顧客の準備が整わず悪循環に突入して失敗
・製品 IoTソフトウェアの新しいプラットフォーム 2016年
GEはエジソンが創業した製造業。家電や重電を取り扱う総合電機メーカーからコングロマリットへと変身し、多角化は業績的には大成功、GEは企業変革におけるお手本のような存在だった。しかし、後にリーマンショックにより金融事業が大きな打撃を受けたことで、改めて産業機器製造に回帰する意思決定を行う。この際、金融や映画、白物家電から徹底を決めるとともに、単なる産業機器製造への回帰ではなく、「デジタル・インダストリアル・カンパニー」としてデジタル化に向けた変革を志す。2011年にはシリコンバレーにソフトウェアの研究開発部門を開設し、GEのバラバラだった組織をシリコンバレーへ一元化した。そしてデジタル化を一気に推進した。具体的には、産業機器にセンサーを取り付け、そのデータをインターネット経由で常時把握し分析することで、顧客企業の生産性や稼働率向上を図るというもの。コマツのコムトラックスに似てる。例えば、飛行機に数100個のセンサーを取り付け、理想的な操縦方法を指南することで燃費が良くなり燃料コストの大幅な削減などをメリットとして提供する。エンジンや保守で稼ぐのではなく、具体的なソリューション提案まで含めてサービスを提供するという、大幅なビジネスモデルの転換だった。この段階で、既に産業ごとに特化したアプリケーションを数多く出しており、そのなかで共通化できるものがあった。これら共通項となるソフトウェアの部品や稼働環境を「プラットフォーム」と位置づけ、GEで開発するアプリ全体の品質を高め、開発スピードを加速できるようにするプラットフォームがプレディックス。これが2013年。このようにもともと社内の開発用だったが、インダストリー4.0やIoTという言葉とともに産業機器ビジネスにおけるデジタル化の流れがトレンドとなっていく過程で、GEはプラットフォームの可能性を感じるようになる。そして、2016年に、PaaSとしてプレディックスをクラウドサービスとして外部に公開、外販することを意思決定した。もともとGEはGE製のハードウェア+ソフトウェアで成立していたが、プレディックスのビジネスにはもはや産業機械というハードウェアの存在はなくて、ソフトウェアだけで成立するビジネスモデルであった。売上高を150億ドルと定め、ソフトウェア企業として世界トップ10に入ることを目標とした。

・失敗に至った経緯 本体の不振に引きずられ部門ごと分社化へ
構想としては、産業用のソフトウェアをまとめて提供するプラットフォームを目指した。アップルのように。しかし、苦戦を強いられる。産業用ハードウェアの世界はあまりに広く、領域ごと、地域ごとの個別性が高いため、どこまで固有の状況を想定した設計にするかという問題に直面する。その中でプレディックスは汎用性を高めて規模拡大を追求する方針を取った結果、アプリケーション開発者やユーザ側のニーズに十分合致しなくなった。つまり、特定の課題解決をしたい顧客にとって、「なんでもできる」「拡張可能性がある」「将来的にデータからソリューションが見つかるかもしれない」というプレディックスではなく、より安いコストで自社の課題に最適化した小回りの利くアプリケーションを選んだ。また、実際のプレディックスは、GE製品のハイエンドな発電設備や航空機エンジンなどを前提に作られていたこともあり、関連の薄い業界に対しては十分に想定されていないつくりになってしまった。結果的にプレディックスはオープンなプラットフォームとは程遠い存在となった。最終的に、売上目標150億ドルのところ5億ドルにとどまった。そんな中、GE本体も主力事業である電力事業が脱化石燃料の逆風で減益となり、株価は低迷。社長は退任へ。そして2018年、また新たな新社長は、中核事業に集中するためにデジタル事業を分離することを発表、プレディックスは分社化された。

・原因 コンセプト先行で急ぎすぎたがゆえの失敗
いち早くGEのDXに舵を切ったイメルトの方向性はけして間違ってはいなかった。では何が問題だったのか?一つ誤算は、このタイミングでそもそもGEのハードウェアが売れなくなってしまったこと。GE製のハードウェアと連動性の高いサービスだったプレディックスは、引きずられるように低迷していく。もうひとつは、掲げた目標設定があまりに野心的過ぎたこと。産業機器アプリケーションは個別性が高い市場であること、さらに顧客側が当時データに基づくソリューション導入に向けた準備ができていなかったことが背景としてある。まだ、現場のハードウェアと向き合いながら、改善を重ねた地道なコミュニケーションを通じた対話が必要なステージだった。産業機器業界において、アップルのようなプラットフォーマーになるというコンセプトは、もっと時間とコストがかかるものであり、スピーディーに事業の軸足を移すということは無理のある設定だったのではないか。その中で、営業現場では「顧客の課題ありき」ではなく「プラットフォームありき」のプッシュ販売を仕掛けていく、という悪循環に突入していった。

・メッセージ
この失敗の最大のポイントは、「ビジネスアイデアそのものは悪くないが、野心的な目標が先走りした結果、顧客の準備が整うことを待てず、結果的に顧客視点の欠如に陥ってしまう」ということ。見渡すと多くの野心的なコンセプトの先走りが見つかるが、果たしてそのコンセプトはどれくらいの規模と時間軸で考えられたものでしょうか?それはビジネスの実態とどれくらい整合しているでしょうか?プレディックスの事例は、そういった企業のビジネスモデル変革において必要な論点を現実的な視点でチェックすることの重要性を教えてくれる。
大きな変革は方向性はもちろん、規模や時間軸も重要な論点となる。顧客の準備が整っていない段階での変革は、自社都合の押し売りになる可能性があるので注意。

 

18 アップル ニュートン 主要事業の不調で無理な勝負を迫られ失敗
・製品 情報家電という領域を切り拓いた革新的商品 iPhoneiPadを先取りしたような商品 1993年
1993年に、7万円から10万円で販売。情報家電という領域は、やがて3兆ドルという巨大市場ができることを予測した結果の、開発・販売だった。これでも、開発が難航して、発売時期が大きくずれ込んだ。

・失敗に至った経緯 市場の高い期待に応えられず、アップル混迷の中に消える
ニュートン発売直後は数千台を受注するという上々のスタートだったが、同時期に主力事業であるPCの不調によりアップルは赤字に転落してしまった。価格競争で置いて行かれた。ニュートンにばかり注力していたスカリーは退任し、最大の後見人であり支持者を失った。ニュートンの売上は伸び悩み、ニュートンの開発責任者は責任を取って退職した。なぜ売れ行き不振だったのか。それはまずは手書き文字の認識機能が不十分だった。学習機能を持っていたため、使い込むことで認識力が高まるが、それだけに店頭では認識能力は低く、購入を躊躇させた。中途半端な手書き入力は、キーボードと比較しストレスのたまるものだった。さらに、電話回線と接続するモデムなどを揃えるとゆうに1000ドルを超え、家電の相場観からすれば割高であり、決して気軽に買える金額ではなかった。1995年にはニュートンの第2世代機種を投入するが、市場は反応しなかった。この時期、もはやアップルはニュートンどころではなく、主力のPC事業のマック離れを受け、単独では生き残れないのでは、という論調が社内外で発生。そんな中でニュートンは静かに放置された状態となった。新社長は、その時点でPC事業の自力立て直しは不可能で、特にOS開発は外部パートナーが必要と判断。そのパートナーが、スティーブ・ジョブズが率いるネクスト社であった。やがてジョブズはアップルの経営に返り咲く。1998年に、アップルはニュートンの開発を打ち切ることを決定した。

・原因 当初の狙いはよかったが育てられる環境ではなかった
経営環境が変わり、ニュートンに対する期待値が変わったことが、市場から受け入れられなかった原因。1992年のアップル自身、普及にはまだ相当時間がかかると言っており、当面はニッチ製品として販売していくことを宣言している。ニーズが顕在化していない中での革新性の高い製品だからこそ、まずはコアユーザをターゲットに立ち上げ、時間をかけて顧客を取り込んでいくということを考えていた。この長期を見据えた野心は、時代を先取りしすぎたとは言えない。では、失敗の要因は何か。それは、アップルはPDAの構想以降、急激に本業のPCが不振となり、経営危機に陥って、ニッチ商品を丁寧に育てていくような状態ではなくなったから。明日にでも売上が欲しい状況になってしまった。製品開発時は、時代を先取りした革新的商品だとしても、改めてターゲット顧客を広げる方向になれば、製品コンセプトそのものも大きく変更する必要が出てくる。ちょうど、ターゲット変更の議論をじっくり行うべきタイミングで、PDA構想者が退任させらてしまった。
なんか、ソニーAIBOと似ているな・・・

・メッセージ
この事例は、経営と新製品のタイミングの重要性を教えてくれる。ニュートン自身はイノベーティブな製品だったといえるが、イノベーションは、製品単体だけでなく、製品を支える経営環境がすべて整ったタイミングで起きる。Jカーブといわれ、製品が革新的であればあるほど、初期段階では長く赤字の谷が続き、ニーズが顕在化した段階で飛躍的な成長を遂げる。そのタイミングまで、企業が粘りづよくふ化を待つことができるのか、という論点を見過ごしてはいけない。製品の品質を高めていくことはもちろん、経営全体におけるキャッシュの状態も含めた経営課題の所在を確認しておく必要がある。

 

19 モトローラほか イリジウム 課題の賞味期限が見極め困難に陥って失敗
・製品 モトローラの携帯電話 1998年
「世界中、極地でも海上でもどこでも使える携帯電話」として1998年に販売開始となった製品。1980年代後半は、アナログベースのセルラー方式の携帯電話がようやく普及し始めた段階。衛星によって全世界の通信を一気にカバーするといったアイデアは、技術的なリスクは大きいものの、大きなポテンシャルを感じさせるものだった。衛星の中でも、低軌道のものであれば、比較的伝送遅延が少なく、ビジネスチャンスが十分にあった。検討は、ほぼ反対で、衛星の製造、打ち上げ、維持に関わる投資額が巨大で収支が合わないため。ただ、会長の強い意向でやることになった。(衛星を77基上げる予定で、その原子番号イリジウムが、このプロジェクト名になった)。全体で16億ドル、さらに1996年には3億ドル、1997年には2億ドルの調達を行い、世界中の通信事業への新規参入企業や各国のセカンドキャリアが共同事業体を組み、資本参加した。この低軌道衛星を活用する事業は、言うまでもなく複雑で難易度が高いもの。一方で限られた資金や期間といった制約があったため、設計から製造にかけて不眠不休の作業が続いた。50億ドルもの投資を経て、1997年、衛星の打ち上げに成功。1998年にサービス開始することになった。

・失敗に至った経緯 全く使えない携帯電話。加入者が伸び悩み1年待たずに倒産
イリジウムの携帯電話は、約450g、小売価格は3000ドル(43万2000円)だった。通信料金は、1分当たり3ドル~8ドル。100万人の契約で採算ラインに乗るという計算だった。なお、当時の通常の携帯電話は、約100g、小売価格は150ドル、通話料金は、1分当たり1.6ドルだった。イリジウムのはみ出した感がわかる。サービス開始から約半年後の1999年4月段階の加入者は、わずか1万人という結果だった。伸び悩みの一つに、遮蔽物がある電波環境では利用できず、移動中の車や建物の中でも利用できなかった。遮蔽物がなくても、携帯の位置やアンテナ角度を微調整する必要があった。さらに、ソフトウェア開発でも、タイトなスケジュールのためバグを除去しきれないという状況だった。結局、借入に対する利子4000万ドルという多額を抱え込み、資金繰りは廻らなくなる。1998年8月に、サービス開始から1年も持たず、加入者わずが2万人のままイリジウムは破産申請をするのだった。

・原因 構想からローンチまでの間に「課題」が消えてしまった
「課題の賞味期限」を見極めることができなかったから。1990年の段階で、確かに「世界中でスムーズに会話ができない」という課題は存在していた。ただし、ローンチの1998年にはその課題はなくなっていた。つまり、既存の技術革新によりほぼ解消されていた。だから、多くのユーザによってわざわざコストがかかり不便なイリジウムを契約する必要性がなかった。では、なぜ賞味期限が見極められないのか。それは2つの見通しが簡単にはできないから。ひとつは、自社がその技術を確立させるまでのスピード。もうひとつは、既存技術の改善の可能性。さらに自社の技術確立のスピードを冷静に見積もったとしても、その期間が長くなればなるほど、他社が簡単に追随できるはずがないという、バイアスが働いてしまう可能性もある。イリジウムは、企画構想からローンチまで約10年かかった。1990年代中盤から後半にかけて、携帯電話が世間に普及する過程での通信状況の改善や通信機器の軽量化、グローバル化、そして利用料金の低下のスピードは凄まじいものがあった。これを1990年の段階で予測できたかといえば・・・占いレベルに近い話だっただろう。技術革新を横目で見てて、イリジウムのサービスレベルも理解したうえで、サービスをローンチしたのは、おいそらく設備投資が大きすぎて今更株価を下げることもできず、どうしようもなかったからかもしれない。

・メッセージ
このようなサービスも、もし成功していれば、理想的な成功ストーリーとして語られていただろう。どの技術に欠けるのか、という意思決定の重要さと難しさを痛感する。結果だけ見れば、この野心的なビジネスは責められるべきなのだろう。誰も未来を予測はできない。だからこそ、常に「課題の賞味期限」を疑い続けること、そして特に既存ソリューションの改善速度を侮らないことは念頭に置く必要がある。
新たな技術によって課題解決する場合には、課題の賞味期限に注意すべき。これは、新たな技術確立のスピードと、既存の技術革新のスピードを見極めることで測定できる。新たな技術確立が長くなればなるほど、判断や成功の難易度は上がる。

 

20 トヨタ自動車 パブリカ 高度経済成長期のスピードについていけず失敗
・製品 国民車構想を具現化した日本中が待望した大衆車 1961年
1961年、38万9000円という当時としては破格の安値で販売された。機能性と経済性を両立させた大衆車となりうる一台としてこの新商品には大いに注目が集まった。
1950年代当時、自動車業界には、自動車輸入の自由化というイシューが存在していた。通産省は、まだ弱小であった日本の自動車産業の生き残りをかけて、国産車の早急な性能向上と国民への普及を目指していた。当時、大卒初任給が1万5700円という時代に、1955年発売のクラウンは98万円、57年のコロナは60万円台と、とても一般大衆が手を出せるような金額ではなかった。大衆に普及という観点でいえば、安価でなくてはならない。そこで、量産に適した一台を選定し、財政資金を投入して国際競争力を持つ車を国策として育成していくという「国民車構想」を企画する。具体的条件は、いろいろあり、価格は25万円いかというものだった。実際には、コストを積み上げるとどうしても40万円を超えるため、構想そのものは幻に終わるが、この構想を受けて、大衆車が必要というニーズの中、各社がしのぎを削るようになった。このような時代背景の中、トヨタの問題意識も大衆車の開発にあった。やはり、機能と価格の両立のバランスに苦慮するが、1960年10月には、コストも性能を期待レベルに達した自動車が完成する。公募で決めたその車の名が、パブリカ。価格は、38万9000円と、当時としては軽自動車なみにおさえた経済性の高い車だった。月産3000台で採算ラインに乗るという戦略的な価格設定だった。

・失敗に至った経緯 高度経済成長によって変化した大衆のニーズとのミスマッチ
販売台数は、2000台程度と、採算ラインにも乗らないほどだった。その理由は、当時高度経済成長期の真っただ中で、1960年には内閣が「所得倍増計画」打ち出したタイミングだったのだが、低コストを実現するために、外装にはメッキ部品を使わず、内装ではヒーターやラジオは無し、燃料計やサイドミラーでさえ標準装備から外した質素すぎる内外装だったから。その時代の変わり目で、マイカーという新たな贅沢品に夢を見出した大衆が抱く期待と、質素なパブリカのイメージには、ミスマッチが発生していた。実際、販売店からも「豪華な感じがしない車では客の心はつかめない」と苦情が集まっていた。トヨタは、「開発を始めた当時と売り出した時とでは、社会環境はがらりと変わり、時代の要求とズレてしまった」と語った。開発は1955年、販売は1961年とこの6年の間に消費者ニーズはこうも大きく変わってしまった。
販売から1年後の1962年には、トヨタはパブリカよりもより一つ上のグレードで大衆車の座を勝ち取るために、開発構想を作っていた。パブリカの反省を生かし、多少価格を上げてでもユーザが求めるものを標準装備と定めた。排気量も1100ccと大型化させ、変速ワイパーやガソリン警告ランプなども取り入れた。これは、1966年に販売され、これがカローラである。日産も1966年にサニーを投入した。サニーは、トヨタがパブリカのモデルチェンジをすると見込んで開発されたので、より重厚感とラグジュアリー感のあるように設定されていたが、実際はカローラという新車で、サニーよりも100ccパワーが大きい。この電光石火の開発と差別化戦略、かつ月産2万台という急発進で、トヨタカローラを通じて一気に市場を奪うことに成功した。さすがのトヨタPDCAが早いし、精度も高い。
初代パブリカのDNAは、スターレットヴィッツに継承されていった。そう考えると、長い時間軸で見れば、パブリカは大きな意味のあるものだったといえる。

・原因 高度経済成長期にニーズを読むのは動く標的を狙うような難事業だった
高度経済成長期のように、ユーザのニーズが大きく変化する環境では、大衆のニーズはわずが数年のうちに大きく変わってしまう。数年の開発期間がかかることを考えると、当時のニーズ予測の難しさはまるで「動く標的」を遠くから狙うようなものだったと想像できる。では、このような時代に何をすべきか?それは、さすがのトヨタ。失敗を通じて学習し、そしてその学びからより確度の高い渾身の一手をすぐに打つこと。言い換えれば、最初の一手は失敗するものとして、次の一手に勝負をかけるということ。逆に、一番やってはいけないことは、動きが落ち着くまで何もしないということ、それと一度打った手にこだわり続けること。この二つのことは、「実践を通じた活きた学びの獲得と、さらなる実践」という何より貴重な機会をみすみす失ってしまうことにつながる(お金と時間をかけた財産、学習の損失)。この事例でも、トヨタはパブリカを出すことで大衆のニーズのストライクゾーンが理解でき、すぐに次の一手を打てたからこそ、カローラというトヨタの屋台骨となる製品を生み出すことができた。
経験学習理論というものがあり、4段階のステップを繰り返すことで学び、成長していくと定義されている。「具体的経験」「内省的省察」「抽象的概念化」「積極的実践」の4ステップ。この事例は、トヨタにおけるパブリカの「失敗」には「経験から学習する」方法のヒントが詰まっているといえる。

・メッセージ
VUCAと呼ばれる先行きの見えない時代にいる我々にとって、パブリカの最大のメッセージは、とある製品やサービスの失敗は単に通過点でしかないということ。その失敗から正しく学び、乾坤一擲のアクションを打てれば、大きな成功ストーリへと消化するということでしょう。・・・というよりも、失敗を通過点をするように行動していくことを考えていくべき。失敗はとても痛い。コスト的にも精神的にも。それでも、この失敗があったからこそ次のアクションを起こし、成功に導くことが大切なのではないかと思う。
キャリアでも同じこと。良いキャリアを築くためのセオリーは、行動して軌道修正すること。この事例から前に動き出す勇気を学ぶことができる。
変化のスピードが激しい時代において、仮説を持ってまずアクションをすることが重要で、その上で打ち手から具体的なヒントを見出すこと。そのヒントから学んだら、乾坤一擲の打ち手をスピーディーに打つことが成功につながる。

 

まとめ 大きな力学を学ぶ
PEST分析は、戦略立案プロセスにおいて一般的なステップだと思うが、実践レベルではとてもハードであることが分かる。それでもその中から示唆を得ているのがこの章の内容。
自分たちは大きな連鎖の中で生かされている存在でもある。その連鎖の広がりを理解することの重要性を
あまりに大きい意味になってしまうが、「タイミング」はとても重要。
「ビジネスアイデアそのものは悪くなくても、野心的な目標が先走りした結果、顧客の準備が整うことを待てず、結果的に顧客視点の欠如に陥ってしまう」ことがある。プレディックス。
イノベーションは、製品単体だけでなく、製品を支える経営環境がすべて整ったタイミングで起きる。孵化まで時間がかかる(Jカーブ)。
常に「課題の賞味期限」を疑い続けること、そして特に既存ソリューションの改善速度を侮らないことは念頭に置く必要がある。
変化のスピードが激しい時代において、仮説を持ってまずアクションをすることが重要で、その上で打ち手から具体的なヒントを見出すこと。そのヒントから学んだら、乾坤一擲の打ち手をスピーディーに打つことが成功につながる。失敗は通過点。

 

■おわりに
深く考えろ、とよく言われる。どうすれば「深く」考えることができるのか?深さを認識するには、二つの目が必要になる。一つの目しかなければ、物事を平面的にしか捉えることができない。二つの視点は、例えば短期視点と長期視点。現場視点と経営視点。深く考えるとは、このように相反する複数の視点を持って、バランスよくビジネスを見るということ。この本で紹介している失敗事例は、後日談として新たな成功への入り口になっていることが語られている。それは、失敗によって事業の見方に「深さ」をもたらしてくれているからだと理解することができる。
現在、我々を取り巻く環境は大きく変わった。この変化によって期待通りの成果を上げられずに撤退や縮小を余儀なくされた案件も多いことだろう。しかし、その経験は、やがて私たちに「奥行きの深い視野」を授けてくれる。前向きな学びを得ることができれば、財産になる。

 

【この本を読んだ感想やまとめ】
失敗を前向きに捉え、次の一歩を踏み出す勇気をくれるような、そんな印象を受けた。特に印象に残っているのが、ファーストリテイリングのスキップの社長をやった、GUでの快進撃の話。これは、まさにそれで、お金と時間をかけた失敗を財産として学びに変えて、次の成功へと導いている。リスクを考えて行動しない、というのは正しいスタンスではない。リスクとリターンをきちんと判断する、仮に失敗してもそこから学び、次へ活かすことがとても、とっても重要である。Wii Uドリキャス、セブンペイ、HD DVDと、たくさん知っている製品やサービスが出てきて、それに対する事業の裏側みたいなのがしれて、とても興味深かった。例えば、HD DVDがどういう状況で、なんでブルーレイに市場を奪われたのかなんて、当時はよくわかっていなかった。それがこのような形で知ることができてよかった。セブンペイなど比較的新しいものから、パブリカなど古いものまであって、かつ世界の製品が対象でよかった。AMAZONのファイアフォンなんて、いまでも出てきそうなアイディアだったりするし。サムスンの自動車事業参入なんてうまくいくと思うし。そういうものでも、事実として失敗していて、それなりの原因があるってこと(再現性のある失敗かどうかは、置いておく。)そうなると、岩田さんが自信を持って言っていた、幸運を引き寄せる努力を任天堂という会社全体がものすごくしている、という言葉を思い出す。タイミングとか、時間軸とか、失敗の要素はたくさんあるんだけど、そのときの市場によって、要素の変数が大きく変わる。だから、同じことをやっても、時代やタイミングによっては成功してしまうこともあれば失敗もある。なので、その市場とのタイミング、それが幸運であり、それを引き寄せるための努力はしていかないといけないと思った。

 

【今後活かせること、具体的なアクション】
これから起こそうとしている判断やアクションが、この失敗事例にあるような類似事例とならないか確認する。
類似事例となった場合、当時と現在の市場の状態、リソースなど十分に確認して、絶対に同じ状況にならないようにする。

 

【気に入った文章・言葉を3つ】
深さを認識するには、二つの目が必要になる。一つの目しかなければ、物事を平面的にしか捉えることができない。
短期的には失敗に見えることも、その学びを活かせば長期的には次の機会につながっていく。
ビジネスが必勝を義務付けられているとき、いつしか立てたシナリオに願望が侵入してきてしまうことは必然。

 

【こんな人に読んでほしい】
失敗を漠然と恐れている人
失敗には科学的に根拠があると思っている人
失敗から学ぶことの重要性を知りたい人
次へと歩みだしたい人

 

 

読書備忘録#6_PDCAプロフェッショナル

読書備忘録#6_PDCAプロフェッショナル 結果を出すための思考と技術
稲田将人さん

【読もうと思った動機】
トヨタの現場とマッキンゼーの企画」というキーワードに惹かれて。どちらも、一流の人材を排出して結果を出している企業なので、結果を出すために何か参考になればと思い、手に取った。

【概要】
トヨタの現場×マッキンゼーの企画=最強の実践力。どちらも対極的な志向性をもつ組織だが、表現の仕方と目線は違えども、本質的にはほぼ同じアプローチで問題発見と問題解決に取り組み、多くの方法論を展開する。
この本を読めば、PDCAについて、「本質的にどういうものなのか」「企業戦略との関係はどうあるべきなのか」「いかに使いこなすべきなのか」「PDCAが廻らない企業はどうなってしまうのか」「個人、マネジャー、組織がPDCAを回す力を体得するために具体的にどうしたらいいのか」がわかる。

■はじめに
「私はどこの会社でも経営できます。それは私がPDCAを廻せるからです」2002年トヨタ奥田会長の言葉。
PDACAは誰もが知っている言葉だが、まともに実践できていないのが現実。
Aに関して、繰り返すことの意義は、自社の方法論を磨き上げ、現実的にイノベーションレベルの進化も起こさせることである。
「企業の発展に必要なのは、戦略と実践力である」
実践力のトヨタ:現状の課題、問題点について、適切な見える化、目で見る管理をするための工夫に知恵を使い、その差異、異常値の理由を5回のなぜで追求し対策する。
戦略のマッキンゼーフレームワークを使った分析を駆使し、ファクトベースで事の因果を明確にして問題解決を行い、経営トップ向けのレコメンデーションを提示する。
表現の仕方と目線は違えど、本質的にはほぼ同じアプローチで問題発見と問題解決に取り組み、多くの方法論を展開している。
どちらもPDCAを高度に廻して、自らの方法論を進化させ続ける文化を持っている。

自分の書いたメモに、今いるステージによって重要な点が変わる本って書いてある。そうかもしれない。
自分が新人なのか、中堅なのか、管理職なのかで、見るポイントが全然違うと思う。


■1章 PDCAは企業の実践力を高める
実践力-長期にわたり成長しづつける秘訣
長期的に企業の安定成長をさせるためには、社内で精度の高いPDCAをよどみなく廻すことのできる卓越した組織の力が必要。
戦略とは自社のドメインでの競合を明確にし、自社の強みを活かし、市場シェアを伸長し、収益性の高く発展性のあるビジネスを作るかというプランであり、その際の経営の方向性、道筋を明確にしたシナリオのこと。 ん~長い。  つまり、自社のドメイン、強みを知っておくのは前提条件ですね。
戦略の前に、ドメインや強みを知っておく必要があるのか。考えてみればアタリマエのことか。
ex)ドン・キホーテの例 
宝探しの店。市場で唯一無二の業態 ←競合がいない。
強みの源泉が分かりにくい ←参入障壁となっている
競合が不在 ←出店余地がたくさんある
権限移譲型のオペレーション。人を育成しながら店舗展開(無理をしていない) ←堅実な事業展開
従業員に外国人が多い ←海外市場への展開も視野に入れている。

経営の2大要素 (重要)
戦略    進むべき道筋、成功に向けたシナリオ
実践力    道を進む能力 PDCA力、マネジメント力
つまり、S+PDCAでワンセット。(自分の解釈)
戦略は、実践力のある企業にのみ、有効。

優秀な人は経験を自ら法則化できる。メタ知識として経験を積み上げている。抽象化ってことね。ビジネスにおける学習とは、自らの経験を汎用性を持たせて精度高く法則化すること。
コンサルの先生が、「構造化と再現性」が重要って言ってたことを思い出しました。

PDCAを廻すと得られるものとは
仕事のできる人、企画力と実践力のある人は、PDCAの基本動作をまっとうに繰り返すことで正しく経験を積み、力をつけてきた人。
これってつまり、仮説-検証を繰り返してきた人ってことだと思う。こちらのほうがしっくりくる!
仮説があって、実行結果を適切に検証すれば、成功や失敗の因果が明確になる。おそらく、失敗の因果のほうが大きい。失敗しなければ成功なのだ!なので、失敗を避ける/しないことが大事。
この仮説検証を進化させていくことが大事。
言語化を進め、より高いレベルの経験則を得て、方法論を進化させていく。これを継続する。
ex)改善活動のパワフルさ
大きな声では言えませんが、自動車づくりの品質管理技術のレベルと比較すると半導体製造の品質管理はそんなむずかしいことではありませんよ。トヨタが改善活動をしている結果。

先読み力が向上できる。

閑話休題の話
トヨタ。最も重要な「ものづくり」の工程において、斬新なアイデアを競わせるという発想はない。(ラインにロボットを導入する件)。実際に導入し始めたのは、初期の不具合や課題が改善され、価格面でもかなりこなれてきてからだった。あくまで便利で安定した道具のひとつとして、考えていた。ロボットなどの先端技術に幻想は抱かない。
まさに、枯れた技術の水平思考の考え方ではないか。

ふぐの話は面白かった

次なる挑戦を可能にするという正のスパイラルを自らの意思で描き、しっかりと歩んできた方。そういう人が、出世をする。
ビジネスマンと生きていく場合、必要なのは要領の良さや処世術ではなく、自分の力を高めること。それが強力な無形資産になる。最も有効なのが、自分自身の廻したPDCAによって積み上げて培ったビジネスマンとしての能力。たしかに。社内政治や誰かの思惑に取り込まれないように何をするか。自分の意思。スタンス。それを言えるたしかな背景、自信。
企業内でプロフェッショナル経営者のレベルに近づき、かつ仮に社外に出ても通用する能力を培うためには、市場を起点にして果敢にPDCAを廻しにいくことを強く意識すべき。

自信は基本的に実践に裏付けされている。たとえ失敗したとしても、結果の検証(C)を行っている限り、場数を踏むたびに経験則が蓄積されていき、自身がついていく。
ex)トヨタは本質的にとても謙虚。都会的な日産に対し、ただ愚直に一所懸命努力をしてきた。トップも非常に謙虚で、言い換えればベタである。事業に対して、ひたむき。

果敢なPDCAが廻っていない企業では何が起きるのか
保身文化。自信がないから。
現状打破できるアイデアイデアがあっても側近の意見に流されたり、猜疑心にかられ甘言に惑わされた人事判断をしたり、とりあえずと決定を先延ばしにしたり、せっかく情報を集めても判断できなかったり、ほかの企業がやったことにしたがったり・・・。
「成功に秘訣などない。それは周到な準備、不断の努力、失敗からの学習の結果である。」コリン・パウエル
「成功する最速の道は、失敗率を2倍にすることだ」IBMの中興の祖、T.J.ワトソン

経営の意思としてPDCAを組織の文化にする
私の書いたモデル図
   S
   ↓
   P
 D   A
   C

ex)トヨタ。社員が自身の業務について「見える化」を推進する文化がある。さらに、主要業務の重要な管理ポイントとなる指標を見出し、「目で見る管理」の精度を常に上げ続けている。
Checkが機能しない組織は、思い付きを繰り返し疲弊していく。

1章まとめ
S+PDCA
PDCAは仮説検証、仮説検証の繰り返し(高速で)。どこを読み違えたのかなどの反省は当然、この活動に組み込まれている。仕事ができる人はこれを繰り返して、抽象化、法則化できている。
成功や成長のために、自身の能力向上のためにPDCAは大事だよってことをいろんな事例から説明している。
謙虚に、ベタに仮説検証を繰り返していこう。


■2章 優良企業の実践力-成長・発展し続けるために
実践力があってはじめて、戦略は機能する
言い換えれば、戦略は実践力がなければその価値は発揮されない。
戦略は、合理的に組み立てられたものであるものの、見方を変えればただの初期仮説。いくら良質であっても。金科玉条のごとく奉る特別なものではない。
実践力は、戦略を調整・改善し、進化させるもの。この実践力は、精度高く、高速にPDCAを回した結果として得られる。
「とりあえずやってみる」ではやらない。きちんと仮説を立てる。
報告の作法が社内に根付いている必要がある。トップが何を知りたいか?市場起点のPDCAを廻す際の報告内容。
「人、性善なれど性怠惰」問題点を顕在化させることは美徳であるという文化がないと、隠しておきたくなるのが人。

徹底してPDCAを廻す日米の代表的な2大企業
ex)トヨタ 現場の知恵を組織の知恵に転換
QCDの追及を含め、自動車ビジネスに求められるすべての企業の能力を磨き続ける文化と習慣をもつ存在。
トヨタの生産方式の思想を一言でいうと、「現状のやり方の課題や問題点を常に表面化させ、検証できるようにする。そして見つかった問題点の改善をする」。なので、検証のための見える化の方法論の進化に知恵を使う。例:稼働率100%である状態は、見えないムダが潜んでいると考える。在庫レベルを限界まで下げて、もし清々と生産が流れずにラインが止まる場合、どこに作業の偏りがあるのか、追求できる仕組みになっている。常に改善の余地が隠されているという前提に立って、問題点を顕在化させて改善していくPDCAを廻す文化ができている。
見込み違いや失敗を表面化させることを美徳とする企業。表面化させて、速やかに修正を行うことが当たり前である企業文化ができている。
ex)ウォルマート PDCAの精度とスピードを上げ店舗の商品構成を最適化
フェア。本社は質素な執務スペースがある程度。近くの物流倉庫は、最新鋭の機器など積極的な設備投資が行われている。お金をかける意味のないところには一切お金をかけない。
フェア。ウォルマートのバイヤーがコカ・コーラ社に行って、飲み放題なんだけど、1ドル札をテーブルの上に置いて帰った。フェアネスがストイックなほど企業文化になっている。
担当カテゴリーの分析に時間を割く、つまり商売にとって最も重要な課題への取り組みに多くの時間を割く。価格交渉には時間をかけない。
日次でPDCAに取り組んでいるらしい。

この2社は、どちらも社員を大切にしている。
トヨタ:創業のころ、人員整理した過去がある。以降、「もし人材に手を付けるならば、まずは自分自身に手を付けるように」、という不文律がある。
ウォルマート:街の中の看板に、「従業員のみんな、いつもありがとう」
人を大切にする。だから人が安心して力を発揮し、事業が世の中に貢献できる。PDCAを廻す主体である社員を大事することが、大前提としてある。
「仕事は私たちを、退屈、悪徳、欲望という3つの悪行から救ってくれる」ヴォルテール。 まっとうに仕事に取り組める環境は、昔から「思惑」の蔓延を防ぐ。

真にPDCAが廻っている状態:常識的で前向きな人たちが、のびのびと挑戦的な課題に取り組んでいる状態。

閑話休題 仮説思考について
物事を仮定しPDCAを廻すことは、解に最も早く到達できると実証されている方法論。マッキンゼーでも推奨されている。 なので、この考えに自信をもっていいのではないだろうか。
最も良質な初期仮説を得ることができる場所、それは現場。

市場起点で考える-ビジネスの本質は「変化対応」
3Cの市場、競合、自社は、時間とともにダイナミックに変化する。だから、市場起点にPDCAを廻す体制が必要。
市場起点でのPDCA
各事業、各レイヤーでのPDCAが大事。

2章まとめ
トヨタは、常に改善の余地が隠されているという前提に立って、問題点を顕在化させて改善していくPDCAを廻す文化ができている。
実践力にて、戦略も必要に応じて進化させる。
PDCAを廻す主体である社員を、トヨタウォルマートも大切にしている。
市場起点のPDCA、各レイヤーでのPDCA
仮説思考はめちゃ大事。解に最も早く到達できると実証されている。

PDCAを廻すような何か仕組みを考えるか・・・
見える化・・課題一覧はあるけど、その課題が出た背景とか?仮説がないと始まらないな・・・。


■3章 なぜあなたの会社のPDCAは廻らないのか
PDCAを阻む最大の要素「人、性善なれど、性怠惰なり」 という人の弱さ
成長が進むと、慢心が出てくる。報告も「こうだろう」という感覚での口頭レベルでの報告に終わってしまう。市場に勢いが残っている場合、気づかないうちに顧客の期待を裏切ること、あるいは顧客の意にそぐわないかたちでビジネスが展開されてる状態。市場との乖離が生まれている。PDCAが廻らなくなって、事業体として機能不全が起きている状態になってしまう。

PDCAの出発点であるPの立案精度が低い
例えば、中国でビジネスを行うという事業展開を言い出した場合。「なぜやるのか、なぜそのやり方をするのか」は、明確に記しておくべき。たとえ社長が言い出して意思決定がされていたとしても。だって仮説だから、読みの部分は多分にある。ここで最も重要なのは、「この進出の決定から撤退までの一連の流れにおいて、企業は何を学習してきたのか」という点。

PなくしてCならず。これが「本気の失敗には意味がある」のこと、かな。
問題点を特定できれば、打ち手の修正議論に進めることができる。Pがなければ、失敗から学習ができない。
ex)コカ・コーラ。海外展開の経験則から、まず適切なパートナーを探して、自分たちには不得手な部分はやってもらい、利益も渡すというのが良いやり方だと学んだ。

最も重要な「PDCAの実践設計」の軽視
企業は、戦略実践のプロセスが作りこまれていないから、組織が動かない。戦略が精度高く的確に実践できるようにするためには、現場に至るまでそれが咀嚼できていることが重要。
改革は、いま存在する秩序を変えること。阻む大きな要素は、人の思惑。
実践設計では、次のようなことをすべき。
・経営側が、部門別にPを展開し、トップとすり合わせをおこなう。
・経営側が、定期的な実行状況を確認して、かじ取りを行う。

PDCAには、的確に見える化された検証のための帳票や制度の高い会議体の設計が必須になる。これを認識していないと実行段階で躓くことになる。
言葉遊びのようだが、必要なのは実行力ではなく、実践力。
実行力は言われたことをそのまま遂行する能力。
実践力は、状況に応じて自律的に舵取りを行える能力

創業者のワンマン型の事業運営から脱却できない
ワンマンの場合トップの好む企画を出す能力が磨かれ、市場に受け入れられるアウトプットを出す能力が磨かれない。
ビジネスにおいて必要なスキルは、自分の実体験を通して得られる知識と知恵の体得。
PDCAの体制作りは、その重要性に気づいた誰かが取り組まねばならない企業最大の課題となる。

PDCAは読み違えた点について、その理由を追いかけて明確にし、組織の知恵として共有化するためのもの。これを表面的な検証で終わらせたり隠蔽したりすると正しく言語化された因果の共有化への努力がなされなくなる。共有がされないだけでなく、本人も失敗の理由があやふやなままに放置することになり、企業にとっては大きな財産となるはずの「お金と手間をかけて起きた、せっかくの失敗」が学習につながらなくなってしまう。

PDCAを廻して事業活動がうまく「見える化」されていると、様々な意思決定を理にかなった形で表現することが求められる。企業がくさる原因の、思惑をかなりのレベルで防ぐことができる。
当初の読みというのは多かれ少なかれ外れるもの。自ら読みを外したことを認めて、その理由を探って修正を行っていくのがPDCAの肝。So What(だからなに)?が学習を促す言葉。
PDCAがうまく廻るための基本動作は、PDCAを廻す当事者の「大人」としての素直さと謙虚さ(幼稚なプライドは不要)、PDCAを廻させる側である上席者のPDCAを上げることへの執念、のふたつ。
PDCAの精度は、「成功、失敗の因果を正しくつなげることができるか」にかかっている。
読み間違いやミスを認めて、それを前向きに対処することを評価する企業や組織文化を意識して作らないといけない。

改革の成果が出るまでに1年以上を必要とする場合
低迷状態の企業はふたつの課題がある
市場のとの乖離を起こし、再成長軌道に入れるためのシナリオである戦略が見えていない
実践力も低迷してしまっている
ほとんどの会社は、戦略+実践力(PDCA)の強化で立ち直ることができる。
V字回復の兆候は見えてくる。その場合、定期報告の場で、PDCAのサイクル、ソリューションをどう考えているか、その兆候の詳細を報告し、状況理解を共有する必要がある。
適切な頻度で、不要といわれようが最低限の情報をINPUTする必要がある。

3章まとめ
PDCAが廻らなくなるのは、「人、性善なれど、性怠惰なり」 という人の弱さ。慢心が続き、「このくらいでいいや」という程度の仕事になってくる。そうすると、PDCAが廻らなくなって、事業体として機能不全が起きている状態になってしまう。結果、Pもしょぼくなる。そして、Cもしょぼくなり、PDCAはどんどん廻らなくなる。本気の失敗にならず、大きな財産となるはずの「お金と手間をかけて起きた、せっかくの失敗」が学習につながらなくなってしまう。自ら読みを外したことを認めて、謙虚にPDCAを廻す、廻させることが重要。できないなら、そういう組織文化を意識して作らないといけない。


■4章 PDCAを廻すために必要なこと-個人、マネジャー、そして経営層にとっての技術
個人が的確にPDCAを廻すための技術と姿勢
PDCAを廻す目的は、事の因果を明確にしてさまざまなビジネスに必要な成功則を導き出し取得すること。個人として意識すべきことは次の3つ。言語化と三現主義、見える化、逃げない姿勢
言語化と三現主義:論理性を大事にし、五感を通した感性を駆使する
事業規模の拡大、市場の変化などが起きる中、組織内の適切なコミュニケーションの仕組みづくりに経営層が知恵と神経を使わないといけない。そうでないと、コミュニケーションが取れずPDCAを廻すことができない。なので、言語化が必要。また、仮説を立てて、理をもって因果を解いていく必要がある。それにも、言語化が必要。アートは、まだ十分に言語化されていない世の中の事象のこと。サイエンスは、言葉で論理的に説明できるようにすること。つまり、アートをサイエンスするということ(言語化)が大事。ただし、言語化への考え方の注意点として、言語化は、言語化されていないことへの絶え間ない挑戦と捉えるべき。5感をもって、現場、現物、現実に接し、最も良質な一次情報に接しタイムリーに必要な情報を得ることがPDCAの基本になる。
閑話休題の件:読書は言ってみれば自分の頭ではなく、他人の頭で考えることである。自分なりに咀嚼して考えることが大切。書物には、その知恵が適用できる前提部分がすべて書かれているわけではないので注意。外部の力を借りるときも同じ。外部の知恵をうまく活用できれば、短期間でのV字回復も可能なので、その知恵をうまく選別でき、使うことのできる能力も企業の力として蓄えていく必要あり。

見える化:目的に合わせて、見える化を工夫する
表現したり書いたりすることは、課題構造を明らかにする。例えば、分析とは、事象における差異を分かりやすく比較できるように見える工夫をして、因果を明確にしていくための「見える化」の作業(たしかこれは、安宅さんも言っていたな。。。)。
ex)トヨタ。「目で見る管理」を行っている。これは、管理ポイントを見える化するということ。常に、問題点を顕在化させようという思想がある。
資料作成は、単なる報告だけでなく、論理的に考えて、誰にでも理解が容易で納得させることのできる思考の過程を、わかりやすく見える化するということ。

・逃げない姿勢:自分の成長のためのPDCAである
自信の真の能力として知となり肉となる経験は、PDCAを廻しながら積み重ねてはじめて学習となる。
保身や他責行動は慎む。企業改革における悪とは、利己主義が相当する。企業単位では、全体最適な動きをすべきだが、利己主義で企業全体として好ましくない方向に動く場合、それはやはり悪。なので、結局PDCAを廻す取り組みは、利己的な動機や考えがビジネスの中に入り込まないよう「見える化」し、トップの意思もしっかりと理解して全体最適となる方向性に導くということ。
まず、自分自身に対してイニシアティブを発揮する、つまり逃げない姿勢を意識し、実践するところから。新しいことについては、それをやらない理由など無限に見つけることができる。リスクを読んだらそれで行動を止めるのではなく、その挑戦で得られるものを明確にした上で行動し、PDCAをまわすことで正しい自信が得られる。

組織としての「PDCAを廻させる」仕組みづくり
組織のPDCAにおいて最も重要なのは、「組織としてある方向に向かって精度高くPDCAが廻っている状態をいかにつくるか」である。言い換えると、「人、性善なれど性怠惰」である圧倒的多数の人々に「いかにPDCAを廻させるか」ということ。マネージャーがその部門で日々何をしているのかわからないような状態では、その業務のPDCAを上げようもない。
PDCAの実践設計において、PDCAサイクルを機能させるためには、仕組み(業務内容の定義、報告帳票の設計、会議体の設計、管理ポイントの明確化)と運用(PDCAの推進、方法論の改善Aを進める)が必要。
見える化は、段階的に精度を上げていく。そうでないと、実態とは違うものになり形骸化する恐れがある。
報告帳票に関して。業務がうまく遂行されているかどうかの実態を的確に示す「管理ポイント」となる数字や事実をいかにわかりやすく表現できるかが重要。すべての業務には、この数値を見る、あるいはこの事実を押さえておくべきという「管理ポイント」がある。トヨタは、目で見る管理を徹底していたよね。「目で見る管理」=「管理ポイント」+「見える化」のことでした。この管理ポイントは自分が一番見たい数字や事実。なので、帳票設計には上席者の意思が反映されている必要がある。「管理ポイント」は、業務レベルや市場の変化に合わせて改善、進化させることも必要になり、ここでもPDCAのAを常に実践することになる。また、PDCAサイクルはチェーンのごとく次のサイクルがつながっていくことで振り返りが次のPに反映される。PDCAPDCAPDCAPDCA・・・。なので、報告帳票には「連鎖性」を持たせることが必須事項。
権限移譲とは、PDCAを廻す主体を徐々に担当者に移行し、自動航行できる状態にして、上席者は計器を見ていればよい状態を作ること。
ex)米国では、一旦方向性を握れば日々細かいところまで口出しをしないが、一般的に四半期の報告会はしっかりと開催し、PDCAが廻っているかどうかを確認する。

マネジメントの役割
PDCAを廻すマネジメントを行うということは、事業運営において、起きていることや判断の理由をあからさまにできるよう、ファクトベースで言葉やビジュアルで理にかなった説明をする状態を作ること。なので、理にかなっていない報告、不明瞭な報告には、ドライバー役のみならずギャラリーからもなぜ?が尋ねられるようになる。つまり、お天道様は見えていますよ状態を作り出すことができる。

戦略と実践力、そしてそれを支える正しいリーダーシップが存在している状態になってはじめて、企業は健全な成長軌道に入っていくことができる。安心して社員が前向きに課題に取り組みPDCAを廻すことで、初期仮説であった戦略もさらにブラッシュアップされていく。PDCAが廻れば、さらに健全なリーダーシップは確固たるものになっていき、戦略の立案精度も上がる。こんな感じで、戦略、実践力、リーダーシップは連関して好循環に入る。

4章まとめ
PDCAとは、成長すること。ここでは、ビジネスに必要な成功則を導き出し取得することとある。言語化と三現主義、見える化、逃げない姿勢という3つが個人として意識すること。言語化は、言語化されていないことへの絶え間ない挑戦と捉えるべき。見える化は、「目で見る管理」=「管理ポイント」+「見える化」。誰にでも理解が容易で納得させることのできる思考の過程を、わかりやすく見える化する、それが資料作成。逃げない姿勢は、やらない理由など無限に見つけることができる。リスクを読んだらそれで行動を止めるのではなく、その挑戦で得られるものを明確にした上で行動し、PDCAをまわす。そうすることで正しい自信が得られる。
PDCAサイクルを機能させるためには、仕組み(業務内容の定義、報告帳票の設計、会議体の設計、管理ポイントの明確化)と運用(PDCAの推進、方法論の改善Aを進める)が必要。業務がうまく遂行されているかどうかの実態を的確に示す「管理ポイント」となる数字や事実をいかにわかりやすく表現し、押さえることが重要。報告帳票は、PDCAPDCA・・・の連鎖性を持たせることが必須。
ファクトベースで言葉やビジュアルで理にかなった説明をする状態をつくり、PDCAを廻すことで「性怠惰なり」の部分を極力排除し、お天道様は見ている状態にすることで、企業は健全に成長する。戦略、実践力、リーダーシップの好循環も期待できる。


■5章 P・D・C・A それぞれの作法
P もっとも重要なプランニングの作法
Pが記述されていることは大前提。そうでないと、Cができない。
ポイントは、基本作法と、正しいソリューションスペースの捉え方のふたつ。

<基本作法:what-why-how>
4つのステップ。とても重要。Cがとても楽になる。どういう事実に基づいた方向性なのか、押さえどころはどこか、細部の決定事項の前提は何なのか。これらの点が明確なら確認ポイントや、戻る場所も明瞭になる。
1.現状把握 ファクトベースの見える化
成功のために必要な円がを明確にしていくための最初のステップ。基本的には、数字などの事実をもとに、良い結果、悪い結果に結びついたであろう原因となるものが見えてくるように見える化の工夫を行う。例えば、時代分析。縦軸に売上と利益、横軸に時間軸をとって、変化を折れ線で示す。大所の施策を書いておけば、何が効いて何が効かなかったのかなど因果を見える化することができる。基本的に、未来は過去の延長上にある。見える化の効果として、「気が付いていなかった、自社の思考や行動の際の癖」という大切な気づきが得られる。その癖が負の方向に働いている場合に、気づけるのは大きな成果。
週次など短いサイクルで定期的に廻すPDCAサイクルの場合は管理ポイントが決まってくるため、数字の表現の仕方が重要になる。
2.意味合いの抽出と解の方向性の明確化
見える化したら、その事実に基づいてそこから何が言えるのかを明示する。深堀することで課題を特定し、解の方向性を明確にする。ファクトベースで理にかなった深堀を行いながら(意味合いを抽出して)、どこに課題があるのかを明確にする(解の方向性)。
ex)トヨタの5回のなぜ。モグラの例
庭にモグラが出てきて困るので、モグラの穴をふさぐのが応急対応
モグラの巣、そのものへの対応を行うのが恒久対応
意味合いの抽出はその事業や役割に精通していないと的確にはなかなかできないがPDCAを何度も謙虚に廻すことでその能力は上がる。
3.施策の決定
解の方向性が明確になれば、具体的な打ち手の評価して決定する。例えば、ベストと思われる3つ程度の提案を客観的に比較して、どの案にするか決める。どの案もメリットデメリットはある。総合評価に対してレコメンドを記述して、責任者の決済を受ける。
4.実行計画の策定
上席者にどのタイミングで進捗状況を報告するかを、必ず計画の中に書き込む。報告する場合、どこからチェックが入ってもいいように意図通りに実行されているか、管理ポイントとなる数字をしっかりと確認しておくなど押さえどころを確認しておく必要あり。

<正しいソリューションスペースの捉え方の重要性>
ソリューションスペースとは、「問題点がどこにあるのか、そして打ち手はどこで検討すればよいのかを明確にする土俵」。イメージは、ロジックツリーの特定の枝葉に絞り込むという感じ。
ソリューションスペースは、課題を定義するにあたり、押さえておくべき広がりや因果を見える化するもの。そして打ち手の広がりを漏れなく確認していくためのもの。ロジカルに確認しないと、思い込みで打ち手を決めてしまう。ex)賃料は売上比率のXX%まで→業態としてまったく魅力のない店ができた。賃料は高いが来店する顧客が増えるリッチに展開した競合に負けた。  在庫は欠品してよし。在庫をしたら評価を下げる→当たりの商品が出ても在庫がないので大した売り上げにならない。事業規模が右肩下がりに。  無添加にこだわる→消費期限が大幅に短くなる。廃棄リスクが大きいので店頭のフェーズ数が少なるなる。結果、売上が下がった。
要は、MECEが大事。そして、ソリューションスペースをにらみ、「ゲームが変化する」市場で、管理ポイントの変化を意識することが重要。

D 精度の高い実施があってはじめてCが可能になる
現場において精度の高い実践がなされるためには、whyの共有が必須。whyのない企画はつべこべ言わずにやれ!と同じメッセージ。whyをわかりやすく表現して発信することは、Dの精度を上げるために重要。きちんと背景を説明しろってことだな。現場社員の式を高めるために、販売員向けのビデオを撮ったりする会社があるほど。パッションをもってお客様にオススメすることで価値が伝わり、売上、顧客満足度が上がりファンになってくれる。
社員の士気(背景やwhyを理解して、腹落ちさせて実行させること)がとても重要。

C 謙虚に、そして客観的に結果の検証を行う
因果の読みが明確になっていることが必要。
PDCAのDの結果を検証するための基本動作は、PDCAのドライバー側と報告側で行う。
・ドライバー側は、whyの徹底、つまり因果の不明瞭な部分は妥協せずに、徹底的に言語化や視覚化を促す質問を行う。 因果を明確にするため。
・報告する側は、一目で因果が分かり、ドライバーやギャラリーから質問が出ない状態を目指す。想定される質問点は、すべて記述がなされているように報告書をまとめる。
つまり、ドライバー側が自分の言葉で語れるようにすること。whyの徹底、一目で因果が分かるような工夫。
※写P190 
見える化されたデータをもとに、良かった点、読み外した点、そこから得た示唆(わかったこと)を、次のPへ反映させる。
whyを促さなくてもわかりやすく表面化されるように、帳票や発表の作法を修正していくこと。
PDCAが廻っている限り、叱責の対象にはならない。ただし、理にかなった因果の説明は必須だし、次のPへ反映させることも必要。
何度やっても成功しないときは、単に思いつきを実行しているか、あるいは幼稚なプライドにとらわれていると思うべし。
skillに問題があるのか、willに問題があるのか。気づかせるのも、上席者の仕事。
失敗はその要因を分析する対象、つまり学習の対象。オープンにすべき。その失敗を価値あるものにできるかどうかで、人も企業も成長が決まるといっても過言ではない。

A 方法論を磨き、ビジネスプロセスを進化させる
Aとは、Pの修正ではなく、事業運営やPDCAの廻し方などの方法論そのものを直して進化させていくための改善行動のActionのこと。
ex)日本の製造業。ものづくりの強化のPDCAは、QCD。品質を上げればコストがかかるという一般論があるが、そうではなく工程やものづくりの手順の改善(A)によって、プロセスの最適化を進め、独自の強みを積み上げてきた。特に、D(生産LTの短縮)は、在庫レベルをギリギリまで低くでき、市場の変化に追随して急ハンドルを切りやすい状態にできた。 ex)トヨタオイルショック時に、市場では燃費の良い車が求められていた。トヨタは、仕掛在庫が極限まで少ないものづくりだったため、即座に燃費の良い車を市場に投入することに成功した。
真因は、人ではなくやり方にあるという前提。アッタリマエだ。責任の追及が必要になるのは、本来原因の追及を行い事故の再発防止や制度やシステムの不具合ポイントの明確化を行わなければいけないはずの当事者が、その因果を明確にせず、最善の対策を取ろうとしていない場合。なので、責任の追及よりも、対策を優先する文化づくりが大事。未来志向、ですかね。

5章まとめ
Pは、お作法に則って実行することが大事。検証のしやすさにモロに影響する。ファクトベースに、意味合いの抽出をして、解の方向性を出していく。実行計画には、報告タイミングも決めておく。ソリューションスペースは、ロジカルにものを決めていかないと、どこどこの会社のように、おかしな対策をして資源を無駄にしてしまい、撤退を余儀なくされるかもしれない。管理ポイントは決めるが、変化に対応できるようしておくためにもソリューションスペースは、大切。
Dは、社員の士気を高め、腹落ちさせ実行させることで精度の高い実施ができる。Cのためにもとても重要なこと。
Cは、謙虚に客観的に。ドライバー側が自分の言葉で語れるようになるまで。失敗を価値あるものにできるかどうか。それが企業や人の成長につながる。
Aは、方法論を進化させること。真因は方法論にある。原因を追究し、課題を明確化し、次へ活かしていこう。Pへ、反映させていこう。


■6章 PDCAの事例
事例1:営業マネジャーの週次活動のPDCA
事例2:売上、収益を最大にする商品部のPDCA
どちらも、いままでの総仕上げといった位置づけ。困ったときに、具体例が役立つかもしれない。


■おわりに
組織で廻すPDCAの基本的な考え方は、社内があるべき形で廻っているかどうかを社内で分業してみていこうということ。そして市場起点のPDCAを廻しかつ精度を高めていくことで市場志向の成長軌道入りをする。これが継続できた企業や組織が発展を続けることができる。PDCAが向かい合う対象は、「人、性善なれど、性怠惰なり」という人間の本質部分。
成長志向よりもリスク回避を先行させる減点主義の評価は、企業の力、国力を弱める。適切なリスクを取ることが大事。
企業の成長の源泉になるのが、挑戦と失敗からの学習。PDCAを廻す力を向上させることに注力し、「自ら打席に立ちバットを思い切り振る」挑戦にひるむことがなくなる「自信」を培うことが日本の活性化につながる。


【この本を読んだ感想やまとめ】
S-PDCAを学んだ。PDCAとよく言われるが、腑に落ちない人がほとんどだと思う。そういう私もそうだった。
というのも、PDCAとだけきくと、スタートがPの計画から始まるからだ。その計画ってどこから来たの?妥当性は?と考えたときに、なんでPDCAとばかり声高によく言われるのかが理解できなかったのだ。この本で学んだ、S-PDCAの「S」はStrategyだ。PDCAの前にまず、戦略があって、その戦略に従って戦術、つまりPの計画が始まるわけだ。これでようやく経営の意思からつながり、PDCAも理解できるようになってきた。
重要なのは、P。どれだけ事前に考え抜かれたか。どんな仮説を立てて、検証していくかの精度が重要。この精度は、経験値をためて、上げていくしかない。これもまたPDCAだ。Pをがんばればがんばるほど、DもCも楽になる。振り返る点が明確だからね。なので、どのような管理ポイントを置くかも重要になってくる。
トヨタの生産方式の思想を一言でいうと、「現状のやり方の課題や問題点を常に表面化させ、検証できるようにする。そして見つかった問題点の改善をする」。文化。
「お金と手間をかけて起きた、せっかくの失敗」は学習につながる、かけがえのない財産。これをどう活かすか?成長するか否かの分かれ目。
仮説検証を繰り返すことで、先読み力が向上できる。

PDCAは、怠惰な本質部分に立ち向かうための方法論ともいえる。

OODAとの違い。Oが「Observe(観察)」2つ目のOが「Orient(方向付け)」Dが「Decide(判断)」Aが「Action(行動)」。
OODAは、比較的短期的な活動と感じた。短期的なPDCAを表現するためのものというか。。。自然にみんなやっている。それを名付けただけ。おそらく語源が戦争のゲリラ戦に対する対応から来たからだと思われる。中長期はPDCAが必要らしい。つまり、長期的な管理はPDCAでよく、一定期間の間の活動は、OODAとして管理できればよい。PDCAのDの中に、OODAがぶら下がっているイメージ。
これは今までの活動を分析して敢えてそれに名づけをしたもののようなもの。本質的には、やはり仮説検証だと思う。


【今後活かせること、具体的なアクション】
・DOをするうえで、社員の士気(背景やwhyを理解して、腹落ちさせて実行させること)がとても重要。
・管理ポイントと見える化の明確化。「目で見る管理」=「管理ポイント」+「見える化
見える化への絶え間ない挑戦を前提とした取り組み。
・仮説検証、仮説検証の繰り返し(高速で)。先読み力の向上。精度がどんどん上がっていく。
・「とりあえずやってみる」ではやらない。きちんと仮説を立てる。
・仮説思考。(物事を仮定しPDCAを廻すことは、解に最も早く到達できると実証されている方法論。マッキンゼーでも推奨されている)


【気に入った文章・言葉を3つ】
・やらない理由など無限に見つけることができる。リスクを読んだらそれで行動を止めるのではなく、その挑戦で得られるものを明確にした上で行動し、PDCAをまわすことで正しい自信が得られる。
・人、性善なれど、性怠惰なり
・成功に秘訣などない。それは周到な準備、不断の努力、失敗からの学習の結果である。


【こんな人に読んでほしい】
PDCAとかOODAとかマネジメントを知りたい人
トヨタウォルマートの強みを知りたい人
そもそもPDCAって何?という人
組織、個人としての成長のヒントが欲しい人
組織の思惑を防止したい人

 

 

 

読書備忘録#5_1分で話せ

読書備忘録#5_1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術
伊藤羊一さん

【読もうと思った動機】
上司から、「お前の言っていることは理解できない。俺はそこそこの大学を出ていて、俺の理解が足りていないということはない。ほかの言う人のことはわかりやすい。だから、お前の説明の仕方が悪い」と言われたことが昔、ありました。なので、相手にわかりやすく伝えるために、何かヒントが欲しくて、この本を手に取りました。
なお、子どもがこの本の題名をみて、「言葉遣い悪いね」と言っていました。

【概要】 はじめにから
95%の人は、いらない話を省けないばかりに、伝わらない状態になっている。もっと短く伝えられていたら、相手はもっとあなたを信頼していたかも、しれない。
伝えるための「根本」を教えてくれる本。
ざっくりまとめると、次のような感じ。
動かしてなんぼ。できることはなんでもやろう。
ピラミッド構造を意識する。結論と根拠のセット。
「スッキリ・カンタン」に伝える。

■序章 そもそも伝えるために考えておくべきこと 相手が動いてなんぼ
人は相手の話を80%は聞いていないという前提で、どのように相手に1分(短い時間でインパクトを残すか)で伝えるかについて述べている。この本でいうプレゼンとは、人に動いてもらうこと。プレゼン力=動いてもらう力。1分でまとまらない話は、何時間かけて話しても伝わらない。逆に言えば、どんな話でも1分で伝えることはできる。まずは、1分で話せるように話を組み立てよう。
ビジネスでおもしろいのは、ロジックに基づいた話。世間話やこぼれ話ではない。
人を動かすには、左脳と右脳の両方に働きかける必要がある。

序章まとめ
まずは1分で伝えられるように、話を組み立てよう。人に動いてもらってなんぼ、のプレゼン。


■1章 伝えるための基本事項
相手は誰か?どんなことに興味があるのか?
「何のためにプレゼンするのか」=「誰に、何を、どうしてもらいたい」。相手がいる。アメリカのピッチコンテストに挑戦したCEOの例。審査員にプレゼンしているところをイメージさせた。聞き手のイメージに基づいて伝える内容を作り上げていく。

ゴールはなにか?「理解してもらう」はゴールにならない
スピーディに仕事を進めるには、聞き手がどこまでやればいいのか=こちらが、どこまで相手にやってほしいのかを決める。言語化する。

結局、動かしてなんぼ きれいに話すのは目的じゃない
なぜプレゼンをするのか。それは相手が自分が望むゴールにいないから。とにかくゴールに相手を動かしていく。これが求められている。だから、動かしてなんぼ。なので、挨拶、席順、フォローなどできることはなんでもやる。相手が動くために、できることをすべてやりきること。

1章まとめ
ゴールを見定める。そして、動かしてなんぼ。できることはすべてやりきる。たしかに。そうでないと反省も生まれない。本気の失敗には意味がある。

■2章 1分で伝える -左脳が理解するロジックを作る-
てっぺんのないピラミッドになっていないか
1分で伝えるの根幹は、結論と根拠のセットを構築=ピラミッド構造でロジカルにストーリーを考えよう。

考える=結論を出す -事実やデータは結論ではない
大前さんの「考える」:考えるとは、知識と情報を加工して、結論を出すことだ
著者の「考える」:自分の内にあるデータや自分の外にあるデータを加工しながら、結論を導き出すこと。
結論とは、聞き手に受け入れてほしいこと。
コツは、自分に問いを立ててみること。ピラミッドの下にある根拠を並べて、「だから何?」と問うてみる。そして出てきた答えに対して「本当か?」「ファイナルアンサー?」と問う。

根拠は3つ -ピラミッドで枠組みを共有しよう
人に提案する場合は必ず根拠がある。3つくらいが分かりやすい。「私の主張はXXです。理由は3点あって、1点目はこう、2点目はこう、3点目はこう」といった具合。
実際に、変化があった体験あり。こうすることで、みんなメモし始めた。ここで、重要なことに気づく。聞いている人の頭の中に枠組みを作ること(マッピング)ができればよりしっかりと理解してもらえる。
言い方変えると「相手の頭の中に自分が伝えたいことの骨組みや中身を『移植していく』作業」がプレゼン。自分が伝えたいことを伝えていく行為とは異なる。

意味がつながっていれば「ロジカル」
主張と根拠を言うとき、聞いている人にとって意味がつながっていることが「すぐ」わかることが大事。
意味が通じない場合は、ロジックが隠れている。

「基本的に」は不要 いらない言葉をいかに削るか
相手の理解促進のため、不要な言葉は削る。カンタンな、中学生にわかるような言葉を選ぶ。たくさん話したくなるのは、話し手のエゴ。

頑張ったことは話すな
×プロセスを話す:XXを検討してきて、XXをした結果こうなって・・みたいな。
×気を遣いすぎる:Aさんのプランもよかったです。資料もわかりやすくて・・・。でもBさんのほうがよくて・・・
×自分の意見をは違うことを言う:A案に賛成なのに、B案についてあれこれいう
×笑いを入れる:笑いは不要。ビジネスで面白いのはロジック。

通じないときは前提をそろえておく
アタリマエだな。気づきにくそうだけど。例えば、こんな事例において、今の時代において、このコミュニティで、とかそういった前提を意識すればよい。

2章まとめ
動かしてなんぼ。相手に聞き入れてほしいことはなに?結論を、3つくらいの根拠で支えるピラミッド構造で伝えることを考える。
不要な言葉はどんどん削る。頑張ったことは話さない。それは話し手のエゴ。


■3章 相手を迷子にさせないために「スッキリ・カンタン」でいこう
集中してきいてもらうための「スッキリ・カンタン」
一瞬でも聞き手が迷子になってしまうと、集中力をこちらに向け続けてもらうことは難しい。迷子は、わからない言葉が2,3個出てきたらそうなる可能性が高い。
なので、スッキリ・カンタンを心がける。

言葉もスライドも「スッキリ」が鉄則
使う文字・言葉を少なくし、文章をややこしくしない、要は、短く、言い切る。
コツ:グラフにする、状況を位置にはめる(自分とマーケットの距離の間には、上司、本部、営業、販売店がいる)、過去現在未来の時間軸。
著者は、聞き手の人数に合わせてフォントの大きさを変えたり、している。

カンタン 中学生が理解できる言葉しか使わない
中学生でもわかる言葉を使って、絶対に迷子にならないようにしている。わかる人だけわかればよい、というものではなく、広く聞き手に理解してもらいたいのであれば、スッキリ・カンタンは重要。

3章まとめ
聞き手はその言葉を確実に分かるか?しっかりと想像する。
要はスッキリ・カンタン。無駄なものは削る、グラフや位置、軸で表現など視覚的に訴求する。

■4章 1分でその気になってもらう -右脳を刺激してイメージを想像しよう-
正しいことを言うだけでは人は動かない

人はイメージを想像することで感情が揺さぶられる

イメージを描いてもらうために行うふたつのこと
ビジュアルを見せる。未来都市の例。言葉で説明するよりも、絵で説明した方がわかりやすい。
ビジュアルで説明できない場合は、「たとえば」で具体的な事例を示す。結論ー根拠ー具体例って感じ。

ピラミッドは3段で作ろう 「結論」→「根拠」→「たとえば」の3段ピラミッド
1段目         結論
2段目     根拠       根拠     根拠
3段目 実例 実例    実例 実例     実例 実例
作成時は、どの段から作ってもよい。ただし、すべての線において「~だから、~である」と読んでみて通じることが重要。

「想像してみてください」
相手に、イメージに入ってくれるように、このお願いをする。そして、素晴らしいと思いませんか、と方向感を伝える。
相手をコントロールするときに有用な手段。

4章まとめ
右脳への働きかけの章。ピラミッドの3段構成が重要。論理性が高い。


■5章 1分で動いてもらう
「超一言」で包み込む
自分の伝えたいことを、一言のキーワードで表す。それが「超一言」。人は忘れるもの。
キチリクルン。孫さんにも好評。

ライブでダイブ

リトルホンダを作る(ミランに移籍した時の、本田圭佑さんの言葉))
話している自分と相手を俯瞰で見る。そうでないと、相手の気持ちが理解できず、相手に伝わらない。
簡単に言えば、「相手の気持ちになる」ということ。(厳密には無理なので、相手と自分を置き換えて自分ならどう感じるかを考える、と理解した方がよさそう)
優れたリーダーは、メタ認知(主観の自分を意識すること)が優れている。)

根回しだってアフターフォローだって必要ならばやろう
動かしてなんぼ。できることはなんでもやろうぜ、ということ。

5章 まとめ
言いたいことをひとつのキーワードで表すことが重要。たしかに。それだけ集約できれば、すごい。わかりやすい。思いが凝縮されている。
メタ認知を高めて、相手の立場に立って、伝えることが重要。アタリマエだな。


■6章 伝え方のパターンを知っておこう
プレゼンの枠組みはある。
SDS:Summary-Datail-Summary。詳細をまとめではさみこむ。
PREP:Point-Reason-Examle-Point。主張と根拠のピラミッド。
PCFS:Problem-Change-Solution-Future。
いろんなフレームワークがある。重要なのは、どう組み立てたら相手を動かすことができるのか、流れがシンプルになるのか、ということ。

伝えたい言葉はあるか
いちばん重要なのは、あなたの「想い」。著者は、我が存在をかけてこのプレゼンをするという気持ちでプレゼンするとのこと。
伝えたい言葉がありますか?相手を動かしたいならまず、自分自身を動かせているか。そんなことを振り返ってみたら。

動かしてなんぼ
考えられるあらゆる手を使って。キチリクルンの時は、結果的に300回練習したらしい。
相手が動くためにできることを、すべてやりきりましょう。そしてそのために時間を惜しんではいけません。

6章まとめ
伝えるためのいろんな枠組みがあるが、重要なのは、相手に伝わるか、シンプルになるかということ。
動かしてなんぼ。できることは惜しみなくやろう。


■7章 実践編
【会議】とっさに意見を求められて真白になる
落ち着いて、相手の問いが何なのか確認する。
ポジションを取ることが大事。白か黒か。結論を出して、根拠を考えて、反論があれば、してくる。それが議論。間違っていたら訂正すればいい。
上司はマネジメントという「機能」を持っているに過ぎない。人間的に優れているわけでもないし、能力が全てにおいて部下よりも優っているなんてあるわけがない。大きい責任を背負っているから、給料が高い。
「配慮はしても、遠慮はするな」

【プレゼン】自分の話を聞いてくれているような気がしない
声を大きく、相手に向かって話す。伝えたい思いを言葉に忍ばせる。

【上司への提案】プレゼンではなく、対話を意識しよう
まずは、ピラミッド構造の意識から。それから、対話によって上司とピラミッドのすり合わせをする。相手が誰であろうが、どんな状況だろうと、何より大事なのは力づよい主張と根拠のピラミッドを作ること。
イメージは、自分のピラミッドと上司のピラミッドを出し合ってよりよいピラミッドを作る、そんな感じ。
自分が主導権を握って、相手のピラミッドを作っていこう。
対話や議論の主導権は、上司が握るべきものと思ってしまっていませんか。それは違います。話をしていくうえで、主導権は自分にあったほうがやりやすい。仕事のペースを自分で握ることは重要。
しっかりと自分の意見を言うことは、上司と信頼関係を築くうえで大事なこと。「配慮はしても遠慮はするな。」
お互いにより良いものをつくっていこうというスタンス。これは上司も部下も同じ。意見が合わないときは、同じ方向だ、というところまで遡る(方針まで遡る)

【取引先との商談】提案よりも問題解決で信頼を作る
相手の課題を解決するのが営業の仕事。

ファシリテーション】広げて絞る流れを意識しよう
会議のファシリテーションは、主張と根拠のピラミッドを参加者の発言によってみんなで作り上げていく作業をリードするもの。
ゴールを決める。その会議で何が決まればよいか?どこまで深堀するか?という線を決めておく。そして、「本日のゴールはXXをXXすることです」と明記する。ホワイトボードに書くとか。
→ピラミッド構造の頭。結論のこと。
広げる、軸を決める:議論のネタがたくさん出てくるように。そしてどういう軸で何を議論すればいいか提示する
→ピラミッド構造の「根拠の枠組みをどう作りましょうか」ということ。3つの根拠のハコをどんなものにするか、みんなで決めるプロセス。
絞る:軸について話しながら、それぞれの結論を出す。
→そのハコのなかにどんな根拠が入るのか、ということ。
ファシリテーターはこの流れをコントロールする。
注意点:結論は誘導しない。事前準備を必ず行う。

 

【この本を読んだ感想】
目次で、大事なことを言っている。1分で話せは、最初の方だけ。
ピラミッド構造、結論と根拠はセット。相手の立場で考える。ダイブする。スッキリ・カンタンに。そしてシンプルに。
ポジションを取るのが大事っていうのは、この本でも語られている。


【今後活かせること、具体的なアクション】
・ピラミッド構造で、相手とすり合わせする。対話やファシリテーションで意識する。
・超一言。キーワード。これは、ブランディングでも役立ちそう。
・スッキリカンタンに。シンプルを意識!わざわざややこしくしない。(常に意識しているつもりではあるけど)
・てっぺんのないピラミッドになっていないか?ゴールは明確か?
・動かしてなんぼ。これが最終目的。

【気に入った文章・言葉を3つ】
・配慮はしても、遠慮はするな
・たくさん話したくなるのは、話し手のエゴ。
・1分でまとまらない話は、何時間かけて話しても伝わらない

【こんな人に読んでほしい】
・伝えるためのロジックがよくわからない人
・論理だけで相手に伝わると思っている人
・お前の話は分かりにくいといわれた人
・説明下手だな~て言われたことのある人

 

 

読書備忘録#4_生産性 マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

読書備忘録#4_生産性 マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの
伊賀泰代さん

【読もうと思った動機】
気になる生産性+コンサル最高峰の会社であるマッキンゼーということで、手に取った。これなら、とりあえずの正解というか、基準みたいなものが得られると思い、読もうと思った。

【概要】
著者は、マッキンゼーの元人事マネージャー。書籍名の通り、とにかく生産性について言及しており、生産性の向上がいろいろな側面で有効だということを説いている。読んだ後は、逆に生産性向上以外に、課題に対する対策ってあるか?と思うほど。海外と比較をよくされるが、論理力や発想力などに大きな違いはない、あるのは、リーダーシップと生産性とのこと。給料や生産性が低いといわれる日本人でも、このふたつを意識していけば、海外の人材に劣らなくなる。

■はじめに
日本と米国の、優秀な人材に求める資質やその育成方法に関して、二つの大きな違い。
ひとつは、日本と米国の「リーダーシップ」に対する意識の差。米国では、リーダーシップは誰もがもつべきスキルであり、誰でも身に着けられると教えている。
もうひとつは「生産性」。優先順位の明確化、ムダな説明時間や誤解が生じる余地をそぎ落としてしまう直截なコミュニケーションスタイルなど、少しでも生産性を高めようとする強い意志が感じられる。生産性が大幅に上がるなら従来のやり方に固執する必要はない。リスクをとることも厭うべきではないとしており、生産性を様々な場面における判断基準としている。
人材育成に関しても、「成長するとは生産性を上げることである」というシンプルな信念がある。
これからは、労働投入型の発想では、生産性重視型の企業に勝てるはずがない。
ただし、逆に言えばこの二つの大きな違い以外に人材力や組織力を左右する決定的な要因はないと捉えている。

■序章 軽視される「生産性」
最も生産性の高い採用とは?
例えば採用においては、「最終的に入社する10人だけが応募してくること」。現実的にはありえないのだが、これが目指す方向性だということは理解する必要がある。採用には、多大な経費と人手がかかることを忘れてはならない。

量を追う発想が生産性を下げる
生産性の観点から見れば、とにかく応募者を増やす方法は、最も避けるべき方策。アウトプットを増やしたければ、その分インプットを増やすという発想には、生産性の概念が完全に欠如している。

経営者の見栄という大問題
採用支援企業が発表する人気企業ランキングを気にすると、とにかく学生を集めようということになる。マネジメント上、採用の生産性を問うべき。

セルフスクリーニングの重要性
採用の生産性を高めるためには、とりあえず応募する、という学生を減らすという手法がある。長めの課題、ユニークな課題の設定など。応募する側がこの企業は自分に合っているか?と判断するのがセルフスクリーニング。採用では、いかに自社が欲しい学生だけを惹きつけるかという視点を入れる必要がある。多彩な学生をひきつける総花的な社員紹介より、リーダーシップというキーワードを入れた社員紹介のほうがセルフスクリーニングの基準を提供している。

災い転じて生産性向上?
ファーストリテイリングの例。ブラック企業とレッテルがあった。その危機に際し、トップ自ら労働環境の改善を約束し、全社員の給与レベル(グレード別)を公開するという大胆な施策を実施した。それなりにプレッシャーのかかる労働環境ではあるが、成果を出せば若くても高く評価される職場で働きたいという学生を惹きつけることに成功した。セルフスクリーニングをうまく促せた例。
ビジネスの前線では質より量が優先され、生産性が犠牲にされている。予算や優秀な人材といった貴重な経営資源を無駄に使っているということであり、それはほかのより重要な部分で本来出せるはずの高い成果が犠牲になっているということ。

序章 感想
採用の視点で生産性について触れている。質よりも量が優先されている、生産性の観点が抜け落ちている。採用にだって生産性はある。


■1章 生産性向上のための4つのアプローチ
生産性を上げるふたつの方法
生産性は、成果÷投入資源。生産性を上げるには、「成果を上げる」と「投入資源を減らす」というふたつの方法があると理解したうえで、安易に投入資源を増やさないこと、そしてコスト削減だけでなく付加価値を上げる方法も併せて考えることが必要。

改善と革新
アプローチは、「成果を上げる」と「投入資源を減らす」 と 「改善」と「革新」のマトリクスの4つ。

アプローチ1:改善による投入資源の削減
一般的なコスト削減や作業効率向上。

アプローチ2:革新による投入資源の削減
ロボット導入による、組立プロセスの自動化、設計の根本からの見直しなど。例として、米国のクレジット会社は、賃金の安いインドに特別な語学学校をつくり、インド訛りのない英語を話すインド人を大量に育成した。コールセンターをインドへ移管した。革新的な手法によるコスト削減。他には、ハブシステムの構築例など。コスト削減の手段にも地道な工夫を積み重ねる改善的手法に加え、従来の発想を大きく変えることで実現する革新的な手法が存在する。

アプローチ3:改善による付加価値額の増加
欧米では、機能を絞ることで付加価値と価格を上げる手法を多用している。成果の価値は、顧客が評価する価値のこと。これを理解しないといけない。

アプローチ4:革新による付加価値額の増加
ゲノム解析やiPS細胞。革新→付加価値額の大幅な増加。Facebookの例。googleに検索されない、知り合いだけが見る安全な世界をつくることで、本人が嬉々として個人情報をネットに書き込むという画期的な方法を生み出した。ビジネスモデルの革新。個人情報の収集の生産性を大幅に高めることに成功し、それが極めて高い付加価値額(広告料)につながっている。

世界と日本の違い
日本では、製造現場における改善運動から生産性という概念が普及したため、「生産性を上げる手段=改善的な手法によるコスト削減」という感覚が定着している。なので、企画部門、開発部門、管理部門などは自分の仕事にも生産性が重要であることを認識できないままでいた。世界には、製造部門だけでなくあらゆる部門で生産性をどうやって高めるか日々実践している企業がたくさんある。我々も、すべての部門で働くひとに「生産性」の重要を理解し、謙虚かつ真摯に少しでも仕事の生産性をあげるため努力することが求められている。

1章 感想
生産性向上には、ありとあらゆる人が強く意識して、取り組むことが求められている。それは4つアプローチがある。付加価値は、顧客が評価する価値であることを理解する。
自分に置き換えると・・・すべての仕様を盛り込むことが価値ではない。使いやすく洗練されていることも価値。ムダなことをやらないことも生産性につながる。本当にやるべきことにフォーカスする。

■2章 ビジネスイノベーションに不可欠な生産性の意識
イノベーションと生産性の関係
組織全体が生産性の向上に意識的になることこそが、イノベーションを生みやすい組織風土を作る。イノベーションにはふたつの要素が必要。Time for innovation と Motivation for innovation。

Time for Innovation
イノベーションのための時間的な余裕。
次のプロセスで、組織全体に生産性を重視した働き方を定着させることが必要。
 通常のオペレーション業務の生産性を向上
 ↓
 余裕時間を生み出す
 ↓
 その時間をイノベーションのために投資する
 ↓
 イノベーションにより、さらに大幅な生産性向上につなげる

技術的イノベーション vs 非技術的イノベーション
技術的イノベーション:画期的な技術が発見、確立されて、あるていどのどのように生活を変えていくか想像できるが、最初から全体像を見極めることはできない。モバイル端末を世界中の人がもち、常時ネットにつながり、拡張現実まで可能になるなんて誰にも想像できなかった。人間の純粋な好奇心が源。人為的にコントロールする技術が確立すれば必ず大きなイノベーションが起こる。iPS細胞とか、量子コンピューターとか!
非技術的イノベーション:世の中に今ある具体的な問題を解決するために、誰かがイノベーティブな発想をして、それを制度化することにより実現したイノベーション。例)貨幣制度、戸籍住民票制度、など。源は、目の前に現実に存在する不都合や不便さと、それらの問題を一気に解決できる画期的な解を見つけたいという切実な思い。
簡単にまとめると、イノベーションの源はふたつあり、ひとつは技術分野における知的好奇心。もうひとつは、非技術分野の現実にある問題の認識。

Motivation for Innovation
ビジネスイノベーションを起こすためには、「問題認識力=課題設定力」と「その問題を一気に解決したいという強い動機づけ」が必要で、これがまさにMotivation for Innovation。それに大きな役割を果たすのが「生産性という概念を日常的に強く意識させておくこと。」
思考というのは、制限が設けられるとそれをバネにして、今いるところとは異なる次元に入っていくことができる。まさに、制約はクリエイティブの母といったところ(岩田さん)
例:既存商品よりも生産性が4倍以上高い商品を開発しろ。こうすれば、虫歯を予防するキャンディをつくろうなど、付加価値を上げるために様々なアイデアが出てくる。コスト増のリスクはあるが、4倍以上の生産性という制限があれば、リスクを取るのはもはや必然となる。

採用分野におけるイノベーション
マッキンゼーでの実例。採用の生産性を毎年上げ続けることを求められてきた。細かい改善だけのアプローチでは、長期間での達成は難しい。これが制約になった。面接がが採用プロセスの後ろになっているのは、たんに面接にかかるコストが高いから。書類審査よりも面接のほうが適切な選抜はできることはわかっている。なので、面接をいままで30分かけて審査していたことが、3分でできれば書類審査は不要になり、面接から始めることができる。
こうしたイノベーションは、「書類審査や適性検査を先にやることで、すばらしい応募者を落としてしまっている可能性がある」という問題意識と、「書類審査や適性検査に匹敵するほどの生産性の高い面接方法をなんとか考え出せないか?」という画期的な解決方法への強い希求心から生まれる。
今後はAIがSNS上の発言を分析し、個人と企業をマッチングするといったサービスも出てくる可能性がある。
このようなイノベーションは、「いくら手間や金を使ってもいい」という生産性度外視の方針では起こりえない。

ビジネスイノベーションの格差
インテル入ってるの例。
組織全体で生産性の概念をより深く理解し、毎年不断に生産性を上げていくのだという強い気持ちを組織全体で共有することにより、「Timi for Innovation」と「Motivation for Innovation」を着実に作り出していく。それこそがいま、求められていることなのです。

2章 感想
イノベーションのための時間的余裕を生み出し、高い課題設定力と、強い希求心をもって生産性向上を不断に継続することが大事。不断の生産性向上の活動が、イノベーションにつながる。


■3章 量から質の評価へ
会議時間の短縮は正しい目標ではない
会議の問題を「時間が長いこと」だと考えると、問題がずれる。大事なのは、会議の時間(=量)を減らすことではなく、会議の質をコントロール(向上)すること。会議の生産性を上げることだという出発点に、今一度立ち戻る必要がある。

残業規制も量のコントロールにすぎない
ここでも、目指すべきは仕事の生産性を上げることと言っている。残業を減らすことだけを考える企業と、生産性を高めようとする企業では、長期的に到達できるゴールの高さも全く異なるものになる。
数十年前、日本企業の多くは売上高や市場シェアを競い合っていたが、近年は海外機関投資家が増え、評価する経営指標は、利益率やROEなどになってきた。これは、量から質への変化で、高収益だったり、資本効率の高い会社が良い会社だと判断されるようになってきている。

働き方を変える上司のひと言
例えば、徹夜してとてもよくできた資料に対して、「徹夜してよくがんばった!」と言って高い評価をするのか、それとも、「徹夜で30時間くらいか、15時間くらいでできたら一人前だな」というのかで違う。また、ごく短い時間で仕上げてきたら、すばらしい、その方法論をぜひ次の会議で共有してくれとほめる。こうすることで、「どうやったらより短い時間で高い成果を出せるようになるか」と考え始める。こうして、「あの人は本当に優秀だ」と目される人が、どれだけ仕事が集中しても明確な優先順位付けと迅速な意思決定、そして高いスキルによってみんながびっくりするほど早く仕事を終わらせてしまう人のことを指す職場となるように変えていくこと。そういった意識改革を起こすことが管理職に求められている。

成長とは、生産性が上がること
できないことができるようになった、1時間でできるようになった、同じ1時間で高い成果を上げれるようになった、浮いた時間で、別のできないことができるようになった・・・というサイクル。成長することと生産性が上がることは同義。ただし、今後の成長のための投資や新しいチャレンジもすべて労働時間内でやりきれるようになる、そうなることを目指す、そういう意識に変えていかないと、プロフェッショナルとしての成長には、常に個人生活の犠牲がセットでついてきてしまう。

成果主義も量から質の評価へ
労働力の追加投入によって成果を上げ続けるのは、持続可能な方法ではない。いずれ、部下も自分も限界が来る。評価方法を変える。評価基準が変われば、現場の働き方は変わる。質よりも量を評価すると、MBOの目標を低めに立てたほうが得をするというおかしな精度になる。(これは誰しもが感じていた内容ですよね。)継続的に右肩上がりの目標を掲げられる分野は多くない中、毎年毎年昨年よりも高い成果を立てろと求められたら、誰だって今年は少し抑えめにしようとなる。これだと、成長がない。なので、成果も達成目標も、生産性の伸びによって設定すればよい。そうすれば、評価が上がるだけでなく、イノベーションへの希求も生まれるし、企業の競争力を高めることができる。なので、生産性の伸びを評価する組織になる。これが今後の組織づくりにおける重要なポイント。

管理部門の生産性評価は時系列で
管理部門の評価は難しい。一貫性や公平さを保つことも難しい。生産性という評価軸が役に立つ。比率の変化率を評価すれば、分子分母の使われる数字が各部門で異なっていても問題はない。日本のマッキンゼーでは、アジア諸国マッキンゼーの採用グループやほかのコンサルファームの採用グループの生産性などと比較されていた。

3章 感想
残業規制とか、会議が無駄とかあるけど、それは量のコントロールでしかない。生産性を上げることが大事ですよ。量よりも質で評価されるべき。企業も、ROEや利益率で評価されるようになって来ている。成長することはつまり生産性が向上することであり、この生産性向上を評価にも使えばより、公平で一貫性のある評価ができるようになると言っている。たしかに、質が大切。8時間と1時間で同じ成果であれば、1時間のほうが評価されるべきだと思う。管理部門にもつかえるし、とても公正であるように思える。


■4章 トップパフォーマーの潜在力を引き出す
人材育成上の隠れた重要課題
トップパフォーマーは、問題社員と同じように組織としては異端とみられるので、不適合とされることが多い。ポテンシャルを発揮できていないことが問題。

優秀な人材を失うリスク

異動のタイミングと成長カーブの関係
平均的な人材向け制度の中では、ポテンシャルを抑圧してしまう。だから、トップパフォーマー用の昇格や異動をさせ、ポテンシャルを発揮せざるを得ない環境に身を置かせることが大切。

一般社員の成長機会を奪わない
部下の指導は、学べることはたくさんある。しかし、それよりも多くのことを学べる機会が別にあるなら、トップパフォーマーにはそちらをチャレンジするよう、促すべき。トップパフォーマーには「簡単ではないが、やればできる」レベルは、一般社員には十分にチャレンジングな仕事であることがある。そういうものは、トップパフォーマーはポテンシャルを発揮できないので、一般社員に任せた方がよい。その方が、組織としての生産性が上がる。

早期選抜が行われない理由
マッキンゼーでは、トップパフォーマーの選抜を行うのは、選抜のためではなく、育成が目的になっている。ポテンシャルを全て発揮させるために、手段として選抜を行う。

トップパフォーマーを育てる3つの方法
 ストレッチゴールを与える
 比較対象を変える
 圧倒的なライバルの姿を見せる

4章 感想
組織としての問題提起。個人的にはあまり関連がない。

■5章 人材を諦めない組織へ
放置される戦力外中高年
組織では、上に行けば行くほどポジションが少なくなるピラミッド構造になっているため、選ばれなかった人たちのモチベーションが下がるため、やる気をそがれた人たちが大量に生まれてしまう。昔であれば、右肩上がりだったため、子会社の偉い人などを割り当てられることができたが、いまは無理。セカンドチャンスは多くない。投資するのは、トップパフォーマー、ハイパフォーマーが中心になるのは当然のこと。ただし、組織全体として生産性を上げるためには、これらの選抜される人より圧倒的に多い選抜されなかった人たちの生産性向上をすることが必要になってくる。

組織全体への悪影響
社内の姥捨て山のような部門ができたり、どの部署にも働きの悪いおじさんがいる状態。働かないおじさんを養わなくてもよい会社に就職したいという若者がいるほど。

解雇制度と育て直しの関係
解雇が容易な米国企業のほうがむしろ、選抜を漏れた人にスキルアップのチャンスを与えることに熱心に見える。米国の企業も、解雇が可能だからといってスキルの低い社員をトレーニングもせずに解雇しているわけではない。すぐに解雇していたら、業務は回らない。

モチベーションを下げる本当の理由
「だれも自分に期待をしていない」と感じさせてしまうこと。これが原因。なので、「会社はまだ、あなたたちに期待している」というメッセージを伝えること。正社員の解雇はしないという方針や法律があるなら、せめて在籍中は常に組織から期待され、成果に応じて正当なフィードバックを受ける権利をすべての人に担保すべき。

成長のためのフィードバックの重要性
マッキンゼーでは、人事評価の際、distinctive(卓越したという意味。長所、強み)な能力や分野とdevelopment needs(能力開発が必要とされる部分)がセットで本人に伝えられる。弱点や欠点であるweaknessではなく、次はこの点を伸ばしていきましょうという、成長へのアドバイスになっている。人事制度の目的は、昇格者を決めたりボーナス額を決めたりといったこともあるが、最も重要な目的は、個々人が今後どのような分野に注力して能力を開発すべきか、それぞれの人に進むべき道を明示し、「次の評価の時期までにあなたがこれをできるようになると期待している」と伝えること。フィードバックには詳細さも意味がある。例えば、〇〇の調査はちょっと時間がかかりすぎでした。ただし、〇〇の部分については期待以上の深堀ができていました。」とか。具体的なフィードバックはたとえネガティブなものであっても、納得性が高く、次にどう改善すればよいかというアドバイスにも直結する。さらに、自分の仕事ぶりをきちんと見てもらえていると感じることもできる。これが次も頑張ろうというモチベーションにつながる。

人を諦めない
トップパフォーマーは当然として、伸びしろは少ないけれど非常に数の多いグループを諦めてしまっては、組織全体の生産性は低いまま。切り札になるのが、詳細で具体的な成長支援のためのフィードバック。

5章 感想
どの会社にも、働かないおじさんおばさんはいるのだなぁ。彼らも、最初からモチベーションや能力が著しく低かったわけではないと思うんだよね。選抜や、環境のせいでそうなっている人がほとんどだと思う。思いたい。そんな人たちを放置しておいたら、生産性も低いままだし、若手も当然納得しないからギスギスした職場になってしまうだろう。そうならないために、詳細で具体的な、成長支援のためのフィードバックが必要。自分がまだ期待されていて、必要だと思えれば、モチベーションも低くならず、がんばってもらえると思う。自分がそうならないために、生産性を上げるために徹底して意識を磨く必要がありそうだ。弱みを、development needsとして伸びしろとして扱うのは、とてもよい側面の見方だと思う。


■6章 管理職の使命はチームの生産性向上
部下の育成と仕事の成果は両立しない?
管理職の仕事とは、「チームの生産性向上のためにリーダーシップを発揮すること」。部下を育てることと成果を出すことは天秤ではなく、部下を育てることが、生産性向上につながる。アタリマエだな。

ストップウォッチをオフィスにも
各作業、例えば資料の各ページに費やした時間、調査にかかった時かな、グラフを作っている時間などを事細かに分けて、ストップウォッチで時間を計測する。効果が測定できなければ、、手法の正しさも確認できない。著者も、原稿を書くのにかかった時間や、朝のメール処理にかかった時間を計測してメモしている。そうすることで、この時間を半分にするにはどうすればいいだろう?と自分に問いかけるきっかけを得ている。

お勉強ではなくスキルアップ
例:英語のメール対応。15分?30分?できる人のメールを定型化し、だれでも使える状態にするだけで生産性は向上できる。ひとつひとつ問題点を見つけ出して改善すれば、組織全体のスキルレベルと生産性は、確実に底上げできる。同じ作業を10分でできる人と、30分でできる人を長く部内に併存させないこと。それが管理職に求めらえれている責務で、その最初の一歩がストップウォッチで個々人の作業時間を定量的に把握すること。

仕事をブラックボックス化しない
正社員の人件費ではやる意味がないが、派遣社員の時給なら続けてもいいという仕事に高付加価値の仕事はない。まずは、この仕事はなくせないか?次により効率的な方法はないか?ということ。ECRSの進め方にそっくり。IT投資の例。まずは仕事自体の必要性の判断や、プロセスの見直しが必要。SAPのような業務システム導入で、現行の業務そのままの場合、結果として「多額の予算をかけてシステムを導入したのに、従来の非効率なプロセスが機械化されただけ」に終わるのはよくある例。とりあえずIT化しても、問題を先送りするだけに終わってしまう。派遣社員を雇ったりIT投資をする前には必ず、確認ルールを定めるだけでもムダな仕事を減らすことに役立つ。
確認ルール例:①本当に残す価値のある仕事なのか?②やり方を抜本的に変えられないか?③外注化やIT投資で、生産性はどれほど上がるのか?それは投資に見合うのか?

定期的な業務仕分けの価値
ノーコストで即日効果が出るため、生産性向上の効果が大きい。
やらないよりはやった方が少しは価値があるという状態。このような仕事をやめるには、かかっている時間とその仕事から得られている価値の比較、すなわち生産性の観点が必要にあるので、ほかの仕事と比較しないとやめることができない。恒常的にみんなが残業しているような部署で、ゼロよりもマシなレベルの仕事を行い続けるのは明らかに非合理。仕分けを通してなくせればよいし、指導機会にもなるし、仕事の意味を確認することもできる。意義を知り、やる気が出れば自主的な生産性向上の取り組みも促進される。業務仕分けは、自分の仕事がなくなり自身が不要になるということを恐れる人もいるため、定期イベントにすべき。サイバーエージェントでは、360度評価や新卒研修合宿をやめた。コストの割に効果の低い(生産性の低い)制度を廃止することで、新しい制度を導入する余力も生まれる。

長期休職者が出たら大チャンス
業務仕分けのチャンス。IT化、自動化のチャンス。在宅でできる仕事をリストアップし、休職中も仕事をできるようにするチャンス。新しい働き方。今後は、育児や介護などいろんな背景を持った人が働くことになる。休暇を取るのが通常になってくる。その分チーム全体の生産性を上げることが必要になってくる。。

みんなで高め合う体験を
マッキンゼーでは、他者の仕事のやり方について、アレコレアドバイスをする。それは、そうすることでチーム全体の生産性が高まること、またたとえ管理職でなくても、リーダーシップをとってチームに貢献するのは当然だからと認識しているから。アドバイスをされた相手も、嫌な思いなどするはずがないとも考えている。管理職の仕事はまさにそういった環境づくりをすること。

ノウハウの言語化を促進
仕事やスキルの抱えこみは組織の生産性向上より、自己保身や職場における自身の心地よさを優先する身勝手な働き方であり、高く評価されるべき働き方ではない。
みんなで話し合ってみたら、その仕事を全く知らない他部署のスタッフやずっと若い新人から発せられた質問に端を発して、すばらしいアイデアが出てくることがよくある。人材の多様性の狙いは、このようなこともある。
CECIモデルが関係するかな。

3割と3%の両方を意識する
3%の生産性向上はインプルーブメントによって、3割の生産性向上はイノベーションによって達成すべき目標。

6章 感想
まずは業務仕分けから。それが管理職になってから実施することかな。あとは、高め合う体験をすること、そのような環境づくりをすること。CECIモデルの説明からチーム貢献への流れなんて、良いのではないか?
ECRSは、プロセス改善でもあるが、根底には生産性向上がある。なので、とても有効な考え方となる。なぜ色んなプロジェクトでできないのだ・・・。
効果が測定できなければ、、手法の正しさも確認できないとはまさにその通り。逆を言えば、効果測定できないものは、やる必要がない。
A bad decision is better than no decision.経営の世界でいわれる。


■7章 業務の生産性向上に直結する研修
研修の生産性を上げる
勉強になったけど、仕事の生産性にはあまり影響がないという毒にも薬にもならないレベルの研修がたくさんある。理由は、そこで教えられることが抽象的かつ一般的で、日々の仕事で必要とされる実務スキルを習得することが難しいから。
研修の即効性を求められる企業では、ロールプレイング研修が顕著に多い。

判断の練習をする研修
著者のマネージャー研修の例。学ぶべき最も大切なことは「マネージャーの仕事とは、トレードオフが存在する状況において判断を下すこと」だと理解すること。マネージャーの役割は、どれも正解でどれも不正解である複数の選択肢からどれかを選ぶこと、選んだ選択肢に伴う問題をあらかじめ想定し備えておくこと。だと学ぶ。端的に言えば、決断をすること、リスクに備えておくこと。

グローバルチームでの働き方を学ぶ
ロールプレイング研修を通して、業務シーンを再現し、日常的に出くわす典型的な判断について話し合うことで、各国の文化的背景や価値観が、どのように現実のビジネス判断に反映されるのか、リアルに学ぶことができる。例えば、金曜日の夜に、クライアントから飲み会に誘われました。あなたは、家族と夕食を食べる約束をしています。参加しますか?断りますか? 飲み会の効用について=どういう場合に顧客との飲み会を開催すべきかということについてまで、ロールプレイングで話し合いながら学んでいく。

ロールプレイング研修の多彩な価値
 具体的な話し方の練習ができる
 ビヘイビアー(どんなときに、どう行動すべきか)の練習まで研修時間内に行ってしまうべきと考えている。研修は、リスクフリー環境なので、いろいろ練習が可能。研修では、仕事を辞めたいと言い出した部下との面談など、実際にそういう状況に置かれたら、総統に当惑するだろうと思える状況設定が数多くあった。
 
 フィードバックが得られる
 同じ言い方でも、受け手の感覚によってまったく反対の反応が起こりえると理解できる。具体的なフィードバックが直接得られるので、迅速なスキルアップに役立つ。
 
 相手側の立場を体験できる
 学びが大きいのは、相手側などの別の人の役を演じているとき。相手から見ると、別の人から見ると、自分の言動はどのように見えているのかという視点を得ることで、実際の仕事の最中にも自らの言動を客観視することが可能。

 チーム内でスキルを共有できる
 全く異なる別のコミュニケーションスタイルを手に入れることができる貴重な機会になっている。
 
 緊急時対応も事前に練習できる
 起こったこと、原因、どうすれば防げていたか、対応時のポイントを簡単にメモしておくと、この事例をもとにロールプレイング研修の設計ができる。
 
課長も部長を役員も

最初は現場での新人研修から

7章 感想
ロールプレイングが研修の生産性向上には有効。グローバルチームでの働き方を学べるし、リスクフリーで練習もできる。
マネージャーの役割は、どれも正解でどれも不正解である複数の選択肢からどれかを選ぶこと、選んだ選択肢に伴う問題をあらかじめ想定し備えておくこと。。
「目の前の問題を自分で解決しようとする姿勢」これがリーダーシップ。
研修には、今日から生産性が上がることが必要。


■8章 マッキンゼー流 資料の作り方
アウトプットイメージを持つ
仕事にとりかかる前にアウトプットイメージを持つ。最初からゴールの姿をイメージしてそれに必要かつ重要な仕事から優先的に取り組む。(優先度をつける。)

ブランク資料をつくる
まずブランク資料を作り、それを上司や顧客に見せてアウトプットイメージを共有してから情報収集や分析にとりかかる。ブランクは、中身の具体的な数字とかはないが、目次やページのイメージはある。それを見せて、ブランク部分に具体的な数字や情報が入れば、意思決定できますよね?と確認する。そうすることで、意思決定への覚悟を問うことができる。後から、なんやかんやいわれることがなくなる。ブランク資料は、資料作成の生産性、意思決定の生産性を大幅に向上することができる。

ブランク資料は設計図
あとから想定外の貴重な情報を見つけた時は、新たに見つかった情報を含め、ブランク資料をつくり直すこと。

頭の中でブランクを作るシニアコンサルタント
アンケートでは、調査後にこういう集計や分析が出来上がっていれば大きな価値がありますよね?と確認した上で質問メールや調査票を送付する。
インタビューが終わった瞬間に、頭の中でブランクを作っているシニアコンサルタントはすでにレポートを作り上げてしまっている。一方新人はメモで手一杯なので、オフィスに戻ってからレポートを書こうということになる。どちらの生産性が高いかは、一目瞭然。

情報偏在によるバイアス
情報は、入手しやすい昨今。明確なアウトプットイメージをもって、自分が必要としているデータを優先的かつ集中的に集めることをしないと、時間ばかりかかってしまう。

分析精度もブランク資料で判断
仮説を持たずに分析していてもいくら時間があっても足りない。例えば、最も楽観的な状態でも数億円の赤字、ということがわかればそれ以上は分析しなくてもよい。必要十分なレベルを理解する必要あり。


8章 感想
最初にアウトプットイメージ(ブランク資料)を作ってから情報収集や分析を始めると、情報収集、分析、そして意思決定の生産性を何倍にも高めることができる。いきなり作業に取り掛からない。これはイシューからはじめよとか岩田さんも言っていたこと。これは実践できているぞ。ここまで来るのに、相当苦労したなぁ。


■9章 マッキンゼー流 会議の進め方
会議時間の短縮ではなく会議の成果を高める
繰り返しになるが、時間短縮のための施策でなく、会議の成果・生産性を上げるための工夫が必要

達成目標を明確にする
AGENDAレベルではない。XXの素案出し、XXのテコ入れ策の決定、XXの最終確認など、会議の達成目標を具体的に明記すること。これならすぐにでもできるぞ!
会議の達成目標は次のうちのどれか。
・決断すること
・洗い出しをすること(リスト作成)
・情報共有
・合意すること=説得すること=納得してもらうこと
・段取りや役割分担など、ネクストステップを決めること
例えば、リスト作成に関しては、たたき台リストを作ってきて不足しているアイデアを追加していくほうが圧倒的に生産性が高くなる。このように、類型ごとに標準プロセスとして統一することができれば、会議の生産性は簡単に上がる。

資料は説明させない
マッキンゼーでは、多くの場合資料の説明は行われない。他の会議参加者が資料の内容を理解するという成果目標に対して、説明するのは非常に生産性が低いから。マジか・・・。それだけ、会議の生産性の方が資料作成者への思いやりよりも重視されるとうマッキンゼーの基本原則がある。

ポジションをとる練習をする
生産性の低い会議とは。決めるべきことが決まらない会議のことでもある。不確定な状況において決断するのはひとつのビジネススキル。自分の意見を明確にする意思決定の練習が必要。

意思決定のロジックを問う
決めるべきことが決められなかったのであれば、そのために使われた時間の生産性はゼロであった=無駄だったという現実をきちんと見据えることが必要。犯人捜しはする必要なし。なんで決断ができなったのか?それを意識する。
ここでは、意思決定のロジックが明確でなかったということと、データや資料がそろっていなかった(情報不足)に注目する。ここでいうロジックは、例えば円が120円よりも高くなれば為替予約をする、といったこと。情報は、1$=119円になった、ということ。ロジックさえ決まれば、仮に情報がわかっていなかった(1$=???円)だったとしても、情報が入り次第自動的に意思決定が可能。こうすれば、あとでもう一度会議を開く必要はなくなる。意思決定が必要なタイミングでできない人には、どういう場合ならイエスという判断になるのか、その「場合」を明確にする。
情報が足りないから、今日の会議では決められないとなった場合、本当に情報なのか?ロジックは明確か?という視点で確認をする。

セッティング効果を利用する
テクニックの話。必要に応じて2回に分けて資料を配布するとか。席順の配慮とか。要は、できることはなんでもやっておこうということ。できるこは、いっっっくらでもあるぞ。

全員がファシリテーションスキルを鍛える
深く考える機会をつくるために、具体的な質も発したり、「いまからあなたは先方の社長役ね」など役割を与え視点を変えることで、議論を活発にしたり。自分で会議評価をすることもオススメ。100%決めれた、60%しか決めれなかったとか。で、10%上げるためには、何をしておけばよかったのか?と考える。あと資料を事前準備しておけばよかった?議論を途中で打ち切っておけばよかった?とか。

生産性は試行錯誤を通して少しずつ上げていくもの。

9章 感想
会議の生産性向上には、達成目標の明確化、不確定な状況において決断する(ポジションを取る)、意思決定できない場合は、その「場合」を明確にする。ファシリテーションは大事。少しずつ色んな工夫をしていく。
個人的には、いつも意識をしているポジションを取る、ということを今後も徹底し、言語化する。自分ならどうするか?当事者意識をもって、勝手に。相手に押し付けないように。


■終章 マクロな視点から
負担の転嫁には限界がある
少子高齢化が急速に進む日本では、いまよりはるかに多くの人が働きながら育児や介護を担当することになる。海外赴任はできない、地方勤務もできない、子どもを預けられないと土日出勤や残業ができないなど。こういった負担を、介護も育児も担当しない社員に移転する方法では、不公平感も大きくなるし、仕事もどこかでまわらなくなる。負担の移転では、問題は解決できないという認識を持つべき。必要なのは、負担の移転ではなく(生産性向上による)総負担の削減。

「イシューからはじめよ」 おー、安宅さんだ
解くべきイシューを取り違えると、どれほど詳細に問題を分解し膨大な情報収集や多岐にわたる分析を行っても、正しい解にはたどりつけない。長時間労働は、よいことではないが、解くべき課題がイシュー(解くべき課題)かというと、そうではない。解くべき課題は、働いている人の生産性が低いまま放置されていること。もしくは長時間労働しか付加価値を生み出せない古いビジネスモデル。

生産性の低い主体を温存する日本
地方の問題。今後の人口減と比較し、都会から少し人が流れてくるだけでは変わらない。本当の問題は、地方の生産性が低すぎること。政府は生産性の低い産業を弱者とみなし、様々な支援をしているが、その支援の多くは生産性を高めるための支援ではなく、生産性が低くても存続し続けられるようにするための支援。生産性を少しでも高められるように支援することに重要なのが、人を諦めない、人に投資をし続けるといういこと。

人口減少というチャンス
女性や高齢者の就業率を少し上げても解決できる問題ではない。ただし、急激な人口減は日本にとって生産性を高めるチャンス。新しい技術や制度を導入せざるをえない状況になる。
東京圏の平均通勤時間は、往復1時間42分で1週間分の通勤時間で、1日分以上の労働時間が捻出可能。

まとめ
政府は人口減少時代への対応、企業は国際競争力の維持強化、個人はワークライフバランスの実現という課題をそれぞれ抱えている。実はこの3つの問題をすべて解決できるのが、「生産性の向上」。
働き方改革の最大の目的は、生産性を上げること。人口は今後3割以上も減るが、これだけ多くの革新的な技術が実用化されようとしている今、人口減少のインパクトを上回る生産性向上を目指し、高いレベルで職業生活と個人生活を両立できる人を増やすことが目指すべき方向ではないか。

終章 感想
生産性向上は、政府、企業、個人の抱える問題を解決する、すごいアイデアになっている。なるほど。。。ピンチはチャンス、だが、なにができるか。

■おわりに
成長する=生産性が向上する→仕事ができる人になる。
海外と比較し、論理性や技術力、発想が劣っているとは思えない。顕著に差があるのが、リーダーシップと生産性に対する意識。
生産性の差は、5倍違えば、他方は5年かかるが、他方は1年でできてしまう、ということ。
「生産性の低い人が仕事に忙殺され、忙しく働いている会社」と「生産性が高い人が長時間働いているハイパワーな会社」では、同じ長時間働いている忙しい企業に見えても、それぞれが達成できるレベルには大きな差が生まれる。

【この本を読んだ感想】
生産性向上を強く訴えており、強い意志が感じられる。こういう場合もあるけど、そうではないみたいな例がたくさんあって読みやすかった。この備忘録には載せてないけど。
よし、生産性向上しようと思わされる本だった。
常に考える種として、生産性向上はいいネタだとおもう。
採用の生産性に関して、「最終的に入社する10人だけが応募してくること」。というのは衝撃的だった。

【今後活かせること、具体的なアクション】
会議目標は、具体的に定める。具体的とは、次のアクションが明確になること。依頼なのか、ネクストステップの決定なのかなど。
情報が足りないから、今日の会議では決められないとなった場合、本当に情報なのか?ロジックは明確か?という視点で確認をする。
優先順位の明確化、ムダな説明時間や誤解が生じる余地をそぎ落としてしまう直截なコミュニケーションスタイルなど、少しでも生産性を高めようとする強い意志をもつ。とくに、やるべきこととやった方がいいことを比較したときに、やった方がいいことはやらない。やった方がいいことなんてゴマンとある。これは岩田さんも言っていた。そんなことをしたら会社はつぶれてしまう。リーンマネジメントのエリックリースも。Just Do It精神が会社をつぶす。顧客に価値がなく、成果が検証できないものはつくらせない。作るのは、検証に必要最小限のものだけ。

【気に入った文章・言葉を3つ】
優先順位の明確化、ムダな説明時間や誤解が生じる余地をそぎ落としてしまう直截なコミュニケーションスタイルなど、少しでも生産性を高めようとする強い意志が感じられる。
成長するとは生産性を上げることである
A bad decision is better than no decision.経営の世界でいわれる。

【こんな人に読んでほしい】
生産性について興味がある人
生産性向上ってなんとなくわかるけど、具体的にどんなことをすれば良いのかわからない人
管理職でチームビルディングに悩んでいる人

 

 

読書備忘録#3_実践型クリティカルシンキング

読書備忘録#3_実践型クリティカルシンキング
佐々木裕子さん

【読もうと思った動機】
クリティカルシンキングという言葉に興味を持った。手を動かして身に着けていくスキルとは異なり、考え方やスタンスというのは、早めにいろんな考えをもとに自分なりに確立したほうが良いと思い、中心的な考えになりそうなこの本を手に取った。本のカバーが赤くて、とても目立ちます。数年前に一度読んだが、改めて読んでみる。

【概要】
クリティカルシンキングについて、講義形式でまとめた書籍。事例や演習が多く含まれている。その事例や演習を通し、著者がファシリテーターや解説をしているため、非常に理解がしやすい。

■1章 実践型クリティカルシンキングとは
実践型クリティカルシンキングってなに?
 クリティカルシンキングとは、次の3つの要素からなる。
  1.目指すものを達成するために
  2.自分の頭で考え、行動し、
  3.周りを動かすための実践的な思考技術
 限られたリソース(時間、情報、予算)の中で、効果的に筋よく思考を深めるための技術が必要になってくる。それがクリティカルシンキング。これは、自ら目指すものを設定し、その目標を戦略的に達成していくことが求められる。その思考技術。気を付けたいのは、あくまで「ツール」であり、目的ではないこと。

いまクリティカルシンキングが求められる3つの理由
 素早く結論を出すことができる。
  変化のスピードが速いいまの時代では、短い時間でざっくりと、筋のよいやり方で結論を出すことが求められる。限られた時間や情報で、その時点でベストだと自分が思える結論・成果が出せる確率が上がる。
 経験値のない事柄でも判断できる
  自分の頭で考え、論理的な判断を行う力をつけることができる。
 判断の根拠を説明できる
  自分の下した判断根拠を説明できる。

クリティカルシンキング3つのステップ
 1.目指すものを定義する
  いつまでに、どのくらいのレベルのことを、何のために
  シンプルかつ具体的に。
 2.何が問題なのかをクリアにする
  現状を客観的に分析し
  目指すもの」とのギャップを認識し、
  そのギャップが生じている原因(=課題)を本質的に説明ができること
 3.打ち手を考える
  具体的なアクションを挙げられること
  なぜそのアクションなのかをクリアに説明できること
 ん~QCストーリーそのものだ。

クリティカルシンキングができるってどういうこと。 石川遼さんの事例
 クリティカルシンカーは、3つの問いに答えることができる。
  目指すものは何か?(いつまでにどのくらいのレベルで?)
  今と目指す姿のギャップ(=課題)は何か?
  ギャップを埋めるための具体的なアクションは何か?
 意識しないとできないのが、クリティカルシンキングの特徴。意識をすればできる。小学生でもできること。
 徹底して、意識し、考えるというのが大事。

クリティカルシンカーになるためのふたつの力
 1.目指すものを定義する力
  正解がないから、とても難しいこと。どの目線で定義をするか、どの具体性で定義するかということが非常に大事。
 
 2.ズームイン、ズームアウトする力
  ズームイン :細かく砕いて、核心に迫る力
  ズームアウト:思考や発想の枠を広げる力
  このふたつを行ったり来たりしながら、目指すものを達成していくのがクリティカルシンカー。
  著者がよくやるのは、なぜ?ホント?具体的には?の問い。これにずっと答え続けられるのがクリティカルシンカー。

1章 感想
クリティカルシンキングは、イシューから始めよと同じようなものだという印象。限られたリソースの中で、バリューを出すツール。正直、何が同じで何が違うのかまだよく理解できていない。ただ、大切なのはこの正解がない時代に自分の頭で考えて、目指すものはなにかを定義する力。それは本当に目指す姿なのか(バリューはあるのか)、そのために何を明らかにするのか、ということ。

■2章 目指すものを定義する
「なぜ、具体的に、いつまでに」目指すのかを決める
 目指すべき山を決めずに歩くは、さまように等しい 孫正義
 演習:グローバル人材の育成  ありがちなこと。すぐHowの議論(英語研修、海外勤務の経験・・・)へ。
 いや、最終的に解くべき命題(what)はなんなのだろうか?グローバル人材ってどういう人?育成ってどういうこと?いつまでに何人?何のために育成するの?

目指すものを明確に、イメージしやすく表現する
 目指すものをどう定義するか?どういう言葉で表現し発信するのか?
 ?の例:我々の使命は、チーム中心の最大規模のイノベーションと戦略目標に沿った航空宇宙計画を通じて、宇宙産業の国際的リーダーになることだ
 !の例:60年代末までに人類を月に立たせ、安全に帰還させよう   (J・F・ケネディ大統領)
 具体的に、ワクワクするような高いゴール(目指すもの)を設定すると、そのゴールの解き方がわからなくても、それに共感した人々が、自ら問題解決をし始める(←これを、「適切な課題の大きさ」と理解している。ほぼ日参照)
 著者も、目指すものと、目指すものと今とのギャップが見えないと、研修プログラムが組めないという話をする。
 目指す姿は、時間、レベル軸で具体的に提示できなくては、目指せない。

目指すものをSMARTでチェックする
目指すものは、意味のある形で定義しなくてはいけない。誰が聞いても、あ、そういうことか、そのためにやっているんだ、ということがわかること。
 Specific:できるだけ具体的に。 ex)社長の壁打ち相手になる
 Measurable:達成できたかどうかを事実で判断できる。 ex)月に行って人が安全に帰ってきた
 Action Oriented:アクションに落とせる。 ex)月に行って帰ってこなきゃいけないということは、大気圏突入しても大丈夫な素材が必要になる
 Relvant:意義が明確。なぜやらなきゃいけないのかが明確。 ex)当時、宇宙開発においてアメリカはソ連の後塵を拝していた。アメリカ国民は、もうソ連の背中は見たくなかった。そんな思いを代弁した。
 Time-Limited:期限が明確。 ex)60年代末までに。もし70年代と言ったら、実現は70年代になっただろう。
 これらが全部つながって、ポイントを満たしていること。
 
正解はない。ひたすら考え続ける
 経営なんて、正解がない。どこかで意思を持って決めないといけない。目指すものは、出発点として、ブレない明確なものじゃないとダメ。問題解決しようとすると、何の問題を解決しているのかよくわからなくなっていくのはありがちなパターン。正解がないので、自分が納得するまで考え抜くしかない。考え抜いて決めるしかない。そこが決まれば、あとはどうやって目指すものと今のギャップを埋めるかというところに頭を集中すればよい。

2章 感想
「なぜ、具体的に、いつまでに」目指すのかを決める。正解はない。自分で考え抜くしかない。チェックは、「SMART」を使って。適切な課題の大きさ
この流れで、ケネディ大統領のヴィジョンを聞くと、すごく洗練されていると感じた。

■3章 何が問題なのかクリアにする
ズームインで問題を分解して絞り込む
 ズームイン、ズームアウトを使って、ギャップを埋める。
 問題を見つけることは、それを解くよりももっと本質である。 アインシュタイン
 演習 年金営業マンの話。 スキル問題、ウィル問題、キャパシティ問題。最終的に、リストを作る時間がないというところまで落とした。ここまで落とさないと、助けてあげることができない。
 できる限り選択肢を漏らさないように、さらにわかりやすく分解するのがズームインの肝。構造化のこと。
 構造化(ピラミッド構造)が大事な理由というか、メリットは、選択肢や理由を分解していくとき、どれかひとつを選ぶと捨てた選択肢はもう検討しなくてもよいことが挙げられる。無駄な情報収集をしなくてよくなる。
 分解の過程で、大きな枝を切っていくということ。 

筋のよい分解をするためにふたつの条件
 1.MECE感があること。ここでは、直感的に違和感を感じることなく、ほぼカバーされていると思えるレベルでよいとしている。多少の例外は許容する。大事だけど、こだわりすぎないこと。限られたリソースでそれなりの成果を出すためだからね。
 2.意味のある切り口の分解であること。演習では、顧客地域別という切り口もあったが、プロセスを切り口にすることで、解決したパターン。本質的な課題が見えるまで、掘り下げる途中で、わかった気にならないことがポイント。
 
基本のフレームワーク5つ
 4C・3C、4P、バリューチェーンマーケティングファネル、7S

ペアコンセプトも便利(足して100%になるもの)
 アウトプットーインプット
 ウィルースキル
 ソフトーハード
 長期ー短期

過度なMECEフレームワーク信仰で陥りがちな3つの罠
 1.「で?」となりがちな一般論型。うまく整理されているが、何が言いたいのかわからない。
 2.抽象的すぎる「評論家型」。整理学になってしまい、抽象的でなにを言っているのかわからない。
 3.詰めの甘い砂上の楼閣型。なぜその整理で分解したのか。理由や判断基準や根拠が不十分。ちょっと、なぜ?ほんと?と聞かれたら瓦解してしまうパターン。
 これらの罠に陥らない(問題の本質を理解する)ためには、つぎの3つのポイント。
 ①言葉の定義は明確か?
 ②どんな課題解決にリソースを集中するか、具体的に判断できるか?
 ③解決策がアクションレベルで透けて見えるか?

ズームアウトで問題を構造化し、本質を探る
 演習:女性リーダー育成チャレンジプログラムの課題
 仮説を立てて、構造化する
  筋の良い分解をするには、ある程度、原因を仮定して、それを表現するために構造をつくっていくというアプローチも大切。危険性として、仮説として間違っているのに、自分の言いたいことを言うために無理やり分解してしまうということがあるが、直感的にもやもやして、構造分解していくプロセスで間違いに気づけると言っている。問題ないだろう。この辺りはやってみないとわからない。
  著者も何度もやり直している。今回は、「やりたいこと」に注視し、プロセスで分解をした。

3章 感想
問題を見つけることは、それを解くよりももっと本質であるというアインシュタインの言葉。分解するときは、MECE感を持って、意味のある切り口で実行する。
うまくいかないときは、仮説ベースでもよい。ズームインとズームアウトを繰り返し、何度も構造化をやり直すことで、光が見える。


■4章 打ち手を考える
ズームイン・ズームアウトしながら、打ち手を考える
 目指すものといまとのギャップをどう埋めるか?
 演習:日本の人口を10年後に1.2倍にするには?
 構造化すると、今まで思いもつかなかった選択肢に気づくというメリットがある。例えば、移民の受け入れ、流出を防ぐ、とか。
 打ち手を考えるポイント①
  ほかには?ほかには?と言ったら、結構出る。なので、最初はズームインしすぎずに、ほかにないのか?とズームアウトする。
 打ち手を考えるポイント②
  命題、すなわちいちばん最初の目標設定と照らし合わせながら、行ったり来たりしながら絞り込む。これをやると、情報収集を一切しないで、選択肢が消える。難しく、時間に限りがあり、情報量も大量、こういう場合にスピーディーに判断でき、効率につながる。
  なんとなく印象で、「出生率を上げる」を選択してしまうことが起こる。そのため、目標設定をクリアにすることがすごく大事。  

打ち手を考えるための5つのステップ
 演習:21歳の大学生がエベレストに登るには?2000万円必要。
 1.まず、当たり前の答えを考える:自分で稼ぐ
 2.当たり前の答えの対極を考える:自分で稼がない
 3.アイデアの深堀をする(ズームイン):稼がないだったらスポンサー、タイアップなど。稼ぐだったら投資など。
 4.発想を広げる(ズームアウト):シェルパになる。登らない、登るのをもっと先にする
 5.目標設定と照らし合わせながら絞って、さらに深堀りする:いろんな打ち手が出てくる。山田氏は、スポンサーの線で考えた。ギネスを作って注目度を上げようとした。できたばかりのトレーニング施設のデータ提供を条件に、無料で使用させてもらうよう、交渉した。15年後でもよかったら、違う方法もあったよね、と本人も言っていた。
 解決策は、目標設定とつながる。解決策が見つからない場合は、課題の本質を分かっていないから。ただ、解決策を実行するのは難しい。
 広げたあと、どういう情報があったらこの選択肢を切れるか、何を明確にすれば切れるか?というのを考える。で、十分に考えて絞ったら、掘る。で、また広げていく。

4章 感想
実際に構造化する際のテクニック。最初の目標設定と照らし合わせて、行ったり来たり行ったり来たりしながら、絞り込んでいく。総まとめ。
打ち手を考えるのは難しくない。うまくいかないときは、目標設定があいまいだったり、問題の本質をつかめていない可能性がある。


■5章 実践型クリティカルシンキング修了証書授与
クリティカルシンキングは、こうすればすぐできるよ!というウルトラCがない。
実践型クリティカルシンキングを身に着ける4つのコツ
 1.とにかく、ひたすら考え続ける。あきらめずにひたすら考え続ける。落としどころの予定調和をしない。精神論だが、「途中であきらめない」「最後は自分で決める」「自分で納得するまで考える」が本当に大切。できた瞬間に、あ、こうだったんだってスッキリ抜けて自分の引き出しがひとつ増えていく。そのプロセスがすごく大事。
 2.紙と鉛筆を湯水のように使う。紙と鉛筆で書き続けると、俯瞰できるので、思考のズームアウトがしやすい。
 3.自分だけで考えず、人と壁打ちをする。ひとりでやると、行き詰まる。壁打ち相手は、自分とは違う視点を持っている人ほど効果的。人に説明し、議論することで自己満足に陥ってしまうことを防ぐことができる。
 4.百聞は一見に如かずー事実に当たる。大きな課題を抱えている企業のマネジメント層に徹底的にヒアリングをしたり、変革屋としてする仕事を、その会社の社員としてやってみるというプロセスを経ている。そうして、自分の考えを深めてきた。事実に当たる、数字、データにあたる、実際に見に行く。感じる。そこから自分が感じたことを言語化して掘りこんでいく。
 なぜ、自分はそう思うんだろう?っていうのを掘りこんでいくのが、本質的な実践型クリティカルシンキングだと思っている。
 これからどういう世界にしていきたいのか。みんなが真剣にそれを考えられれば、ほんとうにもっとステキな21世紀になると思います。

5章 感想
最後は、総まとめと、著者の佐々木さんの思いを吐露しているような感じ。ひたすら自分の頭で考え、アウトプットして、ときには人と壁打ちして、事実に当たる。これがクリティカルシンキングを身に着けるコツ。


【この本を読んだ感想】
イシューの問題と、かなり類似性が高いものと捉えることができた。クリティカルシンキングで大切なのは、正解がないものに対して対峙するときに自分の頭で考え抜いて、自分の納得するまで考え抜くしかない。他人と壁打ちをしてもいいし、それを推奨しているけども、最終的に決めるのは自分。納得できるまで、できることをやる。それはデータを取ることだったり、実際に見に行くことだったりといった事実に当たること。
適切な課題の大きさにするには、その上の目標が必要。
イシューからはじめよで、バリューのある目的を定義して、クリティカルシンキングで打ち手まで考えていくことか・・・?考察中。
クリティカルシンキングはあくまでツールであることを忘れない。

【今後活かせること、具体的なアクション】
・「なぜ、具体的に、いつまでに」目指すのかを決める。まずは、なぜを。 アインシュタインの言葉を思い出す。
・構造化。ズームイン、ズームアウト。
・目指すものを明確に、イメージしやすく表現する。 ケネディ大統領の言葉を思い出す。
・目指すもののチェックはSMARTで。
・解決策は目標設定とつながるので、目標設定はクリアにすること。
・やはり、仮説ベースでの考察は大事。

【気に入った文章・言葉を3つ】
・60年代末までに人類を月に立たせ、安全に帰還させよう
・問題を見つけることは、それを解くよりももっと本質である
・これからどういう世界にしていきたいのか。みんなが真剣にそれを考えられれば、ほんとうにもっとステキな21世紀になると思います。

【こんな人に読んでほしい】
クリティカルシンキングを手軽に学びたい人
・生産性を高めたい人
・講義形式の書籍であれば読みやすいという人